グリーンITを考える

第1回 人を動かすのは恐怖と利益だ

概要

「グリーンIT」について検討や調査を行なっていますか???
現状では、ハードメーカ等が省電力対策を中心に対策を進めていますが、環境とITの調和を考え様々な対策を考えていく必要があります。 このような状況の中、企業のIT部門としての立場やアウトソーシングセンタとしての立場で、「グリーンIT」に取り組むケースが徐々に増えてきています。
しかし、推進担当に任命された方からは、何から進めたらよいのか、ゴール目標をどのように設定したらよいのかがわからないといったお話を耳にするのも実態です。 このような悩みを解決していくために、サイトの読者の皆さんとともに「グリーンIT」について考える場をご提供いたします。
皆さんが知りたいことや情報提供いただけることなどがありましたら、ご投稿のほどよろしくお願いいたします。

目次
恐怖は環境問題
利益の話

恐怖は環境問題

 この言葉は、ナポレオン・ボナパルトの言葉で、「グリーンIT」の現状を的確に表現していると思います。 まず、恐怖は環境問題です。
 
筆者は、2008年6月6日に開催された、日本ユニシス創立50周年 BITS2008の基調講演で、東京大学名誉教授の月尾嘉男氏講演「環境危機への処方 挑戦する技術と精神」を受講する機会を得ることができました。 その中で、「グリーンIT」の背景として、
 

発展途上国を中心とした人口問題
鉱物資源の枯渇問題
森林の消滅
淡水資源の減少
気象災害

があることが具体的な事例を含めて紹介されました。
また、講演の中で、図1のような整理があり、「現状の生活水準を維持・向上をはかりつつ、経済活動の拡大→資源消費の減少→環境問題の解決」を実施するための具体的なアイデアの紹介がありました。
図1.環境問題の背景と解決策
具体的には、
 

節約(例として、白熱灯から蛍光灯への切り替えによる効果の話がありました)
情報通信技術の活用(情報の電子化、電子商取引、在宅勤務)
リサイクル
エネルギー自給率の向上

等の対策があげられました。
このあたりの詳細な事例や取り組みについては、多くの記事やサイトでの紹介されていますので、今回はこの程度にとどめさせていただきます。
 

利益の話

 IT業界は、「グリーンIT」というキーワードに、主にIT機器や設備の省エネ問題がクローズアップさせ、様々な取り組みを実施しています。
 手元にある「データセンター完全ガイド(2008年春号)」では、 「グリーン化はIT部門の新常識!」と題して、
「冷却効率向上・省電力製品の導入=コスト削減=グリーンIT」と定義し、
PART1.では、主にファシリテイー関連での「データセンターのグリーン化への取り組み」について特集されています。
具体的には、
 
省電力ファシリテイ
NEC:プラットフォームの省電力化とソフトウェアの活用の二面で取り組みを展開
NTTファシリテーズ:電話事業の経験を踏まえてデータセンターの設備を改善
HP:広範囲な省エネ領域で高効率化を実現
IBM:包括的な取り組みで業界を主導
 
冷却システム

APC:標準化/モジュール化でデータセンター全体の効率を改善
RITTAL:水冷による高効率な冷却システム

監視システム
アパール長崎:充実した監視ツールで容易なログ解析
エニイワイヤ:独自開発技術による省配線・高速伝

 
について紹介されています。 
 PART2.では、省電力サーバーのテクノロジーについて、NEC,HP,IBMの各社の取り組みが紹介されています。これは、ほんの一例で、IT業界は、様々な機器の開発やソリューション提供を「グリーンIT」の旗印のもとに実施しています。
 そのような中、小売S社の「2007年社会環境報告書」を拝見する機会がありました。同社では、企業の社会的責任を果たすための様々な工夫が紹介され、「グリーンIT」といった表現は使われていませんが、様々な場面でITを活用した活動の成果が紹介されています。
 企業としての方針、目的と単年度単位の目標(紙ごみの削減とリサイクル量の10%向上、不燃ごみの削減とトナーリサイクル率の向上 等多数あり)が設定され、マネジメントプログラムとその成果について報告がされています。念のため、この報告書のタイトルを紹介いたします。 
 

企業の社会的責任について
お取引先とのパートナーシップ
お客様とお取引先との橋渡し
お客様の安全・安心について
安全・安心な店舗つくり
商品の安全性について
お客様の快適な暮らしのために
開発商品
働く社員の職場環境
環境マネジメントシステム
2006年度の実績と2007年度の目標
インプット・アウトプット
廃棄物のリサイクル
野菜・果物くずのリサイクル
店頭回収とリサイクル
レジ袋削減のために
社会貢献活動
社会・環境活動年表

 
このように、具体的に活動を開始したり、試みを開始している事例も増えてきています。
 
このような現状の中で、企業として(ITを提供する側ではなく、ITを活用して企業内の活動に貢献する側として)どのように「グリーンIT」に関わっていくべきかについて、事例を含め次回は紹介いたします。
業務や流通の合理化で環境負荷を軽減することに対する試みを開始している先進事例は、皆さんの企業の「カイゼン」活動の重要なヒントになるはずです。
 

連載一覧

コメント

筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

コンサルティンググループ 佐藤陽一

バックナンバー