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今回は、ITILv3/2011とITIL4の比較、ITIL4の活用方法についてご紹介したいと思います。
ITILv3/2011とITIL4の主な特徴を比較したのが図9です。
図9. ITILv3/2011とITIL4の比較(独自に作成)
「全体的な視点で考え行動する」という指針となる原則のもと、サービスを取り巻くエコシステムへと観点が拡がり、サービスライフサイクルからサービスバリューシステムという概念に変わりました。
また、4つのPの観点に情報とバリューストリームという新たな観点が加わり、さらにそれら観点に影響を与える6つの外的要因にも視座が広がりました。
更に、サービスによる価値提供という静的な考え方から、サービスによる価値提供に至るまでのすべての活動を通じた価値連鎖という動的な考え方に進化しました。
その結果、ITILが提供するレディメイドプロセスの活用というアプローチから、各組織固有のバリューストリームをテイラーメイドするというアプローチに変わりました。
この比較から、ITILv3/2011がプロセスを中心にしたベストプラクティスという位置付けであったのに対して、ITIL4はサービスマネジメントに必要な観点を抜け漏れ無く取り入れ、各組織のビジネスモデルに合わせてエコシステム全体を最適化するための参照アーキテクチャに進化したことが分かります。
これまで、ITILv3/2011のプロセスを導入してきた組織においては、まずそれらのプロセスのさらなる改善のためにITIL4を活用することが有効であると思います。
第1回でご紹介した「ITILv3/2011が抱えている問題」で取り上げた、これまで多くの組織において実際に導入したプロセスは、すべてITIL4のプラクティスに含まれますので、以下の順番で適用を進めるアプローチをお勧めします。
ITIL4は、もはや「サービスマネジメントのベストプラクティス」ではなく、ビジネスの変化に対するアジリティとベロシティに対応した「サービスマネジメントの参照アーキテクチャとガイダンス」という位置付けになったようです。
現時点では、今後出版されるITIL4書籍の具体的な内容に関する情報はありませんが、これまでのITIL®バージョンを活用してきた組織のために、ITIL4 Foundationに記述されている「何をすべきか(What)」に対する「どのように実践すべきか(How)」にあたる以下のコンテンツが、後続の書籍の中で「ガイダンス」として網羅されることを期待しています。
ITIL4のFoundationを読み解く中で明らかになったことは、これまでのITIL®バージョンを活用してきた主にサービス運用に携わる方にとっても、これまでITIL®が不得意としていたエリアであるサービス戦略やサービス開発に携わる方にとっても、デジタルトランスフォーメーションという共通の課題への対応に役立つITIL4のリリースは朗報であり、活用する価値があると思われるということです。
ただし、どのフレームワークや知識体系でも同じですが、その価値あるフレームワークや知識体系を自分たちの組織にとって価値あるものにできるかどうかは、「各組織に適した使い方」を見つけることが重要成功要因ですので、外部の専門家やコミュニティの支援を得つつ、まず社員の皆さんがITIL4の活用に向けた活動に着手されることをお勧めします。
次回は、ITIL4のコンセプトをベースにした「アジャイルITSM変革アプローチ パート1」をご紹介したいと思います。
株式会社JOIN
代表取締役社長
小渕 淳二
国内大手電機メーカ、外資系ICTサービスプロバイダ、国内コンサルティングファームを経て、2018年にITコンサルティング会社を創立。
ITIL®やTIPA®、IT4IT™、COBIT®、VeriSM™、SIAM®、IT-CMF™、TOGAF®などのフレームワークと、ドラッカーやポーターのマネジメント理論、「7つの習慣」の普遍的な原則などのベストプラクティスを組み合わせた、革新的で実践的なマネジメントアプローチとデザイン思考による組織変革やイノベーション創生を得意とする。
【連絡先】
support@join-inc.com
第8回:アジャイルITSM変革アプローチ パート4 | [2020年01月08日] |
第7回:アジャイルITSM変革アプローチ パート3 | [2019年12月04日] |
第6回:アジャイルITSM変革アプローチ パート2 | [2019年11月06日] |
第5回:アジャイルITSM変革アプローチ パート1 | [2019年10月09日] |
第4回:ITILv3/2011のプロセスを導入している組織でのITIL4活用アプローチ | [2019年09月11日] |
第3回:ITIL®4 概説 パート2 | [2019年08月07日] |
第2回:ITIL®4 概説 パート1 | [2019年07月10日] |
第1回:ITIL®の歴史とITILv3/2011が抱えている問題 | [2019年06月12日] |
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