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流通・小売業向けITサービスマネジメント 第1回 流通・小売業を取り巻く課題について
2022年3月30日 10:00

 日本の流通小売業界は、戦前に伸びた百貨店業態から戦後はスーパーマーケットや総合スーパー業態が台頭し、今や家電量販店やドラッグストア、コンビニエンスストアなど様々な業態も伸びています。このように、激変する社会や暮らし方に対応するため挑み続ける流通小売業界の勢力図は、今後も移り変わり続けていきます。直近のコロナ禍においても生き残りをかけたM&Aなども積極的に行われている業界です。
 そもそも小売業は地域やお客様のライフスタイルに合わせて連動しながら一緒に共存することで価値ある商品・サービスを提供しています。人々の笑顔が生まれる、お客様にとってなくてはならないお店を創造していきたい、そんな熱い想いを持った販売員をはじめ店舗経営を担う店長やバイヤー、商品開発、店舗開発、販売促進、Eコマース、情報システム、物流管理などが一体となって、安全でおいしい商品やうれしいサービスを欠かすことなくお届けし社会や暮らしを支えています。
ご参考までに、この業界の市場規模については経済産業省2021年度上期の小売業販売を振り返る(※1:図1)に掲載されています。

(図1)経済産業省 2021年上期を振り返る

https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini152j.pdf

 私も会社を出れば1人の消費者です。より良いもの、より安く購入できるシステムが整っているこの国、この時代で安心して豊かな生活ができていることを大変ありがたく思っています。
 さて皆さん「サザエさん」はご存じでしょうか。(唐突に!?)主人公のサザエさんが24歳。マスオさんが28歳、お父さんの浪平が54歳でフネさんは50過ぎの設定です。今の50歳だと藤原紀香さんですよね。初孫にあたるタラちゃんがいるとは想像できません。笑。一方「クレヨンしんちゃん」はご存じでしょうか。主人公のしんのすけが5歳で、お父さんのひろしが35歳、お母さんのみさえが29歳、妹のひまわりは0歳の設定です。時代を風刺し機転の利く子ですよね。どちらも連載開始から30年以上もたっています。こんな家庭を例にあげたのも人生60年という時代から、いまや人生90年、もう少しで100年になる中で少子高齢化、首都圏の人口集中、核家族化の進行などによって生活スタイルも激変し、マンガでは浪平が縁側でお茶を飲んでいる光景も見られましたが、今や身体機能を維持している75歳以上の男性79.7%、女性68.8%は「毎日外出する」もしくは「週4~5日外出する」という結果です。しんのすけも将来100歳のお父さんの面倒を見る頃には70歳になっています。現代では、人々の、消費のあり方、サイクルが複雑になった上に様々なライフスタイルが存在し、年齢だけでのターゲティングが難しくなってきています。小売業の現場では、withコロナ、afterコロナに加え、先進的に店頭でのペットボトルや食品トレーの回収等の3R(※注1)の推進や食品ロスの削減、照明のLED化や再生可能エネルギーの活用等を推進しています。更に今年の春には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、環境に配慮した商品設計や使用の合理化、資源の自主回収等が法制化され一層生活様式も変化してくると思われます。
3R(※注1)
①Reduce(リデュース):ものを大切に使い、無駄なごみを減らすこと。
②Reuse(リユース):もう一度、繰り返し使うこと。
③Recycle(リサイクル):ごみを、資源として再利用すること。
 そういった社会への適用、生活スタイルの変化、ニーズの多様化する中で、平常時はもとより、自然災害時等いかなる状況においても備えを欠かさず、地域の重要なライフラインとして、日々の暮らしを支え、豊かで活力にあふれた潤いのある社会の実現を目指し、お客様と従業員の視点で、地域の暮らしを支えていくことが使命となってきております。そんな中で流通小売業が抱える課題にはさまざまなものがありますが、大きく「外的要因」と「内的要因」に分けることができます。たとえば総人口の減少による市場の縮小、といった外的要因へは一企業の取り組みでは解消が困難であるため割愛し、内的要因にフォーカスしてお話します。 現在の流通小売業が抱える内的要因としての課題には次のようなものが挙げられます。
① 人手不足による顧客満足度の低下
業界を問わず昨今は売り手市場で人材獲得が困難になっています。流通小売では人手不足が接客対応の質に直結することから、消費者の満足度低下を招いてしまいます。リアル店舗において対面の顧客サービスを求める消費者は多く、接客は消費者ニーズを知る手段でもある為、人手不足は致命傷となります。
ましてやコロナ禍で、対面に立った仕事を敬遠される人も多く、雇用の確保が難しくなっております。
② 在庫不足による機会損失
流通小売業であればどこでも「在庫過多」にならないような在庫管理を心がけています。ただし、在庫が不足してしまえば、販売機会のロスにつながるため、過多にも不足にも傾かない適正な在庫管理が課題となっています。
③ レジ待ちの行列による顧客満足度の低下
スーパーマーケットなど多くの業態で見られるのがレジでの精算のために消費者が長蛇の列を作って待つ光景です。顧客体験の価値向上が叫ばれる現代においてクレーム要因のひとつとなっています。
④ 万引きによる損失
実店舗を運営するうえで頭を悩ませるのが「万引き」の問題です。警察庁の調査によれば、近年では高齢者の占める割合が増加し、平成29年度では40%近くにものぼります。少子高齢化が進む日本では、今後も高齢者の万引きが後を絶たないことが予想されます。
⑤ データを活用できる人材の不足
一人の顧客がリアル店舗とECサイトの両方に接点を持つオムニチャネル時代において、流通小売業に属す企業に日々流入してくるデータは種類も量も膨大なものになっています。ただ、さまざまなデジタル機器により大量データの収集は可能でも、それを分析し対策を導き出せる人材の確保ができているところは少ないというのが現状です。

消費動向が大きく変化している中で課題の裏返しを考えると、小売業としての成長戦略の大きな柱はヒトが活躍できる環境づくりとデジタル技術の活用と考えます。
小売業は地域雇用を支える産業でもあるものの、人手不足の課題は喫緊の課題の一つです。生活様式が変化する中において、持てる力を十分に発揮するための就労環境や人事制度の整備が重要です。継続的な雇用の確保や教育の充実だけでなく、従業員のより多様なニーズに対応できる勤務や雇用の制度をより進化させていかなければなりません。人手不足の解消には、特にパート社員の即戦力化などの施策もあります。もう一つはデジタル技術の活用としてAIやIoTに代表されるような戦略的IT(=DX)に対して今後、積極的に投資されていくことと思われます。
デジタル技術は、お客様の声にお応えするための新しいサービスの提供やビジネスモデルの変革をし、成長に繋げていくための重要なツールです。非接触型・非対面型のニーズの高まりにより、ネットスーパーやEC市場の拡大はもとより、キャッシュレスやレジレスでの会計や無人店舗などの展開、アプリやサイネージを活用した販売促進等をお客様サービス分野でAI分野やデジタル技術の活用が拡大しております。ビジネスモデルの変革のため新しいデジタル技術の更なる導入拡大に向けては、無人店舗やEC等の運営システムの開発・運営だけでなく、AIカメラや決裁端末などの店舗設備やRFIDタグ等多様な分野におけるコストが課題となっております。さらに、生活インフラとして見込まれるキャッシュレス決済の一層の拡大には諸外国と比較してクレジットカード等の決済手数料の高さが課題であり、キャッシュレス決済全般において社会全体で安全面と運営コスト面で現金取り扱い同等の水準を目指すことが重要であると考えられています。
今後はそういったデジタル技術の活用や環境への取り組みなどサプライチェーン全体での連携も重要な課題と思われます。
一方、課題解決のためのIT活用方法としてどのようにITを活用し、課題解決していくのかには、どのようなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。効果的なIT導入に必要な3つの検討ポイントについてご紹介します。
① ITで何を解決したいのかを明確にする
自社が抱える課題を精査し、ボトルネックになっている部分など優先度の高いものを解決すべき課題として掲げることです。当たり前のことですが、これを明確にせずにIT導入を進めてしまうと、IT導入が手段ではなく目的と化してしまう恐れがあります。
② ITで解決できることを理解する
導入を検討しているツールやシステムができること、逆にできないことを検討段階で具体的に把握しておく必要があります。この段階では、自社の課題については考えず、単にそのITがどのような目的で作られ提供されているのかを理解することに努めます。導入事例なども参考になるでしょう。
③ 目的に合わせたITの活用で課題を解決する
① ②がマッチするかどうかを検討し、自社の課題を解決できるITサービス及びITサービス事業者を選定します。導入後は計画通りに課題が解決されていっているのかを検証・評価し次のアクションを決めていきます。
IT活用による課題解決事例として、先ほど取り上げたような流通小売業が抱える課題を、実際にITの導入により解決した事例をご紹介します。
① AI店員により人手不足を解消
生花店「モンソーフルール」では、AI対話エンジンを搭載したAI店員を導入しました。AI店員は、カメラ付きのデジタルサイネージと女性の店員風マネキンというUI(User Interface)で、人間の店員の代わりに、花の提案や花言葉の意味の説明などの接客を行います。英語、日本語に対応可能で、中国語、韓国語への対応も準備を進めているといいます。
② RFIDで棚卸作業時間が10分の1。適正な在庫管理で販売機会ロスを解消
アパレル製造・販売などを手がける「ビームス」は、店舗内の全商品(約6,000点)に電子タグを装着し、POSシステムとRFIDリーダー・ライターを連携させることで精算・商品管理作業の効率化を実現しました。導入前に40時間かかっていた棚卸作業を4時間へ圧縮したほか、出荷・検品、登録・売上登録までのすべての工程を電子タグを利用して管理したことで在庫切れによる販売機会のロス解消を実現しました。
③ AIによる商品需要予測で値下げロスを最大30%削減(クイーンズ伊勢丹)
株式会社エムアイフードスタイルが展開する高級志向のスーパーマーケットチェーン「クイーンズ伊勢丹」では、経済産業省が実施する小売業の生産性向上に関する調査の一環で、2店舗においてAIを活用した需要予測システムを導入しました。これは、過去の商品販売実績や廃棄数、気象予報、キャンペーン情報といったデータをもとにAIが需要を予測したうえで値下げのプランニングを行うというものです。これまでは、同様の予測を行うためにBA(ビジネスアナリティクス)ツールの予測シミュレーション機能を用いる小売店が多く、予測に数日間を要していました。AIの活用により1秒足らずで需要予測ができるようになったうえ、値下げロスを最大30%削減できたといいます。データの分析を行える人材不足にも対応できるソリューションとなっています。
最後に課題解決のためのIT活用について述べましたが、ITベンダーから見たらどのお客様であれ共通する話だと思います。お客様との一層親密な関係構築により課題を聞き出しITで解決していく取り組みがベンダー側に求められています。

次回は、IT導入された後のITベンダー側の運用事例(弊社事例)について簡単にご紹介したいと思います。

スキルアップ
流通・小売業向けITサービスマネジメント
最近ではインターネットによる買い物や非接触型ICカードによる電子マネーなどが普及し、ITの活用が大きな利便性の向上をもたらしており、ITサービスが社会基盤として不可欠になってきている。 ここ数年、新型コロナウイルスの感染が拡大される中で、一気にDXが加速しビジネス環境が変化している。 こうした変化に即応しビジネス変革を支えるITに対して期待も高まり、ITサービスに対する信頼性が要求される中で、継続的に品質維持・向上するためにはどのようなことをすればよいか?
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筆者紹介


天野 孝 (アマノ タカシ)
株式会社ヴィンクス 営業本部 部長
1992年 株式会社ダイエー入社と同時に情報システム子会社に出向。
ネットワーク管理業務を経てネットワークSEとして大手顧客、及び新規顧客向けインフラ提案・構築に従事。
2009年 某社様の基幹システム全面刷新時インフラPM。構築完了後そのシステム保守・運用に関するプロセスを整備し、運用フェーズの品質を管理するITサービスマネジメントに従事。
2012年 ITサービスソリューション部にてITサービスにおけるインフラ・運用人材の育成やITサービスに関わる新規事業戦略策定に従事。

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回答数:22019年11月12日

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