システム管理における人材育成

第2回 システム管理における人材育成 チームリーダーのリーダーシップ

概要

システム管理における人材育成を、チームリーダーの役割、リーダーシップの視点、組織とコンピテンシーの関係から12回に渡って連載レポート。

今回はチームリーダーのリーダーシップを「どのように」開発していったらよいのかの糸口を探ってみたいと思います。
 
前回は、「何を」を検討しました。職場でのリーダーシップは、「リーダーとしての基本的な責任」としての7つの役割「[1]戦略展開、[2]組織開発、[3]ナレッジマネジメント、[4]チーム作り、[5]キャリア開発、[6]意思決定、[7]業績向上」を果たすことと申し上げました。「役割」ですから知っているだけではだめで、実際に発揮しなければなりません。
 
またITSS(ITスキル標準)では、リーダーシップの知識項目として
 
    • リーダーシップの基本や原則の把握、実践
    • チームワークとコミュニケーションの実践
    • プロジェクト目標の設定、推進、実行、管理
    • チームメンバの連携、動機付けと達成感の提供
が挙げられております。このリーダーシップの知識項目が「何を」に当り、これらを習得すればよいことになります。しかし、どの項目を見ても「実践。実行、連携、提供」など行動を表す言葉がついており、知っていれば良いというわけではなさそうです。
知らないことは発揮できませんから、知っていること、知識を持つことはリーダーシップ開発の出発点であります。しかし、単に頭で知っているだけの知識では仕事の役に立たないことはよく見受けられます。「能書き言ってないで働け」という言葉は、以前よく聴かれました。当然、「やれる」、「やろうとしている」、「やれている」といったレベルで達成してなければ意味がありません。また、やろうという意図はあっても、やるべき場が分からず、必要なときに発揮しないということもあります。知っていることと成果を発揮することの間には、何カ所の関所があるようです。
 
ここで習得・学習のレベルを明確にしておきましょう。
 
習得・学習のレベル
    1. 知識レベル(知らない、知識に欠けるので、知識を習得する)
    2. スキルレベル(知っているが、やることができない。「スキル・技量」に欠けるので、「スキル・技量」を習得する)
    3. 心的態度レベル(やることはできるが、やろうとしない。心的態度に欠けるので、心的態度を啓発する)
    4. 感受性レベル(やることはできるが、やるべき場が分からない。感受性に欠けるので、感受性を磨く)
1~4を通過して初めて、役割発揮し成果を上げることになります。
 
この4つのレベルは、個人の成長を直線的な段階として表しているわけではありません。例えば、感受性はあるがやる気がないことも多く見受けられます。申し上げたいことは4つのレベルを関所のように、すべてクリアしなければ成果はでないということです。しかし1~4の順番には意味があります。これは、習得するための大変さを表しています。
 
知識ならば、本を読めば頭に入ります。人の話しを聴いても良いでしょう。
 
次のスキルになりますとかなり労力が掛かります。手本を見ながら何度もくり返しやってみる、失敗を乗り越えてやっとできるようになるものです。体を実際に動かしながら体が覚えていくことになります。頭で覚えるだけに比べたらかなり大変だと思います。
 
やれるのにやろうとしない人に、やろうという気を起こさせることの大変さは、上の2つと比べてどうでしょうか。叱ったり、褒めたり、動機づけと簡単に言いますが、これが大変難しいわけです。難しさの原因として、人によりやる気を起こさせない原因が異なるというのがあります。3つのパターンをあげて検討してみましょう。
 
1番目のパターンは、今までやったことがないので不安を抱えている人達がいます。何十人もの前で話した経験のない人に、いきなり話せと言っても不安はあります。しかしこの不安は誰でも抱く不安です。むしろやる気があるからこそ、やっている自分をさまざまにイメージし、不安を感じるのです。うまくやろうという気が強いからこそ、緊張が強まってしまうのです。ですから先ず、安全な場であることを本人が理解し、きっかけを与えればできるようになります。
 
2番目は、昔、やったことがあるのですが、失敗してしまった人達です。失敗の詳細は忘れているのにその嫌な気持ちだけが記憶にあり、やることに無意識の恐れを抱いてしまう。しかしその失敗というのが、2,3人に笑われただけということもあります。はたからみればどうということないことなのですが、本人には大変な傷であることもあります。こういう経験を引きずっている人には、むしろその経験を明確に思い出させてしまうことも有効です。自分だけがこだわっているのであって、もう誰も覚えてはいない。大したことではなかったと理解できれば、恐れは扱い易くなります。
 
3番目は、やってみてもそれは自分にとって意味のないことだと思っている人達です。こういう人に対しては、やることの意味、期待を話して理解してもらうことも有効ですが、とにかくやってもらって、やった状態が、その人にとって意味があることを体験してもらうことが有効です。その人にとって意味があることとは、人から注目を集めることであったり、人から尊敬されることであったり、人から好かれることであったりさまざまです。これはひょっとすると本人もやってみるまで分からないことかも知れません。しかし一度経験すれば分かります。そして次からの動機づけとして働きます。
 
このようにどのパターンも、経験する場を提供することが有効です。リーダーシップを発揮する経験をしながらその場での自分の気持ちを振り返る。その中で引きずっている過去の体験や、自分なりの意味を意識することにより、その気になってくるものです。重要なのは体験と、そのときの気持ちをじっくり振り返ることです。
 
次回は4つめの感受性について、防衛機制とフィードバックを切り口として検討していきたいと思います。

連載一覧

コメント

筆者紹介

株式会社 ビジネスコンサルタント
総研部長 岩澤誠

バックナンバー