アジア、世界を牽引しつつある中国の現在や如何に?

第3回 日系企業の現状

概要

「スマホ決済」「キャッシュレス」「顔認証」など、近年、中国では、ITが人々の生活に大きな影響を与えています。現金レス(買い物時にスマホ決済、顔認証決済)、交通移動、銀行・病院・役所の手続き、仕事など、ほとんどスマホで済ませており、日常の生活と仕事にとってスマホが切り離せない存在になっています。しかし、便利な面がある一方、スマホへの過度依存にリスクがあり、アプリを使えないと、何もできなくなってしまいます。今回の連載内容では、こういった利用状況などを紹介します。

今回は、中国における日系IT企業の状況について紹介したいと思います。

目次
中国経済の急発展
日系IT企業の進出
日系IT企業の衰退
日系IT企業の課題

中国経済の急発展

1980年代以降、中国の改革開放政策の普及に伴い、中国経済は急速に発展し始めました。その間中国は、国家の外資優遇策や安価な労働力、マーケットの拡大などを背景に、魅力的な投資先となり、多くの外国企業が中国に投資しビジネス開拓を始めました。日系企業も同じく、合弁企業、独資企業、駐在員事務所を設立し中国で事業を始めました。

人件費などの製造コストが安いため、まず製造業が進出しました。中国国内で安い労働力で製造した製品を日本や海外に輸出するなどのビジネスが盛んに行われ、それらの進出企業も増えています。

その次に、銀行・金融業も中国に支店や事務所を置き、商業銀行や投資銀行のサービスを提供しています。

このほか、医薬品、食品、建築、娯楽などさまざまな分野で、日系企業の中国でのビジネスは非常に多様化し幅広く拡大しています。

中国市場では、最初は加工貿易・製造が中心でしたが、購買力の向上に伴い徐々に中国マーケットでの販売中心にシフトし、現地生産・海外輸出から、現地生産・現地販売へとビジネスの構造が変化してきました。

 

日系IT企業の進出

こうした中、日系企業のIT事業を支援するために、1990年代以降日本からIT企業がサービス提供のために大量に中国に進出しました。

一部の会社は、中国進出の日系企業を対象にインフラ構築からシステム導入、運用保守までトータルで提供しました。2000年代初期は日系製造業の進出が旺盛で、インフラ整備、新規ERP導入などゼロから作るケースが多く、日系IT企業にビジネスチャンスが多くありました。

また一部のIT企業は、中国の安価なIT技術資源を活用してオフショア開発センターを設立し、中国で開発・製造し日本で納品するビジネスを展開しています。これは日本との賃金差が大きく、オフショア開発として十分なメリットがありました。大学やIT技術者が多いため、たくさんのIT企業がオフショア開発を主にビジネス規模を拡大していきました。

そして2000年以降、一部の日系ソフトウェアベンダーは、自社ブランドのソフトウェア製品、業務ソリューションを販売するために、中国で現地法人を作ったり、現地のIT企業と合弁企業を作ったりするようになりました。2010年前後、現地のIT製品は未熟だったので、日系IT企業のサービス、ソリューション、ソフトウェアプロダクトは一歩進んで、相対的に競争力がありました。当社もそのブームに乗って、2007年に上海で現法販社を設立しました。

現在、日系IT企業は、日系製造業へのサービス提供を中心に、製造業が集中する沿海地域に多く分布しています。北は大連・北京、東は上海・蘇州・無錫、南は広州・深セン、などで展開しています。日系IT企業のなかで、北京に本社を置く企業も少なからずありますが、ほとんどの場合、日系企業が多い上海周辺に集中しています。一時的に、上海の日系IT企業が100社以上存在していたこともありました。日本の有名なIT会社はほぼ上海に拠点を置いていました。

主要な業務は日本と変わりなく、インフラ整備、SI、オフショア開発、プロダクト・ソリューション販売などです。また、クラウドサービスを提供する会社もあります。

そのうちごく一部のIT企業は、現地企業への販売、現地IT企業との提携を進めてきましたが、大半の日系IT企業の取引先は日系企業だけです。本来、中国でビジネスを拡大するために中国全土の現地企業との提携、取引を増やすべきですが、商習慣、価格差、代金回収、コンプライアンス上の問題があったので、リスク回避するために、商習慣などが近い日系企業の範囲にビジネスを集中しました。

 

日系IT企業の衰退

2010年代前半までは、日本のIT製品・ソリューションは現地より強く、また日系製造業の新規工場立ち上げなども多かったため、IT企業にとってビジネスチャンスが多く、小康状態でした。

しかし、2010年代後半からは、中国の人件費上昇で製造業が中国を離れて東南アジアにシフトする傾向となり、新規工場の設立もあまりなく、既存事業へのIT投資も減ってきていると感じられます。

オフショア開発に関しても同じく、中国IT技術者の賃金上昇と円安でオフショア開発のメリットはなくなり、日本からの発注は減り、撤退かソリューション販売に切り替えています。

プロダクト・ソリューション販売の会社でも現地IT製品との競合が激しくなり、本社主導で作った製品が中国仕様に合わないところがあるなど、マーケティング方法の違いなどで、現地市場への展開が上手く進んでいませんでした。

対して現地IT企業は、旺盛なキャピタル資本の支援のもと研究開発を急ぎ、試行錯誤でさまざまな製品・ソリューションを提供し始めています。技術的には、アメリカを基準に最新技術にチャレンジし、クラウド利用、並列処理、ビッグデータ、AIなど、幅広く試しています。
特に、一部のIT企業は、裏にキャピタル資本が付いていて、シェア拡大と株式上場のために損益を度外視して案件を赤字受注したりしており、とても太刀打ちできません。また、旺盛な資金のもと、製品開発とマーケティングを進めています。

 

日系IT企業の課題

そして、最近では、日系企業は日系IT企業を離れて現地製品・サービスを導入するケースが増えています。日系IT企業にとってますます不利な状況になります。上海では、一時的に100社もあった日系IT企業は、徐々に減少し現在70社ほどになってきました。残った企業は、現地市場への展開ができていないまま、日系企業だけという狭い範囲でお互いに戦っています。このままではますます経営が厳しくなり、根本的な転換が必要です。

日系IT企業の課題としては、企業によって違いますが、幾つかあると思われます。
・商品は中国市場と関連性が薄く、本社で作成したものをそのまま販売している
・中国市場の進化に対応できていない
・IT技術イノベーションへの投資が少ない
・プロモーションにお金をかけていない

今後ですが、日系製造業など減っている中で、上記の課題を解決し現地市場へのアクセスを増やさないかぎり、ビジネスチャンスが減っていくと思います。これからは、日系IT企業の真価が問われます。

中国でビジネスを維持・拡大するために、中国IT企業よりもっと良い物を提供すること、また中国市場へのアクセスは不可欠です。それはまだできていませんが、今後、中国市場をリサーチし、現地仕様に合わせてソリューションを組み替える必要があります。そのためには、中国競合他社のビジネスモデル、ソリューション・ITサービス・プロダクトの内容・技術を学び、中国仕様に合わせた商品化が必要です。

SI会社の場合、日本の長年の製造ソリューション・ノウハウが蓄積されていますので、それをベースに、コンサルを含めて中国パートナーと一緒に現地向けのソリューションを作っていく手段はあります。ソリューション作成後、現地パートナー経由で販売し、売上代金回収などは現地パートナーに任せればよいので、試す価値はあるかと思います。

オフショア開発はコスト増で、今のままではだんだん難しくなりますので、沿海地域から内陸部の合肥市、武漢、桂林、西安などへ移転するしかないと思います。内陸部のコストはまだ安く、技術的にリモート開発すれば費用は下がります。

プロダクトベンダーは、単品販売が難しいので、現地パートナーのソリューションのパーツとしてOEM供給する方法が考えられます。

いずれにしても、現地の仕様・ニーズを調査し、現地パートナーと提携してビジネスを展開していく以外、道がないかと思います。
そのために、本社からの投資または、中国市場で稼いだ資金をもっと研究開発に投入する必要はあるでしょう。そして、日系IT企業の中国戦略からゼロから考えなければならないと思います。

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筆者紹介

巴音 都仁(バイン トジン)
内モンゴル自治区・オルドス市 出身

学歴
大 学:国立・大連外国語大学日本語学部・観光学科 卒業
大学院:日本亜細亜大学経済学研究科・大学院2年 卒業

職歴
1986年:中国国際旅行社に入社、内モンゴル支社所属、日本人観光客案内のツアーガイド
1994年:ソフトウェア・エージーに入社、企画部所属
2007年:ビーコンIT上海に出向、総経理
2015年:ユニリタ本社営業部に帰任、営業職
2016年:BSP上海に再出向、総経理


<名前について>
モンゴル系で少し変わった名前ですが、地元では4文字5文字の名前が多いのです。

 

<出身地について>
オルドスと言えば、石炭・天然ガス・カシミヤの産地として知られています。
面積8.7万平方キロメートル、人口216万人と人口密度がかなり低いのです
ジンギスカンの陵があり、古くからモンゴル系の人々がよく祭りに来るところです。
産業はエネルギーが多いため、一人当たりのGDPが中国1位(2022年、3.8万米ドル)です。

 

<趣味>
大した趣味はありませんが、読書・水泳・サイクリングが好きです。
毎日仕事帰りに40分くらい水泳をします。
土日も時間があれば、自転車で浦東空港へ往復します。(往復約70キロメートル)

 

<自分が今やっていること>
毎日営業活動が中心ですが、周りの変化が激しいため、お客様の業務を吸収しながら課題解決できるソシューションなどを組合わせて、試行錯誤で市場開拓をしています。

 

<これからやってみたいこと、目指すビジョン>
ビジネスが上海周辺に集中していますが、中国の内陸部へもっと自社製品・ソシューションを広げたいと思います。
また、一日系IT企業として技術力・サービス力・営業力を工夫し、現地の優秀なIT企業に肩を並べられる会社を目指しています。

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