ITシステム運用が貢献する地球温暖化問題

第5回 グリーンITとプロアクティブな運用改善

概要

本連載では、IT部門の視点で「環境問題」を考えると題し、
 ① 環境問題の背景
 ② 環境問題とグリーンIT概要
 ③ グリーンITの取り組み事例
 ④ IT部門としての環境問題解決の重要ポイント
 ⑤ 設備環境管理の推進
を順次掲載する。

前回は、グリーンITの推進者はIT部門でなければならないことを説明しました。では実際にグリーンITを推進するにあたってIT部門が具体的に行うべきこととその効果、また考慮すべきことは何なのでしょうか?

 

目次
IT部門ができるグリーンIT推進策
4.2 事前の状況把握
4.3 性能データの再調査

IT部門ができるグリーンIT推進策

 IT部門ができるグリーンIT推進策には様々な分類方法がありますが、次に一例を挙げます。

< 表: IT部門ができるグリーンIT推進策 >
 
 表に挙げた推進策には購入・構築時にすべきことと日々の運用管理に深く関わることがあります。既に購入・構築されたものをどう運用するかということも課題ですが、購入・構築時点から最も効果が高いものを選定するほうが合理的であることは言うまでもありません。
 しかしPC・サーバー機器は総務や開発部門で勝手に選定してしまう場合が多いでしょうし、開発部門がグリーンITを意識した機種選定をしてくれるとは考えにくいでしょう。まして設備となれば専門部署で主導権を持っていることがほとんどだと思います。
 
 

障害を断ち切る設備環境管理

 ところで上述の中でサーバー室に関する部分、すなわちサーバー室設備や環境は、グリーンIT(省エネ)を推進するだけでなくITシステムの安定稼働のためにも非常に重要なものです。なぜならシステム障害の原因の3割は設備に起因しているからです。

< 図:システム障害原因の内訳 >
 
 障害をなくすためにも、IT部門(運用)はIT機器だけでなくシステムの稼働に係わる設備や環境をしっかり管理しなければいけません。
 

設備環境管理を行う前に

さて、設備環境を管理する前提として以下のようなことを知っておく必要があります。
  ① PC・サーバーの稼働に必要な条件と理由 
  ② サーバー室に必要な要件と理由 
  ③ これらの運用・維持管理方法 
  (社内事情や社会情勢も考慮しなくてはなりません。)
< 図:PC・サーバーの稼働に必要な条件、サーバー室に必要な要件 >
 
 まず一番目のPCやサーバーの稼働に必要十分な条件とは何でしょうか。 
 ご存知のようにPCやサーバーは電気が無いと動きませんが、一言で「電気」と言っても、電圧が100Vか200Vか、どれだけの量(アンペア数)が必要なのか、そもそも単相なのか三相なのか、など様々です。IT部門に限らず普通の人はオフィスに必要な電気があるのは当たり前だと思っています。しかし特に最近のサーバーが必要とする電気は、個々の機器に応じた特別な「仕様」があります。 
 またPCやサーバーは消費した電気を、ほぼ100%熱として放出します。そこで温度を一定に保つために、かなり大きなエアコンも必要になります。過度な低湿度・高湿度を避けるため、加湿器や除湿器も必要です。サーバーのマニュアルには必ず電源や稼働環境に関する項目が載っていますが、これらは最低限のことを定型的に書いているに過ぎません。書かれている理由や内容を正確に理解するだけでなく、運用方法によっては必要なものが書かれていない可能性があることも忘れてはいけません。知らないもの、掌握できていないものを運用するほど怖いものはありません。今までは許容範囲に入っていて、偶然トラブルが起こらなかっただけかもしれません。障害が起こる前に対策するべきです。 
 次に、サーバー室は事業継続のための心臓部として厳しいセキュリティや災害対策を要求されます。セキュリティは被害防止のほか、内部統制面からも必要です。もちろんネットワーク(サイバー)セキュリティと併せてしなければなりません。災害は一般に地震・火事・水を指しますが、ほかに雷やノイズ・電磁波といったものまであります。どの種の災害に対してどこまで、なぜ対策すべきかを検討することが大切です。 
 設備環境管理を実践するには、上記を踏まえた上で、具体的に何をどのレベルでいつまでにやれば良いのか総合的に分析し、実現の方法と効果を正確に把握しておかなくてはなりません。併せて運用全体との整合を図ること、いわゆる運用設計をします。いくら費用を掛けて環境を整えても、きちんと運用できなくては意味がありません。正しく運用できて、最大の効果を発揮するのです。
 
 運用部門がグリーンIT推進のために設備環境管理を掌握することは、障害をなくすことやコスト削減といったプロアクティブな運用改善に繋がります。しかし、これまで運用部門の専門外としてきた分野であることに加えて、今回ご説明したものだけでなく考慮しなくてはならないことは他にもたくさんあります。 
 そこで次回は設備環境管理の構成とポイント、管理方法についてご説明します。
 
  
株式会社ビーエスピーソリューションズ
「IT部門の環境管理」検討グループ
笠井 麻衣
 

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

「IT部門の環境管理」検討グループ 荷軽部 学

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