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DXリーダー人材を育成するために必要な5つの基礎能力② 第2回 DX 推進人材の育成ステップ
2022年5月25日 14:00

1)オールマイティなDX推進リーダーの育成は難しい?

 第1回コラムで近森氏がDX(デジタルトランスフォーメーション)と、デジタルを名乗るものでありながら、デジタルよりも大切なものがある、と看破されたところまでは、読者の皆さんもご納得と思われる。要するに、その後ろの「X=トランスフォーメーション」つまり変革を追求する姿勢が大切で、デジタルはツール、そのツールを使いこなすのは、人間。つまり、人材の育成が最も大切だと言うことである。
 至極もっともなところであるが、そうかと言って、簡単にデジタル推進リーダーを育てろ、と言われても、これは、相当難しいな、と感じる向きも多いだろう。すなわち、革新性・創造性に秀で、革新を実現するための熱意を有し、計画性を持って行動でき、生産性や付加価値の向上に明るく、人材育成を含めて、実現に至るまで粘り強くDXの実現に向き合い続ける、顧客視点も欲しい。そんなDX推進のリーダー的存在。
 一流の大企業・優良企業ならいざ知らず、いや、一流企業でもこうした要件をすべてハイレベルで満たす人材を獲得し、また社内人材をそんなレベルまで育てようとしても、相当の努力や期間、投資が必要なはずだ。
 じゃあ、諦めるしかないのか?ちょっと待ってください。千里の道も一里から。困難は分割して考えよ。
 できることからやれば、また、自社の与条件を勘案して、DXを推進する人材を比較的短期間で育てることは決して不可能ではない。本稿では、外部人材を登用する、ヘッドハンティング的な取り組みは割愛し、比較的人員の限られる中小企業で、限られた現有人材の中からDX推進リーダーを育てる方法を考察してみる。

2)組織レイヤーごとに必要な人材像を整理してみよう 

 中小企業では、人員が少ない分、会社組織が簡潔でわかりやすい。ここでは大雑把に4段階に分けて考えたい。
 (1)経営者(社長)
 (2)部門責任者(マネージャー)
 (3)職長(ボス)
 (4)技術者・製造担当者(スタッフ)
 (1)(2)(4)に簡素化しても、考えることができるが、デジタル技術を使いこなす際に現場でのフィッティング、PoC(IoTデバイスなどが現場で有効に機能するか実験・実証する。)などの作業を考えるうえでは、各業務プロセスの最小単位のリーダー(ボス)が大きな役割を果たすこともあるため、4つに分けてみる。

 (1)経営者企業変革をめざす以上、経営者の役割が重要
 常に変革をめざし、社内をまとめ、ひとを育てながら、結果を出す。経営者の役割は中小企業ほど大きいことは間違いない。しかし、経営者自らがIoTデバイスの仕様を考え、PoCを主導し、ITベンダーやコンサルタントとの商談にも入っていくなら、他に仕事があるでしょうと言われかねない。経営者は、まず、自らの右腕となって、DX推進を直接遂行してくれる「右腕的存在」を育てるのが近道である。
 専門家でなくても良い。社内で必ずひとりやふたりは居る、パソコンの操作に困ると調べて教えてくれるひと、マシンのメンテナンスに長けたひと、とにかく、工作機やクルマ、新しいものが好きなひとなど、現有勢力の中から、最適と思われるひとを見出し、基礎知識を与え、自らのDX推進とウチの会社はこう変わらないと!との熱意を見せ、権限を与えて、自由な試みに取り組める環境をつくる。
 これは、(2)マネージャーと一致する方がもめ事が少ないかもしれないが、若いひとや現場に秀でた者を別に選任しても良いだろう。

 (2)マネージャー。目的意識や知識の共有を広げる。
 もっとも大切なのは、社長のDX推進の方針を深く理解し、目的を共有できること。そして、より下位のレイヤーである、ボス、スタッフなどへの目的意識の共有を広げていく。DXの大家、同様の企業の先駆的実践者など、共通の「先生」を頂き、皆でセミナー等に参加するのも良い。幸いオンラインで開催されるもの、YouTubeなどで配信されているものもあり、全員で上京するなんて、労力はいらないのも最近の良いところである。
 前述の1:革新性・創造性、2:実現性・計画性、3:生産性・付加価値、4:継続性・人材育成、5:共創・顧客視点の全部を具備していることが望ましいのは間違いないが、原石は、「現有勢力」。ひとつかふたつ、秀でたところがあれば、徐々に身につけてもらうことにしよう。

 つまり、どの会社も欲しがる100点満点の人材(ヤタガラス人材)をむやみに求めるのではなく、少しずつ、弱点には目をつぶって組織でカバーするのである。
 この辺まで考えてくるとだんだん出来そうな気持ちになってこないだろうか?

 (3)ボス。デジタイズやデジタライゼーション、個別の工作機や工程のデジタル化の要。
 マネージャーの薫陶を受けて、スタッフをまとめていく、DX実現にあたって重要なポジションである。笛吹けども踊らず、社長が号令しても、ここが動かなければ、工作機からのデータは上がらないし、レジや会計伝票の刷新も出来ない。各スタッフの力量や、年齢、ITやデジタルツールへのリテラシーや変革への懐疑的な見方など、さまざまなスタッフがいる中で、無理なくDXを社内全体に行き渡らせていかないといけない。デバイスの使いこなしについてのOJTなどでも役割は大きい。前述の1から5までの中では、革新的な特性よりも、継続的に、現場視点、顧客視点で取り組みを続けていく、後半の項目が重要になると思われるため、3、4、5あたり中心に強みを有する適任者を見出し、革新性などについては、社長、マネージャーと共有していけば、持ち味が開花してくるであろう。

 (4)スタッフ。使いこなし、喜んで成果を享受してもらえないと、DXが完成しない!
 トップダウンでロボットや高価な基幹システムを導入したが、現場のスタッフが効果に懐疑的で、部品表、価格マスターの入力などに嫌気して、使われないシステムに。これは多くの会社で見られるDX失敗例である。そうならないよう、全社で目的意識を共有する中で納得ずくで、自分の業務が変わることに意義を感じてもらえる社員。4、5あたりはすべてのスタッフで、レベルはいろいろあるとしても、理解し、行動してもらわないと。また、DXの効果で、単調な仕事がなくなった。会社の収益が向上し、勤労意欲が増す、など、成功した場合のイメージを持ってもらうと、変革に慣れ親しむ社員が増えてくると思われる。

3)コンピテンシーディクショナリー

 こうして組織内の階層・レイヤーごとに、DX人材を見てくると、少しずつ一口にDX推進人材と言っても、ずいぶん求められるイメージが違うのでは、と気づかれた方も少なくないと思う。
 当たり前だが、社内での役割や職階、担当業務により、求められる人材の特性・レベル感は異なる。
 ここでDXを進めるにあたって参考になると思われるのがコンピテンシー評価の考え方である。
 コンピテンシー評価、もうかなり古い概念ではあるが、外資系企業を中心に採用され、徹底した運用がなされているところも多いであろう。残念ながら日本の大企業、官公庁などでも導入を標榜するところもあった、「評価基準は全員同じでないと。。」などと、全社一律の評価基準を作り、中途半端に終わったところが多いため、ジョブ型雇用も在宅勤務も定着せず、もやもやしているところが多いのが現状であろうか。これでは、DX推進のようなプロジェクト・タスクの積み上げで成り立つような事業は進みにくいであろう。
 コンピテンシー評価について、若干解説する。
 社員の中でも高業績を上げる者の行動様式・発想を理想的な社員の要件として、評価基準にすること。この評価基準は、業務内容や職階によって、全部異なり(この業務内容や職階、職域ごとの評価基準をコンピテンシーディクショナリーと言う。)、ある職場に配属されるための評価基準も、それぞれの職場で異なる、とするものである。(簡単に言うと)つまり、持ち場持ち場でコンピテンシーディクショナリーは違うので、どこでもかしこでもオール5のDX推進リーダーを配置しなくても良いわけである。
 これがDX推進人材を育てるうえで、大きなヒント、助けになるのである。つまり、業務ごとに、必要な人材の備えるべき要件もレベルも微妙に異なるところを利用するのである。
 創造性は大切であるが、ハンバーガーショップの店頭のスタッフが突然革新的な接客やメニューを実行しだしても困るのも事実。得手不得手もあるが適材適所という言葉もある。
 社長に強力なリーダーシップと組織マネジメント力、長期に亘る会社の将来像を描き、達成に向けて大きな計画を立案していく能力が必要なのは言うまでもない。

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ハンバーガーチェーンの店頭
ミルクに隠れているが、モバイルオーダーとの文字が読み取れる。スタッフはマニュアルの手順どおりに業務をこなすレベルに達していることが必要だが、それ以上を求められるわけではない。
しかし、スマホアプリやPOSレジを自在に使いこなすITリテラシーを有する人材である。

 若干、手を抜けるとしたら、マネージャー以下の部分である。
 多少具備する特性が異なる、レベルに及ばない点があっても、サブをつける、情報共有や社内会議の場で補い合うことが可能だ。
スタッフは、むしろ、決まった方針に従う場面も多かろう。そこでは目的を理解し、顧客視点を忘れないで、DX実現の暁には、シゴトがラクになり、クリエイティブな業務がふえ、会社の対外的イメージも良くなる!との成功イメージを持ってもらえれば十分かもしれない。
 最後に、日本の企業の有するDX推進におけるアドバンテージをひとつだけ挙げてみる。それは、TQM,TQCなどで培われた、カイゼンの文化が従業員の中に根付いていることである。これまで述べてきた経営者から中間管理職を経て全社員に広めていくトップダウン型のDX推進には、軋轢も伴うが、ボトムアップでカイゼン提案が上がってくる。欧米のホワイトカラーとブルーカラーがはっきり分かれた職場では考えられないそうだ。カイゼンをあげよ、とマネージャー、ボスと降ろしていかないといけない。自発的に、さらには、サークル活動で取り組んでくれるのは日本だけと言っても過言ではない。
 こうした、トップダウンとボトムアップ両方の作用でDXを推進出来る強み。ミドルアップダウン、両効きの経営、など呼び方は違っても、日本ならではのDXの取り組み、まだまだ勝ち目はありそうだ。

 以上、人材は、企業の社内リソースの中でも最も重要なものであり、育成は企業の成長を左右する。ましてや常に変革を続け、より強い企業、より社会的に良い企業をめざす、DX企業をめざすうえでは、変革に強い人材がもちろん必要である。
 しかし、完璧を求めることが難しいとすれば、できる範囲で、人材の輪を広げる、足りないところは組織運営で補う、などの打つ手があることを、参考としていただけたら幸いである。

参考サイト:
DX SQUARE https://dx.ipa.go.jp/
DX 推進指標 https://dx.ipa.go.jp/tools/dxpi
(運営:独立行政法人情報処理推進機構)


 

スキルアップ
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筆者紹介

辻野 一郎(つじの いちろう)
ITコンサルティング DXpower 代表
(おもな進行中のプロジェクト)
◆一般社団法人エコビジネス推進協会事務局長
◆近畿産業技術クラスター協同組合 顧問
◆独立行政法人情報処理推進機構(IPA)社会基盤センター 製造分野向けDX推進方策検討WG委員
◆BAC AIoT BWG
◆みせるばやお

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