グリーンITを考える

第4回 グリーンITの取り組み方

概要

「グリーンIT」について検討や調査を行なっていますか???
現状では、ハードメーカ等が省電力対策を中心に対策を進めていますが、環境とITの調和を考え様々な対策を考えていく必要があります。 このような状況の中、企業のIT部門としての立場やアウトソーシングセンタとしての立場で、「グリーンIT」に取り組むケースが徐々に増えてきています。
しかし、推進担当に任命された方からは、何から進めたらよいのか、ゴール目標をどのように設定したらよいのかがわからないといったお話を耳にするのも実態です。 このような悩みを解決していくために、サイトの読者の皆さんとともに「グリーンIT」について考える場をご提供いたします。
皆さんが知りたいことや情報提供いただけることなどがありましたら、ご投稿のほどよろしくお願いいたします。

目次
CO2排出量想定の実態とIT機器の入れ替え
IT部門としての取り組み
グリーンITをどう進めるか(検討の進め方と目標設定のポイント)

CO2排出量想定の実態とIT機器の入れ替え

日本のCO2排出量は、1990年と比較して2010年には6%の削減(京都議定書の削減目標)をしなくてはならないのに対し、製造業(工場など)を除き、年々増加しているのが実態です。 
企業としては、『地球温暖化対策法』により、CO2排出量の報告と削減計画の提出が義務ずけられており、 そうした背景の中、企業の取り組みとしては、コンプライアンス活動の中で、
 
   ① 企業内で使用しているIT機器が排出するCO2の量を把握するとともに、これを削減する 
   ② IT技術を利用して、企業活動における排出量を削減する
 
必要があるのが実態です。 CO2の排出量の把握は、排出権取引の関係においては、適切な精度のある機器で排出量を計測し、記録を 残しておく必要があります。また、CO2の削減に関しては、保持しているIT機器の全ての消費電力を把握し、削減方法を整理し、継続的な管理も必要になります。
 
経済産業省が、2007年12月に発表した『グリーンITイニシアティブ』によると、IT機器の消費電力は約470億kwh(CO2排出量:2585万t)で、日本の消費電力の約5%にあたります。さらに、2025年には2400億kwh(CO2排出量:1.32億t)、2050年には5000億kwh(排出量CO2:2.75億t)になるといわれています。
 
IT機器の消費電力の増加に伴い電力コストも増加し、消費電力の無駄を省くことが必要になります。また、 省エネ機器へのリプレースや、電源装置の変換効率等により、電力コストを削減できるかが問題です。 
しかし、2005年度の世界のCO2排出量は、約266億tに対し、日本は約12.5億tであり全体の4.7%にすぎません。
こうした状況のなかで、単にIT機器を入れ換えれば良いのでしょうか。パソコンは、4年から5年使用すると通常リプレースします。サーバなどについても同じぐらい使用しているのが実態です。2025年に、IT機器の消費電力料は2400億kwhとなるといわれていますが、その内訳は、ネットワーク機器:1033億kwh、サーバ&データセンター:527億kwh、パソコン:41.2億kwh、ディスプレイ・TV:816億kwhと想定されています。 
上記のデータでは、ネットワーク機器が全体の約43%を締めていることが特徴です。2006年現在、約2000万台あるルータが4000万台以上に増加し、情報量が増加し機器が大型化するからだそうです。 
ネットワーク機器においても、10年以上使用するものはあまりありません。 
今使用している機器を、すぐに全て取り替える必要はなく、現在各メーカーが、省電力対応の機器を開発し ていますので、自社の状況に合わせてリプレース時期に省電力対応の機器を導入すれば良いともいえます。
 

IT部門としての取り組み

グリーンITと言えば、最新のテクノロジーに目がいきますが、外部へどのように情報を発信すべきかと内部でのPDCAの両面を考える必要があります。情報システム部門としては、IT知識が乏しい他部門と協力し、環境への取り組みが正当評価される様にしなければなりません。 
以下、取り組方法についてのガイダンスを示します。
 
①何を対象にするのか
『地球温暖化対策法』によれば、企業はIT機器・設備がどの位CO2排出したかとか、ITによる環境対策効果がどれ位あったかを公表する義務はありません。従って効果の公表範囲は企業内で決めることが出来ます。また、効果を発表する際は、効果が企業の一部か企業全体か、いつが基準となっているかを明らかにしておく必要があります。
②同業他社・他業界との比較を可能にする
CO2排出量評価指標は、各業界別団体や組織で、その事業特性により活動目標が明確になっています。
グリーンITの評価指標としては、PUE(Power Usage Effectiveness:データセンターやサーバ室のエネルギー効率を示す指標)があるが、測定方法が各社によ異なるなどの課題があります。しかし、数年以内には、行政・業界団体等で評価指標が明確に定義されていくことが予想されます。その動向を察知し、乗り遅れないようにしなければなりません。
③社内活動と外部への影響
環境問題は、社内活動と社外影響を考慮する必要がある。社内でCO2を削減したことにより、外部で社内 
削減した分だけを排出してしまっては、本末転倒です。社内で省エネ機器を導入することにより、消費電力は削減され、結果としてはCO2削減されます。しかし、機器を生産すると工場では当然のことながら電力を消費し、当然を排出CO2するのです。このようなバランスも重要になります。
 

グリーンITをどう進めるか(検討の進め方と目標設定のポイント)

グリーンITの推進は、まず現状の把握から始まります。企業で所有する全てのIT機器の消費電力を調査します。次に、全体の目標を設定します。
 
インターネットで筆者が調査した中で特徴的だったのが、アクセンチャア社での、ITが環境貢献に可能な5つ領域を示した表記です。
 
   ① 調達(地球環境を選択基準にプロセスに取り入れた物品・サービスの調達) 
   ② オフィス環境(省電力機器の導入) 
   ③ データセンター(サーバ・ストレージ・ネットワーク等のIT資産を共同利用) 
   ④ ワーキングプラクティス(IT組織が業務を行う場所・プロセス・構造等に関心を持つ) 
   ⑤ コーポレートシチズンシップ(IT組織の地域・国・グローバルとの環境コミュニティーとのかかわり)
 
考慮すべき点は、関係する部門が異なることです。会社によって担当している組織は異なるが、何処と協力しなくてはならないのか、どの組織が担当するかを明確にしておかなければなりません。
 
次に目標の設定です。 
領域が広いため、多種多様な施策が考えられるが、優先順位を付けて実施しなければならない。 
アクセンチュア社では、企業のグリーンITへの取り組みを評価するツール(GMM:Green Maturity Model)を提供しています。前述の5つの領域別に、ITの貢献度・成熟度を評価するようになっています。 
5つの領域別施策の現状に関する質問に回答し、集計・分析ことができ、特徴は、現状の脆弱な部分・対策が必要な部分が確認でき、同一業種の平均との比較や全業種の最高水準との比較が出来ます。現在の自社のレベルを確認し、施策の全体が可視化されるので、優先順位を付けた計画を策定するのに有効であると思われます。ご興味のある方は、英語のサイトですが、アクセスすることをお勧めいたします。

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

コンサルティンググループ 佐藤陽一

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