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ニューノーマルで悩む管理者の夜 第拾ニ夜 デジタル庁で悩む管理者の夜
2021年9月29日 10:00

9月1日にデジタル庁創設

2021年9月1日、デジタル庁が創設されました。首相官邸ホームページ
(https://www.kantei.go.jp/)に
「デジタル改革」
(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/tokushu/digital.html)
もしっかり明記されています。


<図表12-1首相官邸ホームページ デジタル改革>

「デジタル化を実現し、ポストコロナの新しい社会をつくります」らしいです。そして、さらに、2021年10月10日-11日は、デジタルの日(*1)。「それなに?、おいしいの?」という声が聞こえます。「そんな日聞いたことないよー」という声もあります。だって、2021年、今年から作られた記念日なんです。デジタル庁創設を記念して、新しく決められた記念日らしいです。

 

デジタルとIT

DX(*2)とか、今回のデジタル庁などのように、最近ではデジタルという言葉がよく使われます。デジタルとITの違いは何?という疑問がありますが、本質的な意味では全く違います。デジタルって数字です。整数のような値です。アナログと反対(*3)のものです。そして、ITはinformation technology、つまり情報技術です。コンピュータとかデータベース、ネットワークなどの技術。最近ではAIとかクラウドなどを含みます。
しかし、ここで面白いネタがありまして、令和3年に施行された「デジタル社会形成基本法」の第二条で、デジタルを「インターネットその他の高度情報通信ネットワーク」や「電磁的記録」(*4)を用いるもの(Wikiから)としています。なんか昔のコンピュータの定義です。「電磁的記録」という言葉が非常に懐かしいです。

【参考】 新日本法規 デジタル社会形成基本法(令和3年5月19日法律第35号 令和3年9月1日から施行)
https://www.sn-hoki.co.jp/article/pickup_hourei/pickup_hourei1465994/

それに、0と1というのは、デジタルというか2進数やコンピュータのベースなのですが、この考え方はLGBT(*5)のような0と1の間や混在、などの考えと相性が良くないものではないでしょうか。時代の流れは、本当は非デジタル?

 

ITからデジタルへの名称付け替え

このように、政府自体がデジタルを曲解し、ITと同じものとしているので、IT化を推進するのがデジタル庁となります。誰か、ITとデジタルの違いを公務員や政治家に教えてやれよ(しつこい)。とにかく、言葉を新しくして、体裁を整えるといういつものパターンです。ITって言葉も古いですからね。

情報処理 → IT → ICT(思いっきり普及せず) → デジタル

情報処理っていう言葉も、まだまだ試験名として現役です。情報処理技術者試験ですね。はよ、名称を変えた方がいいんじゃないか、と思います。なんとなく、デジタル試験というちょっと痛い名前になりそうですが。
システム管理系もありましたね。

事務集中センター → データセンター →  アウトソーシング → BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)

今後たぶん、DXセンターとかイノベーションセンターとかデジタルイノベーションセンターとかに名称だけ変更されるのでしょう。やっている業務は変わらないのにね。

オペレーション → システム運用・管理 → ITサービス(*6)

ってのもありますね。名称が変わって、何か「個別の仕事」は変わりましたでしょうか?「プロセス」は変わったかもしれませんが、その「プロセス」を理解し、実行できるスキルは身に着けていますか?
このようなのれんの付け替えは、「IT業界の病理学」の「CASE4-10 部署名錯乱病」で原因などを追究しています。興味のある方はご参照ください。

 

まずは、デジタル改革

デジタルの定義などについて、長々と語りましたが、本題のデジタル庁です。
図表12-1を再掲しますが、書かれている項目は以下の9項目

1.デジタル庁創設
2.行政のデジタル化
3.規制改革
4.公務員のデジタル職採用
5.マイナンバーカード
6.教育のデジタル化
7.デジタル格差の解消に向けた活用支援
8.テレワーク
9.携帯電話の料金の引下げ

ぱっと見た感想は、広げすぎというか、なんでもあり。マイナンバーカードや携帯電話料金なんかもあります。デジタルとは関係ないものもあります。そして、その1.に書いてあるのが、「デジタル庁の創設」です。ん、創設が目標?

 

デジタル庁の基本方針

さて、デジタル庁ですが、まず官邸ホームページの閣議決定 令和2年12月25日 デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の概要
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/201225/siryou3.pdf)を紹介します。


<図表12-2 デジタル庁基本方針>

左にデジタル社会の定義や目的などを記載し、右側にデジタル庁の位置づけや役割を記載しています。内閣直属であり、組織の長は内閣総理大臣(*7)です。あ、なんかいきなり残念度がアップしました。
右の真ん中「デジタル庁の業務」ですが、最初に書かれている「国の情報システム:基本的な方針を策定。予算を一括計上することで、統括・監理。重要なシステムは自ら整備・運用」と書いてあります。え、運用するの? 本当に運用するの? 二度見します。いやいや、無理でしょう。オペミスしたり、判断に困って上司に相談したりしている間に時間が過ぎ去り、トラブル増加、応用の利かないサービス対応などなど、お役所さんとシステム運用は相性悪すぎでしょう。
そして、「民間・準公共部門のデジタル化支援:重点計画で具体化、準公共部門の情報システム整備を統括・監理」とあります。なんか何年か前の省庁の基幹システムの一斉更改を思い出します。それに監理(*8)ですよ。外部からチェックするんでしょうか。また書類が増えます。せめて、報告書類は電子化してください。

ついでに、デジタル庁の組織図です。


<図表12–3 デジタル庁組織体制 2021/09/01時点>

あー、典型的な縦割りでトップダウンな組織図ですね。で、疑問です。なんでCTOとかCPOとかいるの?そんなオフィサーを置いてどうするの? というか何/どこを管理するの、その人たち? 組織上、どのような権限を持つの? それより外部・他の省庁や団体に対してしっかり管理・コントロールできる仕組みが大事では? あ、まさかの丸投げ?
なんか名称だけ持ってきて、あとは走りながら考えるという、問題プロジェクト一直線の体制に似ています。
そして、CxO軍団。図表12-4を見て下さい。CPOの方はラクスルのCPO、CTOの方はグリーのCTOでもある方です。社外取締役相当? それとも名前貸し? ま、官公庁が自前でIT・デジタル人材を確保できないのはわかっているのですが、企業から持ってきますか。何か問題が起こったら、もしくは目標を達成できなかったら、責任を取ってくれるのでしょうか? いえ、お役所って責任を取らないですよね、たぶん。


<図表12-4 デジタル庁CxO 別紙2 幹部名簿から抜粋
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20210901_news_02.pdf)>

 

湧き出す社内デジタル庁?

ここでデジタル庁に関するちょっとしたネタ話です。ある会社、いや、いろいろな会社で社内デジタル庁というものが発生しているらしいです。

部長P 「当部門のデジタル化を推進するために、部門デジタル庁を設置する」
部員ALL 「(無言)」
部長P 「当部門は、当社の提供するITサービスの最先端を担わなくてはいけない。その旗振り役として『部門内デジタル庁』を設置して、最新デジタルを使用しての資料の『見せる化』、デジタル『コミュニケーション』を実施する」
部員ALL 「(無言)」
部長P 「当面は、『ぴー』というパッケージの学習をして、このツールでのコミュニケーション、資料の作成、最終的には全社展開することを目標としたい」
部員ALL 「(ツールの普及?かよ)」

うーん、社名は言えませんが、この会社、一応大手のIT会社なんですが。デジタル化を推進するデジタル庁を置いていいんでしょうか? 客にITサービスを提供している会社ですよね。そのような会社に「デジタルを推進する『デジタル庁』」を設置、というのは違和感というか、「客に謝りやがれ」という感覚がします。そして、この自称デジタル庁のメンバーは、ITスキルやリテラシーとか関係なく、希望者だそうです。うーん、最新技術って、やる気だけでは難しいですよ。技術って積み重ねというか基本的な技術をベースにアップデート(*9)していくものですし、全くの素人がタッチするのは危険です。実際、迷走というか暴走というか、意味不明の活動を続けている、らしいです。『ぴー』というツールでのチャット、資料の作成(エクセルからの作り直し)だけですけどね。
他の会社や部門でも、「デジタル化の旗振り役」として、設置しているケースが多々あります。別にデジタル化、IT化を目指すのは良いことなのですが。
「デジタル庁」というネーミングセンスもアレですし、旗振りしかしないのは、まさに本家の「デジタル庁」ちっくでズバリなんでしょうけど。

 

お役所的な課題を切り崩せるのかデジタル庁

デジタル庁という新しい省庁が誕生しましたが、期待より不安が大きいです。お役所・省庁の問題は、多々ありますが、まず第一に任期というか官僚の人事異動の問題もあります。だいたい約3年で異動(*10)しちゃいますし、継続的な施策って難しいでしょう。なので、外部団体なんかに丸投げというケースも多いのですが。それらの団体とのすみ分けも大変そうです。それに、お役所の絶対的な縦割り社会、デジタル庁がマイナンバーや携帯電話の料金、教育のデジタル化やテレワークにどのようにタッチするのでしょうか?他の省庁の仕切り案件ですよ。変な口出しは、意思決定のスピードを遅らせますし。
では良き眠りを(合掌)。

「夜は何を着て寝ますか?」「シャネルの5番よ」 by マリリンモンロー(来日した際のインタビュー)

 

 

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*1 2021年から始まった、日本政府が創設した記念日。2021年は10月10日-11日です。2022年以降は別途、国民の意見を勘案して決めるらしいです。なぜ、10月10日-11日なのかというと、IT関係者であれば分かりますよね。っていうか、2進数の世界は、コンピュータの世界であって、=デジタルじゃないと思うのですが。高齢な政治家の発想はデジタル=IT=コンピュータなのでしょう。それこそ、アナログでオールドノーマルですね。

*2 DX(Digital Transformation)です。「第五夜 DXレポートで悩む管理者の夜」もご参照ください。

*3 アナログ時計とデジタル時計をイメージ。そもそもアナログは連続的で、デジタルはとびとびの値という考えがあります。

*4 刑法においては、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの」(刑法第7条の2)と定義され、電子計算機(コンピュータ)で処理可能なデジタルデータを指します(Wikiから)。電磁的というと、思わず「超電磁ヨーヨー、超電磁タツマキ、超電磁スピン」と口ずさみたくなります。もちろん、身長57メートル、体重550トンです。

*5 性的マイノリティのこと。Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字を取っています。

*6 ITサービス  ITILの普及によって、「ITサービス」という名称も使われるようになりました。ITサービス管理=ITSM(IT Service Management)という言葉も使われます。でも、ITセキュリティマネジメントと混同されることも多いかな。

*7 現在の菅総理は第99代の内閣総理大臣です。初代=伊藤博文でした。記念すべき100代目は誰になるのでしょうか?

*8 「監理」は「監督と管理」のこと、とりわけ規則や事前の取り決めの通りに事が進んでいるかを確認し取り締まることを意味する語。

*9 最近、アップデートってよく使われています。OSやシステムを最新にすることの意味なのですが、知識やノウハウを最新にするような時にも「アップデートする」といいますね。

*10 「公務員異動の教科書」という本があるくらい異動って当たり前です。ま、幅広い知識と業務ノウハウを得るため、だと思いますが。上記本の著者の堤さんによると ①不正の防止 ②職員の能力開発 ③職場の活性化 らしいです。

ニューノーマルで悩む管理者の夜
2020年に発生したいわゆる「コロナ」のため、日本人のみな らず全世界の人々の生活は一変した(と言われています)。その 変化を体言するキーワードが、「ニューノーマル」。新常態と訳 すべきものですが、このニューノーマルに対応するために、ビジ ネスマン、エンジニア、家庭の主婦まで、日々あたふたする姿が 見られます。この珍常態を、システム管理者目線でゆるーく語っ ていこうと思います。
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筆者紹介

司馬紅太郎(しば こうたろう)
大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。
TW @shiba_koutaro

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回答数:22019年11月12日

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