運用エンジニアのためのMVS入門

第12回 SMF

概要

メインフレームはあなたの企業を始め、多くの企業の基幹システムを支えています。とりわけ金融、製造、公共など、日本の基幹産業で今日も働いています。新しいニュースは少ないものの、まさに業務を確実に処理するための大きな存在です。世の中にはあまり知られていませんが、オープン系をいまだに超えている技術、ノウハウが生きている分野です。黙って国を支えているITといっても過言ではないと思います。
そんなシステムを品質よく、安定して運用するためには、業務運用マニュアルや先輩・上司からの言い伝えだけでなく、確かな知識が必要です。
ここではメインフレームの代表的OSであるMVS(z/OS)の基本的なしくみについて、運用部門に携わる新人エンジニアに必要なものを解説します。

SMFの役割

 SMF(System Management Facilities)は、MVSの運用において、システムとジョブに関連する様々な情報を収集する機能です。システムの運用担当部門は直接のオペレーション業務だけでなく、システムの状況を正しく把握・分析して、より最適なシステムになるよう改良し、ジョブの特性に合わせた運用を行う必要があります。さらにシステムの利用者に対して、使用した資源に応じた課金を行うこともあります。これらの仕事をシステム側から支援するのもSMFの役割です。
 
 SMFでは、主にジョブ及びジョブ・ステップ単位のスケジューリングに関する情報、課金情報、システム資源の利用状況に関する情報が収集され記録されます。システム内でどのようなデータセットが利用されたかなどの情報も含まれます。 SMFにはセンター独自の処理を行うためのシステム出口ルーチン(カスタマイズ用のプログラム)が用意されており、特にジョブのスケジューリングに関する出口は豊富で、SMF出口を利用して、パッケージソフトに劣らないジョブ・スケジューリングのしくみを構築しているユーザーも数多くいます。
 

SMFデータセット 

 SMFが収集したデータは、SMFデータセットに書き込まれます。データセットに書き込まれるデータをSMFレコードと呼びます。通常、SMFデータセットは複数個用意され、1つのデータセットが一杯になると残りの予備データセットに切り替わります。代表的なSMFデータセット名が、「SYS1.MANn」でSYS1.MANX、SYS1.MANYなどと命名れれます。
 SMFデータセットが一杯になった場合、SMFデータセットのダンププログラムを使用して、順次データセットにアンロードします。このアンロードされたSMFレコードを使って、システムの運用に関するさまざまな統計・課金データを集計することができます。
 

RMF

 SMFはジョブ運用の観点からの情報が中心ですが、システムのチューニングに直結する情報はRMF(Resource Measurement Facility)によって収集されます。RMFは必要に応じて起動され、システム全体、またはジョブ空間ごとの、CPU使用量、メモリー使用量、ページング状況、チャネルやデバイスの使用率(BUSY度)やパフォーマンス、資源の競合など、様々なシステム資源の活動状況を記録し、レポートとして出力します。RMFレポートを分析することによって、パフォーマンスの阻害要因や資源を独占しているジョブを見つけ出すことができます。RMFは収集したパフォーマンスデータをSMFレコードとして書き出しており、リアルタイムな分析だけでなく、後から時系列にパフォーマンス分析リストを編集して印刷することもできます。
 
 
 
 12回に分けて連載しました「運用エンジニアのためのMVS入門」は今回にて終了となります。ご購読いただきありがとうございました。

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筆者紹介

株式会社アルテシード

代表取締役 神居 俊哉(かみい としや)

http://www.arteceed.com
ビーコンITにて約20年にわたり、独SoftwareAG社のTPモニター・ソフトウェア製品などのサポートや同製品の富士通、日立OSへのポーティングのためのシステムプログラム開発などを行ってきた。現在はメインフレーム・コンピュータに関する技術スキルを後進に伝え、基礎知識や実践的な技術を広めることで企業の情報システムを支えるべく、株式会社アルテシードを設立。併せて、メインフレーム・コンピュータ技術情報サイト“「メインフレーム・コンピュータ」で遊ぼう”(http://www.arteceed.net/
を主宰し、z/OSやMSP、VOS3など代表的なメインフレーム・システムのコミュニティ活動を展開開始。基本スキルから高度なプログラミング技術の解説、サンプルの提供、ならびに関連する各種の技術情報の交換なども行っている。

メインフレームでは約20年ぶりの和書、「メインフレーム実践ハンドブック」を3月にリックテレコム社より刊行。

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