- 目次
- 今回のテーマは「戦士」
- 「転スラ」のスライムに似たデータサイエンス
- SOA(ソードアートオンライン)の世界のようにスキルを行き来することは現実解か
- 魔法科高校の劣等生、司波達也のような悲劇はIT業界にもある
- その他の戦士や戦士論
今回のテーマは「戦士」
今回は番外編です。番外編ではビジネス書以外の本を、ひとつのテーマで複数ピックアップして紹介します。当然、技術書も対象外です。そのような本は周りの新旧のエンジニアにどんな本が良いかを聞いてください。
過去の番外編は以下の通りです。興味があるテーマをお読み下さい。
・「第拾三夜 番外編 異世界で悩む管理者の夜」
・「第拾七夜 番外編 三国志で悩む管理者の夜」
・「第弐拾一夜 番外編 働く女性で悩む管理者の夜」
・「第弐拾五夜 番外編 ねこ本で悩む管理者の夜」
・「第弐拾九夜 番外編 エンジニア本で悩む管理者の夜」
・「第参拾三夜 番外編 スローライフで悩む管理者の夜」
・「第肆拾四夜 番外編 2024年アニメ化ラノベで悩む管理者の夜」
今回のテーマはラノベの王道「戦士」です。魔法で戦うも良し、防御力で戦うのも良し。さらに銃やモビルなスーツなどいろいろな戦いや戦士をピックアップして、IT業界の職種に絡めてみました。
「転スラ」のスライムに似たデータサイエンス
「第拾三夜 番外編 異世界で悩む管理者の夜」でも最初に紹介した「転生したらスライムだった件」。
発売当初は、最弱なモンスターに転生!という驚きであったが、現在ではラノベにスライムを登場させるのは鉄板。そして、なにげにスライムは強かったり、可愛いかったりもします。でも、スライムが可愛いのはあくまでもドラクエからです。実際のスライムはゲル状のどろどろ物体でキモイです。RPGではブロブ(blob)って呼ばれることもあります。このイメージの変化、
最近では就活において、データサイエンスや統計学をしっかりと学んだ学生が「研究室ではこんな分析しました!」アピールをしても、企業に響かなかったという話もよく聞きます。
さらに、データアナリストとデータサイエンティストの違い(*1)は何、という話もあります。
SOA(ソードアートオンライン)の世界のようにスキルを行き来することは現実解か
これも有名なラノベで、アニメ化・映画化もされています。スピンオフとして、SOAのファントム・バレット編から派生した「ガンゲイル・オンライン」も人気です。SAOのように、ゲームの中に閉じ込められるというデスゲームなケースもラノベの1パターンとして確立し、その代表作といえます。ゲームの中という異世界と現実世界の2つの世界の往来、それが閉ざされることによる集団パニックや立ち位置の違うゲーマの葛藤など、ラノベを一段上にあげる設定の定番といえます。ゲーム内に行っちゃった&戻れない系のラノベは、「リアデイルの大地にて」もありますが、たぶん「エルフ」特集でピックアップしたいので、ここでは割愛。他にも2024年にアニメ化された「THE NEW GATE」などもあります。
このように、2つの世界、2つのスキルを行き来するエンジニア、例えばクラウド技術とネットワーク、セキュリティとネットワーク(これはすごく相性がよさそう)、AIとデータベース、Javaとデータベースなど複数のスキル持ちは多数います。IT業界のエンジニアとしては必要にせまられて2つ以上のスキルを持つことは当たり前であり、逆に1つのことしかできないエンジニアは(現実から見ると)仕事がないへたれエンジニア感がします。しかし、IPAを筆頭に各種団体ではスペシャリティ推奨がほとんどです。でもネットでは「フルスタックエンジニア」(*2)がバズっていたりします。どちらが正解なのでしょうか。
魔法科高校の劣等生、司波達也のような悲劇はIT業界にもある
これもアニメ化され、大人気になったラノベで、映画化もされています。優秀な妹と劣等生な兄(達也)。あれれ「タッチ」と同じというくらいよくあるパターンです。でも、その兄は…、というストーリーもあるあるです。ドラマ版「ドラゴン桜」の奥野一郎(演 中尾明慶)もそうでした。ラノベでは「薬屋のひとりごと」の羅半と羅半兄もかな。「呪術廻戦」禪院真希・真依姉妹もですね。まぁ、使いやすい設定なのでしょう。
この主人公の兄=達也=劣等生は、通常の魔法は使えない云々なのですが、そのため別の能力がチートです。そう、プログラマとしての能力はないけれど、プロマネとしては能力が高い、逆にプログラミングが得意だが、出世してプロマネを任せられたがうまくいかないケース。後者のほうが多そうですが、そのまま失意のエンジニアとして転職/転社というエンジニアは結構多いです。
弊書「IT業界の病理学」の5-4 プログラマ→SE→プロマネのキャリアパス病でも記載していますが、この変なキャリアパスはどうにかしてほしいものです。でも、現場を知る上では、プログラマ→SE→プロマネって結構有意義なんですが、わかってもらえますでしょうか。
その他の戦士や戦士論
戦士と剣士、同じようなものですが違っているのが「無職転生」シリーズ。先日(2025年6月)発売された最新刊である「無職転生~蛇足編~3 ジョブレス・レッドカーペット」では、狂剣王エリス・グレイラットを
「自らが決定打となりうる攻撃力を持つ剣士でありながら、前線を長時間維持できる戦士」(by アルス・グレイラット)
と評する表現があります。剣士=一撃必殺。戦士=前に立って戦線維持。なるほどそういう定義ですか。となると、防御力だけで戦線を維持しまくるメイプル(「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」の主人公)も素晴らしい戦士ですよね。
さらに「戦士」といえば、SFの巨匠ロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士(原題 Starship Troopers)」(*3)(*4)が想起されます。ジョニーが所属する機動歩兵は、戦線を維持するガチな戦士ですよね。そして機動歩兵のパワードスーツから派生したモビルスーツでも1機で戦艦を5隻を沈めている「赤い彗星」(搭乗者はシャア・アズナブル)
最近のマンガでは、「葬送のフリーレン」の戦士ゴリラ、「キングダム」の戦士ヨコヨコなどの猛者もおります。ラノベの世界では、「戦士」とは主人公的な一撃必殺は必要ないが、地味で絶対に必要な「歩」や「ポーン」というよりも、「金将」やのようなもの、とまとめるのが良いのでしょうか。
では良き眠りを(合掌)。
「さあこい、モンキー野郎ども! 人間一度は死ぬもんだ。」by 「宇宙の戦士(矢野徹訳)から」
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*1 データアナリストとデータサイエンティストの違いは、どちらもデータを扱う仕事であり、現場では全く職務分担されていません。さらに、さくっと調べてみると、データアナリストは「データ分析を通してビジネス課題の発見と解決をサポートする役割」、データサイエンティストは、「より高度な分析手法を駆使して、課題解決だけでなく、新たな知見の発見まで行う役割」と考えると良いでしょうって、サイエンティストのほうがやや上な書き方です。でもやっていることは同じ。「より高度」って何なんでしょうか?
*2 フルスタックエンジニアに明確な定義はありませんが、以下のような定義があります。
・開発工程全般を担当できるエンジニア:でも中小ソフトウェアハウスでは当たり前
・特定の分野のスペシャリストではなく、幅広い知識とスキルを持つ「何でも屋」。「器用貧乏」ともいわれる。
・フロントエンドとバックエンドの両方可能。でも画面やUIとバックエンド(サーバー側)の両方できると重宝ですが、24Hでできる仕事ではない。たぶん案件によってどちらかに専念したほうが安全。
・少数精鋭の開発現場で活躍。逆にスペシャリストが多数配属される大規模プロジェクトでは存在が薄れる。
*3 「宇宙の戦士」は日本・海外のアニメやメディアにも多大な影響を与え、パワードスーツは機動戦士ガンダムのモビルスーツにモデルであり、映画「エイリアン」「エイリアン2」の世界観やパワーローダーにも関連している。また、実写映画化もされ、「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997年)、TV映画「スターシップ・トゥルーパーズ2」(2003年)「スターシップ・トゥルーパーズ3」(2008年)と3作作られている。OVAアニメ化もされており、全6話で。ジョニーとカルメンシータの戦場でのラブを描いている(のか?)
*4 「宇宙の戦士」は今は内田昌之氏の新訳版がメインですが、私は旧訳の矢野徹氏の文章が好きです。
連載一覧
筆者紹介

大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。
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