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システム運用改善虎の巻 第1回 運用の変化と運用改善の目的
2021年4月19日 10:00

 皆さんは、「なんで運用改善が必要なのか」について考えたことがありますか?
 初回は運用を取り巻く環境の変化を説明しながら、運用改善の目的を考えてみようと思います。

システム運用からサービス運用への変化

 これまでITシステムは、計算や記録といったコンピュータの特性を生かして、人の手で行っていた作業をコンピュータに代行させるためにシステムを導入していました。その頃のITシステムはオンプレミスで構築されていて、運用というとネットワーク、サーバー、OS、ミドルウェアなどの維持管理が主な作業でした。その後、第4世代移動通信システム(4G)やスマートフォン、タブレットといったポータブルデバイスが普及し始めると状況が変わり始めます。

 この革新によって従業員が対面で行っていた多くのサービスが、インターネットを介してシステムから直接ユーザーへ届けられるようになります。これまではバックオフィスの業務効率化がメインだったシステムが、企業のフロントとしてサービス・プロバイダ(service provider:サービス提供者)となってきたのです。そうなると、サービスの提供基盤となるシステムを運用している運用者も、サービス・プロバイダの一部として重要度が上がってきます。

 もちろん、これまで通りに社員がシステムを利用して、ユーザーへサービス提供するパターンも残っています。その場合もシステムなくして業務を行うことが難しいぐらいにまで、ITの役割は大きくなっています。
 昨今では大規模なサービス停止は、ニュースとして扱われるようになってきました。銀行のATMなどの重要インフラサービスはもちろんですが、AWS、Azureなどのクラウドサービスの大規模障害もニュースになります。ITは完全に社会インフラになったのです。電気がそうであったように、今後ITも生活の隅々まで染み渡っていくことでしょう。この変化は、ありとあらゆるコトをデジタル化していくことにもなります。
 デバイスとインターネットの普及と進化で、ITサービスを利用する垣根もどんどん低くなります。これまではシステム構築に莫大な費用がかかり、ITの利用をあきらめていた業種にもデジタル化の流れは進んでいきます。
 例えば、農家が収穫した野菜の写真と特徴などのテキストデータをインターネットで公開して、直接消費者へ届けることがスマホ一つで可能になりました。ビニールハウスの温度管理や水やりなども、IoT端末から得た情報を元に管理することができるでしょう。

 企業はこういったITサービスを開発して、プラットフォームとして提供するビジネスが増えていきます。利用者もサービスを活用して生産性を向上させていくことになります。このデジタル化やサービス化の流れに乗れた企業と乗れない企業では、とてつもない差がついてしまいます。日本の一部の大企業では、業界の慣習を変えられないこと、部分的にしか最新のテクノロジーが導入できないことが原因で諸外国よりもかなり遅れている状況となっています。企業がトランスフォーメーションするための土台として、情報システム部門はITテクノロジーの進化に追随していくマインドを獲得しなければなりません。そのためには、システム運用という狭い範囲から、企業のサービス全体を運用するというサービス運用(Service Management)へ変わっていかなければなりません。でも、いきなり明日から「システム運用からサービス運用に変わります!」ということはできないので、変化するためには、継続的な運用改善が必要になります。

運用チームに求められていること

 では、サービス運用に求められている業務範囲はどこになるかを考えてみましょう。
 クラウドサービスの台頭によって、物理的なハードウェア管理、データセンター管理などの運用業務は減ってきています。代わりに、サービス全体の管理やデジタル化に向けた運用改善が求められてきています。

 効果的なビジネス推進や業務推進を行うためには、運用業務を徹底的にデジタル化しなければなりません。
 ユーザーからの申請や問い合わせに関するデータ、サービス運行状況(障害やキャパシティ)のデータといった運用で収集できる情報を、分析できる形で収集する仕組みを構築する必要があります。それらのデータをもって、開発チームと一緒に開発していくことがDevOpsだともいえるでしょう。

運用改善の目的は生産性の向上

 次に実際の運用改善について考えてみたいと思います。運用改善には作業を自動化したり、データを可視化したり、効率的なツールを導入したりと色々な活動がありますが、それらの活動は「生産性の向上」という言葉でほとんどの内容がカバーできます。
 そのため、運用改善の一番大きく普遍的な目的は「生産性の向上」になります。
「生産性」には、以下の3種類があります。

■資本生産性
 保有している機器や設備などの資本がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したものです。導入したサービスの利用率を上げたり、システムの性能や冗長性と対障害性を向上させてサービス稼働率を向上させる施策が考えられます。

 

■労働生産性
 労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したものです。基本的には以下の3つを行うことで向上させることができるとされています。

・業務効率化
・メンバーのスキル向上
・経営効率の改善等

 経営効率の改善等については、運用の範疇ではないので割愛します。
 業務効率化はローコード開発プラットフォームなどで業務を自動化したり、不要な手続きを廃止して業務を効率化する施策が考えられます。

 オンプレミスで稼働していたシステムをクラウドシフトさせて運用コストを削減させるといった施策も広義の業務効率化といえます。メンバーのスキル向上については、新たな技術を習得したり、サービスに関する知識や経験を深める施策が考えられます。
 今後は技術的なテクニカルスキルを伸ばすことと合わせて、チーム間コラボレーション推進に欠かせないコミュニケーションスキルを伸ばしたり、問題発見、課題解決、困難な案件にも対応できるメンタリティなどのコンセプチュアルスキルを伸ばしていくことも重要となります。

■全要素生産性
 労働や資本を含む全ての要素を投入量として、産出量との比率を示すもの。全ての要素を投入量として数値化するのは困難なので、全体の産出の「変化率」から、労働と資本の投入量の変化率を引いた差として計測されます。
 全要素生産性はすべての資本と労働を組み合わせたものなので、算出方法は複雑になります。運用改善で全要素生産性を意識することはあまりないので、概要だけ理解しておけば良いと思います。

 生産性のボトルネックとなっている課題を取り除くことが、運用改善の本質とも言えます。そのため、運用改善をしていく際に、その活動内容が資本生産性の向上のためなのか、労働生産性のためなのかを意識することは大切です。この2つの生産性をバランスよく継続的に改善していくことで、理想の運用に近づいていくことができます。

 今回は運用改善を行わなければいけない理由と目的について解説してきました。
 次回はサービス運用を始める時に、必ず必要となるサービス・ポートフォリオ管理について説明します。

 

図の出典:『運用改善の教科書 ~クラウド時代にも困らない、変化に迅速に対応するためのシステム運用ノウハウ

スキルアップ
システム運用改善虎の巻
システム運用改善をしたいけれど、なにから手を付けたらよいのかわからない。そんなシステム運用担当の方に向けて、「なぜ運用改善をしなければならないのか?」「どんな運用改善に効果があるのか?」といった疑問を、最新のトレンドを交えつつお伝えしていきます。この連載では、運用をより良くする方法、ITサービスの価値を最大化するための視点や行動を解説していきます。
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筆者紹介

近藤 誠司(こんどう せいじ)
 1981 年生まれ。運用設計、運用コンサルティング業務に従事。オンプレからクラウドまで幅広いシステム導入プロジェクトに運用設計担当として参画。そのノウハウを活かして企業の運用改善コンサルティングも行う。
 趣味は小説を書くこと。第47 回埼玉文学賞にて正賞を受賞。
【著書】
運用設計の教科書 ~現場で困らないITサービスマネジメントの実践ノウハウ

運用改善の教科書 ~クラウド時代にも困らない、変化に迅速に対応するためのシステム運用ノウハウ

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