現場で役立つ文書作成のポイント

第5回 分かりやすい文書とは

概要

現代人が社会生活を送るうえで(特にビジネス活動を実践する場面)、文書は「人と人とを繋ぐ重要なコミュニケーション手段」であり、時によっては、「意思決定手段」でもあります。
ビジネス文書を作成する際にも「文は人なり」と誤解し、自分の世界に埋没したような「文」を作成するケースが多々見受けられます。しかし、ビジネスの場面では、「文書」は上記のように重要な位置付けを担いますので、論理的に構成され、結論が明確に表記されたものを作成する必要があります。
当ページでは、社内現場で役立つ「文書作成」の基本をシリーズで掲載し、読者の皆さんが、ホンモノの文書作成力を身につけるポイントを提示いたします。

分かりやすい文書とは

文書は、他人に読んでもらって「分かる」ものでなくてはなりません。皆さんは自分で文書を書いた後で、それが果たして他人にとってわかりやすい文書になっているかと考えたことがありますか。
「考えたことがない」と言う人は、おそらく「分かりにくい」文書を書いている人です。せっかくの文書が読み手に分からなかったり誤解されるのでは、困ったことです。
「分かりやすい」文書は、
  • 論旨がはっきりしている
  • 理路整然としている
  • 読み手の立場たって書かれている

 

  •  
などと言われますが、これらの説明自体があまり分かりやすいとは言えません。
具体的にどうすれば良いのか、どういう点がわかりにくいのかを考えてみましょう
 

文書がわかりにくい原因

文書がわかりにくい原因を分析してみると、三つの段階があると考えられます。
 

第1段階:単語・用語の意味が分からない

これは、専門用語や造語を多用した場合におきます。読み手の立場に立っていない、書き手の常識だけで語句を選択するため、こうなりがちです。
 

第2段階:単語・用語はわかるが、文章の意味が分からない

これは、文章に否定や二重否定を多用した場合におきます。形容詞や副詞など、客観性を損なう語句が多い文章でも意味が伝わりにくくなる場合があります。また、論理関係が長く入り組んだ記述を使った場合も、文章の意味が分からなくなりがちです。
 

第3段階:単語・用語や文章の意味は分かるが、前提となっている意見や考えが分からない

これは書き手の思想が明確になっていない場合や主張が弱い場合におきます。
 
 
これらの分かりにくさを避けて、分かりやすい文書を書くための心構えを以下に記します。
 

読み手の立場に立った文書の書き方

文書を書く目的は、書き手の伝えたい内容を読み手に正確に伝えることにあります。読み手が理解できなければ、その文書は、読み手にとって価値がないと言えます。
読み手が書き手の文書を読んでくれるのは、その内容が読み手にとって関心のある事柄であり、読み手と書き手にとって共通の問題にかかわる場合です。例えば、セキュリテイに関する文書を書いた場合、読み手が最近のコンピュータ・ウィルスの被害を受けたばかりであれば、真剣に読んでくれる可能性が高くなります。一方、データベースの専門家だった場合は、あまり関心を示さないでしょう。
「書き手の意図を正確に伝える」には、書き手が読み手の関心事をつかんで、この文書に書かれている内容は、読み手とともに論じることができる問題である、と思わせることが必要なのです。
文書は読み手に共通の問題を書き手と論じる場である、と感じてもらえなければなりません。
 

読み手の種類と語彙の選択

ビジネス文書の読み手は、次のように分類できます。
読み手が特定でき、書き手と同じ専門分野であれば、文書を専門的な内容で書くことができます。
一方、読み手が書き手と異なる専門分野であれば、専門用語などの語彙の選択に細心の注意を払う必要があります。専門用語に説明を付けたり、脚注を付ける、あるいは別の言い方で表現し直すなどの工夫が必要です。
読み手が特定できる場合でも、それが一人であるか多数であるのかによって、書き方を変えるべき場合があります。例えば、機密性の高い内容を上司に報告する場合、相互に了解した専門用語を利用することで、機密性を高める効果が期待でき、情報伝達の効率も高まります。
しかし、このような状況はまれでしょう。基本的には、読み手が一人であっても多数であっても、多数の人が読むことを前提に書くべきです。
 

読み手の意識に近づいて推敲

ビジネス文書でも、文書を書いたあとに推敲が不可欠です。しかし、自分で書いた文書を読み直す場合には、内容が頭に入っていることが災いして、記述すべき内容を書き落としている「抜け」を見落としやすいものです。句読点の位置などは比較的調整しやすいのですが、特に文書の構成や用語については、欠陥を見落としやすくなります。
少しくらい長い文章になっても、具体的な詳細を説明し、読み手に分かりやすい文書にする必要があります。
 
 
 
次回以降は、以下の内容を予定しています。
  • 読みやすい文書とは、文書作成のテクニック
  • 文書レビューの方法
  • RFP(見積要求仕様書)の書き方、テクニック
  • 社内企画書の書き方、テクニック
  • 業務報告書の書き方、テクニック
  • 詫び状の書き方、テクニック
  • メールの書き方 テクニック
  1.  

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

運用プロフェッショナルサービスグループ

佐藤陽一

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