DXリーダー人材を育成するために必要な5つの基礎能力⑭

第14回 DXにおいて共創を進めるためのコミュニケーションと合意形成のコツ

概要

「DXリーダー人材を育成するために必要な5つの基礎能力」で紹介した内容について、 DX推進する上で欠かせない知識とマインドを8人の専門家がお伝えします。

 

目次
1. 共創とは何か
2.コミュニケーションの重要性
3.コミュニケーションの基本
4.合意形成の重要性
5.合意形成のためのコツ
6.まとめ

1. 共創とは何か

まず、共創の定義や重要性、共創が求められる背景についてです。

共創とは、異なる分野やバックグラウンドを持つ人々が、お互いに協力して新しい価値を生み出すことを指します。これは、単純な協力や連携とは異なり、参加者全員が対等な立場で意見を出し合い、互いの考え方や専門知識を共有しながら、より良い解決策を導き出すことを目的とします。

共創は、現代のビジネスにおいてますます重要な役割を果たしていきます。その理由は、社会やビジネスの環境が急速に変化しているため、従来の組織やビジネスモデルがうまく機能しなくなってきたからです。これに対して、多様な専門知識や経験を持つ人々が集まって共創を進めることで、より柔軟かつ創造的な解決策を生み出すことができます。

また、共創には、次のようなメリットがあります。

・多様な知識や経験を生かした革新的なアイデアの生み出し
・参加者全員が協力し、問題解決に取り組むことで、より高いモチベーションや自信を得ることができる
・従来の権限やヒエラルキーに縛られない柔軟な意思決定が可能になる
・参加者間の信頼関係を構築し、組織全体のコミュニケーション力を高めることができる

共創はビジネスにとって非常に有益であるため、今後ますます求められることが予想されます。しかし、その一方で、共創を進める上での課題や障壁も存在しています。それらについては、後の章で詳しく解説します。

 

2.コミュニケーションの重要性

共創を進めるためには、参加者間で円滑なコミュニケーションが必須です。なぜなら、共創は複数の人々が意見を出し合って新しいアイデアを生み出すことを目的としているため、意見の不一致や誤解が生じると、その目的を達成することができません。さらに、コミュニケーションがうまくいかないと、不信感やストレスが生じ、参加者全員のモチベーションが低下し、最悪の場合はプロジェクトが停滞してしまうこともあります。

コミュニケーションが不足すると、以下のようなリスクがあります。

・意見の不一致や誤解が生じ、プロジェクトが停滞することがある
・参加者全員のモチベーションが低下し、プロジェクトの成果に影響を及ぼすことがある
・意図しない方向に進んでしまい、プロジェクトの成果が期待に反することがある

一方で、コミュニケーションがうまくいくと、以下のようなメリットがあります。

・参加者間での信頼感が高まり、よりオープンで建設的な議論が可能になる
・互いの専門知識や考え方を共有し、より豊かなアイデアを生み出すことができる
・意見の相違点や問題点を早期に把握し、解決策を見つけ出すことができる

以上のように、共創においては、参加者間のコミュニケーションが非常に重要であることがわかります。そのため、円滑なコミュニケーションが行われる環境を築くためには、以下の点に留意する必要があります。

・参加者全員が積極的に意見を出し合えるように、オープンで安心感のある雰囲気をつくる
・意見の不一致や誤解が生じた場合には、冷静に話し合い、問題解決に向けて取り組む
・意見を出す際には、相手の意見や立場にも配慮し、建設的な意見交換を心がける

コミュニケーションがうまくいくかどうかは、共創の成否に大きく影響し、参加者全員が意見を出しやすい環境を整え、適切なコミュニケーションツールを選定し、相手の立場に共感することが重要です。

 

3.コミュニケーションの基本

コミュニケーションは、目的や相手によって異なる種類があります。例えば、プレゼンテーションや報告書などの一方通行の情報伝達型のコミュニケーションから、ディスカッションやブレインストーミングなどの双方向のコミュニケーションまで、目的に応じた適切なコミュニケーションを選ぶことが重要です。

一方、コミュニケーションの段階には、以下のようなものがあります。

準備段階:コミュニケーションの目的や相手、情報収集などを行います。
開始段階:挨拶や自己紹介、会議の進行などを行います。
中間段階:意見や情報のやりとり、問題点の整理、アイデアの出し合いなどを行います。
終了段階:まとめやアクションプランの策定、次回の打ち合わせなどを行います。
これらの段階において、コミュニケーションがスムーズに進むように注意する点があります。例えば、準備段階では、目的や相手を明確にし、必要な情報収集を行うことが重要です。また、開始段階では、挨拶や自己紹介などを通じて、参加者全員がリラックスした状態で会議に臨むことができます。中間段階では、意見のやりとりや問題点の整理などを行いながら、参加者全員が積極的に発言できるような雰囲気を作ることが重要です。そして、終了段階では、まとめやアクションプランの策定を行い、次回の打ち合わせの予定を確認することで、会議を締めくくることができます。

コミュニケーションは目的や相手に応じた種類を選び、段階ごとに注意点を抑えながら進めることが重要です。これらの基本的なコミュニケーションスキルを身につけることで、共創に必要なコミュニケーションをスムーズに進めることができます。

 

4.合意形成の重要性

合意形成は、共創において欠かせないプロセスの一つです。合意形成とは、複数の人が意見を出し合い、最終的に合意点を見つけるプロセスのことです。合意形成がうまく進められることで、以下のようなメリットがあります。

まず、共通理解が生まれます。合意形成を行うことで、参加者全員が同じ方向を向いていることが確認できます。これにより、後の作業がスムーズに進み、効率的な成果を得ることができます。
また、コミュニケーションの品質が向上します。合意形成は、お互いの意見を聞き合い、議論を重ねることで行われます。この過程で、参加者がお互いに考えを尊重し、意見を言い合うことで、より深い理解や信頼関係を築くことができます。
さらに、意思決定の正確性が向上します。合意形成によって、意見が統合され、最終的に最適な選択肢が選ばれることが期待できます。これによって、誤った意思決定を防ぐことができ、ビジネスの成果につながります。

一方、合意形成不足がもたらすリスクには、以下のようなものがあります。

まず、意見の衝突が生じます。合意形成を行わない場合、参加者がそれぞれに自分の意見を主張することがあります。この場合、相手の意見を受け入れないことで、コミュニケーションが円滑に進まなくなることがあります。
そして、方針の不統一が生じます。合意形成が行われない場合、プロジェクトの方針が定まらず、不確定性が生じます。これによって、作業の方向性が定まらず、成果物の質が低下することがあります。
その結果、時間とコストが増加します。意見の衝突や方針の不統一が生じると、意思決定が遅れたり、作業のやり直しが発生することがあります。これによって、時間やコストが増加することがあります。

合意形成を行うためには、コミュニケーションや調整などのスキルが必要となりますが、それらを行うことで、メンバー間の協力や信頼を得ることができ、プロジェクトの成功につながります。

 

5.合意形成のためのコツ

前述の通り、共創のプロセスにおいて、合意形成は非常に重要な要素となります。ここでは、合意形成を促すためのコツをいくつか紹介します。

・目的を共有すること
合意形成をする上で、まずは目的を共有することが重要です。共通の目的を持つことで、メンバーはより一体感を持って協力することができます。目的が明確であれば、その目的に向かって合意を形成することが容易になります。

・常に相手の視点に立つこと
合意形成をする際には、自分の意見ばかりを主張するのではなく、相手の視点に立って物事を考えることが大切です。相手がどのような意見を持っているか、どのような状況にあるかを理解することで、より共感を生み出し、より良い合意を形成することができます。

・聞き取りのスキルを磨くこと
合意形成には、相手の発言を正しく聞き取ることが不可欠です。聞き取りのスキルを磨くことで、相手の言葉の意味や背景を正確に把握することができます。また、相手の言葉に対して適切な反応をすることで、相手に対する理解を深め、良い合意形成に繋げることができます。

・アイデアを出し合う場を設けること
合意形成をするためには、アイデアを出し合うことが必要です。アイデアを出し合う場を設けることで、メンバー同士が積極的にアイデアを出し合い、多様な意見を取り入れることができます。また、アイデアを出し合うことで、お互いに創造的な発想を刺激しあい、より良い解決策を見つけることができます。

合意形成をするためには、目的を共有し、相手の視点に立ち、聞き取りのスキルを磨き、アイデアを出し合う場を設けることが重要です。これらのコツを意識して、共創のプロセスを進めることで、より良い成果を生み出すことが可能となります。

 

6.まとめ

今日の先行き不透明な時代、新たに事業を企画し、設備と整え、自分たちのみで実行をし、運営を行っていくことは非常に難しくなっています。
今後は、生成AIの浸透により、これまでのサービスの陳腐化が急速に進み、非常に短いサイクルで製品やサービスを生み出していかなければなりません。そのスピードは年々加速度を増していくことでしょう。
ChatGPTなど、AI技術は徐々にではなく、ものすごいスピードで進化していきます。これからは、短期間で衝撃的なサービスが次々とリリースされることでしょう。
そのような現状から、新しい事業を一つの企業だけで対応することはほとんど不可能で、「共創」していかなければ、事業活動を行っていくことはできなくなっていきます。

「共創」は、企業が生き残っていくために避けられない取り組みです。
その「共創」をするために重要なものがコミュニケーションと合意形成になります。
改めて、今回の重要なポイントを以下の通りまとめます。

共創において重要なポイントは、コミュニケーションと合意形成です。

・コミュニケーションは、相手との理解を深めるために、共通の言葉や情報を持ち寄り、意見交換を行うことが必要です。また、双方向のコミュニケーションを行い、相手のニーズや要望を正確に把握することが重要です。
・合意形成は、共創において欠かせないプロセスの一つです。
複数の人が意見を出し合い、最終的に合意点を見つけるプロセスのことです。

共創には時間や労力が必要であり、短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的な視点で考えることが必要です。しかし、昨今は変化のスピードが速く、相手とのニーズが変化した場合には速やかに共創プロセスを見直す作業も必要とされるでしょう。
常に変化の流れを感じ、柔軟に対応しながら共創による新たな価値を創造し、双方にとって有益な関係を築いていくように展開をしていかなければなりません。

前例のないことに常にチャレンジしていかなければならない時代となりました。
この大きな変化を前向きに受け止められるのであれば、そこには大きなチャンスがあり、ワクワクする時代であると思います。
今回の内容が、今後の大変化に向かって行動をしていくための参考となればとても嬉しく思います。

 

 

 

 

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筆者紹介

大石 光宏(おおいし みつひろ)
M&S Innovation Consulting代表。

事業再生・承継、M&A、DX推進で多くの企業価値向上に貢献。IT企業のエグゼグティブアドバイザー就任や、行財政改革、都市計画など、自治体の審議会委員を複数務めるなど幅広く活躍。近年は特に、持続可能な企業にする為のDX(IoT・AI)ビジネス推進に力を入れ、総合的な企業支援を行う。
中小企業の事業承継にはDXの取り組みが必須である。単なるIT化ではなく、ビジネスモデルを見直し、新しい考え方を取り入れた事業運営を試みることが重要で、その支援には評価を得ている。

【主な著書】
「図解即戦力 IoTのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書IoT検定パワーユーザー対応版」
(共著:技術評論社)

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