日本を支えるシステム管理者の君へ -第一生命情報システム 足立 伸男-

第5回 「SLA」は背後霊それとも守護霊

概要

日本を支えるシステム管理者の方へ、システム管理者の会推進委員より熱いメッセージを送るリレーコラムです。

 背後霊というと「あなたの背中に…」というマイナスイメージの言葉を思い浮かべる方も多いと思いますが、守護霊と協力しあって「本人の魂が向上していけるような導きをしてくれるもの」というのが、正しい理解のようです。

 今回は「SLA」は、正しい理解としての「背後霊」というお話です。
現在、システム管理者は「品質向上、信頼性向上」か「コスト削減」の優先順位づけではなく、「コスト削減」と「品質向上、信頼性向上」が同時に求められています。

 システム管理者の皆様は「ITIL(IT Infrastructure Library)」やISO20000のことはよくご存知のことと思います。私は縁があって平成16年~平成21年の間、 NPO団体「IT-SMF JAPAN」(システム運用の国際標準推進であるITILの推進団体の国内NPO団体(全世界で約40カ国))の理事を担当させていただきました。

 内部統制フレームワークの国際標準としての「COSO」、IT全般統制フレームワークとしての「COBIT」(Control Objectives for Information and related Technology)そして、ITの実装レベルのフレームワークの標準として「ITIL」が位置づけられていることはご案内のとおりです。また、ISO20000はITILに基づいた規格となります。
ITILで求められ、ISO20000において必須項目となる「SLA(サービスレベルアグリ-メント)」は、ISO20000の数ある規格ハードルの中でもなかなか取り組みに苦慮されているところも多いのではないでしょうか。「SLA」とは、「ITサービスの提供者と顧客の間で締結される、サービスの内容に関する取り決め」のことをいいます。

 私はSLAの大切なことは「アグリーメント」にあると思っています。業務委託先と「サービスレベル」についてしっかりと議論し、「サービスは停止することがあること」、「サービスが停止した時の対応を、業務部門として取り決めていただくこと」、「より高いサービスのレベルを期待するのであれば、場合によって新たな投資が必要となること」、「コストを下げるには、サービスレベルに踏み込む必要がある場合があること」など、今まで議論を尽くせなかった部分に踏み込んで議論し、「合意」していただける絶好の機会だと思います。業務の委託元と委託先のどちらか片方にしわ寄せをつくることのないように、相互の自立と成熟の中で、相互に設定するサービスレベル指標に基づいて、役割を明確にし、継続した安全管理、品質管理、品質向上に取り組んでいくことが、「コスト削減」と「品質向上、信頼性向上」を同時に求められることへの解の1つになるような気がします。

 「定義」・「測定」・「制御」・「管理」はサービスマネジメントの原則です。またサービスは、「無形性」(提供されるものが手にふれることができない)、「同時性」(生産と消費が双方向的に同時に起こる)、「異質性」(同じサービスでも提供する人、提供される場所、利用者の状況で効果や受け止め方が変る)の特徴をもっています。ITサービスもサイエンスする時代に向かっています。その一歩として「SLA」の背後霊に問いかけてみてはいかがでしょうか。

第一生命情報システム株式会社 常務執行役員 足立 伸男

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筆者紹介

足立 伸男(あだち のぶお)
第一生命情報システム株式会社
常務執行役員 基盤システム第一部長

1977年 第一生命保険相互会社入社、2003年 第一生命情報システム株式会社出向。第一生命グループ会社に情報システムの企画、運用、開発業務のサービスを提供しており、グループ会社以外にもERP 関連、SI 関連などのサービスを提供している。また、英国政府のOGCが作成した情報システムの運用管理基準ITILの普及促進を目的として設立されたitSMF Japanの理事を2004~2009年の間務める。

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