流通・小売業向けITサービスマネジメント

第2回 「運用」事例について

前回サザエさんなども例にし、家族構成や少子高齢化、多様化する消費動向の変化をお伝えし、そういったことを背景に小売業も変化していることをお伝えしました。知らず知らずのうちにPayPayを始めとした決裁サービスを使ってスマホをかざしながら精算を済ませたりすることすらも、10年前に比べると著しく変化している点であると実感されると思います。小売業をお客様とするITサービスプロバイダーもその変化に追随しサービス提供方法が変わってきております。IT業界は技術の変化(汎用機からオープン系へ)とともにクラウドのような定額料金を支払いするコンテンツやサービスが主流となり、資産を「所有」ではなく「利用」するサブスクリプション提供にシフトしてきており、そういったサービスなども劇的に変化しています。今回はそういった技術やサービスが激変する中で、ITサービスプロバイダーとしてのサービス提供状況についてご紹介したいと思います。

まずは「運用」(≒ITサービス)の話をする際に、「運用」という言葉でイメージする仕事・作業は何かを想像してみてください。ある人は新入社員などが着任する際の貸与パソコンの設定(資産管理シール貼りを)することを指したり、またある人はトラブル対応に追われ、日々必至にシステム画面に向かってコマンドを叩いたりすることを指したり、またある人は問い合わせ対応に奔走する人(社内ヘルプデスク)を指したり、もしかすると経営者の中にはストックビジネス全体のことを指すとご認識されている方もいらっしゃるかと思います。それくらい「運用」という単語は便利なモノです。便利使いをされるほど範囲の幅が広く・深いモノなので、まずはそれぞれの立場に合わせて、どの話をしているのか?の焦点を合わせる必要があります。逆手に取ると幅広い範囲で広く捉えることができる為、「運用」という単語を便利に使えば様々な立場の人を集客することもできるでしょう。

運用を語りたい時は相手にどこのことを伝えたいのか?を共通認識する為に私は次のような絵を使います(「図1:運用の定義について」「(参考)主な作業例」を参照)。

その中でも、まずは「狭義のシステム運用」についてお話したいと思います。
狭義の運用の現場では通常に動いて当たり前。有事の時にはF1のピットイン並みに給油する人、タイヤを替える人等々役割分担をし、いかに全員が手際よく連携し迅速な対応が図れるか?によって顧客満足度に差が出てくるものと思います。日々狭義の運用の現場では有事に備えた訓練(イメージトレーニング)や点検をしながら日々業務の効率化、生産性向上に邁進しています。

図1:運用の定義について、(参考)主な作業例

宣伝にはなりますが、この狭義のシステム運用を弊社では、中国(杭州)にて運用しております。システム自体は国内にあり、そこからアラートを発報することで、L1レベルのほとんどの対応を中国にて対応しています。監視センターが日本と中国にある為“グローバル”BCPとしても機能しております。最近では、新型コロナウイルスによる在宅勤務時、震災対応時などは片型運転をした事例もあります。

https://www.vinx.co.jp/solution/remote/ https://www.vinx.co.jp/solution/infrastructure/datacenter.html

長年の大手流通業様向け運用業務を通じて得た、ノウハウとITILに準拠した品質で、グローバルなデータセンターと日本・中国を中心としたユーザー視点での安心かつ安全な24時間365日の運用監視サービスをワンストップサービスにてご提供しております。また広義の運用については事業戦略の通り、大手流通業のユーザー系情報システム会社として流通・サービス業システムの長年の業務を通して得た経験と豊富な実績をもとに「超ユーザー系企業」としてのお客様業務サポートをしております。

https://www.vinx.co.jp/corporate_info/strategy.html

絵1:弊社データセンターの実績について(2018年現在)

今までお話した広義・狭義の運用という言葉をお客様と共通理解した上で、ITサービス提供側の立場に立ってサービスを提供し続ける際の重要点について述べたいと思います。
ITサービス(≒運用)は「顧客に対して価値を提供する為の手段の一つであり、顧客が特定のコストやリスクを負わずに、期待する成果の実現を促進すること(itSMF Japan発行『ITサービスマネジメント用語集ITILV3版』より)。つまりITサービスとは、顧客のビジネスを支援するために、顧客と合意した品質水準であり、ITの機能をITシステムを通して提供することである。それを属人化せずキッチリプロセスごとに管理する仕組みが運用管理=ITサービスマネジメントシステムと言われています。初めの提供段階においてITサービスの提供者側とお客様との合意が重要であり、様々な定義をお互いで合意する必要があります。その際ITサービスを運営管理するための計画とルールを作り、それに従って実践し、点検するプロセスを回して改善していくことなどを合意していきます。またそのサービスの品質水準、すなわちサービスの内容やサービスの品質レベル目標及び顧客とITサービス提供組織の双方の責任が明確に示され、お客様とITサービスを提供する組織との間で合意形成されなければなりません。この合意形成をSLA、SLOという文書で取り交わされることが一般的です。合意形成で重要なのは、ITサービスに対する顧客の要求事項を満たすことを前提として、ITサービス提供組織の事業戦略と顧客要求事項とのバランスを取りながらITサービスを提供することです。これがITサービスマネジメントシステムの目的になります。けど、定義はそうであってもなかなか実践できていませんよね。マネジメントすることを当然のように言われる為に対価が顧客に認められず、怒鳴っているお客様と謝っている営業の会議シーンが目に浮かびます。これはマネジメント工数分の対価について顧客との合意ポイントの何かがずれていることに対して生じるものと思われます。

どうしてもお客様のITリテラシーに合わせてお任せされるケースが多いのですが、そんな時はリスク=保険が入るのでコストが高くなりますし、細かく規定したい場合でも要求事項が増えるので結局コストが増えてしまいます。あまり厳しい要求も求めない緩いポイントで合意される方がコストとのバランスがうまく取れるように思えます。しかしながら、合意していても通常の運用の現場ではサービスレベルを正しく理解されずに怒鳴られるケースも多々あります。(「図2:ITサービスの提供は顧客との合意」を参照)怒鳴られると不快な気持ちになりますよね。ですが、もはや怒られることを生きがいに感じてしまうようになってしまった運用部門長にとっては、“最上級のご褒美”となっていることも少なくありません。(叱咤激励してもらえていることをやりがいに捉えるという意味なので誤解なきように。。。)

図2:ITサービスの提供は顧客との合意

ジェットコースターのように上下する数字は刺激的かもしれませんが先が読めず、経営者から見た時には運用(広義・狭義)はある程度先の数字が見通せることで安心を与える貴重なものです。そこに従事していることを誇りに頑張りましょう。また吉野家のキャッチフレーズで「うまい、やすい、はやい」と言われますが、この業界でも「うまい」を品質がよい。気の利いたことをしてくれる。などと読み替えれば、まさにお客様の求めるものはこのフレーズだと思います。エンドのお客様(または業務部門)から怒られるのではなく、ITサービス提供者の日々の努力に対して、報告会の折に褒めてもらえることが一番の励みになるのです。

7月は、そういった人たちを“おつカレー様”で癒やしてくれることでしょう。。。

次回はDXの取り組みについてお話したいと思います。

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筆者紹介

天野 孝 (アマノ タカシ)
株式会社ヴィンクス 営業本部 部長
1992年 株式会社ダイエー入社と同時に情報システム子会社に出向。

ネットワーク管理業務を経てネットワークSEとして大手顧客、及び新規顧客向けインフラ提案・構築に従事。
2009年 某社様の基幹システム全面刷新時インフラPM。構築完了後そのシステム保守・運用に関するプロセスを整備し、運用フェーズの品質を管理するITサービスマネジメントに従事。
2012年 ITサービスソリューション部にてITサービスにおけるインフラ・運用人材の育成やITサービスに関わる新規事業戦略策定に従事。

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