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「AI」「自動化」「少子高齢化」
変化の時代、私たちシステム管理者にもチャレンジと変化が求められています。
とはいえ、日々の通常業務に追われているだけでは、なかなかチャレンジも生まれない。変化のきっかけもない
この連載では、主にヒューマンスキルを中心に、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルとは何か? 日ごろの意識と行動をどう変えていったらよいか? をみなさんと一緒に考えます。
今回は特別回です。
「運用の大変さって?」「運用業務の醍醐味は?」「システム管理者の価値を上げるためにどんなことをしている?」
現役システム管理者の皆さんに生の声を聞いてみました(※)。
(※2018年1月24日(水)に開催された「第12回 リーダーズミーティング」のアンケートおよびWebにて調査)
現場で頑張る仲間たちの声を聞いて、皆さん自身の価値向上に役立てていただけたらうれしいです。
1. 運用をやっていて「ここが大変」「これがツライ」などあれば教えてください。
2. 運用をやっていて「これが醍醐味」「こんなことが身についた」などあれば教えてください
3. 運用をやっていて「これがよかった!」などあれば教えてください。
4. 明日を生きるシステム管理者として、最近実践していることを教えてください。
アンケート回答者の内訳は以下の通りでした。
皆さんの声
やって当たり前。感謝されない。
なかなか悩ましい声ですね。
裏を返せば、自分たちがやっていることをわかりやすく説明する。相手目線で、あるいは時に手を変え品を変えて、運用業務の価値を示していく。
この努力や工夫も大事でしょう。
そのためにも、自分たちの業務を説明可能にする(業務内容、求められるスキル)。業務やノウハウを見える化して、共有化して、脱属人化する。このような取り組みが欠かせません。
自分たちの業務を説明できなければ、
ユーザのリテラシー向上も大きな課題です。
インシデント増も問題ですが、それ以上にお客さんのコストも増えます。ここはひとつ、ユーザのリテラシー向上のための教育やキャンペーン(講座や勉強会など)を提案してみてはいかがでしょうか?運用の現場だからこそ見える、ユーザがつまずきやすいポイントや改善のツボがあるはずです。その経験やノウハウを生かさない手はありません。また、やり方次第で、ユーザと直接コミュニケーションをとるチャンスにもなります。ユーザに「ありがとう」「いつも大変ね」と言ってもらって、モチベーションが上がった、クレームが減ったと喜ぶ運用現場もあります。ポジティブな改善につなげていきましょう。
皆さんの声
トラブル対応力が身につく
今回のアンケートのみならず、多くの運用者から聞く声です(筆者も実感しています。多少のトラブルでは動じなくなりました)。
顧客からほめられる
そうです。人は褒められるとモチベーションがあがります。この記事を読んでいるお客さん。この機会に、運用部隊に感謝の言葉をかけてあげてください。
改善提案に生かせる。上流(システム構想など)から参画できた
このようなポジティブな声も目立ちます。改善を仕事として認め、運用者への改善提案の機会を設けてください。それが運用業務の価値向上と開発品質の向上、運用人材の育成、ひいてはなによりモチベーションアップにもつながりますから。運用者をオペレーター扱いしていては、いつまでたっても視座は高くなりません。
皆さんの声
運用はユーザや実業務に近い分、泥臭く大変な面が目立ちます。一方、システムと業務の全体を俯瞰できる強みを持ちうるのもまた運用です。
しっかりと改善提案につなげ、正しく評価されるようにしていくためにも、ロジカルシンキング、マネジメント力を鍛えましょう。
社外のコミュニティーや勉強会にも積極的に参加したいですね。それにより、自分(たち)の強み弱みを知ることもできます。ともに悩み、ともに頑張る仲間の存在は励みにもなり、運用の仕事をより面白くします。
開発でも役立った
そうです。運用の知見や観点は開発品質の向上に間違いなく役立ちます。筆者が1月に上梓した、「システムの問題地図」(技術評論社)でも運用人材を開発に登用してくださいと繰り返し主張しています。ぜひ、運用者を上流に登用してください。
皆さんの声
フレームワークを活用できる
これはわれわれ運用者の大きな強みであり価値を出せるチャンスでしょう。
残念ながら日本の組織は、フレームワークに対する苦手意識やアレルギー反応が強い印象があります。
それだけに、フレームワークを使って問題や課題を見える化する。改善して成果を出す。その余地は大いにあります。
「まずはインシデント管理からはじめてみる」
「できるところからITILで整理してみる」
大げさなことをしなくても大丈夫。はじめの一歩を踏み出してみましょう。
仕事を楽にしようとする姿勢、AIに伝えやすくする努力
とても大事です。最近、RPAが流行語のように言われています。しかし、業務定義や業務設計をせずに自動化はあり得ません(RPAは魔法使いではありません!)。
AS-ISとTO-BEの業務フローが描ける。何をシステムにやらせて、何を人間がやるのかを考える。そのデザインをできるのは大きな価値です。
PythonやDevOpsなど、新しい技術やフレームワークを勉強する
自分自身、そして運用業務そのものの価値向上のために欠かせません。
自身の業務を効率化する→勉強する時間を作る→勉強する→自身の業務をさらに効率化する
このスパイラルを作っていきたいですね。
以上、紙面の都合上すべての回答を掲載できませんでしたが、現場の運用者のリアルな声をお伝えできたかと思います。
回答してくださった皆さま、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
回答結果を見ていて、筆者はとてもうれしい気持ちになりました。
システム運用は、人も組織も成長させることのできる素晴らしい職種である。その確信を得ました。
そして、課題はたくさんあるものの、希望を持って前進しようと頑張っている人がたくさんいる。その事実に、この上ない誇りを感じております。
運用現場のメンバー同士、そして時に会社を超え、職種を超えて情報発信し合い、時に議論してよりよい職種に育てていきましょう!
運用の未来は明るい
自動化の流れに不安になりすぎる必要はありません。私たちシステム管理者ゆえの強みは間違いなくあります。
ただし、今までと同じやり方、昨日と同じ考え方では、間違いなく明日はないでしょう。
私たちの強みと脅威を冷静に見つめ、明日を生きる「システム管理者2.0」にバージョンアップしましょう!
沢渡 あまね(さわたり あまね)
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。
現在は複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」「業務改善プロジェクト」のファシリテーター・アドバイザー、および新入社員・中堅社員・管理職の育成も行う。これまで指導した受講生は1,000名以上。趣味はドライブと里山カフェめぐり。
【ホームページ】
あまねキャリア工房
【ブログ】
はたらきかた「プチ」改善業務改善娘
【主な著書】
「新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!」
「新米主任 ITIL使ってチーム改善します!」
「新入社員と学ぶ オフィスの情報セキュリティ入門」(共著)
「職場の問題地図」
「「草食系」社員のためのお手軽キャリアマネジメント」
【連載】
“What’s ITIL?”~営業も開発も知っておきたい管理・改善手法(ITpro)ドラクエが教えてくれたチームマネジメント~最強のパーティーを作る!~(ITpro)
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