「運用ゲンジン」が提供する「運用設計のポイントと管理ドキュメント」

【第4回】 よりよい運用という終着駅はない・・・

概要

2005年10月から2006年3月に、システム管理者の会サイトの前進である”カイゼン活かす”サイトに掲載され、その後も根強い利用がある「運用規約、運用設計書」の筆者である「運用ゲンジン」ことITシステム運用コンサルタント沢田典夫氏のコーナーが復活します。今回は、より具体的な内容で運用設計のポイント、運用の管理項目とプロセス、運用設計基準書内容等について、テンプレートを多数公開していただきます。
皆さんの運用カイゼンにお役立てください。

目次
新年を向かえ
運用管理モデルと運用設計
目指す運用の姿
運用の答えはない

新年を向かえ

あけましておめでとうございます。
本年も当運用ゲンジンのサイトへのご支援をよろしくお願い申し上げます。
 
さて、新たな年も明けて正月気分もだいぶ抜け、そろそろエンジンも掛かってきたころかと思いますが、 みなさんはどんな思いで新年を迎えられましたでしょうか?
 
普段なかなか連休も取れず、休みはついのんびりしたくなるものですが、 年も改まり、気持ちも新たにいろいろな思いを心に刻んだ方も多かったのではないでしょうか。 また、連休の時はリリースが予定され、新年から移行作業に追われこれから休みの方もいらっしゃるかと思います。
 
当運用ゲンジンはというと、長い休みは嬉しいのですが、いざ休みとなると日ごろの忙しさからか休みの過ごし方をすっかり忘れてしまい、 さて、連休をどう過ごしたらいいのかと変な悩みを抱く今日この頃です。
 
昨年の秋ごろごろからアメリカから発信された不景気の波が急速に日本に広がり、 一昔のバブル崩壊では日本国内だけの問題でしたが今回は世界中が風邪をひき、日本が回復すればといったような簡単な問題でもなく、 それを物語るかのように、暮れのニュースのトップキーワードには解雇・人員削減・~対策・~救済処置などの暗い言葉が連日飛び交い、 しかも100年に一度の不況だとか・・・・・・・・ いやはや嫌な時期に生まれ、大変な時代に遭遇したものだとため息の日々ですが、 みなさんのところにはどんな影響が出てきているのでしょうか。
 
さっ、2009年のスタートです。
暮れの休みで冷え切ったエンジンの再始動! て、エンジンがかかればいいのですが(泣)
 
年明けから暗い話のスタートでしたが、みなさんと一緒にこの不景気を吹き飛ばしましょう。
 
年明け第一弾は①運用管理モデルと運用設計、②目指す運用の姿について話を進めてみましょう。
 

運用管理モデルと運用設計

今でこそ運用管理という体系だったものがありますが、第二話でも触れたように初期のころには運用というものはなく、 コンピュータを使用する、あるいは操作するといったことが運用の始まりでした。
 
その違いは、システムの規模であったり、作業の多さ、対外、信頼性、技術の進歩が今日の運用管理を形作ってきたわけですが、 最近ではITILやらJSOXやらとコンピュータシステムに対して基準や法的な規制が入り込み、 それだけコンピュータシステムが社会や生活に重要な役割と大きな影響を持つまでになってきた現れなんだと思います。
 
しかしながら、運用をされてるみなさんであれば分かると思いますが、運用はこれだという回答はなく、 業態・システム規模・方式・作り・体制・設備などにより様々な運用方法があり、しかも今までは運用コスト削減やら効率化を追及し続け、 コストや手間隙のかかる整備やBCP、ITIL、JSOXなどに関わる部分はどちらかといえば先送りしてきて 慌てて検討・作成されてる方も多いのではないでしょうか?
 
ただ、最近は参考文献も多く出回っているので真似て作るだけなら簡単ですが、先ほども話した通り運用は様々ですので、 皆さんの業態やシステムの特性、規模、体制、方式などから発生している様々な作業・必要な役割・ルール・管理ドキュメント・基準/規定類をこれを機に一度整理・分類をしてみてください。
 
作業から入るのは現状を明らかにするとともに年々変化するため、作業の棚卸や体制・役割などを見直す目的もありますので、 定期的に見直しをし、継承していただければと思います。
掲載資料①
 
作業を整理すると作業内容より分類化されたものがみなさんの管理体系です。  もちろん管理の名称はこれでなければならないということはありませんし、中心になる作業でピンとくる管理名称を付けることです。
 
これらの管理や作業から役割や体制とリンク付けすることで運用管理体系とその体制、それらに必要な書式・ルール・マニュアルの全体像が見えてきます。
 
ただ、長年運用してきているはずですし、書式やルール、マニュアルなどについては既に作られてる方が多いと思いますが、 大切なのはJSOXなどを見据えて必要となるルールや手続き/手順、書式、運用マニュアルと照らし合わせ、あるもの・ないものの整理と 古くなって再作成や変更、あるいは不要なものを明らかにすることです。
掲載資料②
 
参考までにITIL,ISMS,JSOX,BCP,運用管理を含めた全体像をリンク資料で添付しておきますが、更に詳細をご希望の方は別途営業にご相談ください。
 

目指す運用の姿

掲載資料④および第二話で簡単に運用の姿の変化をまとめてありますが、 初期のころはいかに大量の処理や媒体、MSG類を正確・確実にさばくかが運用に課せられた役割でしたが、 技術の進歩や運用ツールの出現により自動化が急速に進み、運用の姿は一変し監視することに重点が置かれるようになりました。 ただ、それにはコストやアプリの改修が伴うため改善によって徐々に削減はされてきてはいるものの、 操作やハンドリング作業を今だオペレータに依存せざるを得ない運用も多く残っています。
 
【監視】
この状態で改善が進めば監視が運用の主な作業になるはずでしたが、統一化や標準化がされないまま急速にオープン化が進んだことで煩雑な運用が広がり、 安定したホストとバラバラなオープン系の運用を見直したり統一化したり、オペレータ作業の削減のための改善がしばらくは続きそうです。 また、監視も見直され、単なる監視・通報だけでなく、異常時のアクションやリカバリーもだいぶ自動化が進むが無人化にはならず、まだまだ人の判断は残るものと思われます。
 
【管理】
初期のころの運用とはだいぶ姿は変わりますが、単なる労力としての作業は今後も削減され、近い将来オペレーションやオペレータという言葉は変わったりなくなるのかも知れませんが、 運用で一番重要なのはシステムを自動化や安定稼動させるために多くの管理・作業がきちんとなされてこそ成し遂げられるものであり、 システムが動いてる間はこういった管理は確実に残り、また自動化が進めば進むほど管理することは増加し、運用のほとんどは維持するための管理が主体になっていくものと思われます。
 
また、管理していく上ではITILやJSOXなどの基準や法的な手続き/手順の基での管理・作業が求められるため、従来の作業中心型の体制より管理中心型の体制にスライドが必要になるはずです。 ただ、これらの多くの管理・作業を人手で行うには限界があり、今後は人の作業に対するシステム化や管理ツールが多数出てくるものと想定されます。
 
【運用設計】
管理中心型の体制作りでは、ホストおよびオープン化が混在した煩雑な運用の見直しや、運用する側としての運用設計力が今まで以上に必要となり、 インフラ担当と共同による運用設計役割や専門チームが結成されるようになり、従来の運用担当者のスキルアップが重要な鍵になってきます。
掲載資料④
 

運用の答えはない

冒頭でも述べたように、運用は様々であり、こうでなければという回答も終着駅もありません。 その時々に応じ、決められた通り確実に、安定的にシステムを稼動させることが本来の運用の役割であり、 そのための手段や方法は、規模や体制に見合った分かりやすく今あるパワーで確実にできることだと思います。
 
ここで述べたことを参考にしていただきながら、みなさんにとってよい運用と思える運用を作り上げていただければ幸いです。
 
次回は①運用設計の領域とその役割分担、②開発から運用についてお話させていただきます。
 
だいぶ寒さも厳しくなってきていますし仕事のリズムもまだ戻ってないと思いますので、 風邪をひかないよう体調には十分気をつけてお過ごしください。

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コメント

筆者紹介

沢田 典夫(さわだ のりお)

1951年生まれ。運用との出会いは某銀行でのオペレータに始まり、7年間富士通 フィールドSEとして多くのメインフレームの導入の企画提案、移行、OS試験、環 境設計や構築~チューニング、また業務システム開発などを手掛ける。また、某大手 トレーディングスタンプ会社で13年間、コンピュータの導入、業務システムの開発 (物流・販売・財務・経営)および運用を行い、この時に開発の標準化、自動運転環境構築、運用設計や運用改善、また、運用ツールの開発などを手掛け、運用の基盤を 確立する。その後BSP一期生として入社し、運用診断や運用企画、また、運用設計 を重視した運用ツールの導入などを行い、コンサル事業の基盤作りを行う。その後運用コンサルとして独立し、これまでの経験を生かし、運用する人の立場に立ち、ま た、運用改善は永遠のテーマを掲げ、16年間一匹狼で運用と向き合ってきました。

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