組織横断で取り組むIT資産運用プロセス構築 ~クラウド・仮想化環境の全体最適化、ガバナンスの獲得~

第28回:ソフトウェア資産管理 市場調査レポート ~コロナ禍の今、市場では何が起こっているのか!?~

概要

デジタル トランスフォーメーションへの期待が高まるなか、大手企業の IT部門への期待はますます高まっています。その期待に応えるためには今まで以上に IT環境のガバナンス、コントロール、セキュリティ対策などの成熟度が求められます。 ますます複雑化する ITインフラに対して、どうすれば成熟度を高めることができるのか? 欧米の大手組織では、その鍵は「全ての IT資産のコントロールである」として取り組みが進んでいます。 本シリーズでは、「IT資産運用プロセス」という組織全体で取り組むべき業務プロセスの設計やガバナンスの獲得により、「IT環境の全体最適化」を最終ゴールとして解説していきます。

目次
2021年 ソフトウェア資産管理 市場調査レポート 項目

コロナ禍でリモート、巣篭もりで過ごした「働き方の変化」という観点での激動の1年が過ぎ、2021年も4月を迎え新年度となりました。「IT環境に起きる変化」という観点では、おそらくは2021年度はより一層の変化が起きる年になると思われます。しかし、年を重ねると、1年のスピード感が毎年加速して困ります。加速装置が付いているようで、どんどん加速しているようです。もう少しスローな日々をもうそろそろ送りたいなぁ、など考えるようになったのは、やはり寄る年波には勝てないということでしょうか。ちなみに、私的な話ですが、システム管理者の会に寄稿し始めたのが2016年11月ですから、あっという間に5年以上の月日がたっているのですね。第1回は、「IT資産管理とは?」、第2回2017年1月が「どうする仮想環境のOracleライセンス管理?」でした。変化としては私がIT資産管理に携わるようになって10年以上ほぼ同じ内容ですが、少しずつ複雑性が増してきたということと、監査などで出てくる金額がせいぜい数億円規模だったのが数百億円という数字がでてくるようになったことでしょうか。
さて、今回のコラムでは、2021年に実施した市場調査をご紹介させていただきます。項目と一部の解説のご紹介となりますが、報告書の完全版をご希望の方は、一般社団法人 日本ベンダーマネジメント協会 へ(2021年度はコロナ禍キャンペーンで年会費が無料となっていますので、)入会申し込みいただくと(注)もれなくナレッジDB の VMAJ Teams から市場調査報告書の完全版をダウンロードいただくことが可能です。
(注:ご入会は組織としてご登録いただく必要がございます。)


2021年 ソフトウェア資産管理 市場調査レポート 項目

  • 1.メガベンダーと対峙し契約交渉、ライセンスの購入のコスト最適化するための能力が必要と感じている
  • 2.VMO などベンダーコントロールのための体制、役割と責任の明確な社内定義がある
  • 3.Oracle LMS による監査を受けたことがある
  • 4.LMS監査の結果Oracle包括契約(ULA)を結んだ
  • 5.Oracle 営業または代理店に包括契約(ULA)を勧められ、監査されると膨大な金額になるという可能性を示唆されたことがある
  • 6.包括契約(ULA)3年の金額は?
  • 7.Oracle サードパーティ保守を検討したことがある
  • 8.Oracleサードパーティ保守を検討したが断念した理由は?
  • 9.Oracle 包括契約(ULA)の Exit を検討している
  • 10.Oracle包括契約(ULA)の継続を検討している
  • 11.ULA をExit したいができない理由は?
  • 12.SAP サードパーティ保守を検討したことがある
  • 13.SAPサードパーティ保守を検討したが断念した理由は?
  • 14.IBMライセンス監査を受けたことがある
  • 15.IBMライセンス監査による追徴金を請求されたことがある

    解説
  • 1. 大手組織においてはメガベンダーとの契約は年々複雑化し、契約金額は増加する傾向にあるため、84.1% の組織がコスト最適化のための能力(ケイパビリティ)が必要と感じている。コスト最適化のためには契約体系や、すべての契約と関係する使用許諾条件を網羅的に把握し、コントロールする必要がある。使用許諾条件は製品のライセンス使用権として、エディション、ライセンスタイプ、使用許諾先ユーザー(お客様定義の範囲;ライセンシー/サブライセンシー)、使用許諾国まで、様々あり、ライセンス契約は多数の使用制限を定義することでコンプライアンスを定義しているが、その解釈は運用環境や、使用者の解釈、第三者の利用、仮想環境のテクノロジー、パブリッククラウドの利用形態により異なるため、これらを理解し、コントロールするためのケイパビリティが求められる。体制としてのVMO(Vendor Management Office)や、当該ベンダーの専門家としてのベンダーマネージャのケイパビリティをどのように獲得するのかが課題となっている。
  • 2. 前項の必然性を感じながらも84.1% の組織が「体制、役割と責任の明確な社内定義がない」と回答している。前述のVMO、ベンダーマネージャなどの、体制、役割と責任などを対象となるベンダー毎の優先順位や社内リソースとアウトソーシングの必要性を検討し、必要なベンダーコントロールを実施するための社内体制として、コントローラの機能をVMO マネージャとして育成し、同時に必要となるベンダーマネージャの社内育成の可能性の検討と、アウトソーシングの利用の双方を検討し、実現可能性の観点からハイブリッドなリソース配分を設計することが一般的である。

一つ一つの質問項目の調査結果とともに、前述のような解説がされており、調査結果をどのように読み解いて自社の今後の取り組みに利用するべきであるかを、理解しやすいようなレポートになっています。
是非、この無償のレポートをダウンロードしてご利用ください。

ベンダーマネージャの社内育成とアウトソーシング
グローバル市場では、特定のベンダーに特化したベンダーマネージャのアウトソーシングサービスやコンサルテーションなどが多数存在しています。特にOracle社の契約は複雑で、専門的知識が要求されますので、この分野の専門コンサルティング会社の増加が顕著です。しかし、サービスの品質はまちまちですので注意も必要です。

これらの課題を経営層に対して理解を促し、現場の取り組みを支援する組織としてベンダーマネジメントの啓蒙から教育、ベンダーマネージャ同士の横の繋がりをもって、より良いベンダーとの関係性を構築するためのパートナー戦略や、契約交渉力を身に着けるために「一般社団法人 日本ベンダーマネジメント協会」(https://www.vmaj.or.jp)が発足されました。
日本ベンダーマネジメント協会では「Oracleライセンスたな卸しサービス」などもグローバル市場のOracle専門コンサルティング会社との連携サービスなどをご紹介しています。自社のOracleライセンス契約の状態に不安がある方は、日本ベンダーマネジメント協会に問い合わせることをお勧めします。

日本ベンダーマネジメント協会では、ベンダーマネージャ育成や、新時代に求められるVMOの定義を可能とする「ソフトウェアライセンス契約管理講習:SLAM(Software License Agreement Management)」(https://www.vmaj.or.jp/archives/member)(Oracleライセンス契約管理オプションあり)を、 VMOやSLO管理ツールの運用アウトソーシングのためのRFP策定の定義の教育などを講習としても提供していますので、ご利用ください。

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筆者紹介

武内 烈(たけうち たけし)
1964年生まれ。
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
代表理事
ITIL Expert、IAITAM認定講師

IT業界では主に外資系ソフトウェアメーカにおいて約25年間の経験を持つ。
技術的な専門分野は、ネットワークオペレーティングシステム、ハードウェアダイアグノスティック システム、ITマネジメントと幅広い。大手外資系IT企業ではプロダクトマーケティングスペシャリストとして、ITマネジメントの分野で、エンタープライズJavaサーバー(WebLogic、WebSphere)、SAP、Oracle、ESB(Enterprise Service Bus)などからWeb Serviceテクノロジーまでの管理製品を手掛ける。
IT 資産ライフサイクル管理プロセス実装のためのAMDB・CMDB 製品開発プロジェクト、データセンターのCMDB およびワークフローの実装プロジェクト、IT資産管理(クライアント環境) MSP のサービスプロセスの開発・実装プロジェクト(CMS/サービスデスクを含む)、ライセンス管理のためのSAMプロセスおよび自動化テクノロジー (CMS/サービスデスク)の設計・実装プロジェクトなど多数のプロジェクト経験を持つ。
IT資産管理のポリシー、プロセスを、どのように自動化テクノロジーに結び、ITサービス管理戦略やロードマップとの整合性を取りながらIT資産管理プログラムを実行性の高いものにしていくのかのコンサルティングを得意とし、大手組織におけるIT資産管理プロセスとサービス管理プロセスの統合プロセス設計、自動化設計、実装プロジェクト、IT資産管理プログラムの運用教育の実績多数。

 

【ホームページ】
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
www.vmaj.or.jp/
【情報】
Twitter( @VMA_Japan)


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