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品川海外システム運用研究会 第5回 クラウドの進化とIT人材の将来
2011年1月5日 19:55

2011年が始まりました。 A Happy New Year!!

皆様は今年をどんな年にしたいでしょうか。それぞれが思う希望や目標がかなえられるよう、祈っています。このコーナーでは、今年も、海外IT市場の今を、私たちなりに伝えていけたらと思っております。2011年もよろしくお願いいたします。

さて、今年の初めは、クラウドと人材についてです。

 

「クラウドコンピューティング」の到来は個人、企業の情報システムのあり方そのものを今大きく変えようとしています。企業におけるクラウドコンピューティングは、従来のITシステム運用に関する問題点、たとえば「予測しにくいシステム投資の対応」「膨大な社内のIT資産の管理」「ビジネスのスピードに追いつかないシステム更新」などに対して、より新しいシステムをより明確な予算で、より計画的に運用できることで解決できると期待されています。


しかしその一方で、この流れを必ずしも喜ばしいと思わない人たちもいます。他ならぬ従来の社内システムの開発・運用に関わっていたITシステム部門の人たちです。彼らにとっては、自分たちが従事する社内システムの業務が従来のものから大きく変わってしまうことで、業務量の縮小、新しいスキルの適用を余儀なくされ、その流れに乗れない場合は最悪職自体を失うことにもなりかねないからです。クラウドコンピューティングとは彼らにとって今後脅威をもたらす存在となるのであろうか?それとも新たな開拓の道を開くための道しるべとなるのでしょうか?

 

津波はいつ到来した?

InformationWeek誌では米国の828人のIT技術者、管理者、部門長へクラウドコンピューティングと技術者の関係について調査を実施した結果、役職や立場の違いから、顕著な意識の違いがでている内容があることが判明しました。


例えば「現在クラウドコンピューティングを利用しているか、その計画はあるか」という設問に対して、「現在業務にクラウドを利用している、もしくは2年以内の導入を目指している」と回答した人は、ITシステムを計画する立場である管理者においては60%であるのに対し、ITシステムを運用する現場のIT技術者においては33%にとどまっている。逆に「クラウドを評価・導入する計画は全くない」と回答した人は管理者で12%、IT技術者では39%と、大きな差が出ています。これはクラウドのサービスを提供するベンダーはITシステムに長けている技術者よりも、ビジネスを推進する業務の部門長をターゲットにセールスを推進していることが現れた結果であると考えられています。


少なくとも全てのITシステム部門の技術者は、クラウドコンピューティングは「技術」の側面ではなく、業務としての「サービス」の側面から普及し始めていることを意識し、技術者自身の役割に今後どのようなインパクトを与えるのか、長期的な視点で考えておくのが良い模様です。技術者にまだ波及していない新たな技術は、既に会社の管理者クラスでは大波と捕らえられているのかもしれません。


【クラウドコンピューティングの導入について】

設問: あなたの企業・団体では既にクラウドコンピューティングのサービスを導入していますか?または今後24ヶ月以内に導入する計画、もしくは評価をしている段階ですか?

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(A Hazy Outlook: Changing Role of IT as Services Ascend

Analytics.InformationWeek.com June 2010)

 

どちらが柔軟?どちらがお得?

ではクラウドコンピューティングの導入により、実際に「コスト削減」は実現されているのでしょうか?


同調査における、クラウドを既に導入した企業のみを対象とした「IT関係予算に影響はあったか?」という設問に対し、ITシステムを計画する立場である管理者の44%は「クラウド導入前とほとんど変わっていない」と回答し、34%は「むしろ増加した」と回答しています。「明らかに削減できた」という回答がわずか6%であることと比較すると、現状ではクラウドの導入により必ずしも「コスト削減」を実現できていないことが明確です。調査に協力したある公共セクタの部門長からは「クラウドコンピューティングのROIは『生産性の向上』『自動化されたシステム管理の環境提供』で図るものだ」というコメントがあり、コスト削減は既に期待される効果とは考えられていないのかもしれません。


とはいえ、90年代から現在にかけて急速に普及した「アウトソーシング」(もしくは「オフショアリング」)は、Webホスティング、システム開発、データセンターによるストレージ管理など、業務として分割可能なある機能に強みを持つ外部のベンダーが、それまで社内のIT技術者に依拠してきた仕事を続々と獲得してきたという経緯があります。特にクラウドコンピューティングというアウトソーシングの手段は、従来のアウトソーシングの形態よりも契約・構築・導入の柔軟性が高まっていることから、より迅速に普及することも予想されます。従来「業務に対して最も柔軟性がある」とされてきた人材というリソースを、柔軟性のある新しいITインフラとの間でどのようにコストのバランスを図るのか、企業のCTOは今後どのように最適な選択をするのか試されているようです。

 

人材はどこに行き着く?

ではITに関係する社員自身、クラウドコンピューティングが浸透することによりどのようにIT業務が変わると考えているのでしょうか?


ITシステムを計画する立場である管理者のうち68%は「将来的に企業のIT部門の従業員数は減る」ことになると見ており、「サポート業務などでむしろ増える」と回答した13%よりも多勢を締めています。しかし「企業からIT部門が全くなくなる」と考えている管理者は全体のわずか3%であり、多くは従業員数が少なくなりながらも引き続き重要な役割を持つ、もしくは新しいIT関連の社内業務が出てくると考えています。


また今後重要性が増すと見られる社内のIT業務を役割別に見ると、管理者においてはデータのセキュリティに関係する業務が58%、サービス提供ベンダーの管理が51%と高い期待が寄せられている傍ら、システムインフラの管理に関する業務は18%、データベース入力業務は27%という回答から、単純な作業はアウトソーサーへの移管が進むと考える傾向がうかがえます。

 

IT業界では過去に何度となく「この技術は変革をもたらす」と叫ばれたキーワードがあります。古くはメインフレームからクライアントサーバ型のシステムへの転換期、最近では商取引のインターネット化への移行期、Web2.0の勃興期、仮想化技術の普及など、大きな転換が起こるといわれてきたが、多くの技術者は将来を予期しながらビジネスの変革に適応してきました。


IT関係の技術者にとっては「クラウドコンピューティング」の到来も、もしかしたらそれほど「破壊的」なものとは思っていないのかもしれないですが、果たして今回も同じようにIT技術者は新たな波に適応できるのでしょうか?今度はあなたが試されている番です。

 

参考:

Research: Cloud & IT
Staffing

http://analytics.informationweek.com/abstract/5/3435/Cloud-Computing/research-cloud-it-staffing.html

Changing Role Of IT As Services
Ascend

http://www.informationweek.com/news/global-cio/trends/showArticle.jhtml?articleID=225702815&queryText=neil%20roiter

品川海外システム運用研究会
品川港南口桟橋ちかく。 頑張れば東京湾を見渡せる、とある会社の会議室で、東京湾の向こうに広がる太平洋と世界に思いを馳せ、海外のビジネス市場でどのようなITシステムがトレンドとなっては廃れていくのか、またそれらを支える技術はどんなもので、私たちの生活やビジネス環境はどう変わっていくのかを、海外システムに興味を持つ営業やマーケティング、技術者が集まり、夜な夜な熱い論議を交わします。 たまにはビールを片手に。 その論議を経たレポートを、海外システム通信としてシステム管理者の会ポータルサイトで公開! 海外に出張しているシステム管理者の方が、「現地ではこうだよ。」なんてコメントしてくれたらいいなと期待しつつ、皆様にお届けいたします。
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スペイン留学時に学んだパエリア作りをメンバに教えてくれるなど、社内にスペインの風を運ぶ。
・U田
大学・院と情報システムを専攻した生粋の技術者。
在学時と就職後に海外プレゼン経験あり。
研究会での的確なアドバイスはさすがとメンバをうならせる。
・W田
アメリカ留学での語学を活かし、海外営業担当に。
興味深い記事や面白いニュースを研究会に持ってきてくれる。
たしなむお酒も国際派?
・N村
サポートから転部した新米マーケティング担当。
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