ニューノーマルで悩む管理者の夜

第弐拾五夜 番外編 ねこ本で悩む管理者の夜

概要

変化を体言するキーワードが、「ニューノーマル」。珍常態を、システム管理者目線でゆるーく語っ ていこうと思います。

目次
やっぱり猫が好き?
犬派と猫派
猫本専門店の紹介
漱石が書いた名作な猫
名作な絵本な猫
マンガでは大活躍な大御所ロボット、そして映画の猫
ラノベの主人公になった猫たち
こんな猫本、猫ミス、SNS、猫テレビ
ねこの立ち位置とエンジニアの立ち位置

やっぱり猫が好き?

今回も番外編です。番外編ではビジネス書以外の本を、ひとつのテーマで複数ピックアップして紹介します。当然、技術書も対象外です。そのような本は周りの新旧のエンジニアにどんな本が良いかを聞いてください。
過去の番外編は
・「第拾三夜 番外編 異世界で悩む管理者の夜
・「第拾七夜 番外編 三国志で悩む管理者の夜
・「第弐拾一夜 番外編 働く女性で悩む管理者の夜

今回のテーマは「ねこ」です。この番外編では、読みやすさを考慮してラノベをピックアップすることが多いのですが、今回は苦労しました。漫画は多くても、小説が少ない。猫の良さを描くには、文章よりも絵が必要なのでしょうか。では、数々のねこ本をお楽しみください。

犬派と猫派

よく猫派か犬派という分類を見かけます。犬が好きか猫が好きか、とか性格が犬っぽいか猫っぽいかなどの分類です。犬派は忠誠心が高く、感情表現が豊かで、団体行動が好きで、アウトドア派。一方、猫は、人に媚びず、ツンデレ、個人行動をすることを好み、インドア派。以上のようなことをよく言われます。組織の一員として考えると極論になりますが、忠誠心が高い犬は社畜、自由気ままな猫はフリーエンジニアといえるかもしれません。
犬と猫どちらが好きか、というテーマがあります。pepyによる2021年「犬と猫のどちらが好きか」のアンケート調査によりますと、犬派:48.6%、猫派:30%という結果でした。但し、年代で見ると、20代は猫派が多く、高年齢になるにつれて犬派が多くなっているようです。

 

<図表25-1 2021年犬猫調査>                                                                   <図表25-2 2021年犬猫調査年代別>

【参考】pepy:【2021年最新版】犬と猫、どっちが好き?
https://er-animal.jp/pepy/114725

猫本専門店の紹介

本自体とは異なりますが、猫派/猫好きにとって、有名な本屋を紹介します。神保町にある「にゃんこ堂」(https://nyankodo.jp/)です。神保町交差点、地下鉄神保町駅A4出口を出てすぐそこにある小さな本屋さんです。2013年に開設され、常時600種類/2000冊以上の猫本が用意されている猫まっしぐらな本屋です。

 

<図表25-3 神保町にゃんこ堂1>                                                                                 <図表25-4 神保町にゃんこ堂2>

また、2022年8月8日(*1)には、東京立川に「necoya books(ネコヤブックス)」(https://necoyabooks.com/)がオープンされました。カフェやギャラリーも併設されています。

漱石が書いた名作な猫

猫が主人公/主人猫の本といえば、まずは夏目漱石の「吾輩は猫である」です。冒頭の「吾輩は猫である。 名前はまだ無い」は誰もが知っている文章といえるでしょう。でも、この本の猫って、猫らしさがあまりないんですよね。名作であることは間違いないですし、何度も読める本なのですが、猫が人間社会を客観的に風刺するという特徴がありますが、猫の個人行動や気まぐれなどは少ないようです。人間に対する興味が高いですし。でも、最後にあっけなく遠くに往ってしまうところは、猫っぽいといえるかもしれません。

名作な絵本な猫

絵本としてかなり有名な「100万回生きたねこ」。作者は佐野洋子さんです。「100万回死んだねこ」ではありません。

100万年も しなない ねこが いました。
100万回も しんで,100万回も 生きたのです。
りっぱな とらねこでした。
100万人の 人が, そのねこを かわいがり, 100万人の 人が, そのねこが しんだとき なきました。
ねこは, 1回も なきませんでした。

Amazonの書籍紹介からの引用
https://www.amazon.co.jp/dp/4061272748/

本当に絵本です。絵と文章を佐野洋子さんが書いています。さらに、この絵本のスピンオフとして、「100万分の1回のねこ」が出されています。谷川俊太郎、江國香織、川上弘美、角田光代らによるトリビュート作品です。主人猫のそれぞれの生き方が1篇ずつ書かれています。もし、プログラマでなかったら、もしPMとしてキャリアを進めずにプログラミングに特化していたら、社内SEとして予算を含めたシステム全般に関わることになっていたら、などIT業界でも人生の選択はたくさんあります。100万回生きられたら、どんな選択もできたでしょう。そして、最後は、、、IT業界とは全く関わらずに生きているのもアリかもしれません。というか、100万回もこの業界で過ごすのは、少し嫌です。

マンガでは大活躍な大御所ロボット、そして映画の猫

マンガに目を向けるとアノ「ドラえもん」は猫型ロボットですし、大泥棒は「キャッツアイ」(これは違う)。少女漫画では「ねこ・ねこ・幻想曲」や「綿の国星」という名作もあります。小林まことの「What’s Michael?(ホワッツマイケル)」もありますね。ますむらひろしの「アタゴオル」シリーズ、4コマ漫画の「ねこきっさ」。映画ではジブリの「猫の恩返し」や「魔女の宅急便」(*2)、実写版の映画では「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ(A Street Cat Named Bob)」(*3)があります。これは泣けます。そういえば、「子猫物語」(*4)という映画もありました。
IT業界で働いていて、いやそれ以外の業界でも学生でも、何か困ったことがあると「四次元ポケットを持ったねこ」が欲しいと思ったことは何度もあるでしょう。また、仕事に疲れて、ねこきっさや猫カフェで癒やされにいったひとも多いかもしれません。さらに、最近ではテレワーク中に、部屋に入ってきた猫がキーボードの上に居座ったり、マウスを追いかけたり、コーヒーカップを倒してノートPCを駄目にしたり。マンガと同じようなアクション(というよりも、そのような出来事をマンガとしている)をすることも多いのが猫です。

ラノベの主人公になった猫たち

ここでラノベでのねこを紹介します。2013年に発売された秋山瑞人のオリジナル作品である「猫の地球儀」です。

<図表25-5 「猫の地球儀」>

内容は買って読んでいただければと思いますが、ヒロイン猫の楽(かぐら)が非常に猫的です。主人猫の幽(かすか)は、猫というより男の子ですね。幽の「夢の実現には時として犠牲が伴う」的な生き方は、男性ならば共感を覚えることは多いでしょう。夢にかける想いについては「王立宇宙軍 オネアミスの翼」(*5)に通じるものがあります。
また、短編小説集になりますが「猫と竜」というラノベもあります。シリーズ化していますが、母猫(ままにゃん)に育てられた竜(羽のおじちゃん)と、母猫を含む子猫たち(種族はケットシーですが)の小説集という形式です。かなりお節介な猫たちと竜(を含む母猫に育てられた猫)と人間たちのハートフルアンドコメディなストーリーです。コラム筆者の最近のお気に入りの1つです。

<図表25-6 「猫と竜」コミック版>

こんな猫本、猫ミス、SNS、猫テレビ

まだまだあります。「猫ミス!」、猫好きな方のために書かれた、素敵な相棒が活躍するミステリーアンソロジーです。

<図表25-7 「猫ミス!」>

ミステリーといえば、赤川次郎の「三毛猫ホームズ」シリーズ、第3回江戸川乱歩賞(*6)の「猫は知っていた」、古典であるポーの「黒猫(The Black Cat)」もありますね。
そして最近注目を浴びているのが、猫愛が過ぎることで有名な、宇多天皇(*7)の日記「寛平御記」、現存する天皇の日記として最初のものであり、愛猫である黒猫についての記述がかなりあることで有名です。
「其伏臥時。團圓不見足尾。宛如堀中之玄璧。其行歩時。寂寞不聞音聲。恰如雲上黑龍」(訳:丸まってる時は足も尻尾も分からなくて、まるで洞窟か何かの中に鎮座する黒い宝玉のよう。歩くときはひっそりと音も立てずそう、まるで雲の上をゆく黒い龍だ!)
など、まさに現代のブログやSNSへの投稿と同じです。猫の可愛さなどをガンガンUPしています。でも誰に読ませるつもりだったんでしょうか。

【参考】大玄堂スタッフブログ 猫についてやたら褒めちぎった日記(https://www.daigendo.com/blog/cate01/entry000060.html

落語でも「猫の皿(猫の茶碗)」、「猫忠(猫の忠信)」、「猫と金魚」(*8)などがあり、BS放送では「ねこ自慢」(*9)という「猫の、猫による、猫のための番組」が放送されています。

ねこの立ち位置とエンジニアの立ち位置

いろいろなねこ本や映画/マンガを紹介してきましたが、「猫の地球儀」などを除いて、ねこは主人猫役というよりも寄り添う役が多い気がします。のび太に寄り添うドラえもん、漱石の猫、ハイタッチのボブ、そして「100万回生きたねこ」。クールな目で、少し離れていろいろなものを見ていく。非熱血に、客観的に、パートナーを支えつつ弟子を導く役目もあり。IT業界におけるコンサルみたいなものなのでしょうか?いやいや、コンサルと比較しては、猫が可哀そうにゃ。
では良き眠りを(合掌)。

「吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい」 by 夏目漱石作「吾輩は猫である」から

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*1 8月8日は「フジテレビの日」だけでなく、世界猫の日(World Cat Day)です。ただし、日本の猫の日実行委員会は「猫の日」を2月22日と定めています。さらに、「猫の日」は世界各国で制定されており、ヨーロッパの多くの国がWorld Cat Dayとしてる日は2月17日、ロシアは3月1日、アメリカは10月29日です。

*2 「魔女の宅急便」、DVDの英語版で見ますとジジの声が低かったり(日本版では佐久間レイなのですが、英語版では男性声優)、旅立ちの時にラジオから聞こえる曲が「ルージュの伝言」ではなく「Soaring」、さらにエンディングは「やさしさに包まれたなら」から「I’m Gonna Fly」に変更されていました。

*3 2016年のイギリスの伝記映画。原作はノンフィクション「ボブという名のストリート・キャット」。ボブという名前は、名前は「ツイン・ピークス」のキラー・ボブから。

*4 「子猫物語」は1986年公開の実写日本映画。ムツゴロウ(畑正憲)が監督・脚本を手掛けました。主人猫はチャトラン。最後に白猫と番います。

*5 「王立宇宙軍 オネアミスの翼」は、1987年公開のガイナックス制作のSFアニメ映画。山賀博之、庵野秀明、前田真宏・貞本義行らが参加。主人公シロツグの声を森本レオ、アニメーション音楽は、坂本龍一が担当している。工業的には成功したといえず、借金を返済するために次作「トップをねらえ!」が制作されたといわれています。

*6 江戸川乱歩賞は日本推理作家協会主催の長編推理小説の登竜門となっていますが、第1回受賞は探偵小説辞典、第2回受賞はハヤカワポケットミステリの出版で早川書房。第3回から公募形式になりました。

*7 宇多天皇は第59代天皇(在位:887年9月17日~897年8月4日)。治世は寛平の治と呼ばれています。

*8 「猫と金魚」は「のらくろ」で有名な田川水泡が高沢路亭のペンネームで書いた創作落語。

*9 「ねこ自慢」(https://bs.tbs.co.jp/entertainment/nekojiman/
は、BS-TBSの番組。オープニング曲は矢野顕子の「わたしのにゃんこ」。

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筆者紹介

司馬紅太郎(しば こうたろう)
大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。

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