組織横断で取り組むIT資産運用プロセス構築 ~クラウド・仮想化環境の全体最適化、ガバナンスの獲得~

第37回:Javaライセンスに要注意!?

概要

デジタル トランスフォーメーションへの期待が高まるなか、大手企業の IT部門への期待はますます高まっています。その期待に応えるためには今まで以上に IT環境のガバナンス、コントロール、セキュリティ対策などの成熟度が求められます。 ますます複雑化する ITインフラに対して、どうすれば成熟度を高めることができるのか? 欧米の大手組織では、その鍵は「全ての IT資産のコントロールである」として取り組みが進んでいます。 本シリーズでは、「IT資産運用プロセス」という組織全体で取り組むべき業務プロセスの設計やガバナンスの獲得により、「IT環境の全体最適化」を最終ゴールとして解説していきます。

目次
ターニングポイントは 2019年4月 Java SE(Standard Edition)
Oracle Java と Open Javaの違い

「風が吹けば桶屋が儲かる」如く、1990年代から「景気が悪くなるとソフトウェアライセンス監査が増える」と言われてきました。コロナやロシアの影響で、日本国内では車の生産やコンピューターサーバーの生産に影響がでて、納期が延びています。そして、2022年3月22日に掲載された
https://www.theregister.com/2022/03/22/oracle_starts_to_include_java/
この記事によると、Java のライセンス監査が追加された、とのことです。今日は、この記事を元に今日のJava ライセンスについて解説します。


ターニングポイントは 2019年4月 Java SE(Standard Edition)

記事によると、Oracle社は Java 7、8、11 など有償化されたJavaのほかに2021年9月に無償版のJava17 をリリースした。これまではJavaライセンス監査は、営業チームによるソフトアプローチが主だったが、今年の初めから一般的なOracle監査にも対象として含まれるようになった、との報告が増えているとのことです。
また、記事では Gartner社のアナリストのコメントとして「Javaライセンスが膨れ上がる原因はOracle社の仮想環境の見解にある」とも述べられています。

Oracle Java と Open Javaの違い

しかし前述の記事はあくまで、有償化された Oracle 社のMy Oracle Support などからダウンロードされた Oracle Java のバージョン7、8、11といったLTS(Long Term Support)のサブスクリプションが必要とされるバージョンについてです。無償版のOpen Java や、その他のディストリビューションについてはその限りではありません。
そのため、ユーザーの混乱は、「うちは一体 どのJava を使用しているんだ?」、「Oracle Java のどのバージョンが有償なのか?」、「うちの環境では有償ライセンスが必要なのか?」が管理されていないことに起因します。
まずは 「Oracle Java SE Supportロードマップ」を確認して、どのバージョンが有償対象であるのか、自社の環境はどのバージョンを使用しているのかを把握することが大切です。

Oracle Java SE Support ロードマップ
https://www.oracle.com/jp/java/technologies/java-se-support-roadmap.html

そして、Oracle Java のライセンス契約の内容を理解することです。以下のBCL(Binary Code License)から変更された Oracle Technology Network License Agreement for Oracle Java SE を理解し、使用許諾条件を理解する必要があります。
https://www.oracle.com/jp/downloads/licenses/javase-license1.html

さらに、既存のOracleテクノロジー製品で使用される Java を対象外として識別するため、以下の Oracle Approved Product Use List for the OTN License Agreement for Java SE を理解し、自社運用環境の例外対象を識別することです。
https://www.oracle.com/java/technologies/javase/approved-product-use-list.html

その他にも、他社製品に含まれる他社製Java ディストリビューションを識別し、さらに、Javaアプリケーションベンダーから提供された製品があれば、アプリケーションベンダーが Oracle社と Java SE ライセンス契約があるかを確認することで、ライセンス対象外を識別することが可能となります。
これらを元に、本当に必要となるJava SE のライセンスをサーバー環境であれば、しっかりと Soft Partitioning ポリシー
https://www.oracle.com/assets/partitioning-jp-168078-ja.pdfを理解し、物理セグメンテーションを実施して交渉ができるように準備することが重要です。

ベンダーマネージャの社内育成とアウトソーシング
グローバル市場では、特定のベンダーに特化したベンダーマネージャのアウトソーシングサービスやコンサルテーションなどが多数存在しています。特にOracle社の契約は複雑で、専門的知識が要求されますので、この分野の専門コンサルティング会社の増加が顕著です。しかし、サービスの品質はまちまちですので注意も必要です。

これらの課題を経営層に対して理解を促し、現場の取り組みを支援する組織としてベンダーマネジメントの啓蒙から教育、ベンダーマネージャ同士の横の繋がりをもって、より良いベンダーとの関係性を構築するためのパートナー戦略や、契約交渉力を身に着けるために「一般社団法人 日本ベンダーマネジメント協会」(https://www.vmaj.or.jp)が発足されました。
日本ベンダーマネジメント協会では「Oracleライセンスたな卸しサービス」などもグローバル市場のOracle専門コンサルティング会社との連携サービスなどをご紹介しています。自社のOracleライセンス契約の状態に不安がある方は、日本ベンダーマネジメント協会に問い合わせることをお勧めします。

日本ベンダーマネジメント協会では、ベンダーマネージャ育成や、新時代に求められるVMOの定義を可能とする「ソフトウェアライセンス契約管理講習:SLAM(Software License Agreement Management)」(https://www.vmaj.or.jp/archives/member)(Oracleライセンス契約管理オプションあり)を、 VMOやSLO管理ツールの運用アウトソーシングのためのRFP策定の定義の教育などを講習としても提供していますので、ご利用ください。

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筆者紹介

武内 烈(たけうち たけし)
1964年生まれ。
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
代表理事
ITIL Expert、IAITAM認定講師

IT業界では主に外資系ソフトウェアメーカにおいて約25年間の経験を持つ。
技術的な専門分野は、ネットワークオペレーティングシステム、ハードウェアダイアグノスティック システム、ITマネジメントと幅広い。大手外資系IT企業ではプロダクトマーケティングスペシャリストとして、ITマネジメントの分野で、エンタープライズJavaサーバー(WebLogic、WebSphere)、SAP、Oracle、ESB(Enterprise Service Bus)などからWeb Serviceテクノロジーまでの管理製品を手掛ける。
IT 資産ライフサイクル管理プロセス実装のためのAMDB・CMDB 製品開発プロジェクト、データセンターのCMDB およびワークフローの実装プロジェクト、IT資産管理(クライアント環境) MSP のサービスプロセスの開発・実装プロジェクト(CMS/サービスデスクを含む)、ライセンス管理のためのSAMプロセスおよび自動化テクノロジー (CMS/サービスデスク)の設計・実装プロジェクトなど多数のプロジェクト経験を持つ。
IT資産管理のポリシー、プロセスを、どのように自動化テクノロジーに結び、ITサービス管理戦略やロードマップとの整合性を取りながらIT資産管理プログラムを実行性の高いものにしていくのかのコンサルティングを得意とし、大手組織におけるIT資産管理プロセスとサービス管理プロセスの統合プロセス設計、自動化設計、実装プロジェクト、IT資産管理プログラムの運用教育の実績多数。

 

【ホームページ】
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
www.vmaj.or.jp/
【情報】
Twitter( @VMA_Japan)


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