運用ノウハウを学ぶ

システム管理に関わるベーシック情報やトレンドをご案内します!

ITIL®を活用した情報システム部門の働き方改革 第5回:継続的サービス改善を実践する
2019年3月6日 12:00

今回は「継続的改善」の具体例として、顧客満足度の向上についてお話ししたいと思います。

顧客満足度とは?

「サービスの価値は、プロバイダではなく、それを受け取る人によって決定される」
(ITILサービスストラテジより)
つまり、顧客満足度とは、サービスの提供側(情報システム部門やベンダ)が決めるものでなく、顧客が評価するというものです。
あたり前のようですが、意外と意識していないのではないのでしょうか。
顧客満足度が高いということは、顧客は当該サービスの価値を認め、その利便性を認めていただいているということになります。また、IT活用によって生産性を向上させることが可能になり、働き方改革の一助になるといえます。

目標設定

前回はファクトデータに基づく改善のお話をしました。
そこで重要な要素となるのが、顧客満足度における指標の考え方です。
どのように考えればよいのでしょうか?
ここでお話ししたいのは、「定性的」「定量的」な指標の組み合わせで考えるということです。

定性的な指標と定量的な指標とは?

定性的な指標、定量的な指標についての定義は以下の通りです。
定性的:人が感じること、質。アナログ。
定量的:数値指標で計れること、量。デジタル。
いろいろなご意見はあると思いますが、顧客満足度は本稿では「定性的」な指標とします。
顧客満足度は指標にこそなっていますが、人が感じる定性的な要素が多分にあり、測定方法としては一般的にアンケートやインタビューを通して行います。

フレームワークを使う

ここで、前回お話した、KGI/CSF/KPIフレームワークを使ったサービスデスクにおける顧客満足度向上の取り組み事例をご紹介していきたいと思います。
以下のように定義します。

KGI 達成目標 顧客満足度の向上
CSF 重要成功要因 顧客満足度を高めるための施策
KPI 重要業績評価指標 施策の効果を評価するための指標

お客様の悩み

あるお客様では、サービスデスクの顧客満足度の低下に悩んでいました。
サービスデスクの提供ベンダを変更したところ、顧客満足度が4.5(5点満点)から3.0に急降下してしまったのです。

本来、サービスデスクは顧客の困りごとを迅速に解決し、IT利用による「働き方改革」を支援しなければなりません。
そこで顧客満足度の改善プロジェクトが発足しました。
ゴール(KGI)は「顧客満足度をまずは半年後に4.0に戻す」ことを目標に定めました。

顧客満足度の低下の原因を探る

まず、取り組んだのは顧客満足度の低下の原因を探ることでした。
アンケートやインタビューの結果、以下のような原因が浮かび上がってきました。
・対応が遅い。回答までの時間を要する。
・オペレータの知識不足のためか、回答が要領を得ない。
・翌日に再度、問い合わせをすると引き継がれていないのか、はじめから説明しなければならない。

改善のための施策

顧客満足度の低下の原因を把握し、対策を立案します。
原因から問題を解決するための、仮説を立案します。これがCSF(重要成功要因)となります。
サービスデスクの場合、顧客満足度を向上させる要因は何でしょうか?
実際に対応時間が遅いという評価の場合、改善施策によって、インシデントの件数の増減が無くても、対応時間を短くすることによって、顧客満足度が向上した事例もあります。

例えば、以下のような要因に対して、それぞれの施策を立案します。

重要成功要因(CSF) CSFの施策 測定指標(KPI)
1-1 対応時間の短縮 過去事例の有効活用 回答における過去事例の活用率
1-2   要員のスキルアップ 教育回数、確認テストの点数
1-3   対応時間の遷移 End to End※の時間
2-1 運用の効率化 ツールの有効活用 ツール記録率
2-2   要員の増強 要員数

※:End to End:問い合わせを受けてからクローズするまでの時間

ここで重要なのは、KPI(重要業績指標)はあくまでも、「測定値」であって目標ではないということです。KPIの遷移を測定することで、KGIに対する施策の有効性を測定するのです。

顧客満足度向上のためのアプローチの実際

ここまでの組み立てをイメージ化すると以下の通りです。
解決時間を短縮するための流れについて、例を以下に示します。テーマを定め、現状を把握し、改善施策を実行することになります。

PDCAサイクルを回し、継続的に改善する

先のアプローチ策を、PDCAサイクルによる活動を行うことで継続的に改善することができます。
目指すKGIを達成するために、施策を推進します。その際に、KPIを測定し、施策の効果を評価しながら、活動を行います。
前項のアプローチを継続し、3カ月周期で顧客満足度を測定することによって、実際に半年で目標の顧客満足度4.0を超える、4.3まで戻すことができました。

これは、自然にできるものではありません。週次や月次で丁寧にKPIを測定し、チームとして担当者をフォローしながら活動を継続した結果です。

さらなる改善を続けることが重要

顧客満足度が向上したからといって、活動を止めてしまっては元も子もありません。相対的に顧客満足度はすぐに低下してしまいます。利用者の顧客満足度を高め続けるためには、常に問題・課題意識を持ち、改善を続けることが重要なのです。
この事例では顧客からの感謝の言葉やねぎらいの言葉をいただき、サービスデスクの士気はさらに高まっています。サービスデスク内の働き方改革にもつながっていると言えるかもしれません。
継続的改善には終わりはないのです。

皆さまの「働き方改革」改善の一助になれば幸いです。

次回は、ITIL(ITサービスマネジメント)を活用した働き方改革に向けて、身に着けるべきスキルについてお話したいと思います。

ITSM/ITIL
ITIL®を活用した情報システム部門の働き方改革
デジタルトランスフォーメーション、AI、RPA、IoTなどに取り組む企業が増えており、同時にIT人材の需要は増え続けています。しかしながら、肝心なIT人材が増えているかというとそうではなく、人手不足に陥っている企業は少なくありません。 身を粉にして働くことも時には必要ですが、私はバランスが重要ではないかと思います。 昨今、世間で話題の「働き方改革」というキーワードがありますが、一番必要なのは、まさにITに関わる方々なのではないでしょうか。この連載では、『ITIL®を活用したIT人材の「働き方改革」』のテーマに対し、筆者の独断と偏見で追究していきたいと思います。
記事一覧へ
筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ
DX推進部 デジタルサービス推進グループ
黒澤 亮祐

ITサービスマネジメントのフレームワーク「ITIL®」を活用した業務改革のコンサルタント。

「ITIL®」と業務改革手法を活用し、IT部門や製造業における組織横断でのITサービス提供・管理プロセスの全体最適化、ツール共通化などの支援実績あり。
その他、新入社員向けシステム運用研修や運用の業務改革(BPR)セミナー、要件ヒアリングセミナー、ISO20000を活用した幹部候補生の育成など幅広い講師やファシリテーターを担当。

開発担当、運用担当、サプライヤなど、多くのステークホルダーの利害関係を一致させ、事業貢献に向けて業務改革支援に携わっている。

コメントを書く

未ログイン: ログインする

コメント: ログイン(会員登録)すると、コメントを書き込むことができます。

  • 新着Q&A
  • 最新の回答

システム管理者認定講座<全コース共通>試験のみ受験希望の方はこちら

動画で見るセミナー
動画で見るセミナー

毎年恒例となった「システム管理者の会」の年に一度の大イベントとなる「システム管理者感謝の日イベント」の模様をお届けします。 今年のテーマは、「集まれ若いチカラ!システム管理者のための夏期講習!!」です。

個人情報保護方針
運営者につい て
利用規約
サイトマップ