新・玄マンダラ

第6回 エコポイント後日談 その2

概要

これまで一年半にわたり、「玄マンダラ」をお読みいただき感謝申し上げます。 平成21年7月から、装いを改め、「新・玄マンダラ」として、新しい玄マンダラをお届けすることになりました。 ITの世界に捕らわれず、日々に起きている事件や、問題や、話題の中から、小生なりの「気づき」を、随筆風のコラムにしてお届けします。 執筆の視点は、従来の玄マンダラの発想を継承し、現在及び将来、経営者として、リーダーとして、心がけて欲しい「発見」を綴ってみたいと思います。 引き続き、お付き合いを御願いします。 職場で、あるいは、ご家庭での話題の一つとしてお読みください。

エコポイントのシステムについては、これまでに2度新・玄マンダラで書いた。 今回は、見事な最後のところを報告してみることにする。 世界最先端のIT立国を目指し、10年間もe-Japan戦略を展開してきた政府の仕事がいかに素晴らしいものであるか、最後な見事な着地(?)である。 その体験記録である。
 
  9月3日、手もとに、申請した商品が届いた。 手にして、さすがに政府の仕事と感心した。 申請したのは、7月1日であるので、65日が経過したことになる。 政府の約束は45日であったので、1.5倍であるが、まあ、そんなものであろう、許容範囲である。 さて、従来住民税は、納税通知がきて自分で確認して、銀行やコンビニで振り込んできた。 10月から住民税が年金から天引きとなる、税金を取るときは迅速で安全にやるのも政府の立派な仕事である。  しかし、供給する方では、杜撰な年金に見るが如く、実に見事に無駄を作りだしている。 それでも、まだ、課題が解決していないのである。 今回の新・玄マンダラは、前回報告した後日談のところを書き足してある。 読者の中にも、同じような、体験者が居るのではなかろうか。 このレポートをよむと、費用対効果を考えて、申請を止めたくなるのではなかろうかと思うが、一度、体験されてはどうであろうか。 今回は、政府の仕事の品質を確認するリトマス試験紙とするために、敢えて、体験したものである。 政府の仕事では、IT化をしたとはいえ、このようなことが恐らく、いたるところで起きているのであろう。 この無駄を省けば、政府の仕事の生産性は、簡単に100%程度、つまり2倍になりそうな予感がする。 対象となる被害者が無駄にするコストを考えれば、その結果、国民の生産性を10倍上げることになると思う。
 
後日談(その1) ― 欠陥カタログの発行
 
 8月24日の報道によれば、政府が発行したエコポイント交換商品のカタログの一部に製品番号の記述が欠落しており、該当商品の交換が出来ないことが判明した。 番号が判らない人は、番号不明のままに、申請書を提出した人もいるとのことで、処理出来ずにいるという。 政府は、あらためて、カタログを再発行するという。 報道ではお詫びは「経産省」と「環境省」の役人が頭をさげていた。 ここにも、エコ政策の主体がどの組織にあるのか曖昧な様子がかいま見える。 組織活動でもっともやってはいけない鉄則は最終責任者が複数となり責任の所在が曖昧になることである。 責任者が複数となると内部で責任のなすり会いが必ず発生して組織の生産性を落とすものである。 そうでなくとも縦割り組織のお役所のやることである。 この結果、申請した人への対応も「手戻り」対応をすることになるが、これは全くの無駄なコストとなる。 お粗末を絵に描いて、額縁に入れたような、仕事である。 「エコ」のもっとも大事なことは、すべての仕事において生産性を上げることが基本である。 仕事の生産性とは、仕事の品質を上げることが基本である。 手戻りを無くすことである。 一体、何百万部の分厚いカタログを印刷したのかは知らないが、再発行という無駄を生み出すことになる。 そして、仕事とは不都合のリカバリーのときにエラーが入り込む確率が高まるものであり、ますます手戻りを起こすものである。 まったく、「エコ」という基本がまるで判っていないのが「エコ」を進める政府ではなかろうか。 「無駄」ばかりを増産しているのが政府の仕事である。
 
後日談(その2) ― 顧客不在の見事なシステム
 
 9月3日に、JCBから、手紙サイズ大の、封筒入りのパッケージが4個も宅配便で届いた。 受け取りも票も4枚に印鑑を押すことになる。 なぜ、4つもあるのかとまずは不思議に思った。 宅配業者も、どうして一緒に一つにしないのですかね、無駄ですねと言う。 小生は2万円の商品券を申請したので、てっきり、5000円の商品券が4枚で、2万円分のJCB商品券一つのパッケージで届くであろうと思っていたからである。 開けてみると1000円の商品券が4枚で合計4000円と500円のQUOカードが1枚同封された、同じものが、4パッケージあった。合計で16000円分の商品券と2000円分のQUOカードで、合計、18000円となる。 なぜ、こんな無駄をするのか、その理由が理解できないので、JCBのエコポイントセンターに電話をした。 説明では、5000円ずつ、4つに分けて、送付するように政府の事務局から指示が出ているという。 そして、一件につき、送料をそれぞれ、500円徴収することになっているので、4000円分の商品券と半端は500円のQUOカードにして4パッケージにして宅配料500円を差し引いて、発送したという説明であった。 常識として、5000円の商品券4枚、ワンパッケージで来るものと思っていたが、 なぜそうなったのかと質問すると、自分もそう思うが政府の事務局からの指示通りに処理している、それ以外のことは、JCBコールセンターの女性では判らないという、さもあらん、埒があかないので、JCB側の担当者とエコポイント事務局の担当と話をして、調べてから、結果をコールバックするように要請した。
 
 15分後にJCBの担当マネージャ(男性)から電話があった。 再度、状況の再確認を要請された、どうやら、JCBは政府の指示通りに発送しただけであり、なぜ、4つに分割されたのかは判らないという。 また、カタログで、表示している金額は郵送料を含んだポイント還元金額であるという説明であった。 そのことが何処に記載されているのかと質問すると、カタログであるという。 しかし、7月1日の申請時点ではカタログは整備出来ていなかったのである。  ネットワーク上のソフトカタログで申請して欲しいと指示であるが、その資料には説明は無いと応答すると、申し訳ないそのあと改善したという回答となった。 要は当初の説明は曖昧であったということである。 もし、JCBの商品券、10000円分を、使いやすいように1000円毎に分割して交換要請すると(1000X10という記入は出来ない、実際には設計上は4件までしか記入できないのであるが、例証であるが)、10枚の封筒、10パッケージになって手もとに届くことになるが、その1つずつには、500円のQUOカードだけが封入され、それぞれに500円の送料が引かれることになる。 つまり、顧客の手もとには、期待した商品券は届かず、使い勝手の悪い500円のQUOカードが、10枚で5000円分届くことになる。 これは、手元に商品が届いて初めて判ることになる。 つまり、期待した商品券は半分に目減りし、かつ期待した商品券はゼロとなるということである。 しかし、それは受け取ってみて初めて判るのである。 あきれたエコである。 最後の最後まで、ユーザー不在のシステムである。 だれかが指摘しなければJCB商品券を注文した、何100万人(今回商品券がもっとも人気があるという)という多くの人が迷惑することになる。 そこで、JCBの責任者に、今回、エコポイントでJCB商品券を要請した人は、すべて、小生と同様の問題を起こすので、大至急政府の事務局と話をして、なぜ、一つの申請書で、2万円の商品券の要請が、4分割されて処理されたのか、だれがどのように決めているのか、リカバリーはどうするのかなど確認し、一括で送付できるように、必要な修正をして欲しいと要請した。 
 
 この問題がなぜ発生したのであろうかとあらためて推測した。 すべてはやってみた後から判ったことがベースである。
 
1. 申請書の設計の問題
 
 今回の商品交換申請書は、購入した商品(機器毎)に作成することになっている。 従って、同一の人が、複数の商品を購入すると、申請書は複数枚作成することになる。 申請するときには、それらを一纏めにして複数の申請書をワンパッケージでエコポイント事務局へ送付することになる、分割しろという指示がないので、領収書の記入方法とか、コピーの問題とかあるので、普通の人は、複数枚の申請書を一括して送ることになる。 これが普通の人の発想であり、行動である。 しかし、購入者は同一である。 ところがこのシステムは、一人が一件ずつ個別に申請書を送ることを前提としているのである。 また、このシステムの基本設計は、購入した商品が基本となっているので、エコポイント交換の最終処理まで、購入商品がIDとして流れ、交換商品業者にデータが渡る最後のところは、交換商品のIDに分割されて、商品提供者に提供されるということになる。 つまり商品提供業者側では、購入者名で名寄せが出来ないシステムなのである。 だから、機械的に交換商品毎に配送されるということになる。 一度で住む配送のコストが、これで、小生のケースだと、4倍の配送コストになるという馬鹿なことが発生する。 このコストの無駄は日本中で起きるので、膨大であろう。 エコどころではない。喜ぶのは、宅配業者である。 宅配業者は4パッケージを一度で配達して、4倍の宅配料を手にすることになる。
 
2. 説明の不備
 
 商品の発送の手数料の扱いを明記していない。 これは申請書作成のときに、自動的に計算して送料を事前に申請者が確認できるようにするべきである。 申請者は、対象となる商品によっては高い郵送料がかかるがそれがエコポイント効果を減少させることになる。 これは、申請書をインプットするときに、システムが自動的に計算して申請者に知らせるような配慮が必要である。 送付方法に関しての記入が記載されていないので、システムは、全てを一行ずつ処理(送付)するものと理解して設計されている。 ここが、今回の不都合の原因である。
 
3. システムの設計者とユーザーの思い違い
 
  今回、小生は、2台のTVを求めてので、それぞれのTVの型番毎に2通の申請書を作成することになる。 申請書は複数の購入商品を一括申請することは出来ない。 必ず、一機種一件の申請書が必要となる。 システムの設計は、一人、一機種、一件の申請、そして、交換商品は複数項目の記入を可能にして作成されている。 しかし、実際にはこの期間、一人の人が複数の商品を購入することが頻繁に起きる。あるいは、複数の買い物をまとめて申請することが起きる。このことが考慮されていない。システムは、一人、一件ずつ処理するものという基本設計である。 しかし、消費者は同封した申請書は一括で処理されるもの思っている。 ここに、システム設計者とユーザーの思い違いが起きる。  次に、交換商品券の扱いである。 ここは、複数の交換商品を申請できるようになっている。 使いやすいように5000円を選択すると、一件の申請書に、同じことを5000円ずつ2行記入することになる。 この結果、二つの申請書にそれぞれ2行ずつ、合計で4つの商品が要請されたという具合いにシステムは判断するのである。 発送のためのルールが欠落しているので、ここから、4件の発送指示が出ることになるのであろう。 システム設計は、交換商品ごとに処理することを前提に設計されている。 このデータを業者に渡す、業者は政府から来たデータ通りに処理するから、どうみても、おかしいと普通なら気づくはずが、そこは、「責任外のことはやらない」ことが今の日本の文化であるので、JCB側も、宅配業者も、どこかおかしいと判っていてもそれは政府の問題として、そのまま処理することになる。 こうして、膨大な無駄が生まれるのである。
 
4. 半端なポイントの活用が面倒、あるいは、出来ないという不都合
 
  製品と交換するととき、あるいは、商品券と交換するときでも、手元に中途半端なポイントが残ることになる。 この半端なポイントはおそらく処理されずに、埋もれることになろう。 少額のポイントなら、この手数の面倒さが先立ち、活用されずに終わる。 こうした、相当量の半端が行き方不明で埋もれることになろう。 それはすべて無駄となる。 これをみると、このシステムは、机上で作られ、実際の運用を考慮していないことで様々な不都合が起きていると思う。 拙速に机上で設計したシステムのためであろう。 もし、クレームを受け付け、これをリカバリーするとすれば、不足分の金額を、申請者全員に返金するというまた膨大な無駄なコストが発生することになる。 そのリカバリーの過程でまた不都合が発生するので、無駄が無駄を呼ぶことになりかねない。 不備のシステムをそのまま強引に運用すると無駄を増産することになることは、これまでの多くのシステムが教えている。 政府は、システムの不備を認めずに押しきってくるであろうことは想像に難くない。 また、送料が引かれると判れば、金額の安い商品を購入した場合のエコポイントの申請はそのための手間暇を考えるとき躊躇して、申請しない人が大勢いるに相違ない。 そうなると、政府がエコポイントのために確保した予算は使われずに余ることになる、 つまり、本来の経済活性化の意図は実現されないことになる。 家電製品の買い換えを煽っておいて、エコポイントを活用できにくくしているのでは、「詐欺」といってもよかろう。 実におそるべき「エコ・システム」である。 さすがに無駄製造の達人である政府の仕事であると感心する。 システムの巧拙は最初のコンセプト設計で決まるものである。 そこを違えると、とんでもないシステムとなるのである。 (9月3日)
 
(蛇足) 
 配達された、宅配のパッケージの宛先印刷をみると、上述で紹介した、メールで犯している間違いがそのまま宛先印刷されていた。 小生の名前は「伊東玄伊東玄」と2度印刷されていた。 なるほど、年金のデータベースが杜撰となるのはよくわかる。 今回のエコポイントのCRMに登録されている小生の名前は、「伊東玄伊東玄」となっている。 住所もなぜか同じものが2度印刷されている、小生の住所はCRM上では、「東京都葛飾区新小岩4-27-10東京都葛飾区新小岩4-27-10」となっているのである。 だれもチェックもしていないままにデータがどんどん増殖されていることが判る。 このデータは、JCBでも、また別のIDが作成されて蓄積されるのである。 (9月3日)
後日談(その3) ― エコポイント事務局のサービス精神
 
 JCBのマネージャとのやりとりを終えて、6時間後の夕方7時頃、今度は、エコポイントの事務局の、販売店担当(エコポイント事務局と商品提供業者の窓口担当)の女性から電話があった。 JCBから指摘があった。 JCB側では対応できないので、エコポイント事務局が本人と直接話しをして欲しいと言われたとのことである。 JCBとしては、これはJCBの問題ではない、政府の問題であるとエコポイント事務局にボールを投げたものである。 つまり、当事者同士で解決するという行動は取らないということを意味する。 あらためて状況を説明して、上述の問題を指摘した。 1時間程度、いろいろ説明して問題をやっと理解したようであり、小生の原始データを確認の上で、検討するためにしばらく時間を欲しいということで電話を終えた。 エコポイント事務局員は、正直に、自分でこのシステムを使って申請した経験はないと述べていた。 だから、現場(ユーザー)の立場がなかなか理解できないのである。  この担当は、コールセンターの人間でなく、政府が設立したエコポイント事務局の職員である。 折角であるので、どんな組織と規模で事務局が運営されているのか、局長は誰で、どこの官庁から来ているのか、今回のシステム責任官庁はどこかと聞いてみた。 都度、バックオフィスに質問をしていた。 回答は、この事務局は、特別予算で設立され、総務省、経産省、環境省の、3つの省庁が合同で設立し、予算もそれぞれから貰っているという。 そして、不思議なことに、事務局長は存在しないという。 では、だれが全体責任をもつ監督官庁かと質問すると、それは、3つであるという。 つまるところ、無責任な組織ということになる。 このシステムは、2年間の時限システムであるので、天下りの対象ではないのであろう。 平成22年で終了する。だから、好い加減な組織運営をしているのであろう。 おそらく、丸投げ的な組織なのであろう。 ついでに、このシステムは何処のIT企業が構築したのか聞いてみたが判らないという回答であった。 どの位申請書が出て、どの位クレームがあるのか質問したがそれも答えられないということであった。 「さもあらん」である。 
 
 さて、この担当者は、問題はよく理解したので、申請書の原本から再度調査して確認した上で、しかるべき処置を検討するという約束をした。 回答の期限はどの位かと質問すると、たくさんクレームが出ており、即答は難しい、来週まで時間が欲しいということであった。 方法は再発防止と、処理済みのリカバリーであると確認して電話を切った。 一度作った、システムに手を入れると混乱が起きるものであるが、これ以外にも、多くのクレームがあり、回答には時間が掛かると述べていたが、きっとその通りであろう。 この問題は、彼女の責任ではないので仕方がない。 窓口を担当することになり、可哀想である。 たくさんのクレームがあって処理が大変であろうことは想像に難くない。 不備なシステムを運用するとそのためのコストは膨大となるものである。 そして、仕事の生産性を落とすので、そのマイナス要素も大きくなるものである。 それは、IT業界で仕事をしてきた人からみると常識なのであるが。 あらためて、見事な「エコ・システム」であることを実感する。 このやりとりにほぼ1時間を要することなった。 それにしても遅くまで大変だと、同情する。 (9月3日 19:00頃)
 
後日談(その4) ― 国家のサービスとは
 
 9月11日、再びエコポイントの事務局から小生の提言である。二つ件について事務局で検討した結論の連絡があった。 キチンと約束を果たして連絡をしてくれたことには感謝する。 
 
    • 1.同一商品を同じ人に送るのになぜ分割しておくるのか、一括送付としないのか、 
        一括送付するようにシステムの改善が出来ないのか?
    • 2.同一商品を要請する場合、複数個数の指定が出来るようになぜ出来ないのか?
    • 3.小生と同様の不都合、不利益を被っている人へのリカバリーが検討出来ないか?
 事務局の回答は、この要請について、「どれも期待に応えられない」というものであった。 しかし、HPなどで記述を判りやすくして同様の問題の再発を防ぎたいということである。 つまり、システムは直さないので、表現で工夫はするが、ユーザー側で、運用でカバーしてシステムに適合するような申請をして欲しいということであった。 予想した通りの回答であった。 
 
 あとは、雑談である。 これまでどのくらいの申請があったのかと聞くと、今回は数字を用意してあり、8月末で、150万件の申請があり、60万件が処理されているということであった。 と、いうことは、2ヶ月で150万件、月間75万件という件数である。 エコポイントは、平成22年一杯継続するというので、あと、16ヶ月運用されることになる。 単純計算で、合計1350万件の申請が行われることになる。 申請と確認のコストを考えただけでぞっとする。 これらの申請のすべてにおいて、パソコンからのインプットと申請書の検証をすべて、手作業で行うコストは膨大であろう。 そして、おそらく、10-20%は記入ミスがあるだろうから、そのリカバリーで訂正作業が必要となる。 平均15%としても、200万件となり、修正作業が必要となる。 そのコストもまた大きなものとなろう。 これを一体どのくらいの要員でやっているのかと、質問したが、さすがに、「相当数の人数」であるという回答であった。  申請を諦めた人や、領収書を保存していない人もいるのであろうから、今回のプログラムの対象件数は、申請書の2倍くらいになるものと推測する。 政府はエコポイントの予算をどの程度組んでいるのか判らないが、消費率はかなり低いことになろう。 
 
 現在の申請数は、全体プログラムからみると、わずか、10%であるので、不都合を修正するならば、早期にやったほうが、生産性があがることになる。  そこで、事務局への小生の提案をした。 全体のプログラム規模と現状の申請量を認識して早期に対応をすることが生産性を上げることになる。 そこで、 
 
    • 1. これまでに上がった全てのクレームを統合整理して、緊急度の高いものから優先度を着けること。
    • 2. システムの変更と、マニュアル、カタログ、HPなどの組み合わせで消費者の立場で、最適解を求め、 
         至急改善をすること。
    • 3. これまでの体験から、マスコミなどを通じて、エコポイントの活用方法について、 
         留意点を、判りやすく、宣伝すること。
    • 4. 今回のようにJCB商品券と具体的に問題がはっきりしているものは、同様の問題を再発させないために、 
         事務局と業者が個別に相談して、最適解をつくり、早期に実施すること、そして、同様の商品に対しては 
         その方法を水平展開すること。
を、再度、コメントして、事務局との話を切り上げることにした。 そのいずれも、当たり前のことであるが、彼女が悪いわけではなく、このシステムを設計したところに責任がある。 彼女から、電話があったのは、金曜日の22:00であった、こんな遅くまで仕事に忙殺されていることに気の毒になる。  政府が設計すると、すべてが平等という発想が前提となり、かつ、今回は地方の活性化という命題があるために、カタログも地方の産物を多く取り入れているという。 そのお陰で、事務局の仕事は膨大となっている。 その多くを業者に任せることになるので、システムとしての使い勝手はバラバラになるという。 とりわけ、商品の定義は業者に丸投げであり、事務局は目が届かないという、業者は自分が都合のよいようなカタログの定義となり、消費者の使い勝手は無視されている。 冷静に考えれば、都会で消費した人が、地方の活性化など意識して商品を選択するわけがない。 このシステムで地方が活性化するなどあり得ない。 全体のマスを100%とすれば、地方の産物をエコポイントで購入する比率は、10%がよいところであろう。 こうした、ことがシステム設計の基本に考慮されていない。 90%以上が都会都市で処理され、その90%はチェーン展開の量販店や大規模店舗で処理されるであろうから、政府と量販店の間で処理が完結するシステムにしておけば、全体の作業の80%程度は、一括処理が可能となる。 ミスもなくなるので、生産性は、簡単に5―10倍は上がることになる。 あとは、Amazonなり、楽天なりの、システムをアウトソースして活用すれば、あらたなシステムは殆ど不要となる。 通販などやったことがない政府が、わずか2年程度の時限運用である通販のシステムをにわか作りで構築したことが間違いの最大の原因である。 とんだエコ・システムを構築したものである。 これが、政府のとなえる、IT新改革戦略の、なれのはてなのであろう。 ここで、また、1時間程度のやりとりとなる。 (9月11日、午後10時)
 
後日談(その5) ― 昨晩22:00の事務局からの電話の意味
 
 後日談(その4)で、9月11日の夜、10時頃に、エコポイント事務局からの電話のやりとりを記述した。 その翌日の、9月12日に、日経新聞の朝刊に、エコポイントの現状が報道された。 なるほど、これがマスコミに出る前に、事務局は連絡をしてきたのかと、だから、投げ込みを終えた夕方となったのかと、苦笑いした。 報道の要点を整理してみよう。 この報告は、環境省、総務省、経産省の3省報告となっている。
 
    • ― 7月1日―8月31日まで二月間の申請件数は、153万件、月平均77万件
    • ― 審査完了は68万件
    • ― 内訳は、デジタルTV66%、エアコン24%、冷蔵庫11%
    • ― 前年比で売上げは、120%と、2割増加、デジタルTVは前年比で130%
    • ― 発行ポイント数は、104億ポイント(104億円)
    • ― 商品交換はこの中の86億円
    • ― 商品券プリペイドカードの交換が金額の90%を占める
    • ― その中で、百貨店共通商品券、JCBギフトカードが63%と最大人気
    • ― 省エネ環境配慮型製品への交換は0.01%と、エコの目的に疑問
    • ― 地域型商品券や地域商品は1%、地域活性効果は限定的
という報告である。 まさに、小生がこれまで、事務局に指摘してきたことが的中していることが判る。 ここから推測するに、この2ヶ月で、全体の5.5%程度が処理された計算になるが、ということは、総額では2000億円規模の予算と推測される。  中でも予想とおり、商品券が圧倒的人気であるので、小生が報告した問題が、多発することを意味する。 単純計算で、いえば、全体の67%が、商品券を選択していることになり、件数換算すれば、100万件以上の人が小生と同様の問題に遭遇していることになることを意味する。 このデータが公開されたあとでは、事務局は小生との電話のやりとりが不利となるので、昨晩電話してきたということになる。 こんなところに、政府の仕事の姑息さがあらためて浮き彫りとなった。 姑息なところは実に気が回るのが役人仕事である。 「とんだエコ・システム」である。 昨年との売上げ比較では、20-30%TVの売上げが増加しているとエコポイントの効果を宣伝しているが、この全てがエコポイント効果ではあるまい。 エコポイント対象外の製品も比較して共通要素を引き算して計算するべきであろう。 都合のよいところだけを宣伝に使うのはいつもの政府のやり方である。 1300万人からの申請と商品の発送、それを支える関連組織の人件費を計算してみるとき、政府の「エコ」の実態がより鮮明になるのであるが。 (9月12日朝)
 
後日談(その5) ― エコポイント事務局のHP
 
この新聞をみて、エコポイント事務局のHPを確認してみた、なるほど、添付資料のようなプレスリリースがされていることが判った。 このリリースが確定したので、小生に電話が昨晩あったということである。 未交換率が、18%と発表されている。 つまり、2割の人が使っていないということになる。 また、このシステムは、パソコンの操作ができることが前提となっているので、書類で手続きをすべてしている人はこうした一連の動きはわからず、申請い不備があると都度、電話なり、書類をやりとりすることになるが、その手間暇も大変となろう。 やはり、基本設計の間違いは被害が大きいものである。 コンセプトの失敗である。 もし、政府にCIOなる人物が居るならば、国民に膨大なコストロスをさせていることを数量的に計算してお詫びをするべきではなかろうか。 政権が交代した、さて、IT担当大臣はだれであろうか? 経産省、総務省、環境省、そして、i-Japan戦略担当大臣(e-Japan戦略は名前を、今年からi-Japan戦略と変えている)との関係はどうなるのであろうか?
 
以上
 
参考資料 ― エコポイント事務局によるプレス発表資料より

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筆者紹介

伊東 玄(いとう けん)

RITAコンサルティング・代表
1943年、福島県会津若松市生まれ。 1968年、日本ユニバック株式会社入社(現在の日本ユニシス株式会社) 技術部門、開発部門、商品企画部門、マーケティング部門、事業企画部門などを経験し2005年3月定年退社。同年、RITA(利他)コンサルティングを設立、IT関連のコンサルティングや経営層向けの情報発信をしている。 最近では、情報産業振興議員連盟における「日本情報産業国際競争力強化小委員会」の事務局を担当。

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