資格取得への道 中小企業診断士への道

第8回:勉強方法って何やったの(その4)

概要

60歳手前のリタイヤ間際のオヤジが、ITコーディネーター資格に飽きたらず、どうして更なる難関資格である中小企業診断士の取得に取り組むことにしたのか。勉強の効果を上げるためにどんな工夫をしたのか、またモチベーションを保つために何をしたのか等など、私が経験した試行錯誤の連続を飾らずに、つたない文章ですが書かせていただきます。皆様にとって何か一つでも参考になることがあれば幸いです。

中小企業診断士の教材(テキストや問題集、参考書)は膨大な数になりました。当時の自分の知識レベルを考えたからですが、あれも必要だ、これもいると幾つも購入しました。
1次試験対策用だけで、最初に購入した1次試験用のテキスト、参考書、問題集などで、40冊近くになりました。さらに途中で、問題集や参考書などを追加購入しましたので、50冊程度になり、重ねると100㎝近いものになりました。
ITコーディネータ(ITC)の時のざっと3倍です。大変なボリュームです。購入してみたものの、1年でこんな量を、モノに出来るのかと不安が頭を過りました。でも止めようという気には、なら無かったです。
2年目には2次試験用の教材も、勉強している間で問題集や参考書などを、追加で幾つも購入したので、最終的に1次、2次を併せると、70冊を優に超えるものになり、150㎝近くになりました。
ITCの時の勉強方法は、基本的には、テキスト等を読む、重要な文章やキーワードなどを書く、問題集をやる・間違ったり不明な点をテキストや参考書を読んで理解する、を繰り返し行うものでした。繰り返しやることで、少しずつ記憶に残るようになり、回答率が上がってきます。
 この繰り返しやる方法は、勉強方法の王道だと今でも思っています。ですが、じっくり読むだけの工夫のない、ITCの時と同じ勉強方法では時間が掛かって、直感的に、中小企業診断士の教材のこの量は、こなせない、到底間に合わないと思いました。

目次
勉強法
速読法 
フォトリーディング・ホール・マインド・システム

 

勉強法

 もっと効率的な方法はないかと、色々な勉強法や記憶法なども調べました。早く本を読む必要があるので、速読法も調べたりしました。また財務会計などでは計算問題も多く(1次試験では電卓は使えない)計算を早くする必要があったので、速算法なども調べました。
勉強法の本をいくつか読みました。著名な方の本もあります。
最初に試した方法は、特に目新しい方法ではなかったですが、本を読んで、要点をノートに書いて、ノートを読む、というものです。キーポイントは、その全ての作業で声を出すことです(今手元に本がなく、正確な題名、著者名は忘れてしまいましたが、高名な(大学)受験塾の先生の本だったと思います)。
確かに、この方法は、同時に見る(目)、聴く(耳)、読む(口)、書く(手)という感覚の複数を使うことで、脳の色々な部分が活性化されるので、記憶に残りやすいと言えます。しかし、この方法は、声を出しても周りに迷惑をかけない環境が必要ですが、自宅でも結構難しいです。まして図書館では実践できません。
そこで、自分なりの工夫を加えてやってみました。本を読んで(黙読)、ノートに要点やキーワードを書いて、それを読む(黙読)方法ですが、読む時や書く時は、口を動かす(声を出しているつもりで口を動かす)というものです。この口を動かす方法でも効果があると思っています。
今では、このやり方に茂木健一郎氏の勉強法を取り入れています。
ノートに書くときは、本を見ずに脳に記憶したものを書きます。こうすることで、脳の記憶回路が使われます。最初は、正しく書けるのが少ないですが、何度も繰り返しやることで、正しく書けるのが多くなります。集中する必要があり、結構疲れますが、記憶の定着には良い方法だと思っています。

 

 このときのポイントは、間を空けずに同じ事を、何度も続けて繰り返すことです。この短期間に脳(記憶)へのアクセスを繰り返すやり方が、記憶という面からは良いとのことです。反復することで、必要な記憶だと脳が認識し、記憶が定着することになります。
余談
ですが、脳が情報を記憶するときのメカニズムについてです。記憶は脳の
大脳皮質にある側頭葉の側頭連合野
に蓄えられます。側頭連合野は、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚といった五感や、自分が行動する動機や心的態度などの様々な機能(「モダリティ」と言います)を統合するところでもあります。この側頭連合野には、モダリティ(五感など)から働きかけたほうが、記憶が定着しやすくなるという特徴があるとのことです。
 脳の記憶には、
短期記憶

長期記憶
があります。最終的に記憶が格納されるのは側頭葉で、長期記憶として蓄積する際に、「海馬」が重要な役割を果たします。この海馬の働きがなければ、その情報が長期記憶として蓄えられることはありません。
また、感情に関わる脳の働きの中核である「扁桃核」は、近くにある海馬に影響を与えます。様々なモダリティから働きかけると、扁桃核と海馬が同時に活性化され、記憶が定着し易くなります。
海馬に記憶されているもの(短期記憶)から必要なものが、側頭葉に送られて長期記憶として定着します。
必要な記憶かどうかは、その短期記憶に反復してアクセスされているもの、色々な感覚器官(目や耳、口、手など)からの刺激と一緒に記憶されているものが、必要なものと判断されるそうです。
 ですから、記憶したければ、その記憶にアクセスする回数を増やす、色々な感覚を使って記憶すると良いことになります。黙読するよりも声を出して、書くときも字だけではなく色を使ったり絵を書いたりすると良いということになります。
また心理学では、「48回反復すると絶対に憶える」そうですので、回数をこなすのが、やはり重要と言えます。
因みに、ドイツの心理学者のエビングハウス博士の「忘却曲線」によれば、20分後には42%を忘れ、1時間後には56%を忘れ、9時間後には65%を忘れ、6日後には20%しか憶えてないそうです。1度見聞きしただけで何もしないと、普通の人は殆んど忘れるということです。

 

 さらに余談ですが、茂木健一郎氏によれば、夜にクリエイティブな仕事をするべきではないとのことです。理由は、夜は日中の(短期)記憶が未整理のままで一杯になっていて、脳に空きが少なく、創造的な活動に向かない状態になっているからだそうです。
茂木氏のお勧めは、クリエイティブな仕事は、早朝にやると良いとのことで、起きてから3時間が、脳のゴールデンタイムだそうです。
私も、診断士の勉強の2年目から、夜型から朝方に生活パターンを変えたと、以前にも申し上げましたが、私の体験からも、朝早く起きて勉強(もちろん仕事も)をするのは、お勧めです。
また、前日のこと(例えば、打ち合わせ内容など)を整理するのは、朝が良いとのことです。それは、睡眠中に前日の記憶が、必要なものと不要なものに整理されるからだそうです。朝の時点で残っている記憶で整理すれば、核心を突いたものになるとのことです。
最近では、このやり方は何回か試していて、診断士の実務補習(研修)でのヒヤリング結果の見直しなどで実践しました。
茂木氏も言っていますが、脳は筋肉や骨と違って、どんなに使っても壊れない、難しい事を勉強すればするほど、脳を喜ばせることになってさらに能力が上がるそうで、脳には限界が無いとのことです。これは私の体験からも、納得できるものです。
ただし、1つだけ条件があります。それは、自発性に基づく酷使は問題ないですが、やらされてハードすぎると、「燃え尽き症候群」になる恐れがあるとのことです。

 

速読法 

 本題に戻って。勉強法として速読法も、調べました。最近は、インターネットで探すと、色々な速読法が見つかります。
この当時は、本屋などでも探しましたが、やりたいと思えるものが、なかなか見つからなかったです。
速読法や記憶法は、勉強が一段落した今でも色々と調べています。本なども購入したり、自分なりに実践しています。その中で2つほど紹介させて頂きます。
 まず川村明宏氏の「ジョイント式速読法」です。初級編と上級編があります。
初級編は、とにかく目を上下や左右に高速に動かして読む方法です。左脳を使った方法との事です。この速読法を習得するには、数週間から数ヶ月の訓練期間が必要のようです(早い人だと、その日から効果が出るようです)。
内容の理解は二の次で、とにかく目を高速に動かして読むことから始めます。でも今までそんな動かし方をしていなかったからでしょうが、私は目を早く動かせません。それでも遅いなりに、何度か訓練すれば、そこそこ速く読めるようになります。
また、このジョイント式のユニークなのは、読むことと記憶することを分けて訓練させることです。
皆様も同じだと思いますが、今までの本などの読み方は、読む=理解・記憶するもので、学校でも一字一句を丁寧に読むことを教わったせいもあるでしょうが、遅い読み方になっています。
 川村氏の説明には、確かにその通りだと、納得する部分が多かったです。その他にも、本のなかには目から鱗のところもあって、今でも結構参考にしています。
上級編は、周辺視野を拡大して、右脳を活用して速読、速憶する方法です。本格的な速読方法ということですが、これは習得には時間が掛かると思います。
七田眞氏の「七田式超右脳記憶法」は、乱暴に一言で言うと、素読と丸暗記を繰り返すことで、瞬間記憶能力を開発するものです。出来るようになれば、写真を撮るように瞬間的に記憶できるとのことです。これは本格的に指導を受けて訓練する必要がありそうです。ですが、習得は大変そうですし、時間が掛かると思います。私には無理そうだと思って、本を読んだだけでやっていません。
いずれの方法も右脳を活用するもので、ほかの速読法も右脳を開発するものが多いように思われます。

 

フォトリーディング・ホール・マインド・システム

 当時、探しているときに、電車の中刷りで、フォトリーディングを知りました。「10倍早く読める」という謳い文句を疑いつつも本(「あなたもいままでの10倍速く本が読める」ポール・シーリィ著、神田昌典監訳)を購入しました。本を読んだだけでは、分からないところがあり、インターネットで講座を調べてみました。
当時は、フォトリーディングはそんなに有名ではなかったと思いますが、調べてみると講座は2ヶ月先まで全て一杯でした。結果的には、この状況に煽られるように慌てて講座(高額です)に申し込み、2ヵ月後に受講しました。
フォトリーディングは、一言で言うと、右脳を活用する方法です。右脳には膨大な記憶力と潜在能力がありますが、普段は全く本人も存在すら意識しない(潜在意識)ものです。
一説によれば、左脳と右脳は電卓とスーパーコンピュータほどの違いがあるとのことで、感覚器官の情報流入量は以下のようなものだそうです。

通常我々は、意識下(左脳)で本などを読んでいるので、40bits/秒でしか読めないことになります。
因みに、日本人の平均読書スピーヂは1分間に400文字程度で、編集者や学者などの専門職の人でも、700~1000文字程度だそうです。
フォトリーディングでは、本を読む時は目をフォトフォーカス(1ヶ所に焦点を当てず、周辺視野を使って視野を広げ、ぼんやり本全体を見ている)状態にして、左脳を通さずに、目から直接右脳に高速(10,000,000 Bits/秒)に取りこみ、後で右脳から本人が必要と思う所を、関連づけて引っ張り出せるようにするというものです。
左脳(顕在意識)と右脳(潜在意識)の結びつきを強くすれば、右脳の膨大な記憶力と潜在能力が使いやすくなるというものです。
やり方は、5ステップからなっています。

 

 
ステップ1
は、準備です。その本から何を得たいのか、その本を読む目的をはっきりと、自分の中で確認することです。ミカン集中法など、自分の意識を集中する方法も含まれています。
 
ステップ2
は、予習です。本の表紙や裏表紙、目次、索引などをざっと見て、目的にあったものか確認し、読み進めるかやめるかの判断をします。
 
ステップ3
は、フォトリーディングと復習です。フォトリーディングは、目をフォトフォーカスにして、右脳(無意識)に直接取り込むものです。意識としては読んだという感覚はまったくないです。本を上下逆さまにして読んでも良いです。この段階で重要なのが、読む前と読んだ後のアファメーション(肯定的な暗示)です。右脳(潜在意識)に対して命令を出します。
復習は、フォトリーディングの直後に行います。本をパラパラとめくって、気になるトリガーワードを見つけ、(著者に聞くように)質問を作ります。
 
ステップ4
は、活性化です。質問に合う文章を直感的に見つけ読みます。無理に見つけようとせず、ページ全体をざーっと見ます。充足感を得る手前でやめるや、1回で全てを知ろうとしないなどが重要といわれています。
一般的に本の重要な部分(言いたい事)は、全文章の4~11%程度だそうで、この読み方は利にかなっているとも言えます。
 
ステップ5
は、高速リーディングです。これは最初から最後まで読みます。なるべく速くを意識して読みます。
やり方そのものは、それほど難しいものではないし疲れないので、私にも出来ましたが、どうも私は左脳が強すぎるのか、質問(自分への問いかけ)が良くないのか、本から欲しい箇所がうまく引っ張り出せませんでした。
単行本のような軽い本だと、フォトリーディングの手法で、結構速く内容が掴めるのですが、教材(テキストや参考書)などの専門書の類になると、ついつい本の文章全てを読みたくなります。昔からの読み方に、戻っている事もあります。
フォトリーディングを、まだ完全にマスター出来ていないと思っていますが、それでもフォトリーディングで学んだ方法で、少しは速く読めるようにはなっているようです。
本との接し方、本の読み方は参考になっています。


  
・本によって読み方を変える
  ・必要な所をアタリをつけて読む
  ・どこから読んでも良い
  ・全てを読まなくて良い
  ・パラパラと読んで良い
  ・一回で全てを理解しようとしない
  ・読書に割ける時間によって読み方を変える


などを実践しています。今でもフォトリーディングはやっています(左脳と右脳の結び付きが強くなることを願って)。

 

次回は、勉強方法って何やったの(その5)、の続きとして、マインドマップなどについて、書かせて頂く予定です。

 

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