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超高齢社会をITで克服する知恵 第3回 地域社会のIT活用にはリーダーが不可欠
2011年12月7日 17:27

意外と知られていないが、日本はIT先進25ヶ国中、「総合進展度」では第2位(総務省2010年調べ)である。ITのインフラが整備されているからこそ、第2位になれたともいえよう。ITのハードは整っているのだから、後はソフト面での活用が伴えば超高齢社会を乗り切れる明るい展望が開けてくる。超高齢社会の問題解決に欠かせない視点は、これまでの製造業中心の考え方を、根本的に改めることである。これは、「脱工業化社会論」と言った一昔前の議論を蒸し返そうという意図ではない。日本の冠たる製造業のノウハウを、ITを使って内需産業(一次産業や三次産業)に適用する発想の転換である。これがスムースにいけば、現在、TPP(環太平洋経済連携協定)参加の是非をめぐる、国論を二分するような議論も同時に「克服」できる。私にはそう思えるのである。

地域社会のIT活用にはリーダーが不可欠

急速な円高で日本の企業は中小企業まで、地方自治体の後押しもあって海外へ進出する動きが活発化している。これによって、「産業空洞化」論が一段と賑やかになっている。果たして、産業空洞化が起こるか。これまで「内需産業」を日陰者扱いしてきた影響であって、内需産業振興策をしっかり行なえば、「産業空洞化」は起こらないはずである。今後の日本の人口動態を考えれば、国内市場縮小化は不可避である。となれば、現在の円高局面を利用して企業が海外へ進出する選択は、決して間違えたものではないと見る。後から振り替えれば、「円高天佑論」と言う評価が出てこないとも限らないのだ。

「内需産業」振興においては、これまで「企業組織化」が十分に行なわれていなかった現実を、再確認しておくことが重要である。内需産業は、「企業」よりも「家業」という位置づけできた。この「家業意識」を捨てて、「企業意識」へと昇格させるには、経営主体意識の確立が大前提になる。それは、営利・非営利を問わずあらゆる組織に、強力なリーダーの存在が不可欠であるという認識につながっていく。

言うまでもないが、日本のように企業組織以外の家業レベルでは、利益目標を明確にすることが歓迎されなかった。家業組織の「連合体」のような存在であった「地域産業」では、組織内で仲良くやっていられれば、それで十分とする風潮が一般的であった。農業にもそういった趣が多分にあったことは否定しがたい。今回のTPP交渉参加問題でも、「日本のコメを守れ」を唯一の旗印にして反対論を訴える向きが多い。この主旨に反対する日本人は誰もいないはずだ。全員賛成である。だが現実問題として、「日本のコメ」を守る手段についての議論が皆無である。いわば、心情的にコメ問題を論じている。そう言えるのではなかろうか。このレベルの議論に止まっている限り、日本のコメは守れずに終わるであろう。日本のコメに代表される農業を守るには、「企業意識」を確立して行くことが必要なのだ。「家業意識」では日本農業が壊滅するに違いない。

世界的に有名になっている「トヨタ生産方式」(製造業のノウハウ)を農業に転用する試みが、トヨタ自動車の手によって行なわれている。収穫高は従来方式より3倍にも達しているのだ。トヨタ方式について簡単な説明をしておきたい。トヨタ生産方式では、ムダについて「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義している。このムダを無くすことが重要な取り組みとされている。ムダには、代表的なものとして以下の7つがあり、それを「7つのムダ」と表現している。すなわち、1,作り過ぎのムダ。2.手待ちのムダ。3.運搬のムダ。4.加工のムダ。5.在庫のムダ。6.動作のムダ。7.不良をつくるムダ。

この「7つのムダ」を農業に適用すればどうなるか。以下は私の解釈だが、1の「つくりすぎのムダ」を排除するには、常に需要動向を把握する。2の「手待ちのムダ」(仕事をしない空白時間)を無くして、作業の効率化を進める。3の「運搬のムダ」を省いて「地産地消」を原則化する。4の「加工のムダ」(付加価値を高めないような作業をしない)を省く。5の「在庫のムダ」を省く(見込み生産をしないで受注分だけ生産する)。6の「動作のムダ」を省いて、仕事の段取りを間違えずに流れ作業にする。7の「不良(品)をつくるムダ」を省いて、全製品を出荷できるような「品質管理」を徹底化させる。

農業において、こうした「7つのムダ」を省いて行くには、ITの存在が不可欠になる。日々、変動する需要(価格・地域)を的確に摑むには、ITに基づく計数管理が欠かせないのだ。それを従来のような「勘」「噂」「伝聞」等で決定してきたから、「造り過ぎ」「在庫」「加工」等のムダを生んで、「農業は儲からない」と言った観念を植え付ける結果となった。茨城県つくば市の農業生産法人TKFは、2006年に経団連とJAグループの交流事業として取り組んで生まれた。当初、売上は1億円程度が限度かと見られていたが、トヨタ生産方式を導入して現在、3億円へと予想の3倍にも達しているという。ここに計数(IT)利用による生きた例があるのだ。

「地域産業」においては、強力なリーダーが不可欠である。そのことはすでに指摘した。このリーダーは地域の住民、NPO、企業、教育機関、行政、産業団体、マスメディア等を繋ぐ重要な役割を担っている。その緩やかなネットワークの中心には、リーダーと共にITという、もう一つの主役が存在する。IT革命は、地域産業においても大きな役割を演じるはずだ。これをいかに使いこなすかが、地域における産業振興の鍵を握っていると言える。

冒頭で指摘したが、日本はIT先進国で「総合進展度」が第2位である。改めてこの問題を持ち出したのは、日本のIT基盤はすでに整備されており、後は「使い方」をいかに効率的にさせるかの問題にすぎないのである。以下では、この点を議論したい。

【資料】総務省「ICT基盤に関する国際比較調査」(平成22年)

 

③利活用

(総合第16位)

個人の利活用(第9位)

企業の利活用(第8位)

政府の利活用(第18位)

個人インターネット利用率

企業インターネット活用度

国民向けサービス充実度

行政内部効率化貢献度

 

 

②基盤(普及)

(総合第8位)

固定ネット普及(第7位)

モバイル環境普及(第11位)

インターネット世帯普及率

携帯電話普及率

固定ブロードバンド普及率

モバイルブロードバンド普及率

固定ブロードバンド料金

携帯電話料金

 

 

①基盤(整備)

(総合第1位)

先進性(第1位)

安定性(第4位)

許容性(第1位)

固定ブロードバンド最高速度

固定ブロードバンド品質

インターネットホスト数

第3世代携帯比率

安全なサーバー数

光ファイバー数

 

上の表では、調査項目を①基盤(整備)、②基盤(普及)、③利活用の三つとした。①の基盤(整備)では、先進性が第1位。安定性が第4位。許容性が第1位とずば抜けている。②基盤(普及)では、固定ネット普及が第7位、モバイル環境普及が第11位。③利活用では、個人の利活用第9位、企業の利活用第8位、政府の利活用が第18位で振るわなかった。以上の各項目を平均して日本は、①では総合第1位。②では総合第8位。③では総合16位であった。さらに、これら3項目を合計した「ICT総合進展度」では、堂々と第2位である。ちなみに、第1位は韓国、第3位がデンマーク、第4位はスウエーデン、第5位は米国であった(詳細は、総務省編『情報通信白書』平成22年版)。

③の利活用において、個人や企業はそれぞれ第9位と第8位であったが、政府は第18位であるから、個人や企業だけでは10位以内に入っていたわけである。私がこのように順位にこだわっているのは、せっかくのIT基盤整備でトップにランクされていても、その基盤を利活用する面で劣っているのは、超高齢社会の日本においてまことに「もったいない」ということである。IT基盤整備に巨額の資金を投入しながら、それを完全に利用していないからだ。ただ、これからの「地域産業」振興では、ITがその主役の座を占めるはず。見方を変えれば、そのインフラになるIT基盤投資で、余裕を持っている点が「安心」できるのである。


第4回 は、「IT活用の『地域力』で連帯の強化」。

運用研究レポート
超高齢社会をITで克服する知恵
今回の連載では、日本がすでに突入している「超高齢社会」を、ITを用いてどのように克服するかを追う。人間誰でも高齢者入りする65歳を過ぎると、しだいに健康面での不安を抱えてくる。特に、70歳を過ぎてくると足腰に「故障」がでるもの。ここで初めて、「ああ自分も歳を取ったな!」という実感がわくのである。この連載では、いかにITを活用しながら、「超高齢社会」を克服するか。その知恵を探すことにする。
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筆者紹介

勝又壽良(かつまた ひさよし)

1961年 横浜市立大学商学部卒。同年、東洋経済新報社編集局入社。『週刊東洋経済』編集長、取締役編集局長をへて、1991年 東洋経済新報社主幹にて同社を退社。同年、東海大学教養学部教授、教養学部長をへて現在にいたる。当サイトには、「ITと経営(環境変化)」を6回、「ITの経営学」を6回、「CIOへの招待席」を8回、「成功するITマネジメント」を6回、「ITで儲ける企業、ITで儲からない企業」を8回にわたり掲載。

著書(単独執筆のみ)
『日本経済バブルの逆襲』(1992)、『「含み益立国」日本の終焉』(1993)、『日本企業の破壊的創造』(1994)、『戦後50年の日本経済』(1995)、『大企業体制の興亡』(1996)、『メインバンク制の歴史的生成過程と戦後日本の企業成長』(2003)

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