システム運用を語る、ITILの活用

第8回  サービスデスクについて その2

概要

ITシステム運用のベストプラクティスとされ、今話題の「ITIL」について、お客様の現状や取り組み、事例などを踏まえ、その活用のための各種情報をご提供します。

目次
サービスデスクの設置について
サービスデスクを支える仕組みの構築
サービスデスク成功のための秘訣
他のプロセスとの連携

今回はサービスデスクの設置によって、利用者に対していかに品質の高いサービスを提供していくかを考えます。

 

サービスデスクの設置について

サービスデスクの設置は、「設置します。」と告知するだけで機能するわけではありません。設置にあたっては利用者に対して、サービスを提供するわけですから、当然しかるべき準備が必要です。

サービスデスクの開始にあたっては、いきなりすべての利用者に対してサービスを提供するのは得策ではありません。まずは対象範囲を絞り、十分なコミュニケーションが取れるように準備を行います。その際のポイントは、利用者とサービス提供者の認識の差を無くすことが重要となります。

スモールスタート(対象範囲を絞り、現実的な範囲で開始する)
相互理解:サービスデスクのサービスを十分に説明し、サービスを受ける側と提供する側の相互理解を進める
サービスデスク側からの積極的な情報提供を行う。
次に、サービスを提供する側の準備についてですが、担当者によってサービスのレベルが異なっていては利用者から高い評価を得ることはできません。担当者の教育や、ルールを明確化し、均一なサービスを提供することを目指します。

トレーニング:サービスデスク側のメンバーにも十分な教育を施し、均一なレベルのサービスを提供するように努める
サービスの明確化:問い合わせガイドやサービスカタログ(サービスメニュー)を明確化する。
エスカレーションルール(問い合わせから、2次対応へのルートの明確化)
ドキュメンテーションによるサービス品質の確保と、引継ぎの明確化
顧客満足度調査はサービスを提供している以上は、できる限り実施するべきといえます。物言わぬ利用者は、ほとんどがサービスに不満を持っているといわれています。ISO9000にもありますが、年1回はなんらかの方法で顧客からの意見を聞く機会を持つことが重要です。 実施した顧客満足度調査の結果は公表し、実際のサービス改善への取り組みをアピールすることにより、双方向のコミュニケーションのひとつとして利用すべきです。

 

サービスデスクを支える仕組みの構築

サービスデスクが利用するデータをリアルタイムに参照、トレースする仕組みを使ってサービスを提供することにより、高い生産性をもたらします。
インタフェースは、昨今の仕組みであれば、Webシステムを中心とし、電話、メール、FAXなどを連携する方法がよいのではないでしょうか。
ITILにも記載のある、CMDB(Configuration Management DataBase)の構築、利用は有効であるといえます。
市場にはサービスデスク、ヘルプデスクを実現するためのソフトウェア、ソリューションが多数販売されています。
テンプレート形式のもの、アプリケーション形式のものなど多数ありますが、重要なことはツールを導入することが目的ではなく、提供するサービスにあわせてソリューションを選定することが重要です。場合によっては、市販のソフトウェアパッケージに合わせするのではなく、開発したほうが効率のよい可能性もあります。いずれにせよ、まずは、提供するサービスとプロセスを明確化し、そのための仕組みづくりが重要です。
サービスデスクがシステムを利用するシーンとしては、 サービスデスクが問い合わせ(インシデント)を受付け、システムに必要情報を入力します。
その際に過去の事例を利用し、回避策(ワークアラウンド)を検索します。加えて、構成情報より、影響範囲や利用者のIT環境を把握し、最適な対応がとれるようにします。
また、インシデントのエスカレーションにあたってはあらかじめシステムにルートを選ぶ機能が備わっていると便利です。また進捗のトラッキングを行い、ユーザへの情報提供を行うことも可能になります。

こういったサービスデスクの活動をサポートするためのシステムの利用、あるいは構築をお勧めします。選定構築にあたっては、各社から情報を集め、最適な仕組みを選定する必要があります。
ITILにも道具の利用を推奨する記述はありますが、いかによい道具をそろえても、利用するのは人間ですから、教育、トレーニングを忘れてはなりません。

 

サービスデスク成功のための秘訣

サービスデスクを成功させるにはどうすればよいでしょうか。最大のポイントはサービスを提供する側ではなく、サービスを受ける利用者にいかにサービスの内容を理解していただき、協力を得ることではないでしょうか。 サービス提供側がいかによいサービスを提供したとしても(あるいはしていると思っていても)、利用者に協力を得られなければ、顧客満足度は向上しません。
インシデント発生時にどこに(サービスデスク)問い合わせるのかを周知徹底し、サービスデスクからの回答に対して協力してもらえなければ、利用者の不具合は解消しません。 対応策としては、

 

  • ・サービスデスクからの情報発信
    サービスデスクからはITサービスに関する情報を常に発信し、利用者に対しての意識喚起を行います。また、定期的なトレーニング、説明会等を行い、ITサービスに対する理解を深めてもらうための啓蒙活動は欠かせません。
  • ・また、WEB等によるFAQの公開等も考えら得ますが、これはWebサイトの参照の習慣が無い場合は難しいかもしれません。その場合は、回覧板等を通して同様の活動を行うのがよいでしょう。
  • ・サービスカタログとの連携
    サービスカタログとはサービスデスクが提供するサービスを定義したものです。提供していないサービスについて問い合わせられても、回答することができません。
    認識不足によるトラブルを避けるため、ITサービス提供者と利用者との間での約束事として相互認識しておくことが重要です。
  • ・サービスデスクの展開
    サービスデスクを定着させるためには、スモールスタートによる、利用者への周知徹底、高い満足度を得ることにより、口コミによる評価の広がりも重要なファクターとなります。サービスデスクに問い合わせをすれば、問題が解決するという評価を定着させることが、サービスデスクとしての活動がよりよい循環になってきます。

 

他のプロセスとの連携

ITILではサービスデスクには、すべての問い合わせが集まるインタフェースです。利用者とのインタフェースの中核であり、理論上のサービスレベルの測定が可能になります。

問い合わせの受け付けから解決までの時間の把握。サービスレベルの測定。
品質向上を測るための評価基準であるサービスレベル管理との連携が必須です。
問い合わせ件数、問い合わせ者、その他傾向分析の基礎資料。
過去のインシデントの参照による解決時間の短縮。(参照が多い過去のインシデント情報は、傾向分析を行い、恒久対策を検討)
インシデント・問題・構成管理などとの連携により、CMDBを構築、検索しやすいインタフェース、サービス提供に必要な情報の蓄積を行います。
データベースからはITサービスに関する情報を集積しレポートし、今後の改善活動に役立てることになります。

次回は、発生した問題の恒久対策を図る、問題管理について、記述します。

連載一覧

コメント

筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ 

運用コンサルテイングチーム 藤原達哉

バックナンバー