品川海外システム運用研究会

第9回 電源管理、PCの次はサーバー

概要

海外のビジネス市場でどのようなITシステムがトレンドとなっては廃れていくのか

オフィスでの業務を終え、帰宅する際にはPCの電源を切る。これは、二酸化炭素排出量削減の観点からも、誰もが認識していることだ。では、データセンターにしまい込まれた、エネルギー消費量の高いサーバー群はどうだろうか。「使わないときには電源を切る」あなたは出来るだろうか。

IT業界では、「サーバーの電源は切らない。必要なときのみ電源を切り、また直ぐに電源を入れなおす。」というのが一般的な通念となっている。しかし、英国のあるソフトウェア会社が、使用されていないサーバーの電源を自動的に切って、膨大なエネルギー消費量や二酸化炭素排出量の削減を実現しようとしている。

目次
サーバー電源管理システムの登場
消費電力の現実
仮想化技術とシステム管理者の思惑

 

サーバー電源管理システムの登場

企業向けのエネルギー管理ソフトを開発する1E社は、その名も「NightWatchman」というPC電源管理システムを開発した。これは、企業において、一晩中ユーザーに使用されないまま電源を消費し続けるPCの電源を、自動的に切るというものである。1E社は、このようなアプローチをデータセンターにも適用しようと試みており、2010年7月、NightWatchmanのサーバー版を発表、未使用のサーバーの電源オフの実現に一歩近づこうとしている。

「我々の提供するシステムは、電源を切ることが出来て確実に電源を入れるということにおける数少ない選択肢であるが、実現可能だと信じている。」1E社のマネージャー、Andy Hawkinsは語る。「現在、これが出来る技術というのは間違いなく存在するが、今まで誰も手をつけなかっただけのことだ。」

1E社が主張するには、いわゆる仮想化ソフトウェアの参入は、企業にオンラインアプリケーションを仮想環境上移動可能にする余地があるということであり、それはすなわち自動的にアプリケーションをサーバーからサーバーへ移動させ、未使用のサーバーを開放して電源を消す、ということも実現可能であることを意味している。

1E社が提供する、その最新バージョンのソフトウェアは、このような方向へ向かうための足がかりとなり、企業に対して、各仮想マシンがどのぐらいのエネルギーを消費するのかを監視し、どのサーバーが減らすことの出来る大量のエネルギーを消費しているのかを特定することができるようになるのである。

Hawkinsは、「最近のサーバーはパワーマネジメントシステムを装備しているが、IT管理者はそれを認識していなかったり、使おうとしていなかったりする。1Eのソフトウェアは、サーバーが効率よく稼動しているかどうかを分析し、パワーマネジメントを有効化し、不必要に動くCPUやファン速度を抑制することができる。」と語った。

1E社の試算では、単純にパワーマネジメントシステムを使うことで、平均12パーセントのサーバーエネルギーを削減することができ、これらがデータセンターの冷却に必要なエネルギーとのバランスを実現することになる。

Hawkinsは、使用中のサーバーを安全に電源抑止できることや、数年中には電源停止を実現できることを、IT管理者に確信させるのは難しいことであると認めている。しかし彼は、どのサーバーが有効活用されているかを把握することで、企業が大幅に電源やデータセンターの二酸化炭素排出量の削減を実現することが出来ると確信している。

 

消費電力の現実

1E社と非営利団体Alliance to Save Energy(ASE)のレポート「Server Energy and Efficiency Report 2009」 によると、ハードウェア、保守、管理、電力や冷却代として、年間247億ドルが使用されていないサーバーのために消費されている。この数字はアポロ宇宙計画の13年分のコストに相当する。しかも、15%以上のサーバーが有効に稼動していないというのだ。

米国のデータセンターは2006年、610億kWhの電力を使用しており、米国全体の電力の1.5%を占めている。これは2000年の2倍の数値だ。最近の傾向では、EPAによるとデータセンターで消費される電力は年に12%ずつ増加している。

 

仮想化技術とシステム管理者の思惑

消費電力や二酸化炭素排出量の削減の観点からも、サーバーの仮想化技術が進み、徐々にデータセンターにも浸透しつつある。仮想化はデータセンターの電源消費量の削減に大いに役立つといわれたが、サーバーの運用コストは電源コストの何倍にもなる。仮想サーバーの提供の手軽さというのは、制御できないサーバーの増殖や未使用サーバーを増やすことにも繋がりかねないのである。これは、仮想サーバーの不規則な拡がりとして実質の懸念となってきている。同レポートでは、84%のシステム管理者が実際に仮想サーバーの不規則な拡がりを既に経験するか懸念事項として挙げており、また、65%のシステム管理者が未使用サーバーを仮想化したにもかかわらず、仮想化自体が非効率であったとしている。

多くの企業のシステム部門は、サーバーを効率よく運用するための改善よりも、サーバーのパフォーマンスを更に上げ、レベルの高いサービスを提供することに重点を置いているようだ。サーバーが有効活用されているかどうかを把握することは、仮想化と電源管理の双方からコスト削減、二酸化炭素排出量の削減を実現することが出来るであろう。

「電源は落とさない」が常識のシステム管理者にとっても、今後はサーバーにおける電源管理が避けて通れない重要課題となるであろう。

 

参考:

BusinessGreen.com

http://www.businessgreen.com/business-green/news/2266110/pc-turn-server-turn

1E

http://www.1E.com

Server
Energy and Efficiency Report 2009

http://www.1e.com/EnergyCampaign/downloads/Server_Energy_and_Efficiency_Report_2009.pdf

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わが研究会の頼れるリーダ。
NYでの営業経験を持つ技術者。もうすぐ2歳になる息子にぞっこん。
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