資格取得への道 中小企業診断士への道

第6回 勉強方法って何やったの(その2)

概要

60歳手前のリタイヤ間際のオヤジが、ITコーディネーター資格に飽きたらず、どうして更なる難関資格である中小企業診断士の取得に取り組むことにしたのか。勉強の効果を上げるためにどんな工夫をしたのか、またモチベーションを保つために何をしたのか等など、私が経験した試行錯誤の連続を飾らずに、つたない文章ですが書かせていただきます。皆様にとって何か一つでも参考になることがあれば幸いです。

今回は、勉強始めるに際して重要となる教材の選び方と、試験攻略のポイントについて述べさせて頂きます。

目次
教材の選び方
1次試験のテキスト
1次試験の過去問題集(問題と解答・解説)
2次試験のテキスト
2次試験の過去問題集(問題と解答・解説)
参考書(専門書)、問題集
試験攻略のポイント
1次試験
2次試験

 

教材の選び方

 まずは、中小企業診断協会のホームページだけでなく、ネット上も検索しました。
中小企業診断士試験は、毎年、1万数千人が受験します。近年、人気が高まっているようで、受験者が増加傾向にあり、直近では、2万人に近づいているようです。
そんな資格ですので、驚くほどたくさんの通信教育や学校がありました。
それらの学校の資料を、幾つか取り寄せました。資料から、中小企業診断士がどんな資格で、どれくらい勉強すれば良いのかが、大よそ分かりました。
資料は無料ですが、その学校をアピールするツールですので、内容はけっこう充実していて、色々なノウハウが詰込まれていると思います。

 

学校の資料から大体の事は分かりましたが、私は、
市販の解説本
(「中小企業診断士になる本」のような本)を2冊購入しました。
解説本
を購入する理由は、勉強のために必要な教材(テキスト、問題集、参考書など)などが、丁寧に紹介されているからです。勉強を始めようとしていた私には、大いに参考になりました。
勿論、中小企業診断士資格の位置付けや役割、資格試験の概要、勉強する範囲などの情報も、分かり易く解説されています。解説本だけでも何冊も出版されています。
中小企業診断士試験にチャレンジしてみようと考えられている方には、まず解説本を選んで読むことをお勧めします。
ただし、教材の紹介では、自分(達)の著書や所属会社(学校)の教材を勧める傾向があるように思われますので、その点は少し注意する必要があります。

 

その当時の私では、本屋で何社(何校)かのテキスト、問題集、参考書を手にとって、構成や本文を(一部分ですが)読みましたが、内容がほとんど未知の領域でしたので、教材の良し悪しなど、判定できなかったです。
解説本の”お勧め”を、テキストや参考書を選ぶ目安にしました。
解説本の著者の考え方などによって、推薦しているテキストや参考書が、異なることがあります。どうしても判断が付かない時は、両方の解説本で推薦している教材(テキスト、問題集、参考書など)を選びました。結果的には、この選び方で特に問題はなかったです。
学校(通信教育含む)に行くのであれば、その学校の教材がベースになり、自分で選ぶ余地は少ないと思いますが、独学でやるのであれば、私の経験がお役に立てるかも知れません。
今だから言える、
教材の選び方のポイント
を、以下に提示させて頂きます。
教材としては、1次試験の(7科目の)テキスト、1次試験の過去問題集、2次試験のテキスト、2次試験の過去問題集、参考書(専門書)、問題集などがあります。

 

1次試験のテキスト

 1次試験の7科目のテキストが各社(各校)から出版されています。
どれを選ぶかは好みもありますが、
少し厚くても、解りやすい言葉で丁寧に説明している”中身の濃い”もの
が良いと思われます。
構成や文章、表や絵などを、読者に解らせようと、工夫しているかがポイントです。
読んでみて、(未知の領域なので)内容は解らなくても、
文章が易しく感じるものが良い本
(テキストに限らず、問題集、参考書でも同様)です。
反対に、
難しい言い回し、長い文章が多い、文書そのものが解りづらいものは、良くない本
、と断言できると思っています。
テキストは、7科目セットで1社(1校)から購入するのが良いです。また、(出来る限り)最新版を購入して下さい。
全てのテキストが、毎年、改定されるわけではありませんが、「中小企業経営・中小企業政策」と「経営法務」は、絶対に最新版が必要です。

 

1次試験の過去問題集(問題と解答・解説)

 過去数年の1次試験の過去問と模範解答、解説が含まれている「1次試験 過去問題集」が各社(各校)から出版されています。
最低でも直近から過去3年間分、できれば過去5年間分くらいはあった方が良いです。
選ぶときのポイントとしては、
解説が論理的で、解りやすく丁寧なもの
を選ぶことです。
解答だけで解説が無いものや、解説が端折られているもの、解りづらいものはダメ
です。
テキストと同じ会社(学校)のものでなくても良いです。テキストと違う観点の解説が、理解を深めるのに有益です。
本の中で専門家による過去問の出題傾向などの分析が行われています。自分でも過去問(と模範解答、解説)を、何度も繰り返しやってみると、頻出問題や傾向などが、分かって来ると思います。

 

2次試験のテキスト

 2次試験のテキストも各社(各校)から出版されています。
会社(学校)によって、2次試験の問題の捉え方・解析の仕方、課題の構築方法、解答の書き方など相当違います。会社(学校)の数だけ方法論がある、と言っても過言ではないと思っています。
どれを選ぶかは好みもありますが、
思考方法・論理展開、解答の組み立て方・書き方などが、納得できるもの
で、読んだときに、
説明が解りやすく、なじみ易いと感じるもの
が良いです。

 

私は5校の教材(テキスト、過去問、問題集)を使いました。多くの教材を使うメリットは、各社(各校)の方法論の比較が出来て、それらから良いとこ取りができたことです。デメリットは、自分流のやり方を確立するまでに、時間が掛かったことです。
私の場合、勉強に充てられる時間が結構あったので、この時間の掛かる(多くの学校の教材を使う)やり方でも、間に合ったと思っています(納得できるまでトコトンやった、達成感もあります)が、忙しい人にはお勧めできません。
2次試験は、いかに(試験時間の)80分間で、(出題者に)納得性の高い解答が作成できるかです。
どこか1社(1校)のテキスト(および、過去問題集、問題集)を選び、その会社(学校)のやり方に徹底的に染まるのも、良い方法かもしれません。

 

2次試験の過去問題集(問題と解答・解説)

 過去数年の2次試験の過去問と模範解答、解説が含まれている「2次試験 過去問題集」が各社(各校)から出版されています。
最低でも直近から過去3年間分、できれば過去5年間分くらいはあった方が良いです。
選ぶときのポイントとしては、
解答だけでなく、解説が解りやすく、論理的に書かれているもの
を選ぶことです。
問題の捉え方、その解答に至った思考過程が、納得できるもの
が良いです。
複数の会社(学校)のものを使うと、観点の違う解説が理解を深めるという有益な面もありますが、問題の解析や課題の構築方法、解答の書き方などが違うので、自分の方法論が確立していない時期だと、迷ったり混乱するという面もあると思われます。

 

参考書(専門書)、問題集

参考書
は、試験に合格するだけなら、必須というものでは無いかも知れません。
しかし、テキストは、基本的な知識、よく出題される部分を中心に記述していて、どうしても説明が限定されています。不安を感じたり、もっと知りたいと思うのなら、参考書は必要になります。
また、多くの学校でも、知識補充用として推奨している参考書はあるようです。
選ぶときのポイントとしては、
少し厚くても、解りやすい言葉で丁寧に、説明している”中身の濃い”もの
を選ぶことです。
私は、両方の解説本で”お勧め”の参考書を購入しました。
解説本の著者が、初心者向きに絞ったからでしょうが、参考書は、専門的な内容を、初心者にも解りやすく解説しているものが多く、理解が深まり、結果的には良かったです。

 

問題集
は、1次試験用と2次試験用があり、各社(各校)から出版されています。
1次試験用
は、
選ぶときのポイント
としては、過去問の基準と同じで、
解答だけでなく、解説が論理的で、解りやすく丁寧なもの
を選ぶことです。
解答だけで解説が無いものや、解説が端折られているもの、解りづらいものはダメ
です。
1次試験用は、違う会社(学校)のものが、幾つかあった方が良いと思います。
テキストと違う観点の解説が、理解を深めるのに有益です。
問題集も、その会社(学校)の出題傾向の分析などに基づき作成されています。違う会社(学校)の問題集なのに、
同じような問題は、基本的な知識
で、本番での頻出問題の可能性が高いものと思われます。
それぞれの問題集を問題・解答・解説まで全て覚えるくらい、繰返し何度もやることです。基本的な知識問題に接する回数が増え、記憶がより確かになります。

 

2次試験用
は、
選ぶときのポイント
としては、
解答だけでなく、解説が論理的で解りやすく、書かれている
かだと思います。
問題の捉え方、その解答に至った思考過程が、納得できるもの
が良いです。
過去問と同じで、テキストと違う会社(学校)のものを使用すると、違う問題を経験できるや、観点の違う解説が理解を深めるという有益な面もありますが、問題の解析や課題の構築方法、解答の書き方などが違うので、迷ったり混乱するという面もあると思われます。

 

試験攻略のポイント

 試験攻略のポイントと言われても、診断士の勉強を始める前では、以下を読んでもピンと来ないかも知れませんが、やり始めてからでも、思い出していただければ、少しは役に立つこともあるのではないでしょうか。

 

1次試験

 平成18年度試験から
科目合格制
が導入され、3年間で1次試験の7科目を全て合格すればよくなりました。科目合格というと、一見易しくなったように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
たとえば、初年度に得意な科目だけで科目合格したとすると、当然ながら翌年は、不得意科目が残ります。
不得意科目だけで、平均60%以上(しかも1科目でも40%未満がないことが合格基準)を、とらなければ2年目で試験合格できないという事です。これはかなりキツイです。
また、上記の例で2次試験に関連が深い1次科目を、仮にすべて初年度に科目合格していたら、2次試験の受験はそれから2年も間が空くことになります。 2次試験に臨むためには、これらの科目について、かなりのリカバリー学習が必要になるということです。
それと、
科目免除
が申請できる資格を持っていたとしても、
科目免除を申請せずに、絶対受験すべき
です。
科目免除できる資格の科目は、
得意科目なので(少しの勉強で)高得点が期待出来る
のではないでしょうか。申請は、自ら得点源を放棄することになります。

 

1次試験の
第1の攻略ポイント
は、「できるだけ不得意科目をつくらず、得意科目を活かして、
7科目同時合格を目指す
」ということです。
得意科目も不得意科目も交ざっている初年度こそ、もっとも1次試験合格の可能性が高いと言えます。

 

第2のポイント
としては、1次学習のうちから2次も意識した、「暗記」ではなく、
2次にも対応できる「理解」に重きを置いた勉強をする
ことが、合格への近道だと言うことです。
それは、2次試験では、1次で学んだ知識をベースに、それの適切な応用が問われるからです。
ここで
注釈
ですが、「
暗記
」とは、単語などを憶えること、「
理解
」とは、単語だけでなく、意味や理由、場面ごとの適切な使い方なども正しく知ること、として使っています。
「1次・2次ストレート合格を目指すやり方」がベストということで、多くの学校ではこのストレート合格コースを設けています。
現実的には学校に行って、最適な指導を受けた方でも、ストレート合格は、大変なことだと思われますが、「理解」に重きを置いた勉強は大事だと言えます。 私は独学で、財務・会計の知識も”0”からのスタートでしたので、初年度は1次試験の範囲の事柄を憶えることで精一杯でした。
2次試験の勉強を始めてから、「理解」に重きを置いた学習が必要不可欠だということの意味が解りだしました。3年目で、この「理解」に重きを置いた1次・2次ストレート合格の勉強が実践出来たと思っています。

 

第3のポイント
は、
7科目の勉強時間の配分や取り組み方を変える
ということです。
2次試験から見た場合、最重要科目は、
「企業経営理論」、「運営管理」、「財務・会計」
です。次に重要な科目は、
「経営情報システム」
です。これらの科目を、
「理解」
出来るまで繰り返し勉強することです。
因みに2次試験では、先の3科目は、関連しない部分も一部ありますが、大半は2次試験に直接関連します。
「経営情報システム」は、細かいITの知識はほとんど問われることは無く、経営から見たときに、どのような情報やシステムが必要になるか、という方向性を問われることがほとんどです。
「中小企業経営・中小企業政策」
は、2次試験で直接的には出題されることは殆んどないです。
「中小企業政策」は、実際の企業の経営診断では熟知している必要がありますが、こと1次試験に関しては、
憶えるだけで十分
です(この憶えるだけでも大変ですが)。

 

2次試験では、中小企業白書で取り上げられているような、昨今の中小企業の経営課題に関連したテーマで出題されることは考えられますが、もし出たとしても、新聞や雑誌の経済面などを読んでいれば、解答の方向性は見い出せると思われます。
ほとんど2次試験に関連しないのは、
「経済学、経済政策」と「経営法務」で、憶えるだけ
で十分です。
と言っても、昨年(2008年)の2次試験では、会社法関連の設問もありましたので、要点は抑えておく必要があります。抑えておくと得点出来るということです。

 

第4のポイント
ですが、各科目のなかは、①基本的な知識(幹の知識。頻繁に出題され、2次試験でも必要な知識。60%)、②発展的な知識(枝の知識。30%)、③高度で専門的な知識(葉の知識。10%)に分けることが出来るようです。
言いたいことは、
①、②までが勉強する
範囲と割り切って良いと言うことです。
①、②は殆んどパターン(過去問に類似)がありますが、③は”見たことも無い難問”でパターンにないものです。
③の問題が本番の試験で出たら、もちろん諦めずに取り組む必要はありますが、周りの受験者も出来ないと思っても間違いないです。そう思えば引きずらず、気が楽になります。
学校に行くのであれば、勉強する範囲やポイント、頻出問題、傾向などは、学校で指導してもらえるでしょう。
独学の場合は、各社(各校)から発行されているテキストや過去問などの書籍で、分析されているので参考にすれば良いと思います。

 

2次試験

 2次試験は、紙上とはいえ、
コンサルに入ったつもりで、事例企業がどうしたらもっと改善できるのかを真剣に考える
ことが、何よりも取り組む姿勢として重要なことです。
言うまでもないことですが、コンサルタントは、コンサルに入って対象企業の業績が上がらなかったり、問題点が解決できなかったりしたら、それはコンサルタントにとっては死活問題です。
対象企業の役に立ちたいと真剣に思い、コンサルティングに日々取り組んでいるはずです。

 

攻略ポイントの1つ目
は、与件文及び設問文を読み込み、事例企業の経営陣の考え方も含めた現状、課題、問題点を見落とさないことです。(わざと)設問文の端に、重要なことが書かれていたりしますので、注意しながら読むことです。
2つ目
は、そこから抽出された問題や課題に対する戦略的代替案(方向)を、複数検討することです。
そして、
3つ目
は、その代替案の中から1つを決定し、決定した理由が、論理立てて述べられることです。
与件文、設問間の関連、諸条件を考慮し、全体を通して整合性のある解決の方向を見極める
ことです。
時間制限があるなかで、慣れないと複数検討するのは大変ですが、自分の考えが偏っていないか、第三者の目で検証することを、習慣付けることが重要です。

 

最初のうちは、時間制限にとらわれずに、何度も「問題文を読んで深く考えて」を、繰り返し学習することです。段々と時間をかけずに出来るようになります。
実際の企業の経営診断では、全体的な整合性のある問題認識、課題設定、解決策提言が求められますので、2次試験では、その能力を確認しているということです。


次回は、勉強方法って何やったの(その3)、と題して書かせて頂く予定です。

 

 

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