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組織横断で取り組むIT資産運用プロセス構築 ~クラウド・仮想化環境の全体最適化、ガバナンスの獲得~ 第12回:Oracle契約交渉とパートナー戦略
2019年9月25日 8:00

猛暑が続いた夏も終わりの様相を見せ、過ごしやすい秋を肌で感じることができる風が、相変わらず熱くなりやすい私の頭を少しだけ冷やしてくれる日が増えてきました。それでも、ITIL4、VeriSM、SIAM のお話でデジタルビジネスや DX、エコシステムという話題でベンダーさんとお話をしていると、ユーザー企業とのWin-Win の良い関係をどうやって構築していくべきか、という議論であっという間に血が熱くたぎってしまう、気持ちは年中無休で真夏から抜けていない私です。

先月8月に、某リサーチ会社さんのセミナーで、今年発足した新しい組織のお披露目がありました。今回は、そのご紹介を兼ねて、今後、組織において不可欠となる「契約交渉」と、大手ITベンダーを対象とした「パートナー戦略」について、Oracle社を例に解説したいと思います。

DX で不可欠なベンダーコントロールは「パートナー戦略」に基づく「契約交渉」

本シリーズでもベンダーマネジメントやVMO(Vendor Management Office)、ベンダーマネージャについて何回かお話をさせていただきました。過去のコラムで解説してきている通り、DX においてベンダーマネジメントのケイパビリティは、エコシステムをコントロールする上で、あるいはサービスインテグレーションをコントロールする上で、組織にとってなくてはならない重要なケイパビリティです。この課題は、今後のデジタルビジネスの成功を左右する最も重要な IT部門のケイパビリティであるといっても過言ではないと思います。しかし、上位経営層の理解不足が原因で、 IT資産のコントロールを目的とするベンダーマネジメントに取り組んでいる担当の方々が、社内のリソース不足や、経営層の後援不足で苦労する現場が多く、ベンダーマネージャが戦略に基づいて契約を交渉し、Win-Win の関係構築をすることが困難な状況が長く続いているのが現状です。そこで、これらの課題を経営層に対して理解を促し、現場の取り組みを支援する組織としてベンダーマネジメントの啓蒙から教育、ベンダーマネージャ同士の横の繋がりをもって、より良いベンダーとの関係性を構築するためのパートナー戦略や、契約交渉力を身に着けるために「一般社団法人 日本ベンダーマネジメント協会」(https://www.vmaj.or.jp)が発足されました。

日本ベンダーマネジメント協会では、例えば Microsoft、IBM、Oracle など大手ITベンダーを担当するベンダーマネージャ研究会によるベンダーマネージャとしてのケイパビリティの開発や、SLAM(Software License Agreement Management)講習https://www.vmaj.or.jp/archives/member)などによる VMO、ベンダーマネージャの定義、体制構築の設計、契約書のレビューやベースラインの構築、自主監査のためのたな卸しなどを、研究会や講習会の形で実施していく予定です。

Oracleライセンス契約は非常に複雑で、契約やライセンスモデルを理解し、自主監査などを実施するには、正確な管理メトリクスを自社の契約に基づいて理解しなければなりません。しかし、ますます複雑化する契約は、ライセンス定義や契約内に存在する URL など関係文書が複雑に交差し、それらをひも解いて理解するだけでも多大な労力が求められます。日本ベンダーマネジメント協会が提供するSLAM講習には、オプションとして 「Oracle 契約管理 初級」や「Oracle 契約管理 上級」などが設定され、体系的な理解を支援し、自主監査やOracleベンダーマネージャの内製化とアウトソースとの連携を可能にします。

契約交渉なしではリソースプールは構築できない

特にOracle契約では、統合すべき範囲と、統合を避けるべき範囲、物理サーバーにとどめるべきシステムと、仮想環境において契約交渉をしてコントロールすべきシステムなど、自社が持つべき戦略が不可欠です。その戦略に基づいて契約交渉を継続的に実施できるOracleベンダーマネージャは、「確保するのか、しないのか」の選択肢ではなく、「どのように確保するのか」という内製化とアウトソースのバランスの設計を自社戦略に基づいて実施することが重要となります。これは対象となるベンダーが戦略ベンダーと定義されるのであれば、すべての戦略ベンダーに対して同様のことが言えます。契約が交渉されずに、ベンダーの提案を、そのまま受け入れてしまうと、ユーザー企業にとっては以下に挙げる様々な不都合が生じます。

① 物理サーバーの制限を受ける
② 使用可能な地域の制限を受ける
③ 使用可能なシステムの制限を受ける
④ 再利用不可能でリソースプールとして使用ができない
⑤ シェルフウェア(未使用ソフトウェア)が増える
⑥ 不要なライセンス購入を回避できない
⑦ 不要なクラウドサービス導入を回避できない

ベンダーマネージャによるベンダーコントロールのケイパビリティを確保し、正確に現状を把握し、戦略に基づく契約交渉をすることでのみ、ベンダー主導路線ではなく、ユーザーとベンダーがWin-Win の関係性で、ベンダーが提供するテクノロジーを最大活用することが可能となるのです。

戦略的にアプローチしてくるベンダーに対して「不満」はありませんか?
もし、不満があるのであれば、ベンダーと対等の立場で交渉できるように「交渉力」を持たなければなりません。「交渉力」さえあれば、受け身的にベンダーの強硬な提案をしぶしぶ受け入れる必要はまったくないのです。目指すべきは、健全なWin-Win の姿。そのためには、自らの契約状態を正確に把握し、ベンダーをコントロールするケイパビリティを獲得することが大切です。

 

国際IT資産管理者協会が提供するCSAM講習では、アウトソーシングを管理するために必要なケイパビリティを獲得するための基礎的な教育を行っています。また、「ソフトウェアライセンス契約管理講習」など、特に VMOやSLO管理ツールの運用アウトソーシングのためのRFP策定の定義の詳細などをCSAM資格者のためのフォローアップ講習としても提供していますので、ご利用ください。

以下に、IT資産管理システムのRFI/RFPのポイントをまとめた資料ダウンロードサイトをご紹介しますので参照してください。

再配布の際は出典を「国際IT資産管理者協会:IAITAMより」と明示して利用してください。

IT資産管理システム RFPたたき台 基本要求事項
http://files.iaitam.jp/2017ITAMAutomationSystemRequirement.pdf

IT資産管理システム RFP項目と機能項目概要
http://files.iaitam.jp/2017RFPItemAndDescription.xlsx

国際IT資産管理者協会 フォーラムサイト
メール会員登録だけでフォーラムサイトのホワイトペーパー、プロセステンプレート、アセスメントシートなどダウンロードが可能!
http://jp.member.iaitam.jp/

 
運用研究レポート
組織横断で取り組むIT資産運用プロセス構築 ~クラウド・仮想化環境の全体最適化、ガバナンスの獲得~
デジタル トランスフォーメーションへの期待が高まるなか、大手企業の IT部門への期待はますます高まっています。その期待に応えるためには今まで以上に IT環境のガバナンス、コントロール、セキュリティ対策などの成熟度が求められます。 ますます複雑化する ITインフラに対して、どうすれば成熟度を高めることができるのか? 欧米の大手組織では、その鍵は「全ての IT資産のコントロールである」として取り組みが進んでいます。 本シリーズでは、「IT資産運用プロセス」という組織全体で取り組むべき業務プロセスの設計やガバナンスの獲得により、「IT環境の全体最適化」を最終ゴールとして解説していきます。
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筆者紹介


武内 烈(たけうち たけし)
1964年生まれ。
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
代表理事
ITIL Expert、IAITAM認定講師


IT業界では主に外資系ソフトウェアメーカにおいて約25年間の経験を持つ。
技術的な専門分野は、ネットワークオペレーティングシステム、ハードウェアダイアグノスティック システム、ITマネジメントと幅広い。大手外資系IT企業ではプロダクトマーケティングスペシャリストとして、ITマネジメントの分野で、エンタープライズJavaサーバー(WebLogic、WebSphere)、SAP、Oracle、ESB(Enterprise Service Bus)などからWeb Serviceテクノロジーまでの管理製品を手掛ける。
IT 資産ライフサイクル管理プロセス実装のためのAMDB・CMDB 製品開発プロジェクト、データセンターのCMDB およびワークフローの実装プロジェクト、IT資産管理(クライアント環境) MSP のサービスプロセスの開発・実装プロジェクト(CMS/サービスデスクを含む)、ライセンス管理のためのSAMプロセスおよび自動化テクノロジー (CMS/サービスデスク)の設計・実装プロジェクトなど多数のプロジェクト経験を持つ。
IT資産管理のポリシー、プロセスを、どのように自動化テクノロジーに結び、ITサービス管理戦略やロードマップとの整合性を取りながらIT資産管理プログラムを実行性の高いものにしていくのかのコンサルティングを得意とし、大手組織におけるIT資産管理プロセスとサービス管理プロセスの統合プロセス設計、自動化設計、実装プロジェクト、IT資産管理プログラムの運用教育の実績多数。

 

【ホームページ】
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
www.vmaj.or.jp/

 

【情報】
Twitter@VMA_Japan
twitter.com/VMA_Japan

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