ニューノーマルで悩む管理者の夜

第肆拾七夜 大阪・関西万博で悩む管理者の夜

概要

変化を体言するキーワードが、「ニューノーマル」。珍常態を、システム管理者目線でゆるーく語っ ていこうと思います。

目次
大阪から始まる万博
過去の万博
今回の目玉は空飛ぶクルマ
関西から発信する「iPS細胞」
その他の目玉
キャッシュレスでペーパーレスな会場
スマホ必須、連携で参加するイベントの時代

 

大阪から始まる万博

2025年4月13日から大阪・関西万博、正式名称は日本国際博覧会(英語:Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)が始まりました。期間は10月13日までの184日間、場所は大阪府大阪市此花区、想定来場者数は2820万人です(*1)。公式キャラクターはミャクミャクで、公式テーマソングをコブクロが担当しています。


<図表47-1 ミャクミャク>

日本で万博が開催されるのは久しぶりです。今回は万博をテーマにいろいろ語りたいと思います。

【参考】公式ホームページ(https://www.expo2025.or.jp/

ちなみに2025年4月21日の発表では、開幕から一週間の来場者数は63万9875人で、運営スタッフなどの関係者を除くと52万4937人です。日割り計算すると、思いっきり少なそうですが、GWや夏休み、さらには10月の駆け込み来場も想定して目標来場者2820万人を設定しているのでしょう。
GW最終日の5月6日(日)で累計入場者数は200万を超えましたが、GW中の来場最多は5月4日(日)の11万5000人(速報値)でした。少ないですね。

 

過去の万博

万博というと、高齢者はまず「こんにちはこんにちは~」by三波春夫の大阪万博(1970年)をイメージするでしょう。90年代や00年代には「花博」や「愛・地球博」などをありました。過去に日本で開催された万博、万国博覧会は5回です。

タイトル 通称 総入場者数
1970年  日本万国博覧会 大阪万博 6422万人
1975年 沖縄国際海洋博覧会 沖縄万博 349万人
1985年 国際科学技術博覧会 科学万博、つくば万博 2033万人
1990年 国際花と緑の博覧会 花の万博、花博 2312万人
2005年 国際博覧会 愛知万博、愛・地球博 2204万9544人

総入場者を見ると、1970年の大阪万博が6000万超えで他を引き離しています。全世界の万博歴代ランキングでも、1970年を超えたのは2010年の上海万博の7300万人のみ。やはり、春節の人民ラッシュで有名な中国といえます。
そして、1970年の大阪万博では公式テーマ曲「世界の国からこんにちは」が有名です。あまりにも、この曲の印象が強いため、2005年の愛知万博では、「世界の国からこんにちは2005」とリニューアルされたり、2025年のコブクロの「この地球(ほし)の続きを」でも「こんにちは」を連呼し、オマージュしたりしています。そして、「芸術は爆発だ」の名言で有名な岡本太郎の太陽の塔も公開されています。


<図表47-2 太陽の塔>

 

今回の目玉は空飛ぶクルマ

今回の万博では「空飛ぶクルマ」などが公開されたりしています。空飛ぶ「自動車」ですか? 写真を見ると、ただの小型飛行機/ヘリコプターです。有人化ドローン/大型ドローンといってもいいかと思います。そもそも、実際にあの大きさの飛行物体が有人で空中を飛び回ると交通事故が怖いですし、(道路)交通法との関係などの非技術面での規制が相当面倒そうですし、利権が絡む制空権などの整理が必要です。
また、空飛ぶクルマ=電動垂直離着陸機(eVTOL)という意見もあります。そもそも自動車といいつつも、開発などはエアバス、ボーイング、NASAなどが行っていますし、日本でもホンダがeVTOLを開発しており、航空・宇宙・自動車業界を跨っています。決して自動車業界だけの話ではありません。

【参考】HONDAのeVTOL
https://global.honda/jp/tech/Electric_Vertical_Take-Off_and_Landing_aircraft_eVTOL/

 

関西から発信する「iPS細胞」

今回の大阪万博では、iPS細胞(*2)もメインテーマに上がっています。最近の治験では以下のような状況になっています。
・大阪大学発のベンチャー企業「クオリプス」が、虚血性心疾患の治療に使う「心筋細胞シート」の開発を進め、厚労省に製造・販売の承認申請
・京都大学医学部附属病院が「1型糖尿病」についてiPS細胞から血糖値を下げる「インスリン」を分泌する細胞を作って患者に移植する治験を開始
・「パーキンソン病」の治療として、健康な人のiPS細胞から作った細胞を患者の脳内に移植し、治験を続けた結果、6人中4人の患者で症状の改善が見られた。

iPS細胞の発見者は京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授、関西所縁の方であり、今回の万博でもアンバサダー(*3)を務めています。そして前述の通り、関西の企業や研究所での成果が目立っているようです。

 

その他の目玉

さらに万博といえば、1970年には「月の石」、今回は「火星の石」が提示されています。この「火星の石」は、日本の南極地域観測隊が2000年に発見した世界最大級の火星由来の隕石です。「月の石」も、今回の万博で再展示(*4)されているらしいです。


<図表47-3 火星の石>

またDNA合成技術を活用して、バイオアートとして「人工宇宙人」「自己回復スニーカー」などを出展するLOM BABYも注目です。LOM BABYは2024年12月に、龍(ドラゴン)の肉の試食会(*5)なども行い、そのチケットが8分で完売という快挙をなしとげています。

【参考】LOM BABYホームページ(https://www.lombaby.io/

 

キャッシュレスでペーパーレスな会場

今年の万博の特徴として、キャッシュレス決済推しということが特徴といえます。会場内での買い物や飲食において、原則として現金は使用できず、キャッシュレス決済のみの利用になります。これは国際博覧会として初めての試みになります。
また、ネットやニュースでは「紙地図欲しい」などのクレームがありました。今回の万博はSDGsの観点から会場内での紙地図の無料配布はしていないらしいです。
そして、最近のイベントでの主流ですが、アプリはありますし、ミャクペ(電子マネー)やミャクポ!(ポイント)もあります。EXPOホンヤク(無料翻訳)なんていうのもありました。一部で「スマホなしでは何もできない」とのクレームもありますが、これも時代の流れというべきものでしょう。少なくともIT業界人はそんなことで文句を言ってはいけません。しっかりペーパーレスを喜びましょう。

【参考】万博アプリインフォメーション(https://www.expo2025.or.jp/apps

ただWi-Fi環境については、4月13日(初日)に一番使われる可能性が高い「入場口」付近で繋がりにくくなり、入場チケットのQRコード表示に支障をきたすという事象が発生しました。まぁ、だいたい初日にインフラトラブルはよくあることなので、想定内だと思いますが、代替策としての紙での印刷はちょっといただけません。せめてスマホ内写真OKにしてほしいものです。

【参考】毎日新聞 万博の東ゲートにWi-Fi設置へ 通信障害受け改善策
https://mainichi.jp/articles/20250414/k00/00m/040/028000c

 

スマホ必須、連携で参加するイベントの時代

今回は「大阪・関西万博 EXPO2025」をテーマに語りました。この手のグローバルなイベントは他にも以下のようなものがあります。

 ・スターウォーズセレブレーション(17年ぶりに日本で開催。2025年4月18日~20日、幕張メッセ)
 ・Kids Global Festival(2025年4月27日、東京 国立オリンピック記念青少年総合センター)
 ・Pokémon GO Fest 2025(2025年5月29日~6月1日、大阪)
 ・APPS JAPAN(2025年6月11日~6月13日、幕張メッセ、Interop25/Vision AI EXPO などと併設)
    ・徳川美術館 時をかける名刀(2025年6月14日~9月7日、名古屋、刀剣乱舞とのコラボで有名。国宝が10剣も展示)(*6)

などがあったりします。スマホやタブレットなどを持参し、最新のアプリや技術を思いっきり体感してみましょう。でも写真NGのイベントも多いんですよね。
では良き眠りを(合掌)。

「万博にはちゃんとしたミャクリャクがない」 by デーブ・スペクターのX(旧ツイッター)への投稿

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*1 想定来場者を期間で単純に割ると、15万人/日の来場者を想定しています。

*2 「Induced pluripotent stem cells:人工多能性幹細胞」の略。STAP細胞とは異なります。

*3 2025大阪万博のアンバサダーは、コブクロ(黒田俊介、小渕健太郎)、指揮者 佐渡裕、宝塚歌劇団、十代目 松本幸四郎、山中伸弥の5組。ダウンタウン(浜田雅功、松本人志)は2025年3月31日にアンバサダーを退任。

*4 「月の石」は、万博で展示するのが流行っぽくなっており、2005年の愛知万博でも(別のものではあるが)「月の石」が展示されている。

*5 2025年4月にも「龍肉試食会」を予定していたが、渋谷区保健所から食品衛生法に関する問い合わせ等があり、協議の上、中止となった。(2025.4.14のXの投稿から)

*6 国宝の展示は基本的に年に2回以内、公開日数は60日以内とするルールがあります。今回は天下5剣の「三日月宗近」の他、「日向正宗」「包丁正宗」「後藤藤四郎」「吉房 岡田切」などが展示されています。

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筆者紹介

司馬紅太郎(しば こうたろう)
大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。

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