資格取得への道 ITコーデイネータへの道

第6回 ITコーディネーター(ITC)ってどうなの、取ってどうなるの

概要

リタイヤ間際のオヤジが、なんで資格取得に取り組むことにしたのか、どのような葛藤があったのかなど等

目次
自分のレベルを自己評価すれば
ITCの現状など
ITCへの期待
ITCになったら
ITCの今後の動き

ITCの資格について聞かれることがあります。その時には、私は「取って良かったと思っている、将来は、ぜひともITCとして仕事がしたいと思っている」という話をしています。

 しかし、ITCの資格取得を人に勧めるかと問われると、微妙です。なぜかと言うと、[理由1]まずは受験のための費用が結構かかる(テキスト代、受験代、ケース研修代などで(最低)60万円前後)こと、[理由2]さらに毎年の資格更新のための維持費用(継続学習の勉強会費用や更新料などで(最低)6、7万円程度)も必要なこと、[理由3]他方では資格を取っても税理士や会計士などの資格と違って、(法律などで)資格がその仕事をする条件になっている訳ではないので、直ぐに仕事に結びつき難いことからです。

 


 上記のような話をして、それでも取ってみようと思うのなら、ぜひチャレンジして下さいと回答するようにしています。

 「私は取って良かったと思っている」と述べましたが、それは次のような理由からです。

 


 一つは、ITCプロセスに照らして、自分の知識レベルなどが確認できたこと。また、今まで自分なりに工夫して実務でやってきたIT資源調達・IT導入・ITサービス活用やPMなどが、他の会社でも結構通用しそうだと実感でき、(それなりの)自信になったこと。

 


 二つは、自分の見識が広がり、色々な見方が出来るようになったことと、さらに勉強したくなったこと。

 


 三つは、ITCプロセスを(勤務先の)社内のIT調達やITサービス活用プロセスの業務改善などに何度か適用し、ITCプロセスが使えるものと確認できたこと。

 


 四つは、資格取得後の継続学習の勉強会やセミナーなどで、最新の色々な知識やノウハウなどが勉強できること(資格更新制度で強制されているとも言えます)。また現役のコンサルや経営者など様々な方々と知り合う機会にもなり、今後のキッカケにもなりそうなことです。

 


 私は、ITCプロセスで自分の強みと弱みが確認できたことで、ITCは価値があったと評価しています。また、弱み(経営系)を強化すれば、ITCプロセスは私の武器になるものと思っています。

 

 

自分のレベルを自己評価すれば

 ITCプロセスは、企業の全ての業務活動の分析や改善に適用できるもので、経営診断・経営戦略からIT運用・ITサービス活用までの幅広いプロセスを網羅しています。


 私はIT系の経験が長く、下流(IT調達以降)のプロセスなら何とかなりそうですが、上流部分はまだまだ知識不足なことに加えて、実務経験がないこともあり弱いです。

 

 私のレベルを自己評価すれば、「ITユーザーとITベンダーをつなぐ人材」には、もう少しで到達できると思っていますが、「経営とITの両面に精通しサポートできるプロフェッショナル」には、まだまだ遠いという評価をしています。

 

 自分の足元を見据えて、現時点での得意分野にさらに磨きをかけて行くのと、並行して得意と言える分野を少しでも広げて行きたいと考えています。やればやるほど更に知りたいことが出てきます。追いかけているのか、追っかけられているのか、きっと一生勉強することになるのでしょうね。

 

 

ITCの現状など

 「Wikipedia」によれば、2008年4月現在ITCは約6300名だそうです(もっと多いという数字もあるようですが)。独立系ITCは24%で、残りはベンダー(大手・中小)や一般企業に属する企業内ITCとなっています。因みに女性は5%程度だそうです。また、約半数が高度情報処理技術者・中小企業診断士・税理士・公認会計士などの資格を併せ持っているとのことです。

 

 ITCは「日経ソリューションビジネス」の資格人気ランキングで、一時は営業に取らせたい資格のNo.1になっていました。その後のランキングでは2位に後退していますが、営業効果への評価が非常に高く、82%が効果ありと回答したとされています。

 

 このようなアンケート結果から見る限り、ことに営業職が持つべき資格としてITCは非常に注目度が高く、かつ、評価も高いということになるようです。

 

 

ITCへの期待

 繰り返しになりますが、ITCへの期待としては、次のようなものです。

 

 より良い経営をするための正しく効果的なITの活用・促進が以前にも増して重要になっています。しかしながら、企業経営者はITの活用に疎く、またベンダーのSEは経営者の考えていることがよく理解できないというのが現状と言われています。


 このような現状を変革するために、経営におけるITの活用を支援する人材は今後の情報化社会において大切になっています。ITCはまさに両者を繋ぐ人材として期待されています。


 ITCのカリキュラムを見ると、経営戦略の立て方、経営の評価・ベンチマークのあり方(経営の成熟度の評価という)、バランススコアカードなどの上流工程だけでなく、システム機器の調達、システム導入・運用の手順などの下流工程まで、その知識範囲は非常に広い範囲が盛り込まれています。


 経営戦略は正しいか?経営の正しい評価・ベンチマーク方法は?KGI,KPI の設定、RFI,RFPとは?など今後の情報技術者、また経営コンサルタントとして必須の知識をカバーした資格と考えられます。


 個人的には、ITCは名称にITが付きますがIT系ではなく、経営系の資格と言っても過言ではないと思っています。


 試験制度としては多くの時間と費用が必要である等、取得・維持の負担が大きいですが、これからますます企業で求められる人材であることは間違いありません。ITCは経済産業省が推進している資格で、有るべきコンサルタント像を目指す優れた仕組みだと言われています。


 また、ITCはIT系企業にとっては、特にベテランのIT技術者のキャリアアップ(上流工程が分かる人材)として、またIT系企業だけでなくその他の企業からも、経営とITが分かる営業職やスタッフ、CIOとして期待されているようです。

 

 【ITC協会の関連資料を参考に編集】

 

ITCになったら

 ITCとして求められる必要な知識レベルは、「経営者とITの橋渡しができる程度」と言われています。ITCプロセスがカバーする範囲は、経営戦略からIT運用やPMなどの、企業の業務全てを網羅していて広く深いです。


 私は自分の体験(実務経験や勉強・研修など)から、ITCプロセスを駆使して「経営者とITの橋渡し」をするには、経営とITの一定度(というより、かなり高度)の知識・スキルレベルが必須だと考えています。


 今回原稿を書くために以前勉強したITCテキストなどを見直してみました。当時あんなに難解だと思ったものが、今見ると大変よく纏められたプロセス・内容で、実務で十分使えるものだと改めて実感しました。(自惚れかもしれませんが)ITC取得後の個人的な勉強などで私の知識レベルが上がったことで、ITCプロセスの凄さが理解出来るようにようになったためと思っています。


 (ITCに限りませんが)資格の取得は、ゴールではなくスタートラインに立っただけ、土俵に上がっただけだと言われますが、私も資格を取ってみてその通りだと実感しています。


 それでも例えば、営業職の方がITC資格を取れば、経営戦略やIT化企画などの重要性が理解出来るはずですので、闇雲に売込みではなく「経営者とITの橋渡し」の一部でも出来るのではないかと思っています。少なくとも営業をするに当っての意識が変わるはずです。


 経営者とITの橋渡しをするためには、まずは経営者の立場などを理解して経営者の悩み・思いなどを聞くことから始まります(これが一番大事で大変だと言われています)。


 しかし、経営者の思いを全て実現させれば良いかというと、そうとも言えません。えてして多くの(特に中小企業の)経営者は目の前の(売掛けの回収や在庫の圧縮などの)問題を解決することが最大関心事であり、真の問題や長期的なことに目が向いていないと言われています。


 直近の対策を講じるとともに、経営戦略の重要性を理解してもらうことも大事になります。企業の成熟度によっては、経営者がやりたいと言っても、実現性を考慮し段階的に実施するよう提案、説得する必要があるかもしれません。


 さらに真に経営に役立つIT化を行うために、時には経営者に代わってITベンダーに業務要件などの説明などを行ったりする事もあるようです。また、場合によっては経営者のITベンダーへの無理な注文などを制止することも必要になります。必要以上の値引き要求は、手抜きやテスト不足などになる恐れがあり、結局ユーザー企業のためにならないと説得したり、ユーザー企業とITベンダーの長期的な良好な関係構築が重要な事を理解してもらう事も必要です。

 

 これらを実現するためには、幅広い深い専門知識、顧客の業界などの知識や経験などが必要です。


 現実的には、経営系・IT系に強みを持つITCが組んで、場合によっては特定業界に強いITCとか、パソコンの設定やプログラム作成など手を動かせるITCなどもチームになって”経営者とITの橋渡し”をすることも行われているようです。

 

 

ITCの今後の動き

 ITCを支援する組織や団体としては、ITコーディネータ協会を始め、地元の商工会議所、中小企業支援センター、地域のITC団体(NPOなど)などがあり、研修会や交流会の開催、ITCへの仕事の紹介などが行われています。


 また、ITCは経営者・ユーザー側に立ちIT化を推進する人材と謳われていましたが、最近では(特に中小の)ITベンダーの支援も大事と言われ始めていて、ITコーディネータ協会でもITベンダー向けの教育プログラムなどが検討されています。これは経営に資するIT化のためには、ITベンダーの意識改革が必要との認識があるからです。ITベンダー側の売れれば何でも良いという意識から、顧客との長い良好な関係を築くことが重要だという意識への変革を目論んでいます。


 ITCの現状としては、ITCの大半は(大企業などの)企業内ITCです。多くの企業内ITCは実務経験が不足していて、このままでは中小企業のIT経営の支援をするというITC本来の狙いの実現にはほど遠いというのが、ITコーディネータ協会などの認識のようです。このような現状を改善するための動きも活発化してきています。


 最近は顧客とのチャネルを持たない、或いは実務経験が足りないITCを支援・組織化し、実務経験をする場を提供したり、仕事を紹介したりするなどの動きも、幾つもの団体などで以前にも増して具体化してきて活発になってきています。


 私も顧客がいない、実務経験が足りないITCの部類ですので、このようなITコーディネータ協会や関連業界の動きは大変興味があり大いに期待しています。幾つかのITC団体主催の勉強会などにも参加して、最新知識の修得だけでなく色々な情報も収集するように心掛けています。是非とも自分に合った団体などを見つけて参加したいと思っています。


 少しずつ知り合いを広げて、顧客の求めているもの等の確認をしたいのと、まずはパートナーになって貰えそうな方(や会社)を見つけたいです。できれば顧客も見つけるキッカケにしたいと思っています。時間は十分ありますので、ゆっくりでも着実に前進したいと思っています。

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