知ってて損をしないIT業界の契約

第9回 最近の請負契約/委託契約の傾向

概要

ITという言葉が使われるようになったのはここ10年来でしょうか。ITに関わる法整備は遅れているのが現実です。現在のITに関わる契約の現場からの情報提供 いたします。

前回は、請負契約と委託契約における確認点について述べさせていただきましたが、委託契約は、請負契約か準委任契約かのどちらかに分類されることが多いので、今回は、請負契約、委託契約の最近の傾向について述べさせていただきます。

請負契約と準委任契約はどこが違うのでしょうか。簡単にいうと、請負契約は、仕事の完成という「結果」を求められ、準委任契約は、ある作業を行うという「行為そのもの」を求められるものと区別できます。

<ソフトウェア業界における請負契約>

ソフトウェア業界における「請負契約」の典型は「プログラム開発」ですが、最近は特に、権利意識の高まりとともに、開発したプログラムの著作権の帰属が問題となるケースが増えています。即ち、発注者がプログラム全ての著作権の譲渡を主張するケースです。

発注者としては「お金を払って作らせている以上、自分のものだ」という意識があります。確かに、機械や工作物等のものであれば納品による所有権の移転が目的ですので妥当な主張でしょう。しかし、ソフトウェアは知的な表現物として著作権に価値があります。所有権に価値があるものと一緒の取扱いは適切ではありません。

つまり、開発を請け負う受注者にとっては、ソフト開発技術を蓄積し、開発コストを抑えるために、汎用的なプログラムを再利用しながら効率的に開発すべく「再利用の権利」を確保しておく必要があります。従って、受注者がプログラムの著作権を有していることが必要不可欠と考えられています。また、受注者が著作権を有することで、低コスト開発が可能になり、最終的に、発注者に対してもリーズナブルな価格で品質の高いプログラムを提供できますし、発注者がプログラムを自由に使うことを認めれば発注者側にとっても実質的な不都合はないでしょう。

このように、受注者がプログラムの著作権を有する代わりに、発注者は高い品質のプログラムを比較的安い価格で入手でき自由に利用することができる」という状態が、プログラムの開発請負における開発者と発注者の権利関係においてバランスの取れた状態ではないでしょうか。

<ソフトウェア業界における準委任契約>

次に、「準委任」形態で締結されるのは、ソフトウェアの「技術的な支援作業」、つまり、コンピュータ・ソフトウェアのシステムへの導入・設定、システム構築コンサルティング等です。

通常、「技術的な支援作業」に関する保証期間は短期間に設定されるのが普通です。しかし、最近は、長期の保証期間を要求されるケースがあります。「開発」の保証期間と比べて「技術作業」の保証期間が短いので、「開発」と同等の保証期間を「技術作業」にも求めているのでしょう。しかし、「技術作業」は作業後に刻々と状況が変わり、時間の経過とともに技術作業の瑕疵の原因究明が困難になる傾向があります。これは、成果物のある「開発」とは事情が異なります。また、「技術作業」は、その性質上、作業終了後に早期に瑕疵が発見されることが通常です。これらを考慮すると、「技術作業」の保証期間を短期間にして早期に法的安定を図るというIT業界の慣習的な取扱いもそれなりの合理性があると言えるのではないでしょうか。

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

総務部 西別府好美

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