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独走する日本のグリーンIT 第1回 ユビキタス社会を支えるITシステム
2010年12月22日 17:00

この連載企画は、日本のグリーンITが世界最先端を走っている事実を紹介するものだ。グリーンITと言っても二種類ある。”グリーンofIT”と”グリーンbyIT”である。前者がIT機器自体の二酸化炭素排出の削減を目指すもの。後者はIT機器利用による二酸化炭素排出の削減である。この連載では後者の”グリーン
by IT”を取り上げる。


21世紀が「環境・資源」の世紀であることは常識である。その切り札になるのは、”グリーンbyIT”である。各国とも手探りの状態で、そのあるべき姿を模索している。この面で、日本は最も優位な位置にあるが、意外と知られていない。それもそのはずで、経済産業省が今年4月に音頭をとって、産業界全体を一丸とする取組みを始めたばかりであるからだ。


日本産業が「バブル経済崩壊」以後、何らなすところなく後退に次ぐ後退を続けてきたが、約20年ぶりでの「総反攻作戦」と言っても良い。その基礎条件は全て整っている。つまり、製造業とITが融合化することによって、”グリーン byIT”は軌道に乗るからだ。

 

ユビキタス社会を支えるITシステム

 私は今年4月に共著で『日本株大復活』(同友館)を出版した。その第1章で、「第2次産業革命が始まった」と強調した。それは、第1次産業革命が「化石燃料革命」であったこと。今迎える第2次産業革命は「脱化石燃料革命」であるので、製造業と深い関わりがあることを主張した。製造業が第2次産業革命をリードするという私の主張には、ITとの関わりを強化する視点を含んでいた。


これまで製造業と言えば、工学技術的なインフラと密接不可分な関係にあった。たとえば、①鉄道網、②道路交通網、③ガス・電力網、④電話・インターネットなどの情報網などに区分できる。これらを集約化すると、輸送網、エネルギー網、情報網の三つに大別できる。このうち、情報網だけは輸送網やエネルギー網とやや離れた世界に属してきた。いわば、パソコンや携帯電話のなど情報網が「閉じていた情報ネットワークの世界」を形成してきた。それが、輸送網やエネルギー網と直接つながることによって、「モノとのインターネットの世界」が誕生する大変革を遂げることになった。これが、”グリーン
byIT”の素朴な概念図である。モノと情報が難く結び合うことにより、環境・資源の制約を克服しようとする。この人類の悲願に向けて、日本発の大事業が展開されようとしているのだ。”グリーン
byIT”はこういう性格を持っている。

 

日本政府は沖縄経済の活性化策として、”グリーン
byIT”を沖縄に持ち込み、「環境未来都市」として位置づけることになった。自然エネルギーの利用と省エネを徹底するためのインフラを整備すること。太陽光・風力発電などで得る電力を効率的に利用するスマートグリッド(次世代送電網)を導入する。これらの技術の実証試験を行うとともに、環境ビジネスとしても育成するという内容である。これこそ、“グリーン
by IT”による地域経済の活性化モデルである。


「ユビキタス」とは、「どこにでもある」という意味である。正しくは、「ユビキタス・コンピューティング」と言うべきだが、「コンピュータの機能がどこにもある」ことによって、「モノと情報」が連結可能になる。周知のように、コンピュータは、情報を記憶することと処理する機能を持つ。状況を自動認識し、人・モノ・場所などをコンピュータが総合的に意識して最適制御する機能を発揮する。これが、”グリーン
byIT”の生命線になるのだ。

 

この関係をもう少し身近な例を引いて説明しておこう。家電の操作対応、太陽光発電の出力抑制、電気自動車の充電タイムシフトなどの遠隔操作が行なわれ、電力会社の情報制御ネットワークが各家庭(スマートハウス)までつながる。こうして情報ネットワークとエネルギー機器の融合化が起こる、というシステムである。この例で分かるように、従来ならバラバラになっている諸機能が情報ネットワークによって無駄なく即時に調整される。当然に、資源の無駄排除と低炭素社会が実現するのだ。

 

ここで重要なことは、”グリーン
byIT”のもたらす影響である。「ユビキタス社会」が理念上の産物から現実のものとして、人々に認識されることである。全てがメーター上に記録され人間に認識を迫る事態は、私たちの意識に根本的な変化をもたらすはずである。これまで何気なく見過ごしてきた問題が、はっきりと数値化される。これは、ぼんやりしていた映像がその輪郭を明白にする効果を持つのと同じである。この場合、日本製品のエネルギー効率の高さが、商品の競争力として最大の価値を持つ時代がくることを意味するのだ。

 

現在、中国の自動車市場は年間1800万台にも達して、世界一の市場になっている。だが、日本車は低燃費にもかかわらず販売競争上、それが優位性を発揮していない。中国ユーザーにはまだ、新車選択の基準として「低燃費」視点が欠けているからだ。いずれそれも是正されるであろう。”グリーンbyIT”には、そういう効果も期待できるのである。

 

これまで日本では、ソーシャル(制度・構造)・イノベーションが脆弱であると指摘されてきた。プロダクト(技術)・イノベーションやプロセス(製法)・イノベーションでは世界の先頭を走ってきたが、制度面で十分に対応できず、後手後手に回ってきた。今回の”グリーbyIT”では、経産省が音頭をとっているように、ソーシャル・イノベーションの脆弱を返上する積極的な動きである。やはり「失われた20年」の反省が生きている証拠でもあろう。

 

ソーシャル・イノベーションの脆弱を返上するに至った背景も再確認しておかなければならない。それは、少子高齢化が待ったなしの状態で日本を襲っているからだ。2010年の総人口は1億2700万人。それが2025年には1億2000万人を割り込んで1億1900万人余。2036年には1億1000万人を割り込む。こうした厳しい状況を見据えると、”グリーンbyIT”で世界の最先端を走り、世界中に日本のシステムを売り込む以外に、日本の生きる道がない。そこまで追い込まれている事実を知らなければならなくなっている。

 

幸い、日本製造業は品質・価格で十分な競争力を持っている。これにITシステムを組み込むソーシャル・イノベーションで未来先取りの成果を上げられるのである。米国は主な製造業があらかた海外へ移転してしまった。スマート・グリッドも満足に米国内で実証実験できない状況下にある。こうして米国内での実証実験も、日本のNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合研究開発機構)に協力を求める体たらくである。

 

現在、世界的潮流になっているのは、国家が先端産業育成の旗振り役を担っていることだ。かつての高度経済成長時代、これは日本の最も得意としたが、海外からの批判で止めていたもの。それが、急遽復活した。業界各社が血みどろの開発競争を繰り広げているものの、基礎研究面では協力する方向に変わってきた。日本の産業界が新しい方向へ向かい始めたのである。”グリーン
byIT”はその動きを促進しよう。日本経済活性化への最後の砦であるのだ。

 

連載内容(予定)

第1回 ユビキタス社会を支えるITシステム

第2回 グリーンITのCO2排出削減効果

第3回 グリーンITの決定版「スマート・コミュニティ」構想

第4回 スマート・コミュニティ構想に500社が参加

第5回 グリーンITで世界標準を目指す

第6回 グリーンITが21世紀産業の主流になる

運用研究レポート
独走する日本のグリーンIT
この連載企画は、日本のグリーンITが世界最先端を走っている事実を紹介するものだ。グリーンITと言っても二種類ある。“グリーンofIT”と“グリーンbyIT”である。前者がIT機器自体の二酸化炭素排出の削減を目指すもの。後者はIT機器利用による二酸化炭素排出の削減である。この連載では後者の“グリーン by IT”を取り上げる。
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筆者紹介

勝又壽良(かつまた ひさよし)

1961年 横浜市立大学商学部卒。同年、東洋経済新報社編集局入社。『週刊東洋経済』編集長、取締役編集局長をへて、1991年 東洋経済新報社主幹にて同社を退社。同年、東海大学教養学部教授、教養学部長をへて現在にいたる。当サイトには、「ITと経営(環境変化)」を6回、「ITの経営学」を6回、「CIOへの招待席」を8回、「成功するITマネジメント」を6回、「ITで儲ける企業、ITで儲からない企業」を8回にわたり掲載。

著書(単独執筆のみ)
『日本経済バブルの逆襲』(1992)、『「含み益立国」日本の終焉』(1993)、『日本企業の破壊的創造』(1994)、『戦後50年の日本経済』(1995)、『大企業体制の興亡』(1996)、『メインバンク制の歴史的生成過程と戦後日本の企業成長』(2003)

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