帳票の未来を考える

帳票領域における電子書籍フォーマットの可能性

クラウド時代の到来により、日々新たなサービスが提供され進化するIT業界で、帳票領域における新たな可能性とは何でしょうか?本稿では、帳票領域における今までにないサービスの試みの一つとして、電子書籍フォーマット「EPUB」のご紹介を通じて、帳票活用の未来について考えてみたいと思います。

目次
スマートデバイスの出荷台数に比例して伸びる電子書籍の需要
電子書籍フォーマット「EPUB」とは?
画面サイズに合わせた流動的な表示を可能にする「リフロー機能」
今後のEPUBの規格とその可能性に期待
EPUBを効果的に取り入れた新たな帳票の可能性
参考情報

スマートデバイスの出荷台数に比例して伸びる電子書籍の需要

 国内では1990年代から電子書籍端末が発売されていますが、電子書籍の媒体やフォーマットなどの提供方式、コンテンツの提供数が増加しないなどの課題から、市場の拡大には必ずしも結び付いていません。しかし昨今、電子書籍端末、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの普及や通信環境の整備により、書籍は、紙媒体を持ち歩かずに電子書籍としてデータを持ち歩く時代へと変わりつつあります。

IDC Japanが2012年3月に発表した『国内モバイルデバイス市場2011年第4四半期の分析と2012年~2016年の予測』によると、2011年の下期にはスマートフォン、メディアタブレットともに、出荷台数は前年同期比200%近い増加となっています。順調に推移すれば、2012年にはスマートフォンの出荷台数が3000万台超、タブレットの出荷台数が333万台に到達することになります。また、世界的に見てもスマートフォンの出荷は増加傾向にあり、2011年7月~9月のスマートフォンの世界出荷台数は、前年同期比55%増加の1億5700万台であったと、米国の調査会社IDCは発表しています。

=参考資料=
■国内スマートフォン出荷台数予測 2010年~2016年

実際、矢野経済研究所の調査によると、2011年度の電子書籍市場規模は723億円、前年度比6.3%増加(見込み)となり、2015年度の市場規模は1500億円になると予想されています。

■電子書籍市場の規模推移

 

電子書籍フォーマット「EPUB」とは?

電子書籍は新聞、雑誌、一般図書と多様な分野で発行されてきており、日本ではコミックが最も多く流通しています。電子書籍フォーマットは、日本においてはXMDF(シャープ社)が多く使われておりその他 .Bookなど20種類以上が存在していますが、その中でも世界的に標準化の流れにある電子書籍フォーマットが「EPUB」です。Apple、Google、ソニーなどがEPUBを採用しており、提供されるコンテンツと、それを閲覧する端末ともにEPUBへの対応が充実し、拡大していく傾向にあります。書籍のコンテンツ量やサービスはアメリカや中国が中心となっています。

国内では、神奈川県平塚市のホームページ(行政広報)に全国で初めてEPUBが使用されています。

= 参考 =
全国で初めて広報紙をiTunesで配信
http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/kouhou/ebooks.htm

 

EPUBはIDPF(国際電子出版フォーラム)が仕様の策定、普及を進めている電子書籍フォーマットの一つです。多くの電子書籍フォーマットの仕様が非公開で出版の際に規格利用料が必要となるのに対し、EPUBはIDPFより全ての仕様が公開されており、フリーライセンスになっています。DRM(Digital Rights Management)により複製防止、著作権やセキュリティの確保など、不正防止も可能です。2011年5月にはEPUB3.0の仕様が公開され、日本や台湾で要望のあった縦書き、ルビにも対応がなされました。

 

画面サイズに合わせた流動的な表示を可能にする「リフロー機能」

EPUBの内部構成はXHTML(テキスト、文章)とCSS(レイアウト、文字の定義するファイル)を中核として、パッケージ化したものであり、各出力デバイスにパッケージ化されたファイルをダウンロードして使用することを前提としています。HTML5に対応しているため、ページ送りや動画などのメディアにも柔軟に対応し、Google
Chromeなど対応WEBブラウザで表示することも可能です。この場合、ダウンロードを行うことはないため、EPUB閲覧用のアプリケーションをインストールする必要はありません。

EPUBの大きな特徴として、「リフロー機能」があげられます。「リフロー機能」とは、デバイスの表示可能な横幅に合わせて、1行あたりの文字数が自動的に変化する、つまり表示を流動的(リフロー)にする機能です。その機能によって、デバイスの画面サイズに合わせて、ユーザが自ら表示サイズの調整をする必要がなく自然な読書が可能になります。

■EPUBで表示した場合(リフロー機能)のイメージ

2つの表示形式「リフロー型」と「レイアウト型」

EPUBはリフローを使用したドキュメント、即ち「リフロー型」の代表的なフォーマットですが、対となる表示方法として「レイアウト型」があります。レイアウト型の代表的なフォーマットとしては、PDF(Adobe社)があげられます。ご存知の通り、PDFをReaderで表示すると、デバイス表示画面の大小によらず、文字の拡大、縮小をしても、表示位置は固定されています。レイアウト型のデメリットとしては、スマートデバイスの画面サイズによって、文字を拡大し画面のスクロールを多用することになります。

 

今後のEPUBの規格とその可能性に期待

従来の帳票は「レイアウト型」で作成されています。では、帳票をリフロー型であるEPUB形式で作成すると、どうなるでしょうか。既存帳票の請求書サンプルをEPUB形式で作成してみると、請求書の表領域内のテキストはデバイス画面大小に合わせてあふれた分がリフローされ、下に帳票が延びていきます。

現在流通している帳票は、表示位置をミリメートルの単位までこだわってフォーマットされたものも多く、単純にそのままリフロー型に変更することはできません。EPUB内で帳票を利用するためには、は「レイアウト型」での表現も適用可能であることが望まれます。

また、「レイアウト型」は帳票に限らずコミックや雑誌にも有効であり、「リフロー型」と「レイアウト型」の自由な混在が利用拡大の鍵となると推定されます。IDPFを中心に固定レイアウトの仕様について議論が盛んに行われており、EPUBにおける帳票活用の可能性が飛躍的に拡大していくことが期待されています。

 

EPUBを効果的に取り入れた新たな帳票の可能性

EPUBは、HTML5をベースとして作成されているため、動画やグラフィックなど多くの表現形式の取り込みが可能です。

一例として、DAISY(Digital Accessible Information System)というデジタル録音図書の国際標準規格の仕様をほぼ取り込んでいます。DAISYの特徴はアクセシブルである(障害を持つ方でも、誰でも利用可能)ことで、DAISY再生対応端末ではテキストの読み上げ、ナビゲーションシステムを利用することが可能です。アクセシビリティのニーズが強い、図書館や、教育機関などでも注目を集めています。EPUBのメリットを有効に使うことによって、新しいコンピュータ内の数値情報を正確に、かつ直感的に表現するという帳票の役割を拡大する新たな形が見えてくるのではないでしょうか。

 

例えば、本帳票に付与するドキュメントをEPUBで作成し、広告動画などを取り入れ、メディア性を高めるなど、電子書籍の技術を帳票領域で活用することによって、今までにないクロスメディアな帳票が可能になります。

今後は帳票領域においても、帳票活用を推進できるクラウド環境が整備されていきます。EPUBに限らず、クラウド基盤の「クロスメディア」や「マルチスクリーン」をキーワードにした帳票の新しい活用方法が期待されます。

 

参考情報

■EPUB閲覧用アプリケーションの現状

EPUBの普及にともなって、多くのEPUB閲覧用アプリケーションが作成されており、有償/無償で利用することができます。EPUB自体がフリーフォーマットであるため、アプリケーションごとにさまざまな機能や特徴をもっており、日本語の縦書きに対応しているもの、EPUB形式のファイルをGUIで管理できるものなどがあります。その反面、まだまだ文字化けや、解析失敗が頻繁に起こるアプリケーションも存在するため、使用される場合は、慎重に選ぶ必要がありそうです。

■IDPF(国際電子出版フォーラム)が発表、最新規格は「EPUB3」

IDPFとは、米国の電子出版業界の標準化団体。電子書籍フォーマットの国際標準仕様を策定しています。IDPFは2011年10月、最新規格「EPUB3」の完成を発表しました。EPUB3には、縦書きやルビ、圏点、禁則といった日本語の書籍に不可欠だった要素が含まれているため、EPUB 3の登場は国内での電子書籍の普及や、日本語の電子書籍を世界に向けて販売できる環境が整うと期待されているようです。

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