本書は、「世界はどこまでもシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる」とアドラー心理学を説く哲人の元に、そんな考えは納得がいかない、と考える対人関係や劣等感に悩む青年が訪ねてくるところから始まります。そして、その哲人と青年の対話形式で本書は進んでいきます。
読み進めていくと、青年の様々な悩みが出てきます。その中には、少なからず皆さんも一度は感じたことがある悩みが出てくるかと思います。その悩みに対してアドラー心理学ではどのように解決していくのでしょうか。特に印象的だったものについて紹介します。
○原因論ではなく目的論
本書の中では、引きこもりになってしまった人を例として挙げています。
普通は「この人には過去に外に出られなくなってしまった原因があるから、外に出られないんだ」と考えると思います。
しかし、アドラー心理学では過去の「原因」ではなく、今の「目的」について考えます。
「不安だから外に出られないのではなく、外に出たくないから不安という感情を作り出している」と考えます。
一見すると、そんなことあるはずないじゃないか、と思うのではないでしょうか。しかしアドラー心理学では、過去の出来事はもう変えることはできないので、その過去の原因を気にするのではなく、「今どうしたいか」という目的に気持ちを向けることで前に進んでいくという考え方です。
人は変われないのではなく、ただ「変わらない」という決心を下しているに過ぎないのです。
変える勇気さえ持てば、その時から人生を変えられるというような考え方から、アドラー心理学は「勇気の心理学」とも呼ばれています。
○承認欲求を否定する
心理学の本を読んでいると、「承認欲求」という言葉がよく出てきます。これは誰かから褒められたり、認められたりしたい気持ちのことですが、アドラー心理学ではこの承認欲求を否定しています。
「承認欲求」が強くなっていくと、本当は自分のやりたいことではないのに他の人の期待に沿って行動してしまいます。また、相手のためにどんなに頑張ったとしても、その人が必ずしも評価してくれるとは限りません。これはその人にとって幸せと言えるでしょうか?
何をするかは自分で決めることができる行動ですが、その行動を他人が認めるかは他人の行動です。自分ではどうすることもできないことについては、自分と他者を切り離して考え、自分の課題について考えていく、というのがアドラーの考え方です。
以上2つの考えについて紹介しました。
これだけを読むと、そんな勇気を持つだけで変わるのか、他人のことはどうでもいいのか、と感じてしまうかもしれません。同様に本書の中で、青年がアドラー心理学の考え方に対する疑問を哲人にぶつけていき、解決していきます。
この場だけでは、アドラー心理学のすべては伝えられませんので、少しでもこんな考え方もあるのか、と感じていただいた方はぜひ本書をお手にとっていただきき、青年と一緒に「嫌われる勇気」について学んでほしいと思います。
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