現場で役立つ文書作成のポイント

第6回 読みやすい文書とは、文書作成のテクニック

概要

現代人が社会生活を送るうえで(特にビジネス活動を実践する場面)、文書は「人と人とを繋ぐ重要なコミュニケーション手段」であり、時によっては、「意思決定手段」でもあります。
ビジネス文書を作成する際にも「文は人なり」と誤解し、自分の世界に埋没したような「文」を作成するケースが多々見受けられます。しかし、ビジネスの場面では、「文書」は上記のように重要な位置付けを担いますので、論理的に構成され、結論が明確に表記されたものを作成する必要があります。
当ページでは、社内現場で役立つ「文書作成」の基本をシリーズで掲載し、読者の皆さんが、ホンモノの文書作成力を身につけるポイントを提示いたします。

読みやすい文書とは、文書作成のテクニック

 

テクニック1.短文主義、一文一義でいこう

「長すぎる文書」はたいてい、読みににくい文書です。長すぎる文書は、読み手に集中力と記憶力、そして頭の中での文の再構成という努力を強いるのです。読み手によってはそれができず、文書が分からないということになります。
例を挙げて説明します。
 
「スケジュールの打ち合わせを今日、本社会議室ですることになっていますが、夕方本社の1階で夜の6時に待ち合わせをしているのを皆さんご存知でしょうか。」
 
このようなダラダラとした文書を書いてしまう原因は、文書にする内容が頭の中で整理されていないからです。次のように直せば分かりやすくなります。
 
「本日、スケジュールの打ち合わせを行います。場所は本社会議室です。待ち合わせは本社1階に6時です。皆さんご存知でしょうか。」
 

テクニック2.冗長、回りくどい、あいまい、抽象的を排除しよう

 
「長すぎる文書」はたいていの場合、言葉遣いが冗長だったり、あいまい、回りくどい表現を使っているために、長くなっているものです。
 
「営業支援サポートをするために顧客の情報をデータベースで共有することで、営業担当者が必要に応じて参照できるようにする」
 
この文書では、同じ意味の言葉である「支援」と「サポート」が重複しています。よく考えれば「データベースで共有する」と「必要に応じて参照できるようにする」も意味が重複しています。
結論がはっきりしない文書、はっきり言い切れるところを回りくどく言ってしまう文書もよく見られます。わざわざ分かりにくくしているとしか思えません。
 
「Aの業務とBの業務とは重複していますので、どちらか一方に集約したほうがよいのかもしれませんが、二重にやったほうが精度が上がる部分もありますので、これで続けてもよいと思います。」
 
この文書では、本当は、AかBかどちらかにすべきだが、このままでもよいと言う玉虫色の表現になっています。あえて摩擦を起こしたくないという弱腰の表れに思えます。ビジネス文書では、こういう「分かりにくい」文書は避けるべきです。
 
ただし、一文が短ければ短いほどいいとは言えません。説明が不十分になったり、肝心の情報を省略しすぎて、意図が伝わらなかったり、誤解されてしまう恐れもありますので注意が必要です。
 

テクニック3.文書の統一感を意識しよう

 
文書の中に、である調、ですます調、体言止めが混在すると統一感のない印象を与えます。
 

例1

コンピュータのハードウェアは随分と安くなりましたが、ソフトウェアがまだ高いので、一般家庭には普及していないのが現実である。 
 
>この文章は、前半が「ですます調」なのに、文末が「である調」になっています。
 

例2

セキュリテイ上の脅威には以下のものがあります
ウイルスやワームの蔓延
悪意あるハッカーの侵入とファイルの改竄
デイスクの故障でデータがなくなる
パソコンを電車に置き忘れる
 
>これは、[1]と[2]は体言止めの文なのに[3]、[4]はそうなっていないので読み手に違和感を与えます。
 

テクニック4.箇条書きでいこう

 
箇条書きは、一つの主題に含まれる項目を複数の文で表す手法です。各項目を並べる表現により、主題の内容と構造を視覚的に表現することができます。
箇条書きには、行に順序・順位をつけたものと、順位がないものがあります。順序・順位をつけた場合には、そこに何らかの意味が含まれることになります。例えば、重要なものから順に並べるとか、あるいはその逆とかがあり、その意味は文書の中で説明すべきです。項目の間に順序・順位関係がないのであれば、順位がない羅列形式の箇条書きを使います。
箇条書きを使う場合に従うべきルールを以下に示します。これ自体も「羅列形式の箇条書き」です。
  • 一つの主題に含まれる項目だけを箇条書きする
  • 箇条書きの文には句点「。」をつけない
  • 常に「である体」を用いる
  • 手順を書く場合は順序立てて書く
  •  
箇条書きは、段落構成の一つの要素として使うならば有効です。しかし、箇条書きに頼りすぎてはいけません。箇条書き主体の記述にすると、項あるいは節の主題が不明確になってしまいます。
「箇条書きで書くと分かりやすい」という思い込みは危険です。
 

テクニック5.視覚化しよう

 
視覚化とは、伝えたい内容をイラストや写真で説明するものです。
私たちは、仕組みや構造を説明する文書を読んでいるときに、文中の単語を拾いながら、頭の中で図を描いています。頭の中で描ききれないほど複雑な文書になると紙の上に図を描き始めます。文の内容を最初から図にして提示すれば、読み手に伝えたい内容を直接示せるのです。
また、伝えたい内容に親近感をもってもらうためには、イラストが有効です。統計データなどを分析し結果を説明する場合には、数値を示す方法とグラフで示す方法があります。グラフは、目的によって多くの種類があり、ワープロソフトやスプレットシートソフトの機能を利用することにより簡単にグラフを作成することができます。
 

テクニック6.かなと漢字の比率は2:1にしよう

 
漢字の多い文書は読みにくいものです。文書全体に占める漢字の比率が50%を超えると読みにくくなるといわれています。かなと漢字の比率が2:1くらいになると文書の読みやすさは格段に向上します。
 
 
 
次回以降は、以下の内容を予定しています。
  • 文書レビューの方法
  • RFP(見積要求仕様書)の書き方、テクニック
  • 社内企画書の書き方、テクニック
  • 業務報告書の書き方、テクニック
  • 詫び状の書き方、テクニック
  • メールの書き方 テクニック
 

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

運用プロフェッショナルサービスグループ

佐藤陽一

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