資格取得への道 中小企業診断士への道

第7回:勉強方法って何やったの(その3)

概要

60歳手前のリタイヤ間際のオヤジが、ITコーディネーター資格に飽きたらず、どうして更なる難関資格である中小企業診断士の取得に取り組むことにしたのか。勉強の効果を上げるためにどんな工夫をしたのか、またモチベーションを保つために何をしたのか等など、私が経験した試行錯誤の連続を飾らずに、つたない文章ですが書かせていただきます。皆様にとって何か一つでも参考になることがあれば幸いです。

目次
スケジュールを立てる
マスタースケジュール
週間スケジュール
使用した教材
解説本
1次テキスト
●1次問題集
参考書
2次テキスト
2次問題集

 

スケジュールを立てる

 市販の解説本の著者 山根義信氏(診断士の受験学校の有名な講師でもあります)によれば、「完全に合格レベルに達するには、1,200時間以上の学習時間が必要」とのことです。もちろん学習時間は、個人の能力、学習方法、密度などによって異なりますが、私の実感としても納得できるものです。


1次試験までの期間(8月中旬~翌年8月初旬)は、大よそ1年でした。1次試験を通っても2次試験までは、実質2ヵ月半ほどしかないので、初年度は1次試験の勉強に集中することにしました。


ある学校のアンケートによると、苦手科目のランキングでは、1位 財務・会計、2位 経営法務、3位 経営情報システム、4位 運営管理(生産管理)、5位 経済学・経営政策、だそうです。


私も含めて、財務会計が苦手な人が多いようです。反対に考えると、財務会計が得意な人は、断然有利ということです。
2位の経営法務と5位の経済学・経営政策を除く、3科目は2次試験でも重要な科目です。
幸い私は、ITが専門でしたので、経営情報システムは、余り勉強しなくとも、得意科目になりました。勉強時間面では助かりました。1科目でも得意な科目を持っていると、受験では有利です。
財務会計は1次試験だけでなく、2次試験でも重要な科目で、合否を分ける科目と言われています。
私の場合、財務会計の知識が、殆んど”0”というレベルでしたので、財務会計の基礎から始める必要がありました。
これらを考慮して、1年間の大枠の計画(マスタースケジュール)と、週間スケジュールを立てることにしました。

 

マスタースケジュール

 1年(8月中~翌年8月初)のマスタースケジュールは、次のようなものです。財務会計を、何としてでも習得することが最重要課題になっています。
勉強時間は、1週間20時間以上、1年間1,000時間以上を目標にしました。
財務会計(8月中~11月)では、会計入門、簿記3級(商業簿記)、簿記2級(商業簿記、工業簿記)、参考書、問題集などを使いました。財務会計に関連する教材が一番多かったです。
1次試験の読み込み(12月~2月)では、全てのテキストと参考書を1回通読(20日間)した後は、科目毎にテキスト、参考書を3回精読(1科目10日間)することにしました。
アウトプット(解答)練習は、なるべく長めに期間を取って、5回以上を繰り返し行うことを目標としました。ITコーディネータ(ITC)の勉強の経験から、読み込みよりも解答練習を多くする方が、知識レベルを上げには、有効だと分かっていたからです。
このあたりの勉強方法は、後で述べさせていただきます。

 

週間スケジュール

 マスタースケジュールのもとに、1週間単位のスケジュールを作成しました。
日曜日の夕方に、スケジュール帳(手帳)に、次の週の予定を書きます。スケジュール帳は次のように、1日単位に「何時から何時まで何をする」の形式にしました。
それぞれの時間で読むページ数の目標(目安)を決めておいて、実際にどれだけ読めたか、進捗をチェックしました。
ITCの時の勉強で、最初は解らなくても何度も読めば、色々な教材を読んでいるうちに解ってくることが、体験的に感じていましたので、スケジュール通りやることを優先していました。


今でこそ言えますが、この”読んだときは解らなくても、スケジュール通りに先に進む”勉強法は良いやり方だと思います。

 

使用した教材

 使用した教材は膨大な量になりました。ボリュームには圧倒されましたが、不思議と止めようとは思わなかったです。
05年から08年まで足掛け3年間で、使用した教材(一部)は以下のようなものです。

 

解説本

・中小企業診断士最短最速合格法(日本実業出版社)


・180時間の勉強で中小企業診断士になる本(TBC受験研究会)

 

1次テキスト

・中小企業診断士1次完全対策(日本実業出版社)
・クイックマスターシリーズ0~8、12冊セット
(05年度版、一部06年度版)(同友館)
  0.新ストレート合格方
1. 経済学・経営政策
  2-1.アカウンティング
  2-2.ファイナンス
  3-1.経営戦略・経営組織
3-2.マーケティング
  4-1.生産管理
  4-2.店舗・販売管理
  5.経営法務
  6.新規事業開発
  7.経営情報システム
  8.中小企業白書・施策総覧
  学習の中心はやはりテキストです。絵が多く初心者向けに構成・編集されたもので、どの科目とも素人の私でも、取っ付き易かったです。
・最短合格のための1次試験スピードテキスト5 経営法務(08年度版)
(TAC出版)
・最短合格のための1次試験スピードテキスト7 中小企業経営・中小企業施策(08年度版)
(TAC出版)
  経営法務、中小企業経営・中小企業施策を、2008年の2回目の受験用に追加で購入しました。他の科目は本屋で最新版を確認しましたが、内容が殆ど変わらなかったので、前回のものを使いました。
違う学校のテキストを使った理由は、観点の違う解説と刺激を期待したからです。
感想としては、TACのテキストは持ち運びを考慮しているためか、解説も少し薄いようで、個人的には、クイックマスターの方が良いと思っています。
 
・中小企業白書(ぎょうせい)

 
・中小企業施策総覧(中小企業総合研究所)

中小企業の現状や、中小企業のための施策が網羅されていて、試験でも重要ですが、合格後の実際の企業のコンサルの場面でも、提言する内容(方策)としても必要なものです。
中小企業白書と中小企業施策総覧は、毎年発行されますので、今も継続購入しています。

 

1次問題集

・過去問題集(同友館)
・1次試験山根式徹底!反復問題集(同友館)
・最短合格のための1次試験スピード問題集 上巻・下巻(TAC出版)
・最短合格のための1次試験スピード問題集5 経営法務(TAC出版)
・最短合格のための1次試験スピード問題集6 経済学・経済政策(TAC出版)
・最短合格のための1次試験スピード問題集7 中小企業経営・中小企業施策(TAC出版)
・過去問解体全書 1次試験対策用(DAI-X出版)
・1次試験 パーフェクトマスター財務・会計セレクト問題集(TBC受験研究会、同友館)

・1次試験 直前予想模試((DAI-X出版)

 

参考書

・ロジックで理解する運営管理(日本マンパワー出版)
  大学でも使われているようで、難解な生産管理を、絵を多用して分かりやすく解説していて、素人でも理解しやすい、よい教材だと思います。今、読み返してみても、基本が書いてあるので、十分参考になります。
・試験攻略 経済学入門塾Ⅰマクロ編(中央経済社)
・試験攻略 経済学入門塾Ⅱミクロ編(中央経済社)
・試験攻略 経済学入門塾Ⅲ上級マスター編(中央経済社)

  経済学に馴染みがない私にとっては、入門書として良い教材でした。マクロ経済やミクロ経済とは何なのか、それが世の中とどう関わっているのかが理解できて、一般常識の範囲が広くなったと思っています。
ただ、所々に出てくる計算式は難解でした。計算式の全てを理解しようとすると、ドツボにはまって時間を浪費する恐れがありますので、原理原則を理解する程度に留めた方が良いと思われます。
・絵とき版これならわかる簿記・経理(日本実業出版社)

  財務会計の知識”0”の私でも何とか理解できるように工夫された、大変良い入門教材だと思います。
財務会計の勉強で、最初に手にして概要(の概要程度ですが)を、理解するのに最適な教材です。著者がこれ以上易しい入門書教材はないと言っていますが、その通りだと思っています。財務会計の知識”0”から始め方にはお勧めです。
・日商簿記2級(商業簿記、工業簿記)、3級((商業簿記)(中央経済社)
  何といっても、簿記を勉強する基本的な教材です。確認のための問題、練習問題もたくさんあって、繰り返しやれば、簿記をマスターできると思います。
1次、2次を合格するには、簿記2級レベルが必須条件と言われています。全ての項目をきちんと理解し、すばやく計算できるレベルになる必要があります。
・ベーシックマスター基礎から学ぶ財務・会計 紙上講義編(日本マンパワー出版)
・最速マスター!1次試験財務・会計徹底攻略テーマ30(DAI-X出版)
・マーケティング戦略新版(有斐閣アルマ)

  マーケティングを時代による変遷や、色々な角度から解説していて、マーケティングの基礎や関連知識を一通り理解できます。
・マーケティングの基本と常識(フォレスト出版)
・考える技術・書く技術(バーバラ・ミント著)(ダイヤモンド社)

  直接試験に直接関連しませんが、思考や文章構成の体系を考えるのに、良い参考書だと思います。

 

2次テキスト

・通学講座 テキスト3冊(大原簿記学校)
・人気講師が教える中小企業診断士2次事例テキスト(日本実業出版社)
・村井メソッド2次試験事例攻略のセオリー(DAI-X出版)
・2次試験 設問分解、論理の構造化、戦略フレームワーク活用(AAS)

 

2次問題集

・通学講座 過去問題集1冊(大原簿記学校)
・2次試験 過去問題集(同友館)
・ロジックで解く中小企業診断士2次試験問題集(日本マンパワー出版)
・ロジックで解く第2次試験問題集 5POWERで導く合格答案(日本マンパワー出版)
・2次試験 診断助言事例クイックマスター(TBC受験研究会、同友館)
・最短合格のための2次試験過去問題集(TAC出版)


上記以外にも、インターネットや関連先から入手した資料や問題集などもあり、今見返してみても、大変なボリュームです。


以前にも申し上げましたが、1次試験は色々な問題集を使ったほうが、観点の違う問題を経験できるので良いと思います。
しかし、独学の場合、2次試験では色々な学校のテキストや問題集を使うと、各学校での指導内容が違うので、混乱する可能性が高い(自分流の問題攻略法を確立するまで時間がかかる)と思われますで、しぼったほうが良いかもしれません。


私が試行錯誤の結果、たどり着いた自分なりの2次試験の攻略法は、受験時間80分で合格するレベルの解答を作成することです。80分で解答が作成できる、問題解析、課題・解決策構築、文書まとめの手法です。
これは、2次試験対策を何度も繰り返しやった結果、試験の本番では、時間を意識し緊張しながら、始めて見る問題に対応する必要があるので、考える時間も限度があり、テキストや問題集の模範解答のような完璧な解答は作れない(作る必要も無い)、という自分なりの考え方になったからです。
どんなに高度な手法で問題を解析し解答を作成しても、時間内に解答できなければ意味がないことです。


各学校(教材)で方法論(言い方?)は違いますが、問題攻略に必要な能力は、問題解析力、方向提案力、知識適応・応用力、情報統合力、文書表現力です。
このように書くと、特段の能力が必要と思われるかも知れませんが、普段我々が日々の業務の中で行っていることで、それを意識し訓練すれば十分達成可能なものだと思っています。


必要な技としては、SWOT分析は必須です。ポジショニング分析も場合によっては必要で、全体戦略、事業ドメイン定義、コンセプト構築力も必要になります。それ以上の、例えばVRIO分析のようなものは無くても良いと思います。
なお、VRIO分析とは、主に内部資源分析の手法で、企業の活動を、経済性(Value)・希少性(Rarity)・模倣困難性(Imitability)・組織(Organization)の4つの面から問いかけます。


独断と偏見で恐縮ですが、各校の2次試験教材からの推測では、指導している技法などを習得するまで一番時間が掛かりそうなのは、日本マンパワー、TBCで、次はTAC、比較的簡単に出来る現実的なアプローチを指導するのが、AASや大原簿記学校、という感想を持っています。この私の評価は、学校の良し悪しを述べているのではありません。
なお、私の試行錯誤の結果の方法論は、大原簿記学校やAASで指導しているものに近かったです。

 

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