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ITIL®を活用した情報システム部門の働き方改革 第6回:身に着けるべきスキルとは?
2019年5月8日 8:00

今回は、ITIL(ITサービスマネジメント)を活用した働き方改革に向けて、身に着けるべきスキルについてお話したいと思います。

「スキル」がなぜ重要か

ご存じの通り、ITサービスマネジメントにおいては、成功させるための4領域がサービスデザインに定義されています。通称「4つのP」と呼ばれるもので、People(人材)/Process(プロセス)/Products(プロダクト、ツール)/Partner(パートナー)です。
われわれIT技術者が陥りがちなのは、プロセス設計や、ツール(プロダクト)を導入することには熱心ですが、実際にサービス提供を行うのは「人」であるという重要な領域が抜けてしまうのです。

実際にとても高価かつ高機能なツールを購入し、ITILにのっとったプロセスフローやルールを構築したにもかかわらず、人材や組織に対する教育や、啓蒙活動を十分に実施しなかったために、まったく成果が出ないという事例がありました。
成果を出すためには、プロセスやツールは使いこなす人や組織のリソース(資源)やケイパビリティ(能力)に大きく依存します。
実際にサービス提供を行う「人」と「組織」のことを前提とした設計であることが必要です。
つまり、どのような「人」がサービスを提供するかによって、成果を出せるか出せないかが決まってくるのです。

ちなみに、パートナーも企業であり、人です。サービス提供の際に同様の考え方や価値観を持ち、共有されていることが前提となります。

人材の3要素から考えてみる

人材の3要素という考え方があります。
スキルとは何か?一般的には、訓練を通じて身に着けた能力のことで、技能とほぼ同義で用いられます。
他にもコミュニケーションスキルといった表現で技能として考えられています。

しかし、いくら技能が高くても、個人の価値観や意欲が高くないと、成果を出すことは難しいのではないかと思います。「働き方改革」を実現するための熱意や意欲、他者に認められるリーダーシップを有している必要があるのではないでしょうか。

以下に、人材の3要素と習得方法について記載します。自らの資質による内的な手法と、外から与える外的な手法で、それぞれの要素を高めていくアプローチをまとめました。

要素 習得方法(内的) 習得方法(外的) 施策
スキル
(ノウハウ)
自己学習、啓発 研修の受講
資格の取得
ランクに応じた研修モデルの定義
スキル・キャリアパスの設定
資格取得の報奨金制度
モラール
モチベーション
個人の価値観
高い倫理観
体験型学習
外部研究会への参画
地位、賃金の向上
インセンティブ
顧客、他者満足度
顧客とのコミュニケーション
期待値の共有
リーダーシップ 素養、才能
達成意欲
当事者意識
プロジェクトへの参画
達成意識の醸成
リーダーへの抜擢
権限の委譲
プロジェクトへの参画の機会を提供
外部からの評価
メンバーからの信頼を評価

働き方改革は、「人」が行うものである

働き方改革は、主人公が「人」である限り、人が実現する改革です。
働き方改革を実現するためには、そのためのプロセス、ツールがいかによいものであっても、使いこなす「人」に高いレベルのスキルがなければ、実現することは不可能です。
そして、高いモチベーションと、他者から認められたリーダーシップを持ったリーダーによる推進が必要なのです。

ITILを活用し、働き方改革を実現するための能力とは?

サービス提供やサービスマネジメント、システム運用は、決めたことや決められたことを実施することと思われがちですが、本当にそうでしょうか。
では、誰かが「決める」のでしょうか。これまでお話してきた顧客満足や、インシデント管理や問題管理、継続的改善のアプローチの具体的な内容を「決める」、つまり設計するのは「人」です。
いわゆるサービス設計や、運用設計ができるコンサルタントやエンジニアはそう多くはいないのではないでしょうか。

設計に必要なのは、「想像力」と「創造力」

システム開発は、要件定義から方式設計やプログラム開発、テスト、リリースなどの一連の流れに沿って実施されますが、運用設計は一筋縄ではいきません。

例えば、サービスデスクを設計するとしましょう。どのようなことを検討しないといけないでしょうか。

・問い合わせをする、顧客や利用者、関係者(ステークホルダ)は誰か?
・どのような問い合わせが想定されるか?
・顧客や利用者が求める品質はどのようなものか?(解決目標時間や開局 時間)
・インシデント発生時にエスカレーションする先は誰か?
・どのような項目を管理し、評価すると継続的な改善が実現できるか・・・・・    など。

これらを検討し、プロセス設計書やサービスレベル仕様書にまとめ、ツールに実装し、担当者に教育・トレーニングを行い、実際にサービス提供をできるようにするのです。

このことから、どのような能力が必要でしょうか。
運用設計には「想像力」と「創造力」が必要になると思います。

顧客や利用者から発せられる問い合わせを想像する、利用者が何に困るかを想像する、といったこれから起こる事象をこれまでの知識や経験も踏まえ、想像する力が必要になるといえます。

想像力とは
心的な像、感覚や概念を、それらが視力、聴力または他の感覚を通して認められないときに、作り出す能力である。想像力は、経験に意味を、知識に理解を提供する助けとなり、人間が物事や現象を理解するための基本的な能力の一つである。また、学習の過程においても補完的な役割を果たす。
(出展 Wikipediaより引用

そして、想像力を発揮して考えた顧客や利用者が求めるものを実現するためのサービスを設計したり運用を設計したりするためには「創造力」が必要になるのです。

創造力とは?
新しいものをつくりだす能力。解答が1つだけではないような課題における思考,すなわち発散的思考の能力と関係があるとされる。知能の高い人が創造力にもすぐれているとはかぎらず,創造力は知能のほかにパーソナリティ,動機,所属する集団など,さまざまな要因により影響される。
(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 より引用

想像力と創造力を鍛えるためには、常に顧客や利用者が求めることを考える、ストーリーやプロセスを検証するといった活動を継続的に行い、ノウハウとして蓄積していくことが重要になります。
もちろん、ITILといったフレームワークの知識体系(外部の知見)を活用することで、より短期間に効率的に能力を高めることができます。

そして、応用力

想像力と創造力を発揮して目指すサービスや運用を設計し、実際に稼働する際には応用力が必要になります。決めたことだけを杓子定規に実施していては「働き方改革」はできません。
目的に向かって常に努力し、達成するための応用力を身に着けることが大切であると考えています。

サービス提供は、カットオーバーしてからが本番です、絶え間ない改善の中で、「働き方改革」を実現するためのサービスとは何か、できることは何かを考え続けることを利用者起点で推進していくことこそが、活動の本質と考えます。

おわりに

今回で本コラムの連載は終了になります。これまでのご愛顧感謝いたします。
これまで本コラムでご紹介した内容によって、皆さまの「働き方改革」の一助になれば幸いです。

ITSM/ITIL
ITIL®を活用した情報システム部門の働き方改革
デジタルトランスフォーメーション、AI、RPA、IoTなどに取り組む企業が増えており、同時にIT人材の需要は増え続けています。しかしながら、肝心なIT人材が増えているかというとそうではなく、人手不足に陥っている企業は少なくありません。 身を粉にして働くことも時には必要ですが、私はバランスが重要ではないかと思います。 昨今、世間で話題の「働き方改革」というキーワードがありますが、一番必要なのは、まさにITに関わる方々なのではないでしょうか。この連載では、『ITIL®を活用したIT人材の「働き方改革」』のテーマに対し、筆者の独断と偏見で追究していきたいと思います。
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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ
DX推進部 デジタルサービス推進グループ
黒澤 亮祐

ITサービスマネジメントのフレームワーク「ITIL®」を活用した業務改革のコンサルタント。

「ITIL®」と業務改革手法を活用し、IT部門や製造業における組織横断でのITサービス提供・管理プロセスの全体最適化、ツール共通化などの支援実績あり。
その他、新入社員向けシステム運用研修や運用の業務改革(BPR)セミナー、要件ヒアリングセミナー、ISO20000を活用した幹部候補生の育成など幅広い講師やファシリテーターを担当。

開発担当、運用担当、サプライヤなど、多くのステークホルダーの利害関係を一致させ、事業貢献に向けて業務改革支援に携わっている。

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