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ニューノーマルで悩む管理者の夜 第三夜 香水で悩む管理者の夜
2020年12月23日 10:00

はじめに

2020年のヒット(*1)といえば、「鬼滅の刃」と「香水」。異論は多々あると思いますが、たぶん来年2021年になると、ネタにすることもできないと思いますので、今回は「香水」をネタに話したいと思います。

瑛人の「香水」(*2)は、簡単に言いますと、”ダメダメ男が主人公、3年前に振られた元カノからの連絡、そしてその香水の香りから元カノのよさや自分のクズさ加減を思い出す”っていう感じの歌だったと思います。楽曲や歌詞に対する感想や想いは、個々人によって異なるため、読者が勝手に想定すればよろしいと思います。この歌詞のいくつかに、システム管理者の琴線に触れる、いやトラウマを呼び起こすものがあります。「香水」を口ずさみながら、以下のコラムを読み解きください。

 

管理者への夜中の電話

 

「夜中にいきなりさ いつ空いてるのってLINE」

LINEというのは今風ですが、昔で言えばいきなり鳴り響く夜中の電話。これは、まさかユーザー様からのクレームでは? と思ってしまうのは、運用/管理者の宿命です。なんで、夜中に鳴るんでしょう。というか、誰が教えたんですか、個人携帯(*3)の番号とかLINEのID。答えは営業が教えるんですよね。教えるなよ、個人情報じゃないか。

そもそも、システム管理室やマシンルームの壁に、しっかりと連絡体制図や緊急連絡先として、個人の電話番号が書かれていることも多いです。保守や管理先の総合サポート窓口に電話して、そこから担当者に連絡、そして担当者から保守現場に連絡よりは、レスポンスの時間がかなり短縮されることは間違いありません。複数のサポート会社が絡んでいたり、トラブルの症状の境界が微妙だったりした場合、もっと時間がかかります。図表3-1のように、通常のパスは青い細線ですが、ただしお客さまから担当エンジニアへのキラーパスが通ると赤い太線のように一直線です。

図表3-1  お客さまからエンジニアへの連絡経路(のようなもの)

それに、電話ってトラブル状況があまり分からないことが多いですよね。「エラーが出ているんだよ」「動かないんだよ」と言われても、正直困ります。緊急の処置が必要かどうかもわからないし、なんとかしたくても、リモートで入るしかない。担当者に、管理者権限(*4)でログインしてもらうわけにはいきません。
結局、手元にPCがないと何もできない。医療ドラマみたく「サチュレーション(*5)は?」と聞きたくなります。
最後には、心優しい管理者は、電話だけでは埒(らち)が明かないので、現場に直行することになります。

「ドールチェ ア―ンド ガッバーナ(*6)、香水のせいだよ~」

でも、最近ではエラー画像をスマホから直接担当者に送るってパターンも、いやいやそれはさすがにまずいでしょう。そもそもマシン室にスマホを持ち込む(*7)のは、セキュリティ的にいいのか、という話もありますから。

「ドールチェ ア―ンド ガッバーナ、香水のせいだよ~」

 

トラブル後の管理者の会話

 

「今更君に会ってさ 僕は何を言ったらいい?」

修羅場だったシステム開発が終了、コストは当然赤字、何人もの戦友が職場を去っていく事態。メンタルを病んでしまう同僚、「だからIT業界はブラック」と語る大学の同窓。そして、1年後、ある展示会でその時の鬼畜なユーザー(*8)、じゃなくてユーザー様と出会う。

「あのときはありがとうございました」とにこやかに言われます。「あんなクソシステム、もう使っていません」と言われるよりはましですが。でも、あなたの顔を見ると、あの苦しかった、いや大変だった開発を思い出すんですよ。

特に、その展示会で、基調講演(*9)として、あの地獄のようなシステム開発を題材にして、講演とかされてしまうと、「きれいごといいやがって」「大変だったことはすべてカット」した内容に、心臓のあたりがチクチク痛みます。まあ、せっかくの大成功プロジェクトの講演で、何人ものシ者(*10)を出したなんて、言えるわけないですが。

「ドールチェ ア―ンド ガッバーナ、香水のせいだよ~」

 

 

ふと思い出す管理者のコマンド

 

「別に君を求めてないけど 横にいられると思い出す」

端末というか、キーボードを前にすると、正確にはコマンドライン(*11)に向かうとどうしても、惰性で打ってしまうコマンドってありませんか?
ps -efとかls とか。私は、一時期エディターを使っていると、ESCキーをよく叩く癖が抜けませんでした(*12)。ハッカーはまずwコマンド(*13)を叩くことが多いようです。
別にどうでもいいけど、コマンドラインに向かうとどうしても打ってしまう。なんなんだろう、どうしてフォルダ(*14)や階層の位置を確認しないといけないんだろう。別に、求めてないんだよ、でも、打つんです。
ある意味、管理者の習性なんでしょう。職業病かもしれません。少し古い情報ですが、Opensource.comが2017年に発表したLinux管理者が知るべきコマンド20というものがあります。

順位 コマンド 概要
1   curl ファイル転送
2   python -m json.tool / jq JSONデータ整形
3   ls ファイル/ディレクトリ一覧表示
4   tail ファイルの最終行表示
5   cat ファイルのテキスト表示
6   grep ファイル内 テキスト検索
7   ps プロセス表示
8   env 環境変数表示
9   top 実行中のプロセスを表示
10   netstat TCP/IPネットワークの通信状況表示
11   ip address IPアドレスを設定
12   lsof オープンしているファイルを一覧表示
13   df ディスクの空き容量表示
14   du ディレクトリなどの容量表示
15   id ユーザー情報の表示
16   chmod ファイル/ディレクトリなどのパーミッション変更
17   dig / nslookup DNSにIPアドレスを問い合わせたり、とか
18   iptables ファイアウォール設定
19   sestatus ステータスコード設定
20   history 実施コマンドの履歴を表示

図表3-2 Linux管理者が知るべきコマンド20 (https://opensource.com/article/17/7/20-sysadmin-commands

catなんて、リダイレクトとパイプ(*15)を組み合わせないと使えないんですけどね。pythonは時代(*15)を感じさせます、javacとかccじゃないんですね。-mjson オプションも時代です。
historyコマンドで、管理者が、どんなコマンドを打っているかをじっくり見ると、何が起こって、どんなことを調査したのかがなんとなくわかります。本当に職業病なのでしょうか。

 

管理者にとって楽しかった頃

 

「何もなくても楽しかった頃に 戻りたいとかは思わないけど」

そうですね。なんだかんだ言っても、エンジニアにとって、思い出すのは修羅場の日々。なんで楽しかった日って思い出さないんだろう。そもそも楽しい日ってあったかな。ひたすら続く開発に疲れて、夜中に横になったソファ。ソファなんてないような部屋では、椅子を並べて、そこに横になります。作業場所(*17)入り口近くのワゴンに置かれた、栄養ドリンクの箱。バナナの山。ポテチ?そんなものありません、キーボードが汚れるでしょ。

「何もなくて楽しかった頃? 何もないことが楽しいことなんだよ」とトンデモシステムの運用者は叫ぶでしょう。ことわざにも「便りの無いのは良い便り」と言います。月に1回の報告会議で、「特にありません」と報告することがどんなに素晴らしいことか。しかし…

 報告会司会「次、給与管理システムの報告をお願いします」
 管理者X「特に問題は起きていません」
 経営層「いいね。問題が起こっていないと仕事がないよね。システム運用部の来期の人員は半分で大丈夫なんじゃない」
 管理者X「いやいや、何か起こった時困ります」
 経営層「何か起こるの?」
 管理者X「何も起こらないように、日々管理・運用しています」
 経営層「毎月何も起こっていないし、減らしても大丈夫でしょう」
 管理者X「(大丈夫じゃない)」

いろいろな場所や時間で、繰り返されてきた会話です。どうしても、運用系ってコスト削減の対象になることが多いです。特に、「問題がない」「問題が発生していない」時期には絶対にテーマに上がります。「問題がない」≠「問題が発生しない」であり、=「問題を発生させない」なのですが、なかなか理解してもらうことは難しい。結果とその結果に至らせるための作業や努力にかかる工数を認めてほしいだけなのですが。

「ドールチェ ア―ンド ガッバーナ、香水のせいだよ~」

 

 

おわりに

「香水」、素晴らしい歌です。業界人のトラウマをえぐり出すような、まさに心に響く曲です。いろいろな立場のエンジニア、管理者の心のスタミナをガリガリ削るような歌詞です。寝る前に聞くと、悪夢を見そうな曲かもしれません。この曲のサビが、気持ち悪いという感想もたまに見かけます。それは、業界関係者の心の深淵(しんえん)を刺激しているからかもしれません。
では良き眠りを(合掌)。

「快い眠りこそは、自然が人間に与えてくれたやさしい、なつかしい看護婦である」by ウィリアム・シェイクスピア

 

 

 

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*1 2020年11月5日に発表されたユーキャン新語・流行語大賞の候補 30ワードのなかに、「鬼滅の刃」「香水」はともに選ばれています。他に、「3密(3つの密)」「テレワーク/ワ―ケーション」「Zoom映え」なんかも選ばれました。そのなかから、12月1日にトップ10(*18)が選ばれまして、年間大賞は「3密」になりました。

*2 「香水」、日本のミュージシャン瑛人のデビューシングル。作詞・作曲:8s。2020年5月4日付のオリコン合算ランキングに22位にランクイン、5月18日、5月25日と2週連続で1位(Wikiから)。

*3 個人携帯=個人所有の携帯電話です。反対語は会社携帯。むかしむかしは、ポケベルでした。ポケベルが鳴ったら、折り返し連絡するというシステムです。ポケベル→PHS→携帯→スマホと変遷してきています。

*4 rootとかadministratorとかです。特権IDと言われます。いまさらですが、パスワードは初期パスワードから変更しておきましょう。いろいろな設定を監視・管理するため、特権IDを使うしかないのですが、間違ったオペレーションした場合の被害が大きいので、あまり使いたくない。いわんや、見えないところにいる、手の届かないところにいるユーザーに作業させるなんて、あまりにも怖いシチュエーションです。後日「なんでそんなことさせたんだ!」と言われるのが目に見えています。

*5 サチュレーション(saturation)とは、酸素飽和度を意味する医療用語。パルスオキシメーターで測ります。指の先端部にはめて、動脈の赤色の度合いを測定するらしい。正常な動脈血の酸素飽和度はおおよそ96%以上であり、酸素飽和度が90%以下の場合は呼吸不全が疑われます。 IT業界的には、緊急事態時に「CPU使用率は?」「ディスク使用量は?」と聞くようなものかな。

*6 ドルチェ&ガッバーナは、イタリアを代表する世界的なラグジュアリーファッションブランド(Wikiから)。「ドルガバ」とも略されることが多い。「香水」のヒットにより、ドルチェ&ガッバーナの香水の売り上げが増加。特に売れているフレグランスは、定番商品の「ドルチェ&ガッバーナ ライトブルー オードトワレ」(https://www.fashionsnap.com/article/2020-08-17/dolcegabbana-fragrance-hit/)。
「ドルガバ」を「ドルガパ」と間違えているひとが多数います。2020年12月15日放送のフジテレビ系「潜在能力テスト」でも問題として出題されたくらいです。Dolce & Gabbanaとスペルで覚えましょう。PではなくBです。

*7 マシン室にスマホや携帯は持ち込めないことは多いと思います。勝手に情報を送信されたら困るので。特にデータセンターとかだと駄目なことが多い。業界でいうと、金融系だとかなり厳しい。また、その厳しさを売りにしていることもあります。でもトラブった時に、どのような手段でコミュニケーションをとるのかは、書かれていないんですよね。

*8 鬼畜なユーザー≒鬼滅の刃、少しもじってみました。決して、本当に鬼畜というわけではありません。

*9 カンファレンスやシンポジウムなどの基調講演では、だいたい客を呼べる著名人や官公庁の人、会社の役席などが講演することが多いです。英語でいうと、キーノートスピーチ(keynote speech)であり、方針演説なのですが、日本では集客講演のことが多いです。

*10 シ者。新世紀エヴァンゲリオン第弐拾四話「最後のシ者」とは関係ありませんし、渚カヲルくんのことでもありません。

*11 コマンドライン(Command Line)。意外に、言葉が通じないことが多いです。windows的には、コマンドプロンプトで実行することです。メニューからコマンドプロンプトを実行したり、プログラムのcmd.exeを実行したりするとポップアップする黒いエリアがコマンドライン。よくドラマで、PCのコマンドを打ってスクロールしている画面がありますが、あれがコマンドライン。あんなに出力を垂れ流しているのを見ると、舌打ちしたくなります。moreを使えって。読めないだろ。

*12 エディターviでは、エディットモード(編集モード)から抜けるのはESCキー。

*13 wコマンドは、誰がログインしているかの表示機能です。whoコマンドと同じとも言えますが、何をしているかも表示されます。ネットでは、w=笑=藁=草(=www)の意味になりますが。

*14 フォルダというより、ディレクトリ(directory)と呼びたい時期がありました。もう、慣れましたが。フォルダという名称は、windowsやMac文化です。Unixではディレクトリ。感覚的なものですが、ウィンドウにフォルダアイコンがあると、「フォルダ」って呼びますし、コマンドラインからみる /sys/srcとかはディレクトリ。GUIではフォルダ、CUIではディレクトリという考えもありますね。

*15 例えば、ファイルをcatして、grepするようなシェルはよく作りますよね。「cat FILE | grep “err” | more」のように。moreあたりのコマンドがランキングしていないのが不思議です、意外にセットで使われていそうなんですが。

*16 「時代」、中島みゆきの名曲のタイトル(70s)でもあります。中島みゆきについては、別途コラムで深く語りたいと思っています。

*17 作業場所(Work Room)。ウォールーム(War Room)=プロジェクトのメンバーを一カ所に集める場所、ということもあります。一カ所に集めることにより、作業を集中管理することが目的ですが、絶対に密です。時代に逆行していますよね。現在はどうなっているのでしょうか?

*18 2020年の流行語大賞トップ10は、50音順に、「愛の不時着」「あつ森(あつまれ どうぶつの森)」「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○○」「鬼滅の刃」「GoToキャンペーン」「3密」「ソロキャンプ」「フワちゃん」。参考までに、2019年は「ONE TEAM(ワンチーム)」、2018年は「そだねー」、2017年は「インスタ映え」と「忖度」でした。

ニューノーマルで悩む管理者の夜
2020年に発生したいわゆる「コロナ」のため、日本人のみな らず全世界の人々の生活は一変した(と言われています)。その 変化を体言するキーワードが、「ニューノーマル」。新常態と訳 すべきものですが、このニューノーマルに対応するために、ビジ ネスマン、エンジニア、家庭の主婦まで、日々あたふたする姿が 見られます。この珍常態を、システム管理者目線でゆるーく語っ ていこうと思います。
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筆者紹介

司馬紅太郎(しば こうたろう)
大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。
TW @shiba_koutaro

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