ニューノーマルで悩む管理者の夜

第拾五夜 二刀流で悩む管理者の夜

概要

変化を体言するキーワードが、「ニューノーマル」。珍常態を、システム管理者目線でゆるーく語っ ていこうと思います。

目次
2021年年末といえばアレ
IT業界での二刀流
試験や資格と二刀流
Z世代とかぼったくり男爵、そして業界の「ガチャ」
来年に向けて

2021年年末といえばアレ

2021年の最後のコラムです。昨年2020年12月のコラムは「第三夜 香水で悩む管理者の夜」でした。「鬼滅の刃」と「香水」のうち、2021年にはネタにもならないだろう「香水」を選択したものでした。
そして、今年2021年の流行語大賞(*1)は、「リアル二刀流/ショータイム」。オリンピック開催年なのに、オリンピックとは関係ない用語が流行語大賞(*2)(*3)となりました。なので今回のテーマは「二刀流」(*4)。加えて、他の流行語なんかも少しテーマにして、2021年を締めくくりたいと思います。

IT業界での二刀流

さて、「二刀流」ですが、IT業界で二刀流というと、営業と開発の二刀流、開発と運用の二刀流、そんな感じになるのでしょうか?もっと限定してみると、データベースとネットワークの両方に詳しい二刀流、COBOLとC++という新旧言語のプログラマー二刀流、SQLとJavaの二刀流、テスター兼プログラマーの二刀流。
ここでキモなのは、ショウヘーオータニみたいに、まったく違う分野での二刀流であること。つまり監査とセキュリティの二刀流とか運用と保守の二刀流のように、ある分野の延長線、もしくは重なる領域が大きい場合は二刀流とすべきではない点が重要ではないかと。となると、プログラム言語の二刀流は、まぁ二刀流なんですが、普通に複数の言語は身に着けているべきでしょうし、テスターとプログラマーも微妙に違う気がします。
でも来年あたり「俺はPMとSEの二刀流だ」「俺様こそ、PGとSEとPMの三刀流」などが、うようよ湧き出す気もします。そして、「わが社では、二刀流を応援します」という怖いキャッチコピー。それって、単に1人で全職種をしているだけですし、裏読みすると専担のPM(*5)を置けない会社/組織/プロジェクトということを言っているだけですから、気をつけましょう。
でも、なんでもできるオールラウンダーのほうが仕事の幅が広がりますし、実践を考えるとトータルのスキルは上なんですよね。例外はありますが、専門家ってその分野以外の知識やノウハウは思いっきり低いことが多いので。

試験や資格と二刀流

この業界というか、他の業界にも「試験ヲタ」というものが存在します。え、突然試験について?というなかれ。複数の試験に合格することで、「二刀流」とか「三刀流」とかを自称する輩もわきそうです。でも、試験合格=実践力ではありません。一部で有名な話なのですが、情報処理技術者試験の問題は古臭いし、プログラマー用のエンジニア系試験は、マニアックなコードルール(というか書式設定、関数とか)を問う問題も多い。まぁ、古臭い問題は置いておいて、マニアックな技術、重箱の隅をつつくような技術を問う問題とかは、試験のための問題であって、実践とはあまりリンクしない(*6)です。そんなの、マニュアルとかリファレンスを見ればいいことなので、その知識を試験で問うても仕方がない。でも、本当の力って図るのが難しいんですよね。なので、もっと意味不明な「論文形式」とかが残っているのですけど。このあたりのネタは「第二夜 試験で悩む管理者の夜」の後半をお読み下さい。
脱線しましたが、試験・資格を複数所持しているからといって、そのスキルを複数もっているわけではないです。受験テクシックというスキルは所持していることは間違いないとは思いますが。

Z世代とかぼったくり男爵、そして業界の「ガチャ」

2021年の流行語トップテンには、他にも「ぼったくり男爵」がありました。え? 質の悪い客のこと? それとも元請け会社や中間搾取の二次受け会社のことかな。意外と「ぼったくり男爵」って、特定個人を指す言葉だけに、流用するのが難しいですね。男爵という爵位(*7)も微妙です。
「Z世代」(*8)もトップテンにありましたが、これって前々から使われていませんでしたっけ?「Z」という言葉(*9)のイメージ的には、ゾンビとかの方が強いんですけど。
「親ガチャ」は、大辞泉が選ぶ新語大賞(*10)にも選出されました。業界的には「案件ガチャ」っていうのもあります。どんな案件にアサインされるかは、ガチャ次第ですよね。あー、UR(*11)な案件が来ないかな。
お客様Q   「この機能も追加して欲しいんだけど」
開発リーダーX 「もうシステム試験に入っていますので、修正要望は…」
お客様Q   「先日、うちのZ世代の社員に画面を見せたんだけど、ビッタビタに評判悪くて、直さないと使わないって言われたんだよ」
開発リーダーX 「(ビッタビター―?)ですから…」
お客様Q   「この機能がないと、使い勝手が悪いんだよ。簡単でしょ」
開発リーダーX 「では、スケジュールの影響を再度検討して、見積りをお出しします」
お客様Q   「えー、ぼったくり男爵みたいなこといわないで。こんなのちょいちょいでしょ。いままでのお金でできる範囲じゃない」
開発リーダーX 「いやいや、それは見積もってみないと」
お客様Q   「ついでに、この辺の帳票も直して欲しいんだけど、あと、このボタンも」
開発リーダーX 「さっき言いましたように、いまはシステム試験中でサービス開始まで時間があまりないんです」
お客様Q   「当社のシステム開発を任せているんだから、これくらいはできるんじゃない。あまり失望させないでよ」
開発リーダーX 「(うっせぇわ)」

いろいろと使ってみましたが、「ビッタビタ」あたりの使い方は少し違っていますかね。「うっせぇわ」も微妙かな。ま、「うっせぇわ」は、今後テーマとしてコラムで書きたいと思ってます。乞うご期待を。

来年に向けて

さて、いろいろあった2021年ですが、ニューノーマルはすっかり定着せずに、旧態依然とした社会に戻りつつあります。テレワークからリアル通勤地獄、マスク着用からマスク無しの井戸端会議、オンライン飲み会から路上飲みを経てやっぱり人数制限などなしの居酒屋飲み会。咽もと過ぎれば熱さ忘れるのリアル体験です。加えて、不安感の蔓延による「無差別ナイフ事件」の発生やお役所的な「デジタル庁」発足。なんかオールドノーマルへの揺り戻しが激しい気がします。
来年2022年以降のテーマとしては、新しくなった「PMBOK」、「サービス終了(略してサ終)」、10月31日に発生したアノ「京王線ジョーカー風ナイフ男」、2021年末に「遊郭編」が始まり、まだまだ話題な「鬼滅の刃」、「第拾ニ夜デジタル庁で悩む管理者の夜」のデジタル改革で上がっていた「教育のデジタル化」などを考えています。第拾四夜の「選挙で悩む管理者の夜」の「選挙」も、2022年は参議院選挙があります。投票もデジタル化/ニューノーマル化していればいいですね。
では良き眠りを(合掌)。

「人生の苦労を持ちこたえるには三つのものが役に立つ。 希望・睡眠・笑い。」 by イマヌエル・カント


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*1 2021年ユーキャン新語・流行語大賞トップテンは、「リアル二刀流/ショータイム」「ジェンダー平等」「うっせぇわ」「親ガチャ」「ゴン攻め/ビッタビタ」「人流」「スギムライジング」「Z世代」「ぼったくり男爵」「黙食」。

*2 オリンピック関連の流行語大賞としては、以下のようなものがあります。

でも、近年はアスリート自体が発言を狙いすぎてて、いまひとつな言葉が多い気がします。

*3 2021年の流行語トップテンには、オリンピック・パラリンピック関連として、「ゴン攻め/ビッタビタ」、「ぼったくり男爵」、「スギムライジング」がありました。個人的には、「13歳、真夏の大冒険」(*12)は好きなんですが。その言葉を聞くと、なんか「ぼくのなつやすみ」を思い出します。その言葉だけで、熱い夏・新体験・ニューノーマルをイメージしませんか?

*4 「二刀流」(*13)ですが、現地米国では「two-way player」と表現されています。他のスポーツなどでは「all-rounder」などの表現がありますが、それだとなんでもできるプレイヤーというイメージになりそう。 内野/外野/投手/捕手などの9ポジションを全部守った選手として、五十嵐章人(ロッテ→オリックス→近鉄、2000年に達成)がいます。他では、高橋博士(1974年に達成)の2人だけです。高橋選手は、1試合での全ポジションでの出場も達成しています。

*5 専担PMは、PMの職務だけを行うPM。大規模なシステム開発プロジェクトでは、PMは専任です。決して、設計とかプログラミングとかを行いません。専担PMだけでなく、サポートするPMOも配置することが多々あります。

*6 なんで試験で問われる知識って、実践とリンクしないものが多いんですかね。「そんな使い方しねーよ」という苦情が、試験会場で毎回流れます(って、最近はCBTが多いので、会場外でつぶやくのですが)

*7 「公-侯-伯-子-男」の順です。その下は、準男爵とか士爵(騎士爵)ですか。最近のラノベでもいろいろとでてきます。辺境伯とか。ちなみに「ぼったくり男爵」は「Barron Von Ripper-off」を和訳したものらしいです。

*8 「Z世代」の語源は、そもそもカナダの小説家ダグラス・クープランドの「ジェネレーションX―加速された文化のための物語たち」という説があります。この作品により、「ジェネレーションX(X世代)」という新語が広まりました。その後に続く世代として、1980年代から1990年代前半に生まれた世代を「ジェネレーションY(Y世代)」、1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代を「ジェネレーションZ(Z世代)」というカテゴリが生まれました。ちなみに、その後の世代は、「ジェネレーションα(α世代)」になります。オミクロン(O)まで続きますかね。

*9 Z=ゾンビのイメージとしては、「WORLD WAR Z」とか「Zネーション」(米国テレビドラマ)、「Z~ゼット~」(相原コージ)というマンガもありました。あ、もっと前だと、マジンガーZとかZガンダムあたりもありますね。ことらは、ロボット系になります。

*10 大辞泉が選ぶ新語大賞2021は、第1位「親ガチャ」、第2位「人流」、第3位「ゴン攻め」、第4位「推し活」、第5位「まん防」、第6位「副反応」、第7位「マスク会食」、第8位「マスク美人」、第9位「マリトッツォ」、第10位「SDGs」でした。思いっきり、コロナ系が多いですよね。

*11 UR=ウルトラレアです。吉岡里帆さんとは関係ありません。

*12 「13歳、真夏の大冒険」は、2021年7月26日、スケートボード女子ストリートで、西矢椛のフィニッシュの場面でフジテレビ倉田大誠アナウンサーが絶叫したセリフ。翌日以降のめざましテレビなどで、そのセリフの背景などを語っていましたが、前々からこのタームは考えていたそうです。

*13 野球における「二刀流」のプレイヤー、マンガ(≠リアル)ではいますよね。例えば、あの星飛雄馬は「巨人の星」では左投手、「新巨人の星」で一時期代打の切り札+外野(右で投げています)、そして右投手として復活。もっと古いマンガでは、「スポーツマン金太郎」で、金太郎は確か外野手でしたが、投手としても活躍します。近々では「ドカベン プロ野球編」では、ドカベンのライバルは投手が多いのですが、プロ野球編ではさすがに全員投手そのままというのは無理があると思ったらしく、野手に転向した選手も多いです。そういえば、イチローも高校時代は投手だったらしいです。王貞治も投手でしたね。

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筆者紹介

司馬紅太郎(しば こうたろう)
大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。

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