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DX時代のアジャイルITSM変革アプローチ 第2回:ITIL®4 概説 パート1
2019年7月10日 8:00

今回は、ITIL4の知識体系をご紹介したいと思います。

ITIL4が参照しているフレームワーク

ITIL4では以下のフレームワークや書籍を参照しています(一部のみ抜粋)。括弧の中は、各フレームワークから取り入れたと思われる主要概念です。
このことから、第1回でご紹介した「ITILv3/2011が抱えている問題」に対して改善がなされ、エンタープライズレベルの包括的なフレームワークに進化したことが期待できます。

  • COBIT® 2019(エンタープライズガバナンス、リスク最適化、リソース最適化)
  • IT4IT™(バリューチェーン、バリューストリーム)
  • TOGAF®(エンタープライズアーキテクチャ)
  • Lean IT(リーン)
  • The Goal(トヨタ生産方式)
  • The DevOps Handbook(DevOps)
  • A Guide to AgileSHIFT™(エンタープライズのアジャイル変革)
  • PRINCE2 Agile®(アジャイル開発に適したプロジェクト管理)
  • Management of Risk(リスク管理)
  • Management of Value(提供価値の管理)

ITIL4の構成要素

ITIL4は、ITILv3/2011とは全く違った概念を取り入れていますが、本コラムでは以下の5つの重要な概念について考察します。

 

  1) サービスバリューシステム

  2) サービスバリューチェーン

  3) サービスマネジメントの4つの側面

  4) プラクティス

  5) バリューストリーム

 

サービスバリューシステム

ITILv3/2011では、サービスライフサイクルという概念がありましたが、その概念はITIL4では無くなり、新たにサービスバリューシステム(SVS)という概念が生まれました。
SVSは、以下の5つのコンポーネントで構成され、それらが1つのエコシステムとして機能することで、サービスによる価値が創造されることを示しています(図2)。

 

  1) 指針となる原則
  2) ガバナンス
  3) サービスバリューチェーン
  4) プラクティス
  5) 継続的改善

 

 

図2. サービスバリューシステム(SVS)

<出典:ITIL4>

 

SVSのエコシステムでは、「機会/需要」が「サービスバリューチェーン」を通じて「価値」になることを概念化しており、「サービスバリューチェーン」の活動は「指針となる原則」と「継続的改善」の枠組みの中で、「ガバナンス」の機能と「プラクティス」のリソース(ケイパビリティ)により実行されます。

 

 

サービスバリューチェーン

SVSの中心となるコンポーネントであるサービスバリューチェーン(SVC)は、需要に対する価値を提供するプロダクトやサービスの、開発とマネジメントに関する活動を体系化したものであり、特定のビジネスモデルに対するオペレーティングモデルと言えます。
SVCは、以下の6つの活動で構成されます(図3)。

 

  1) 計画
  2) 改善
  3) エンゲージ
  4) デザイン&トランジション
  5) オブテイン&ビルド
  6) デリバー&サポート

 

 

図3. サービスバリューチェーン(SVC)

<出典:ITIL4>

 

SVCの各活動は、SVSのコンポーネントであるプラクティスを複数組み合わせて実行されますが、以下の4つの基本ルールを適用し、後述する「サービスマネジメントの4つの側面」の「バリューストリーム」で活動の流れをストーリーとしてデザインすることで、自社の組織固有の課題に合わせた効果的で効率的な活動にすることができます。

 

  1) 外部とのやり取りは、すべて「エンゲージ」に集約する。
  2) すべての新しいリソースは、「オブテイン&ビルド」を通して確保する。
  3) すべての計画活動は、「プラン」に集約する。
  4) すべての改善活動は、「改善」から始める。

 

 

サービスマネジメントの4つの側面

サービスマネジメントの4つの側面は、SVSというエコシステムの中で、効果的かつ効率的にサービス価値を創造するために必要となる「観点」であり、組織の戦略やビジネスモデルに合わせてバランスを取ることが必要です(図4)。

 

  1) 組織と人材
  2) 情報と技術
  3) パートナーとサプライヤ
  4) バリューストリームとプロセス

 

 

図4. サービスマネジメントの4つの側面
<出典:ITIL4>

 

この4つの側面は、ITILv3/2011のサービスデザインの原則で示された「4つのP」を進化させたものだと思われます。
ITILv3/2011の4つのPは、人材(People)、プロセス(Process)、プロダクト(Product:サービス、技術、ツール)、パートナー(Partner:サプライヤ、メーカー、ベンダー)であり、ITIL4では新たに「情報」と「バリューストリーム」が追加されました。

 

デジタルトランスフォーメーションの中で、データと情報をどう取り扱うかが重要であるため、「情報」という観点が加わったことが理解できます。
「バリューストリーム」は、SVS上で「機会/需要」が「サービスバリューチェーン」を通じて「価値」になるという流れの中で、組織固有の課題に関してSVSのどのプラクティスが、誰により、どのような流れで実施されるのかをデザインしたSVC上のシナリオ“群”です。
“群”としたのは、SVCとバリューストリームは1対1の関係ではなく、1つのSVCは複数のバリューストリームにより構成されるからです。
また、「プロセス」は、ITILv3で定義された24プロセスのことではなく、特定の目的を達成するためのインプットとアウトプットを伴う一連の活動という観点に変わり、これまでのITILv3プロセスとして定義されていた活動は、SVSのコンポーネントであるプラクティスの中に包含されました。

さらに、4つの側面に対して制約や影響を与える6つの外的要因があります。

 

  1) 政治的要因
  2) 経済的要因
  3) 社会的要因
  4) 技術的要因
  5) 法的要因
  6) 環境的要因

 

6つの外的要因は、4つの側面に関する意思決定において考慮すべきことですが、SVSのコンポーネントであるガバナンスと、プラクティスの「リスク管理」における重要な観点になります。

 

 

プラクティス

SVSのコンポーネントである「プラクティス」は、ITILv3/2011のプロセスの概念に替わる新しい概念であり、「業務の遂行や特定の目的の達成のためにデザインされた、一連の組織リソース」と定義されています。
私は、この「プラクティスは一連の組織リソースである」という定義に違和感があり、「プラクティスは、特定の目的や課題に対応するために必要な組織のケイパビリティ」と解釈することにしました。

「プラクティス」は、正確には「ITILマネジメントプラクティス」とITIL4では定義されており、3つのカテゴリがあります。括弧内はプラクティスの数で合計34のプラクティスがあります。

 

  1) ビジネスマネジメントプラクティス(14)(※1)
  2) サービスマネジメントプラクティス(17)
  3) テクニカルマネジメントプラクティス(3)

 

※1:ITIL4では、ビジネスマネジメントプラクティスではなく、ジェネラルマネジメントプラクティスと定義していますが、内容はサービスマネジメントに必要となるビジネスマネジメントのプラクティスなので、私は「ビジネスマネジメントプラクティス」と解釈しました。

 

以下はカテゴリごとのプラクティス一覧です(表1)。

 

 

表1. プラクティス一覧
<出典:ITIL4>

 

前述しましたが、これらのプラクティスの1つ1つを見ても、「一連の組織リソース」というより「特定の目的や課題に対応するために必要な組織のケイパビリティ」と解釈する方がしっくりします。
また、ITIL4では、各プラクティスに関して、SVCの6つ活動の、どの活動に寄与するかを記述しています。

 

 

バリューストリーム

バリューストリームは、前述の「サービスマネジメントの4つの側面」で説明した通り、4つの側面の1つであり、各組織でSVCをデザインする際に、各組織の状況に合わせた実践的な活動としてデザイン(ドキュメント化)する必要があるものです。
したがって、バリューストリームは、サービスマネジメントの側面ではなく、SVSのコンポーネントの1つに追加した方が良いと私は思います。

 

図5は、SVCとプラクティスの関係、および「インシデント対応」という課題に対するバリューストリームをイメージ化したものです。
なお、この例で示したインシデント対応のバリューストリームは、イメージを伝えるものであり、実効性のあるものではありません。

 

 

図5. バリューストリームのイメージ

 

バリューストリームは、SVC上の特定の目的や課題に対して、プラクティスを一連の流れにデザインし、それぞれのプラクティスで誰がどのような活動をするかをまとめたものです。

 

このように、プラクティスはそれぞれ単独のケイパビリティとして機能するのではなく、組織の課題に対するバリューストリームというケイパビリティ・クラスター(ケイパビリティの集合体)として機能するようにデザインすることが、ITIL4の重要な概念です。

 

「バリューチェーン」と「バリューストリーム」の概念は、IT4IT™から引用されたと考えられます。
IT4IT™ではバリューチェーン上で「プラン」「ビルド」「デリバー」「ラン」の4つの大きなストリームが定義され、それぞれのストリームの中での活動と機能、データを整理した参照アーキテクチャが提示されているので、バリューストリームをどうデザインするかがイメージできます。

しかし、ITIL4 Foundationでは、参照アーキテクチャが提示されていないため、具体的なデザインをイメージすることができません。
ITIL4 Foundationでは、幾つかのバリューストリームのサンプルが紹介されていますが、詳細なバリューストリームのマッピングについては後続のITIL4書籍で提示されるそうですので、IT4IT™の参照アーキテクチャと同様のものも提示されることを期待しています。

 

 

次回は「ITIL4の概説 パート2」として、ITIL4の知識体系の続きとITILv3/2011とITIL4の比較、ITIL4の活用方法についてご紹介したいと思います。

ITSM/ITIL
DX時代のアジャイルITSM変革アプローチ
デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流の中、デジタル化の真の目的である「顧客への新たな価値創造」を効果的かつ効率的に実現するためには、ITサービスマネジメントをDXに合わせてリ・デザイン(再設計)する必要があります。 そこで、このコラムでは、今年の2月にリリースされた最新版のITIL® 4の概要と、ITIL® 4を活用してITサービスマネジメントをリ・デザインするための、デザイン思考を用いたアジャイルITSM変革アプローチをご紹介します。 これまで、ITIL® v3/2011 editionのプロセスを適用してきた組織において、進化したITIL® 4をどのように活用できるのか、具体的な実践方法を含めてお伝えしたいと思います。
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筆者紹介

株式会社JOIN 
代表取締役社長
小渕 淳二

国内大手電機メーカ、外資系ICTサービスプロバイダ、国内コンサルティングファームを経て、2018年にITコンサルティング会社を創立。

ITIL®やTIPA®、IT4IT™、COBIT®、VeriSM™、SIAM®、IT-CMF™、TOGAF®などのフレームワークと、ドラッカーやポーターのマネジメント理論、「7つの習慣」の普遍的な原則などのベストプラクティスを組み合わせた、革新的で実践的なマネジメントアプローチとデザイン思考による組織変革やイノベーション創生を得意とする。

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