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AI導入、ホントのとこ ~失敗しないための心構えと実践ノウハウ~ 第6回:時系列予測
2019年5月29日 8:00

「時系列予測」はオススメです

最終回になる今回のテーマは「時系列予測」である。これまで、この連載中では「AI導入」に対して、終始ネガティブな姿勢を貫いてきたという自覚があるが、やっとこの最終回にて皆さんに「ぜひチャレンジしてみましょう!」とポジティブな発信をすることができる。

「時系列予測」をオススメする理由

「時系列予測」とは何かというと、読んで字の通り「時間」がインデックスとなっているデータの未来を予測することである。具体的には「需要予測」や「売上予測」などが挙げられる。

さて、ここで考えてみたいが、現在の世の中において、「100%の精度」で「需要予測」や「売上予測」を行っている企業や人が存在するだろうか?
まず間違いなくいない。このことが何を指すかというと、「間違う」ことを前提とした業務や仕組みが存在するということである。

この「100%の精度を担保しなくて良い」というのは大きい。

日頃、システムの開発・運用・保守などに関わっている読者諸兄姉には理解いただけると思うが、100%を求められるのと、求められないというのは、ことシステムの世界では天と地ほどの差がある。

私が「AI導入」を検討する際に、そのテーマとして「時系列予測」をオススメする、唯一にして最大の理由はココである。

加えて言えば、「画像認識」や「文字認識」では、ビジネスシーンにおける適用を考えた場合、まず人間の認識精度を超えることはないと言い切って良い。なぜならば、大抵の場合は前後業務を含めて100%の精度を担保する仕組みが構築されており、また求められる最低基準が100%である以上、それを超えることはありえないからである。

しかしながら、「時系列予測」においては、人間が予測を行うにあたっても、通常は何かしらのロジックに基づいているはずであり、それによって最低限の精度担保は可能である。加えて、システムであれば数十、数百といった人間では認知不可能なレベルのインプットデータを処理することができるため、人間よりも精度が高くなる「可能性」がある。

「時系列予測」における注意点

まず、大事なことは、システム開発担当者はもちろんのこと、ユーザ側も「数学」、「統計」、「機械学習」、「深層学習」といった辺りのことについて一通り勉強し、理解しておかなければならないということである。というのも、「時系列予測」は「画像認識」や「チャットボット」などと違い、パッと見でその良し悪しの判断をすることが難しい。もちろん、当たっているか、外れているかは、表の見方さえ教えてもらえばすぐに分かる。ここで指しているのは、もう一歩踏み込んだところ、すなわち「なぜそうなったのか」や「この先どうやって改善していくのか」である。

「画像認識」や「チャットボット」は対象こそ違えども、同じ「分類」「クラスタリング」に属しており、それは一言で言えば「ラベリング」であり、結果については言わずもがな、精度改善策やチューニングについてもイメージがつきやすい。例えば「傾きのある画像の認識精度が低いので、学習データに前処理で傾きを加えたパターンを追加しましょう」など、直感的に伝わりやすいことが多い。

一方で、「時系列予測」は「回帰」に属し、結果は数値で表されるため、まずもってその数字や傾向の意味するところを理解していなければならない。その上、改善策やチューニングについても、その算出過程、すなわち数式のパラメータチューニングとなり、直感的な理解は難しい。そのため、ユーザ側も最低限の知識を身につけておかないと、開発側が提案する内容について、そもそも理解することができない状態になってしまうのだ。

次に注意する点としては、「システム化の必要性」についてだ。要は、わざわざ「AIシステム」なんてものを高いお金を払って作らなくても、「統計」の範囲にてExcelでゴニョゴニョっとやれば十分な内容ではありませんか?ということだ。
パラメータ種類やデータ量がそこまで大きくなく、「統計」にて精度が出ているのであれば、わざわざ「深層学習」や「機械学習」を使う理由はない。

むしろシステム的な対応が必要となるのは、インプットとなるデータの出力元システムの改修であり、実現可能性や対応工数を早期に把握することが重要である。いくら取り組みたいことが見つかっても、「インプットデータが用意できません」ではお話にならない。

この点についても、「時系列予測」が「画像認識」や「チャットボット」と違うところで、あくまでも筆者の経験上での話ではあるが、これらのテーマは大体の場合、今まで全く手を出していない「新しい取り組み」であり、インプットデータとなる「写真」や「問合せ履歴」などがシステムで管理されていることは非常にまれで、その結果の連携こそあれ、インプットデータの取得元として「既存システム」が絡むことは少ない。

最後に…

最初に「今回はポジティブにいく」と宣言した割に、例によってネガティブ満載な内容になってしまったような気がしなくもないが、平にお許しいただきたい。

全6回にわたって、これまで私が携わったAI関連案件やプロダクト開発を通して経験した「ホントのとこ」を紹介させていただいてきた。私がこの連載を通じて伝えたかったことは、「手段と目的を間違えてはいけない」ということに尽きる。この世界、特にITの世界では往々にして手段と目的が逆転しがちであるが、私の知る限りにおいて、そのような状態で成功裏に終わった例はただの一つもない。

昨今の「AIブーム」によって「AIを使うこと」が「成果」であるかのような風潮を感じる場面も多いが、今回の連載が読者諸兄姉の「【真の】成果」に対して、少しでも寄与すれば幸いである。

AI導入、ホントのとこ ~失敗しないための心構えと実践ノウハウ~
あらゆるところで目にするようになったAI。しかしAIの恩恵を受けるにはテクノロジーへの理解と、正しいアプローチが必要不可欠です。 そこで数々のAI関連プロジェクト・サービスを経験してきた筆者が、AI関連技術に対する基本的な知識と、ビジョンの描き方、導入時のポイントを具体的な事例を交えて各月でお届けします。
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筆者紹介

高田 和弥(たかた かずや)
ブレインズコンサルティング株式会社
AI&RPAサービスグループ こらろぼチーム 統括マネージャー

大手ITコンサルティング会社およびIoTスタートアップでの経験を活かし、プロジェクトマネジメント、新規サービス立ち上げ、多数のプロジェクトへの技術支援、社内開発標準化、等に従事し、現在は同社が展開するAIチャットボットサービス「こらろぼ」のサービス統括を務める。

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