概要
情報システム担当者は、最初から幅広くIT知識を有している方はごく一部になると思います。業務を遂行する過程で必然的に知識が必要になったり、経験から得た知識というものがあったりすると思います。一つの会社だけではなく、色々な会社を経験した体験談や考え方などをご紹介させていただきます。また、情報システムの面白いところや困りごとといった個人的な感想など情報システムメンバー目線で語ります。
前回は、プログラム開発以外で社内SEとして経験を積んだ経緯と学ぶ姿勢についてお話ししました。今回は、私のDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する経験をご紹介します。30年以上前に遡る経験を含みますので、当時のシステム構成は現状と大きくかけ離れた古いものであるケースもありますが、根底にある考え方や、プロジェクトを進める上での注意点は今も変わらないと考えています。
- 目次
- 各種システムから会計システムへ自動仕分による二重入力の軽減
- 日報システム構築によるデータ確認業務の効率化とペーパーレス化
- 人事情報閲覧システムによるペーパーレスと効率化
- 他部門へ情シスメンバーの常駐による踏み込んだ改善提案
- まとめ
- 次回予告
各種システムから会計システムへ自動仕分による二重入力の軽減
会計システムの入替をきっかけに、販売管理システム(冠婚葬祭)と会計システムへの2重入力を削減するプロジェクトが発足しました。販売管理システムから会計システムへ自動仕分けをバッチ処理で連携する事で、営業担当者と経理担当者それぞれで入力していた作業を営業担当者のみに削減するというものになります。
会計システムはクレオ社のZeemになります。オンプレサーバで導入したため、ファイルサーバによるフォルダ共有で各種システムからのデータ受渡しが可能となりました。複数のシステムからCSVファイルの入出力が必要となるため、システムからCSVファイルを出力する前にロックファイルを作成する事で同時にCSCファイルを書き込みしないように制御する方法をとりました。
予想通り、プロジェクト後に販売管理システム以外のシステムからも自動仕分けを作成する事になりましたので、ブッキング回避のためにロックファイルによる制限を設計しておいたことは、拡張性を確保する上で非常に有効でした。また、内製システムはAccessで統一されていたため、CSVファイル出力やロックファイルの制御を機能部品化する事で、他のシステムへの展開を容易に実現する事が出来ました。会計システムのバージョンアップに伴うCSVファイルのレイアウト変更も、比較的容易に対応が出来ました。
今回の販売管理システムから会計システムへ自動仕分けは、インポートする側の会計システムで仕様は決まっている事と改善点が明確なため悩むこともなく進められました。設計時に注意した点は、仕訳を重複して作成しない仕組みの設計になります。対策としては、自動仕分けを作成した履歴をDBに記録する事で対応しました。現場担当者とヒアリングした結果、仕分けの訂正も発生するため、履歴データから再仕分けを作成する機能も実装しました。再仕分け(=訂正)時には、変更前のデータから赤伝票の仕訳を作成して、変更後のデータから黒伝票の仕訳を作成します。情シス目線では気が付かない機能でしたので、現場担当者の声を聞く事は重要だと思いました。
日報システム構築によるデータ確認業務の効率化とペーパーレス化
グループウェアすらない時代、毎日秘書が社長に各事業部門の営業活動を報告していました。具体的な方法は、バッチを実行して各事業部門の日報ファイルをコピーし、リンクされたファイルを開いて印刷するというアナログなものでした。
この状況から私が感じた問題点は、主に以下の2点になります。
・入力漏れがないか確認に手間がかかっている。
・過去分の出力が出来ないため、紙で保管する必要がある。
そこで日報データをデータベース化しました。これにより、前日結果の未入力確認が容易になり、過去分もデータベースから出力できるようになったため、紙での保管も不要となりました。ペーパーレス化と業務効率を向上させました。
この日報システム構築を通して私が強く感じた「気づきポイント」は、現場担当者は今行っている仕事に対して疑問(もっと楽にならないか?)を持たずに作業しているということです。
疑問を持っていないため、面倒だと思わず作業をこなしてしまい、結果として「改善してほしい」という依頼が情報システム部門(情シス)に来ません。
日常の会話(コミュニケーション)やトラブル事例などを聞いた際に、情シスが積極的に業務の流れを「見て・聞いて」調査をしないと、DXは進まないと痛感しました。
また、担当者は自分の業務しか知らないケースが多いため、上流工程についても確認しないと、根本的な解決に至らない可能性があります。上流工程のさらに上流工程へと、芋づる式に確認する必要がある場合は大変ですが、部分最適にとどまってしまうと効果は薄くなってしまいます。せっかく改善を行うのであれば、「最善は何か?どうしたら良いか?」を徹底的に考えて対応することが重要だと考えます。
人事情報閲覧システムによるペーパーレスと効率化
人事部門が社長の指示で、指定社員の履歴書から人事考課履歴、譴責処分などの履歴を印刷して紙で提出していました。突発的に指示が発生して、最優先で対応する必要があるため毎回人事部門は混乱していました。人事システムはオンプレ製品であったため、メーカーにODBC接続でデータベースへのアクセス許可を頂いておりました。履歴書以外のデータについては人事システムから取得できるため、履歴書のみ入社時にスキャンして社員番号をファイル名にして特定フォルダへ保存する運用ルールを確立しました。
その結果、社長自らが人事情報閲覧システムを使用して検索するようになり、人事部門の資料とりまとめ工数が削減され、同時にペーパーレスを実現しました。

他部門へ情シスメンバーの常駐による踏み込んだ改善提案
前述の気づきポイントの通り、「情シスが改善要望を待っていてはDXが進まない」と考えたため、他部門へ情シスメンバーが常駐する施策を実施しました。これは、業務の流れを可視化し、業務効率を向上させるための改善提案を積極的に行うための試みでした。
最初は本社管理部門、その後は葬儀部門、婚礼部門、営業部門、ゴルフ場といった現場部門へも常駐しました。現場へ行ってみると、各セクションの担当者からたくさんの困りごとが出てきました。現場担当者は「本社管理部門へは依頼しにくい」といった声を聞くこともできました。会社によって風通しは異なりますが、人と人とのコミュニケーション(スキンシップ)の大切さを改めて感じました。私がこれまで在籍した会社は、いずれも中小企業なので100名~300名規模の会社でしたが、特に情シス部門は本社内でさえ希薄で孤立感のある事が多かったです。コミュニケーションが苦手だから向き合わない、避けたい、と逃げてばかりいるとAIに取って代わられてしまうかもしれません!とはいえ、個人でいきなりコミュニケーションといっても出来るものではありません、この記事を読んでいる経営者や部門長といった立場の方もコミュニケーション不足を感じている際は、きっかけ作りをサポートしてあげる事が肝要と思います。
まとめ
改善の結果は細かいことが多かったものの、業務の「見える化」を行い、バッチなどによる自動化で改善するという一連の流れは、DXを実施する上で基本的な作法であることが確認できました。
現状を「AS-IS」、理想像を「TO-BE」と表現しますが、私の経験上、TO-BEは机上の空論で実際に運用してみると新たな課題が見えてくるケースがありました。運用そのものを変えるような大規模な改善を実施する際は、TO-BEの設計段階で運用担当者にヒアリングを実施して、慎重に進めることが極めて重要です。
次回予告
次回はセキュリティに関する考察や、強化していくための順序など個人的な見解をご紹介させて頂きます。今年になって大きなシステム障害を伴うインシデントが発生しています!体力のある大企業であれば乗り越えられるかもしれませんが、中小企業は会社の存続が危ぶまれるような事態に陥るかもしれません。
連載一覧
筆者紹介
1971年生まれ
帝京技術科学大学(現:帝京平成大学)卒業後、4社で情報システム担当として従事。DX(社内システム開発やシステム間連携など)・ネットワーク構築・VPN構築・セキュリティ施策などの業務を経験。



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