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目指せ、運用デザイナー!~システム管理者の明日を考える 第5回:オペレーションマネジメント(その1)
2018年11月21日 11:20

開発と運用の壁。これがさまざまな問題を生む。開発担当者は運用を考えずにシステムをリリースし、足りない部分は「運用でカバー」の一言で運用担当者にナントカさせようとする。そして、たいてい火を吹く。なぜなら、リリース間際に対処しようとしても付け焼き刃の属人的な対応しかできないからだ。この状況、運用も開発も、何よりシステムを使う顧客やユーザも幸せにしない。運用をデザインしよう。この連載では、運用を主体的にデザインし、価値あるITサービスを提供できる人材になるための視点や行動を考えます。

今回は(4)の「オペレーションマネジメント」について、その1です。(クリックで拡大)

1.オペレーションをマネジメントしよう

どんな業務・サービスにも「割り込み」やトラブルはつき物。
「割り込み」やトラブルに、いかに迅速に対応するか? なおかつ、二度同じトラブルを起こさないための対策を検討して実施できるか? これを仕組みで回すことのできる組織は、利用者にとって価値の高い運用組織といえるでしょう。また、運用するスタッフのストレスも軽減され、本来の価値を発揮する業務に専念できます。それは、スタッフの健全な成長をも下支えします。

今回と次回では、私たちが日々あたり前に使っている「インシデント管理」「問題管理」を中心に、「割り込み」やトラブルをどうマネジメントするかを振り返ります。

2.インシデント管理

「割り込み」「トラブル」など業務やサービス品質の低下や中断が発生したとき(あるいはしそうな時)、迅速に正常な運用へと回復させインパクトを最小限に抑えるための取り組みをインシデント管理と言います。

すべての「割り込み」「トラブル」にその場で対応していたらキリがありません。いくら人手があっても足りないですし、本来の業務・サービスが提供できない状態が続いてしまいます。また、業務の改善や、サービスの付加価値向上を検討する時間なんていつまでたっても確保できないでしょう。
とはいえ、放置する訳にもいきません。クレームが新たなクレームを生み、ますます対応に手間がかかってしまいます。適切に向き合い、迅速に対処する。そのための仕組みを構築して運用しましょう。

3.インシデントとは

通常の業務の遂行を邪魔する何かを、「インシデント」と呼びます。
クレームのような「割り込み」も、トラブルも通常の業務の手を止めて対応しなければなりません。これらはインシデントです。
それ以外にも、さまざまなインシデントが日々発生します。

<インシデントの例>

①業務上のトラブル(例:作業ミス、し忘れ、品質低下)
②システムトラブル
③通常サービス外の要望や依頼(例:「特別に~してほしい」「こんなことはできないか?」)
④クレーム(例:「対応が悪い」「説明が分かりにくい」「責任者を出せ!」)
⑤問い合わせ(例:ログインIDを忘れました)
⑥その他、業務やサービスを提供できない状態(例:台風接近でスタッフが出社できない)

⑦改善提案
⑧予防措置

【図1】インシデントの例(クリックで拡大)

「トラブルやクレームは分かる。でも、スタッフからの『改善提案』や『予防措置』もインシデントなの? 良いことなのに……」

はい。「改善提案」「予防措置」もインシデントとして扱うと良いでしょう。
改善提案も、予防措置も、通常業務の手を止めて検討する必要がありますよね。すなわち、通常の業務の遂行を止める何かであることには変わりがありません。良しあし判断はせずに、いったんインシデントとしてとらえて、その後に向き合い方を決めていきましょう。

4.インシデント管理のモデルフロー

インシデントはただ気付いた本人が心の中にとどめていただけでは、管理できているとは言えません。

検知(察知)して⇒記録して⇒共有して⇒向き合い方を判断して⇒対応して⇒完了(クローズ)する必要があります。もちろん即対応が求められるインシデントについては、「スタッフが即対応してよいレベルのインシデント」をあらかじめ定義した上で、記録は後日とする運用も求められます。

インシデント管理の詳細なモデルフローを示します。IT運用の現場で用いられている、典型的なフローです。

【図2】インシデント対応の大まかな流れ(クリックで拡大)

5.インシデント管理を行うメリット

一見、めんどくさそうなインシデント管理。取り組むメリットは十分にあります。

①インシデントの対応内容を組織知にする

都度発生するインシデント、たまたま受けた人がその場で脊髄反射で対応していたのでは、「誰が」「どのようなインシデントに」「どう対応しているのか」分かりません。これでは、いつまでたってもスタッフが属人的なスキルや気配りで目先のインシデントをひたすらつぶす状態から脱することができません。

②インシデントの発生傾向や対応にかかる労力を可視化する

日々、なんとなく対応していてはインシデントの発生傾向も量も対応時間も分かりません。その結果……

「マネージャーが、組織の問題や課題が見えない」
「経営層に、現場の忙しさの妥当性を伝えられない(その結果、投資など適切なサポートが得られない)」

このような状況に陥ります。インシデント管理は、現場の実態を正しく把握し、正しくリソースマネジメントするためのツールでもあるのです。

③対応漏れを防ぐ

「お客さんからの問い合わせ、未回答のまま放置してしまった!」
「機械の消耗品の交換、忘れてしまった!」

インシデント管理には、このような対応漏れを防ぐ効果もあります。これらのインシデントを記録して、定期的にチームメンバー(あるいはマネージャー)が確認する運用にすれば、誰かしらがやり忘れに気付いてリマインドしてくれます。
(インシデント管理に特化したソフトウェアやクラウドサービスには、メールやアラームでリマインドしてくれる機能を持つものもあります)

④対応しないインシデントを決められる

すべてのインシデントに対応していたらキリがありません。
時には「断る」「保留にする」判断も重要。しかし、現場が忙しければ忙しいほど、さらには真面目な人が集まっている職場ほど、飛び込んできたインシデントをすべて自分でなんとかして対応しようとします。いったん記録して、「たたかう」「にげる」「ぼうぎょ」「じゅもん(効率化)」「どうぐ(外注など)」、という風にチームで向き合い方を決めることで、以降、すべてのインシデントと戦わなくて済むようになります。

⑤対応品質のバラツキを防ぐ

スタッフによるインシデント対応のバラツキも問題です。
「あの人は対応してくれたのに、なんであなたは対応してくれないのですか?」

このようなバラツキは、無駄なトラブルやクレームを生みます。なし崩し的に「手厚いサービス」にひっぱられ、いたずらに運用コストをあげるリスクもあります。また、人によって対応がバラバラでは、後任の育成もできません。
インシデントを記録し⇒どう対応すれば良いかをチームで検討し⇒判例を残していく。これにより、対応品質の平準化を図ることができます。

⑥受けとめてもらえる安心感

スタッフが抱えているクレームや、中からの改善提案。
ともすれば、誰にも気付いてもらえなかったり、その場で流されて放置されたりしまいがち。
インシデント管理簿に記録し、確実にチームで受けとめてもらえる運用にすることで、

「ここに記録しておけば、いざと言うとき助けてくれる」
「私の頑張りをわかってもらえる」
「改善提案が、放置されない(リーダーがやる/やらない判断や進捗管理をしてくれる)」

このように、チームに安心感が生まれます。また、スタッフが自分自身の抱えている飛び込み案件の備忘録として活用することもできます。

インシデント管理は文化です。
「ヒヤリ、ハットを記録する」
「ちょっとした気付きや改善提案も、インシデントとして起票する」
「困ったことは、インシデントに残す」
この行動習慣が、インシデントにチームで向き合い、チームで解決する組織風土を醸成します。

次回は、オペレーションマネジメントのその2、問題管理を解説します。

 

運用をデザインできる人材は、これからの時代、間違いなく価値ある人材として活躍の場が広がります。

目指せ、運用デザイナー!

 

人材育成
目指せ、運用デザイナー!~システム管理者の明日を考える
開発と運用の壁。これがさまざまな問題を生む。開発担当者は運用を考えずにシステムをリリースし、足りない部分は「運用でカバー」の一言で運用担当者にナントカさせようとする。そして、たいてい火を吹く。なぜなら、リリース間際に対処しようとしても付け焼き刃の属人的な対応しかできないからだ。この状況、運用も開発も、何よりシステムを使う顧客やユーザも幸せにしない。運用をデザインしよう。この連載では、運用を主体的にデザインし、価値あるITサービスを提供できる人材になるための視点や行動を考えます。
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筆者紹介

沢渡 あまね(さわたり あまね)
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。

日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。

現在は複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」「業務改善プロジェクト」のファシリテーター・アドバイザー、および新入社員・中堅社員・管理職の育成も行う。これまで指導した受講生は3,000名以上。趣味はダムめぐり。

【ホームページ】
あまねキャリア工房

【ブログ】
はたらきかた「プチ」改善業務改善娘

【主な著書】
「システムの問題地図」
「職場の問題地図」
「マネージャーの問題地図」
「新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!」
「新入社員と学ぶ オフィスの情報セキュリティ入門」(共著)
「ドラクエに学ぶ チームマネジメント」

【連載】
「運用☆ちゃん」(リクナビNEXTジャーナル)「IT職場あるある」(日経 xTECH)

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回答数:22015年10月16日

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