SLA設計のポイント

【第5回】 SLA合意と契約の進め方について

概要

ITシステム運用において、SLA導入を検討、実施する上での考え方、進め方、サービスレベル評価項目のサンプル等の情報を掲載いたします。

今回は、SLA合意と契約の進め方について、解説していきたいと思います。
まずは、契約に必要な文書について整理します。

契約文書は、基本的に下表で示す通り、3階層で構成されていることが望ましいとされております。これは、サービス体系全体の整合性や更新頻度から見た効率性を考えて階層化されたもので、必ずしもこれにあわせる必要はありませんが、サービス利用者とサービス提供者の関係や契約の目的などを踏まえて、活用していただければよいものです。

これらの内容を踏まえた上で、まず、サービスレベル自体を検討する前に、対象とするITサービス取引におけるサービス提供者に債務の内容を整理・明確化しておく必要があります。通常ITサービス取引における契約は、次に3種類に区別できます。

労働者派遣
準委任
請負
ただし、必ずどれかに当てはまるものではなく、混合形態の契約もあります。
特にアウトソーシングの場合は、準委任と請負の混合形態での契約が殆どであると思われます。
その混合を含めた契約形態と特徴は下表で示します。

このように契約形態とその特徴を踏まえたうえで、サービスレベル自体を検討していく必要があります。
また、2005年4月に個人情報保護法が施行され、それに対応した契約条項も必要になってきていますので、ここでは記載しませんが、その点も注意する必要があります。

さて、これまでの内容を踏まえた上で、実際の契約を進めていくうえでの留意点を考えていきたいと思います。
まず、対象サービスを明確にして契約形態を具体化します。基本的には、運用フェーズを中心としてITサービスになりますが、上表で示した契約形態に対応するかどうか見極める必要があります。もし、対象サービスが広範囲にわたり、異なる形態が混在する場合は、契約書は契約単位に作成するほうがよいと思われます。
それでは、契約書(基本契約書、個別契約書)に盛り込むべき規定内容を示します。
ただし、実際には、これを固定的には考えず、目的や趣旨を重視して内容を記載していっていただきたいと思います。

基本契約書:両当事者の契約全般に共通の規程

目的
契約対象者
対象サービス
サービス提供方法
契約期間と途中更改、途中解約についての取り決め
両当事者の責任
機密保持の範囲
損害賠償の範囲と免責事項
知的財産権の扱い
輸出管理に関する取り決め
契約終了時の処置
紛争解決プロセス
個別契約書:対象サービス固有の内容に関する規定

対象基本契約書の特定
サービス内容(サービス仕様書を添付する形でもよい)
サービス提供方法(サービス仕様書を添付する形でもよい)
両当事者の責任範囲
契約期間
料金、料金の改定方法、料金の請求・支払方法
基本契約書規定内容の一部改変
サービスレベル規程の有無
契約の更改方法
これらの内容を踏まえた形でSLA合意書は作成されます。
日本では、契約が終了まで契約書は修正しないというイメージが強くありますが、先ほども述べましたように、固定的に捉えず、ビジネスニーズに合わせて修正していくことが必要です。


次回は、「SLA合意書と契約の進め方②」として、皆様が一番注目されていると思われます、SLA合意書のサンプル目次を添付し、その内容をどのように記載していくのかの解説を中心に記載していきたいと思います。

※参考文献:「民間向けITシステムのSLAガイドライン」 JEITA編著

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筆者紹介

庄司 憲(しょうじ あきら)
株式会社ビーエスピーソリューションズ
ITサービスマネージメントグループ

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