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超高齢社会をITで克服する知恵 第4回 IT活用の「地域力」で連帯の強化
2012年1月11日 17:27

昨年3月11日の東日本大震災は日本のみならず、世界全体に大きな衝撃を与えた。それは、大量生産・大量消費がもたらすグローバル化経済が、サプライチエーンの途絶によって、一瞬のうちに機能麻痺に陥る危険性と隣り合わせであるからだ。そこで浮かび上がったのは、「グローバル」の対極にある「ローカル」の持つ役割の再認識である。日本人の頭からとうの昔に消えてしまった「ローカル」概念が、日本経済復活への切り札として蘇ってきた。超高齢社会では、「ローカル」再興こそもっとも必要なことである。

IT活用の「地域力」で連帯の強化

超高齢社会では「地域力」の結束、活用が不可欠である。人間誰でも加齢化とともに、必ず身体のあちこちが「不具合」を起こして、活動範囲が鈍るものである。高齢者にとっては「グローバル」意識だけでなく、「ローカル」意識をも強めざるを得ないのだ。地域こそ、高齢者がもっとも頼れる場所であるから、この生活圏をどのように活用、強化していくかが、問われているのである。今度の東日本大震災は未曾有の大災害である。だが、私たちがここからくみ取るべき教訓は、東日本の「地域再生」計画を幅広く解釈して、日本全体が直面する超高齢社会の問題解決への道筋として描くべきである。これが、日本モデルとして輸出されるのである。

 

「地域」は、職業、年齢、性別など多彩な人々が生活する場所である。これまでの工業化社会においては、生まれた場所の地域を捨てて、「大都会」に職業を求めざるを得なかった。その工業化社会を象徴する大量生産・大量消費が、環境問題を背景にして限界を迎えている。代わって日本のような超高齢社会のもとでは、「地域」が生活する場所であると同時に、雇用の場所となって見直されてきた。今や主役が変わろうとしているのだ。私は、「地域力」という概念を生活=雇用の視点から論じなければならないと見る。生活する場所はまた働く場所であることが、どれだけ人々の心を休ませることになるのか。人口動態変化がもたらす社会構造変化によって、「地域力」再生という形で問われているのである。以下には、なぜ、「地域力」が求められてきたか。その経緯を見ておきたい。

 

第一は、日本の高度経済成長時代から一貫して、「地域」は労働力の供給基地とされてきた。第一次産業では働き手が減って「工業生産」が増加し、日本経済全体のパイを大きくする高成長を支えてきた。このパターンがもはや継続不能になった。円高による企業の海外進出によって雇用の場が狭められ、日本は再び振り出しの「地域」に戻らざるを得なくなった。私は、こうした認識をはっきりと持たない限り「地域力」は生まれず、日本経済の再生も不可能だと見ている。

 

第二は、これまでの日本は中途半端であった。「円高不況」に怯えて、ひたすら円安を政府に求めるというものだった。これが間違いの元であり、円高を利用して企業は海外へ打って出る。ただし、研究開発や主要部品などの中枢部門は日本に残す。こうすれば、海外へ加工など生産部門を移しても、主要部品などを国内生産部門でまかない、雇用もある程度維持できたのである。今ようやく、この「円安待望論」の間違いに気づき始めた。これは同時に、国内経済の再興切り札として、「地域力」再発見に結びついてきたといえる。

 

こうして「地域力」の原点はまず、第一次産業の活性化にある。これは、単に農業・林業・漁業の生産性を上げて、雇用を増やそうというだけの発想ではない。農林漁業を「資源」として総括的に再評価する必要性を指摘したいのである。これまでの日本では、第一次産業を食料生産と木材生産という意味でしか捉えなかった。それを、トータルな「資源」として見直せば、新たな付加価値が付け加えられるのだ。林業ではこれまで、「間伐」や「木屑」に多額な費用をかけ、ごみとして処分されてきた。この負の「副産物」が現在、バイオマス発電として再利用され利益を生むまでになっている。さらに「ペレット」としても販売され、家庭暖房に生かされており、立派な「資源」に生まれ変わっている。従来、荒れるに任されてきた林も手入れされて、林業そのものの蘇生に役立つという「トリプル・メリット」を生むにいたったのである。当然、ここでは新規雇用が生まれているほかに、原油消費量の削減効果をもたらすのである。

 

原油相場は、現在1バレル=100ドル近傍という高値を呼んでいる。開発途上国の経済発展によって今後、原油相場は傾向的に上昇過程を辿るものと予測されている。こういった状況下で、地域の電力において「自給自足」が可能になれば、それだけ出費が減って経済的に楽になるはず。今の日本は年金先細りといった暗い話ばかりが横行している。だが、日本の全国土に占める森林被覆率は60%台後半になっている。世界でも有数の「森林王国」である。こうした森林資源を持ちながら、その活用に気づかずに暗い話ばかりをしてきたのだ。その「愚かさ」にようやく終止符が打たれようとしている。日本の森林をエネルギー源に育てる「知恵」が求められているのだ。

 

地域を論じる場合、医療問題も重要なテーマになる。特に、超高齢社会の日本では、地域医療の再生が不可欠になっている。70歳代の高齢者医療費はうなぎ登りであり、財政破綻の理由の一つにされている。ここで注目すべき「提言」を紹介したい。東京都八王子市の「医療法人社団KNI」理事長の北原茂美氏が精力的に取り組んでいる運動である。私は昨年12月、東京大学医学部学生主催の講演会で北原氏の話を聞く機会があった。それ以前に、北原氏の著書『「病院」がトヨタを超える日』を読んでいたので、一層、理解が深まった。以下は、北原氏の主張である。

 

前記の著書の中では「トヨタ」について、全く触れていない。多分、出版社がつけたタイトルであろう。だが、一読して気づいたことは、北原式の医療改革をすれば、現在、赤字垂れ流しの病院経営が、たちどころに経営改善して、トヨタを超える「高収益」に転換し、結果的に日本の医療産業が強い競争力を持つだろう、という結論である。これが、日本の医療費削減効果につながるのだ。前回の連載では、「トヨタ方式」について、概略次のような説明を付して置いたので、再録しておく。

 

トヨタ生産方式では、ムダについて「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義している。このムダを無くすことが重要な取り組みとされている。ムダには、代表的なものとして以下の7つがあり、それを「7つのムダ」と表現している。すなわち、1,作り過ぎのムダ。2.手待ちのムダ。3.運搬のムダ。4.加工のムダ。5.在庫のムダ。6.動作のムダ。7.不良をつくるムダ。

 

これら「7つのムダ」を現行の「医療」ビジネスに適用するとどうなるのか。以下は、北原氏の見解に私の見方も加味した。繰り返すが、北原氏は「トヨタ方式」には全く触れていないが、トヨタ方式に近い考え方をもっておられる。だからこそ、病院経営が黒字化する理由でもある。ところで、1「作り過ぎのムダ」では、過剰診療がこれに当たる。患者の診療データは各病院に止まっている。患者が病院を変えて受診するたびに、最初から採血・レントゲンなどの基本データがつくられてムダになっている。これを「ICカード」に収めておけば、患者が病院を変えてもそのまま通用する。2「手待ちのムダ」は、患者が受診まで膨大な待ち時間を余儀なくされており、これがムダである。そこで、「ICカード」の採用でムダな採血・レントゲンなどの診療行為が省かれて、スムーズに進むのである。3「運搬のムダ」、4「加工のムダ」、5「在庫のムダ」、6「動作のムダ」も、1の「ICカード」を実現すれば解消する問題である。

 

問題は、7「不良をつくるムダ」である。医師の診断・治療結果が、公表されていないので、患者側には「良医」かそうでないかが判断できない点である。実は、厚労省側では医療結果が分っているが、あえて発表せずにいる。「国民皆保険」が守っているのは国民でなく、医師であると言うのが北原氏の結論である。

 

「ICカード」によって、すべての医療行為と治療結果が把握されるようになれば、誰も「藪医者」にはかからないようになる。これは医療行為の「競争」を意味する。その結果、医師間に優劣の差がはっきりして医師の淘汰が進み、現在の「医師不足」は逆に「医師過剰」になる。「藪医者」でも年収は最低3000万円以上とされるが、その収入を保障しているのが現在の「国民皆保険」制度である。もともと、「国民皆保険」は貧しい時代には優れた制度であったが、今日の日本のように高所得国には不向きな制度であって、数々の「ムダ」を生みだしている。医療行為にも、競争条件導入が欠かせない理由がこれである。

 

北原氏はまた、「地域医療」において地域住民の協力を求めている。病院では純粋な「医療行為」のほかに、「周辺関連行為」が膨大なものである。そこで、この両者を分離して、「周辺関連行為」では地域のボランティアの協力を求めて、医療費の切下げを実現しようとしている。病院ボランティアを行なった人には点数制で評価し、将来、家族や本人が入院した場合、その点数を生かして経費の割引を行なう、と言うものだ。こうして、地域全体によって地域医療を支えるシステムが稼働すれば、自ずと普段から健康に留意する。期せずして、「医食同源」(病気を治すのも食事をするのも、その本質はおなじこと)が実現するのだ。

 

医療システムに、トヨタ方式が利用できるのは驚きでもある。前回の連載では農業にトヨタ方式の採用例を紹介したが、今回は医療においても可能であることをぜひ理解していただきたい。ITは低コストであり利用方法は無限といっても良い。ただそれを、多くの人が気づかないだけであって、利用されればその効果は極めて大きいのである。

 

次回は、「世界の『超高齢社会』モデルを発信する」を予定。

 

運用研究レポート
超高齢社会をITで克服する知恵
今回の連載では、日本がすでに突入している「超高齢社会」を、ITを用いてどのように克服するかを追う。人間誰でも高齢者入りする65歳を過ぎると、しだいに健康面での不安を抱えてくる。特に、70歳を過ぎてくると足腰に「故障」がでるもの。ここで初めて、「ああ自分も歳を取ったな!」という実感がわくのである。この連載では、いかにITを活用しながら、「超高齢社会」を克服するか。その知恵を探すことにする。
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筆者紹介

勝又壽良(かつまた ひさよし)

1961年 横浜市立大学商学部卒。同年、東洋経済新報社編集局入社。『週刊東洋経済』編集長、取締役編集局長をへて、1991年 東洋経済新報社主幹にて同社を退社。同年、東海大学教養学部教授、教養学部長をへて現在にいたる。当サイトには、「ITと経営(環境変化)」を6回、「ITの経営学」を6回、「CIOへの招待席」を8回、「成功するITマネジメント」を6回、「ITで儲ける企業、ITで儲からない企業」を8回にわたり掲載。

著書(単独執筆のみ)
『日本経済バブルの逆襲』(1992)、『「含み益立国」日本の終焉』(1993)、『日本企業の破壊的創造』(1994)、『戦後50年の日本経済』(1995)、『大企業体制の興亡』(1996)、『メインバンク制の歴史的生成過程と戦後日本の企業成長』(2003)

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回答数:22019年11月12日

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