JMC ISO20000

第10回 「ISO20000の規格について(10)」を掲載

概要

ITサービスマネジメントシステムの国際規格「ISO20000」を解説するコラム。 要求事項ごとに考慮すべきポイントを交え、スムーズに構築を進めるノウハウをご紹介します。

「ISO20000の規格について(10)」

今回は、「キャパシティ管理」という要求事項について解説します。

キャパシティ管理と言われると、なんとなくイメージがつく要求事項ですが、
実際に規格の内容を読んでみると「いったい何を実現したらいいの?」となってしまいます。

要求事項では、最初の1行で唐突にキャパシティ計画の策定が要求され、
その後で、キャパシティ管理で実施すべきことが記述されています。

この実施すべき内容も、最後の2行で、具体的な実施事項が要求されているだけで、
その中間のa)~e)は、要求されている意図はわかりますが、「じゃあ、いったい何を?」
という内容になっています。

全般的に言えることですが、ISO20000という規格は、「1文、1文の要求事項の意図はわかるのに、
具体的な実現イメージがしにくい」というケースが多々あります。
このキャパシティ管理も、「キャパシティ計画では何を作成すればいいの?」
「現在、そして予測されるキャパシティとパフォーマンスを要求事項に含めるって、
どうすればいいの?」といった疑問が浮かびます。

ご安心ください。この要求事項の目的は、サービス提供のコストに関する
予算管理と会計を行うこととなっています。

では、この要求事項「キャパシティ管理」を満たすにはどうすればよいのでしょうか。
それは、この規格の目的として定義されている「合意された内容を現在及び将来にわたって
満たすことができるようにキャパシティを管理する」に基づいて対応すればよいのです。

たとえば、以下の対応ができるでしょう。

顧客とコミットメントしたサービス内容とサービス品質を守れるよう、キャパシティ不足によってサービスの停止や不遵守が起きないようにキャパシティを監視する。
新たな業務上の実施事項については、キャパシティ監視の結果をもとに評価を行い、現状足りなかったらキャパシティ計画を策定して、計画した通りにキャパシティを提供する。
(通常のキャパシティ監視から、実施事項が足りなくなることが予測された場合も同様に、
キャパシティ計画を策定して、提供することが必要です。)

皆さまの業務の中で、一番身近でイメージしやすい業務が、事業計画の策定かと思います。
事業計画には、来年度の予算や目標達成のための実施項目について、必要な人員数や設備のコスト
が明確にされ、計画を策定されているかと思います。
これは、必要なキャパシティやパフォーマンスを達成するための人員数や設備投資ですので、
まさにキャパシティ計画と言えるかと思います。

ただ、一つ注意していただきたいことがあります。
今の表現ですと「キャパシティ管理は、事業計画でいいのか。」と思われた方も
いらっしゃるかと思いますが、要求事項では、「キャパシティを監視し、提供するための手法や
手順を識別すること」が要求されています。
したがって、事業計画をキャパシティ計画とされるときには、その事業計画の内容の
キャパシティの監視が必要ですし、提供のための手法や手順を明確にする必要があります。

目的は、顧客とコミットメントした内容を対象としていますので、いわば契約やSLAが
その手法や手順となります。現在策定されている事業計画に契約内容やSLAの内容が考慮され、
必要なキャパシティが明確化されていることも重要です。
キャパシティとは、「能力」も対象とすることができますので、人の能力といったときに教育計画も
「キャパシティ計画」と捕らえることができます。一概に事業計画だけで満たされるとも限らないと言える
でしょう。

これらのことを踏まえて、サービス提供で自社が管理すべきキャパシティの対象を明確にし、
要求事項に従って管理する方法を定めれば、キャパシティ管理を満たすことができます。

次回は、「情報セキュリティ管理」についてご説明します。

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筆者紹介

株式会社JMCリスクソリューションズ 吉岡努

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