概要
企業運営を中枢から担うコーポレート部門の方々にとって身近なテーマである「インナーコミュニケーション」。企業の内外に巻き起こるマクロの変化の渦とDX、そのなかに生じる企業と従業員の関係性のうねりを、時代・トレンド・価値観などの比較を通じて、小気味よく分かりやすい言葉でまとめていくコラムです。
コミュニケーション取れていますか?
――「読まれない社内メール」から考える、インナーコミュニケーション再設計論
- 目次
- 第1章:コミュニケーション取れていますか?
- 第2章:それでは、「インナーコミュニケーション、取れていますか?」
- 第3章:受信者に「読ませる」ためには、マーケティング的アプローチが必要
- 第4章:インナーコミュニケーションは、従業員への愛情表現
- おわりに
第1章:コミュニケーション取れていますか?
「社内のコミュニケーションは取れていますか?」
こう尋ねると、多くの経営者や管理職は迷いなく「Yes」と答えるでしょう。
定例会議もある。社内メールも送っている。最近ではチャットツールも導入した。
“発信”という行為自体は、確かに日々行われています。
では、ここで一度立ち止まって考えてみたいと思います。
そもそもコミュニケーションとは何でしょうか。
辞書を引けば、コミュニケーションとは
「情報や感情、意図を伝達し、相互に理解し合うこと」と定義されます。
ここで重要なのが、「相互に」という言葉です。
しかし現実の職場では、
• メールを送った
• 社内ポータルに掲載した
• 朝礼で説明した
これだけで「伝えた」「共有した」「コミュニケーションは取れている」と
判断してしまう場面が少なくありません。
その結果、実態として起きているのは、
一方通行の発信で止まっているコミュニケーションです。
送信者は自分の役割が完結しているために、「やっている」という実感があるものの、
受信者の理解・共感・行動にまで至っているかどうかは、ほとんどの場合は確認されていないトル
そんな状態が、多くの職場で“当たり前”になっていることは想像に難くありません。
第2章:それでは、「インナーコミュニケーション、取れていますか?」
この問題が、より深刻な形で表れているのが
インナーコミュニケーションの領域です。
リモートワーク、フレックスタイム、副業の容認、雇用形態の多様化。
現代の職場は、時間も場所も価値観も、かつてないほど分散しています。
「それでは、インナーコミュニケーション、取れていますか?」
と、問いの単語をわずかに変えるだけで、経営者や管理職が答えに詰まるのです。
実際に現場では、経営層や人事部門からは、こんな声をよく耳にします。
• 会社の方針がなかなか浸透しない
• 周知したはずなのに、伝わっていない
• 結果として、現場が動かない
• 社員が何を考えているのか分からない
これらはすべて、 コミュニケーションがうまく機能していない結果を表しています。
特に、発信しても手応えがないことに困っているのです。
その原因は明確です。
第1章で触れたように、コミュニケーションが一方通行の発信で止まっているから…。
『測れるものはマネジメントできる』、かの ピーター・ドラッカーの有名な言葉があります。
しかし、コミュニケーションが一方通行の状態では、何も測れずマネジメントできません。
社員の理解度も、温度感も、納得度も見えない。
見えないから、改善もできない。
その状況に悩み、試行錯誤している企業はまだ健全です。
一方で、
「もう仕方ない」
「今の若い世代はそういうものだ」
と、半ば諦めてしまっているケースも少なくありません。
しかしそれは、世代の問題でも、社員の意識の問題でもありません。
インナーコミュニケーションの”設計”の問題なのです。
第3章:受信者に「読ませる」ためには、マーケティング的アプローチが必要
ここで視点を少し変えてみましょう。
第4話で触れたとおり、社外向けのマーケティングでは、
「情報を伝える」だけで十分だと考える人はいません。
• なぜこの情報は相手にとって重要なのか
• どんな関心や課題に応えるものなのか
• どうすれば読んでもらえるのか
情報が「伝わる」かに留まらず、心に「届く」かどうかを徹底的に考え抜いた上で、メッセージを設計します。
一方、社内向けの情報発信ではどうでしょうか。
× 「社員なのだから読むだろう」
× 「業務連絡なのだから伝わって当然だ」
そんな前提に、無意識のうちに立ってはいないでしょうか。
しかし現実には、社員もまた“情報の受信者”です。
日々、膨大な情報にさらされ、優先順位をつけながら無意識のうちに情報の取捨選択をしています。
だからこそ、インナーコミュニケーションにもマーケティング的アプローチが必要になります。
重要なのは、
• 「届ける」こと
• 「読みたいと思わせる」こと
この二つを分けて考えることです。
今の時代、全社一斉メールや、イントラ掲載に頼るばかりではありません。
TeamsやSlack、ビジネスチャットを使って一斉配信するような「確実に届けるための革新的な便利ツール」は、世に多く紹介されています。もちろんツール選びは重要ですが、ただ届けるだけでは足りないのです。
関心を引き、意義を感じてもらい、「読みたいと思わせる」ことで自分ごととして受け止められて、はじめてインナーコミュニケーションは成立します。
社内メールが読まれないのは、担当者の怠慢が原因ではありません。設計不足のサインなのです。
第4章:インナーコミュニケーションは、従業員への愛情表現
最後に、最も大切な視点について触れたいと思います。
インナーコミュニケーションは、単なる情報共有の手段ではありません。
従業員への愛情表現でもあります。
• なぜこの方針を掲げるのか
• 会社はどこへ向かおうとしているのか
• その中で、あなたに何を期待しているのか
まず、愛情を確実に届けるチャンネルに乗せることが重要です。
さらに、丁寧に伝えようとする姿勢によって、「あなたを大切な一員として扱っています」という想いが相手に伝わるのです。
逆に言えば、雑に作られた情報を、読んであたり前だという姿勢で発信すると、
社員は無意識のうちに
× 「理解されなくても構わない」
× 「納得しなくても良いから 従え」
という組織の姿勢として伝わってしまうのです。
人は、自分が大切にされていると感じると、耳を傾けます。
「会社組織が自分のことを考えて、自分宛てに発信してくれている」
そう感じたときに、初めて人は動こうとします。
インナーコミュニケーションとは、管理のための手段ではありません。
組織と社員の関係性を育てるための投資なのです。
おわりに
「コミュニケーションは取れていますか?」
この問いに、これからは少し立ち止まって答える必要があるのかもしれません。コミュニケーションの本質は、伝えたかどうかではなく、心に届いたかどうか。会社発のメッセージが読まれたかだけではなく、意義(愛情)が伝わったかどうか。
その問い直しこそが、これからの組織にとって、最も重要な第一歩に繋がるのです。
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筆者紹介
略歴:千葉大学法経学部経済学科卒業後、商社の航空宇宙事業の営業職を経て大手プラントエンジニアリング会社に転職。
国内・海外営業を担ったのちに、2016~2022 同社 広報・IR部において、機関投資家向けIR、社内外広報、企業風土改革組織のマネージメント職として、経営陣の投資家説明資料企画・策定、統合報告書製作、インナーコミュニケーションを統括。
2022~ 株式会社コミュニティオ コーポレートコミュニケーションジェネラルマネージャー(現職)

一介の営業マンが晴天の霹靂でプラントエンジニアリング会社(現東証プライム上場)の広報・IR責任者となる。急速なDX浸透、働き方改革、エンゲージメント施策…、劇的な変化のなか、全く経験のない広報・IRのミッションに対峙する。営業とマーケティングの視点からの仮説を立てながら徒手空拳で挑んだ経験を糧に、読み手にとって易しいコラムを目指します。当時、世の潮流を得るための社外交流を契機に、スタートアップとの共同ソリューション開発に参画。自社を検証フィールドとして活用することでサービス開発を加速させ、職場の半径5mの人間関係が組織力を強くする『TeamSticker』 のSaaSサービスの実現に至る。その後も、Teamsにありそうでなかった一斉配信機能を実現する 『NewCommunicator』 の開発の端緒に繋げる。現在は、当時ソリューション共同開発先であった株式会社コミュニティオにおいて、営業活動とコーポレートコミュニケーションに従事。趣味は、海釣り、マラソン、水泳、サッカー、温泉。パン職人の実弟と共に西葛西でパン屋 Pan de Momoを経営する。
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