DXリーダー人材を育成するために必要な5つの基礎能力④

第4回 VUCA時代におけるDXキャリア形成 ~偶然を作り出す行動指針~(実現性・計画性、共創・顧客視点)

概要

「DXリーダー人材を育成するために必要な5つの基礎能力」で紹介した内容について、 DX推進する上で欠かせない知識とマインドを8人の専門家がお伝えします。

目次
■VUCA時代とは
■成功した人のキャリア形成のきっかけは80%が「偶然」
■偶然を見つけるための行動指針7箇条(計画された偶発性理論の行動指針5箇条+独自理論2箇条)
■偶然の出来事を呼び込めない/呼び込むための具体的なケース
■「偶然」だらけの私の人生をしみじみ振り返る
■最後に

■VUCA時代とは

VUCAとは、社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている状態を示す造語です。

VUCAを分解すると…

  • V:Volatility(変動性)
  • U:Uncertainty(不確実性)
  • C:Complexity(複雑性)
  • A:Ambiguity(曖昧性)

となります。

2010年代に広まったこの言葉ですが、もともとは軍事用語として使われていました。
冷戦の終結とともに国家間の問題が複雑さを増し、軍事戦略を立てることが難しくなったこと。
テロの驚異という新たな戦いが始まったことなど、従来のやり方が通用しなくなってしまった状況を指していました。

その後、一般の社会でも従来の常識が通用しないような大きな変化が起きはじめたことから、VUCAは社会やビジネスでも使われるようになります。

ビジネスに多大な影響を与えるVUCA時代の変化としては、以下のようなテーマが挙げられます。

・デジタル技術の急速な進化
・世界的な経済変化、政治情勢、紛争が引き起こす問題の複雑化
・社会構造の変化(日本国内の人口減少、人生100年時代、世界的な人口爆発)
・環境破壊の深刻化(気候変動・海洋汚染)
・新型コロナウイルスによる世界的なパンデミック

一筋縄では解決・対応できない問題や、事前に対策を打てなかった問題が多く、それが多方面にわたっている。これがVUCA時代の特徴です。

またそれは、【キャリア形成】という観点でも非常に予測がしづらい時代が到来していると考えています。

「終身雇用難しい」トヨタ社長発言
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/051400346/

トヨタさんだけでなく、様々な企業が終身雇用制度の限界を唱え始めており、1つの企業で勤め上げることが困難になってきています。

そこで、今後どのような行動をとっていけばよいのか、私の考えをお話させていただきます。

■成功した人のキャリア形成のきっかけは80%が「偶然」

計画された偶発性理論/Planned Happenstance Theoryという理論をご存知でしょうか。

米スタンフォード大学 J.D.クランボルツ教授が提唱したキャリア理論です。

    <計画された偶発性理論/Planned Happenstance Theoryのポイント>
  • ①キャリアは100%意のままにコントロールできない。キャリアの大部分は偶然の出来事によって成り立っている事実がある。
  • ②キャリアに満足している人は、偶然を積極的につくりだし、自分の可能性を広げ続けている。
  • ③見通しのない将来に、不安を抱きすぎても意味はない。
  • ④好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心、5つの行動指針を持てば、偶然が見つかる。

    上記を踏まえると、今キャリアに満足している人の特徴は以下が挙げられます。
  • ・唯一無二の仕事を見つけようとしない
  • ・先が見えないことを不安に思い過ぎない
  • ・選択肢を絞りすぎず、幅広に構えている
  • ・想定外の出来事を前向きに捉える姿勢がある

先が見えないと、誰でも不安を感じるものですが、偶然を積極的に作り出していくことで結果的にキャリア形成を成功させていく可能性をこの理論では示していると私は考えています。

■偶然を見つけるための行動指針7箇条(計画された偶発性理論の行動指針5箇条+独自理論2箇条)

ここで、偶然を見つけるための行動指針7箇条ということで、計画された偶発性理論の行動指針5箇条と私が独自に考えている指針2箇条を追加した7箇条についてご提案させていただきます。

  • ①好奇心 [Curiosity]
     たえず新しい学習の機会を模索し続ける。自分の専門分野だけではなく、いろいろな分野に視野を広げ、関心を持つことでキャリアの機会が増える。
  • ②持続性 [Persistence]
     失敗に屈せず、努力し続ける。最初はうまくいかなくても粘り強く続けることで、偶然の出来事、出会いが起こり、新たな展開の可能性が増える。
  • ③楽観性 [Optimism]
     新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考える。意に沿わない移動や逆境なども、自分が成長する機会かもしれないとポジティブに捉えることでキャリアを拡げることができる。
  • ④柔軟性 [Flexibility]
     こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変える。状況は常に変化する。一度決めたことでも状況に応じて柔軟に対応することでチャンスを掴むことができる
  • ⑤冒険心 [Risk Taking]
     結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こす。未知なことへのチャレンジには、失敗やうまくいかないことが当たり前。積極的にリスクをとることでチャンスを得られる。
  • ⑥アウトプット [Continuous Outputs]
     継続的に情報を発信し続ける。できればためになる情報を。受け取られ方次第では、他から厳しい非難、コメントをいただくこともあるが、愚直に継続的に行っていく。
  • ⑦スピード感 [Speedy]
     立ち止まって考えずに「走りながら考える」、100点でなくていいので、まずはクイックに行動していくことが大事。

    簡単に整理するとこうなります。
  • ・新しいことに興味を持とう!
  • ・努力を続けよう!
  • ・ポジティブな姿勢を持とう!
  • ・こだわりは不要、柔軟になろう!
  • ・結果にこだわらず、挑戦をしよう!
  • ・自分から積極的に情報を発信していこう!
  • ・スピード感をもってあらゆることに対応していこう!

言うは易しですが、私も可能な限りこの行動指針に則り行動を続けているつもりです。
時間が無くなってしまい、いつもバタバタしておりますが。

■偶然の出来事を呼び込めない/呼び込むための具体的なケース

    ★偶然を呼び込めない残念なケース★
  • ・移動は自宅と職場/客先との間だけ
  • ・つき合う相手は、同僚かお客様、家族だけ
  • ・いつも聞き手、質問や議論を避けて言いたいことを言えない

・・・これでは偶然の出来事を呼び込める機会に遭遇しづらいです。

    ★偶然を呼び込むための効果的な行動★
  • ・コミュニティや勉強会に参加する
  • ・自分のやっていることを人に話す
  • ・自ら発表する機会を持つ
  • ・コロナ禍だからこそ、SNSや動画配信をやっていきながら繋がりを継続する。

組織とは異なるコミュニティに入り、自分とは異なる能力やスキルを持つ人の助けをいただいて問題を解決したり、
自分がアウトプットしたことに対するフィードバックをいただいて更に知識を得ることなど大きな効果を得ることが出来ると考えております。

■「偶然」だらけの私の人生をしみじみ振り返る

今思うと私はこの行動指針を暗黙的にやり続けてきたように感じております。

    <小学生>
  • ・心身を鍛えるために率先して柔道部に所属し、いじめられなくなったこと
  • ・父の影響でカラオケ(演歌)を歌い始め、地方のカラオケ大会、テレビに積極的に出演したこと
  • ・当時10万円程度のMSX2+を購入してもらいBASICでのプログラム開発、FM音源で作曲を始めたこと
  • ・サイクリングで鹿児島の桜島1週を一人で達成したこと

    <中学生>
  • ・想定外の生徒会副会長に当選。前向きに捉え積極的に生徒会活動に参加できたこと
  • ・柔道部副部長時代に、理不尽な不良、先輩と殴り合いの大喧嘩をしたこと(生徒会役員なのに・・)

    <高校生>
  • ・私立へ進むことに。家計を助けるために授業料免除のために必死で勉強していたこと

    <大学生>
  • ・家計を助けるために授業料免除及びアルバイトはコンビニ、スーパー、ガソリンスタンド、家庭教師など様々にチャレンジしたこと
  • ・法学を勉強しながら、プライベートではグラフィックデザイン、作曲などにチャレンジしてゲーム会社への就職を考えていたこと
  • ・就職活動も卒業旅行の代わりに「就職旅行」を行い全国を行脚したこと

    <20代~>
  • ◎大手小売業入社:
    ・就職超氷河期時、情報システム部署希望で入社。IT部門配属のつもりが、お惣菜課へ配属になってしまったが、ポジティブに捉えたこと
    ・前任Managerが残した300万の架空在庫問題が発生したが、諦めることなく徹底的な在庫管理とIT活用した売粗管理により短期間で在庫問題を収束してみせたこと
  • ◎ソフトウェアエンジニアリングサービス会社へ転職:
    ・社員コミュニケーションが低いと感じ、独自にグループウェアを構築して社内のコミュニケーションを円滑化したこと
    ・業務改善提案、報告書の標準化など積極的に行動したこと

    <30代~>
  • ・日本育英会奨学金300万の借金を自力で完済したこと
  • ・IPAのプロジェクトマネージャ試験(レベル5)に合格したこと
  • ・TOEIC試験、初受験で725点をとったこと
  • ・ファシリテーション、コーチングなど外部交流を広げていたこと
  • ・客先常駐、派遣社員という立場ながら客先でプロジェクトマネジメント/プロジェクトリーダーを担当したこと
  • ・日本ITストラテジスト協会に興味を持ち、ITストラテジスト試験未合格の状態で飛び込んだこと
  • ◎システムインテグレータ会社へ転職:
  • ・外部活動である日本ITストラテジスト協会の九州支部役員などで、大規模イベントなど開催させていただくことができたこと
  • ・福岡市の外郭団体が主催するITイベント活動に積極的に関わらせていただくことになったこと
  • ・日本ITストラテジスト協会の関わりをきっかけに他の団体とも幅広い活動を展開していったこと
  • ・SI業務のみの仕事に不安を感じ、AI,IoT,xRといったいわゆるDXの基礎技術分野を研究する研究開発部署に志願したこと

    <40代~>
  • ◎総合コンサルティング会社へ転職:
  • ・IT講師として登壇させていただいたこと
  • ・IT試験問題の提供をさせていただいたこと
  • ・IT本の執筆させていただいたこと
  • ・ITの知識をベースに軸ずらし転職で総合コンサルティング会社に転職したこと

振り返ると、改めて壮絶人生ですし、様々な偶然を無意識に呼び込んでいたような気がいたします。
父に「お前は冒険家だな」とよく言われていたのを思い出します。

■最後に

こんな私でも多くのコミュニティや勉強会に参加してきたことにより、下手ながら率先してアウトプットしていくことにより多くの機会をいただくことが出来ました。下手だから、能力がないと自覚していたからアウトプットして人前に出て経験値を増やしたといえるかもしれません。

様々な苦難がありましたし、今も日々もがいておりますが、周りの皆様のお力添えのおかげで本当に素晴らしい人生を歩ませていただいています。また、やればやるほど更に情報収集して勉強して精進せねばならないと感じております。

多くの方が「偶然」を積極的に作り出していっていただき、DXキャリア形成しつつ、DXリーダー人材が増えることを心より期待しております。

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筆者紹介

総合コンサルティング会社勤務 TechnologyConsulting Manager 陣 宏充
(一般社団法人 日本ITストラテジスト協会 理事)
福岡市在住。

SI経験・DX(IoT/AI/xR/RPA)・新規事業開発経験を活かし、先端的なDigital技術活用によるBPR支援に従事。

【主な著書(いずれも共著)】
「IoT しくみと技術がしっかりわかる教科書」 技術評論社

【講師、講演歴】
・ロボット・IoT専門人材育成 講師(IoT推進ラボ)
・ET&IoT West(ナノオプトメディア)
・FukuokaIntegrationX ファシリテータ(FIX事務局、福岡市IoTコンソーシアム)
https://www.youtube.com/channel/UCbkle3SGyvz6XZeuYWeILhw
・IoT Business Transformation講師(福岡市IoTコンソーシアム)
・IoT検定・IoTリテラシーWG講師(福岡市IoTコンソーシアム)
・大阪デザイン&ITテクノロジー専門学校 特別講師
【情報】
Twitter( @VMA_Japan)

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